2011年04月12日

「早く逃げて」とチェルノブイリ事故処理従事者からのメッセージ

2011年4月12日追記:

もたもた原稿をまとめていたら「福島はレベル7」との認識が政府から出たようですね。記事情報をいくつか記録として末尾に拾っておきます。つまり、そうなるとチェルノブイリの教訓はますます有効ですから、以下のテキストは4月6日に書いたままアップします。



[この項に収録した媒体記事]

生き残ったチェルノブイリ事故処理従事者から日本へのメッセージ
――「できるだけ早く逃げてください」
AOL 2011年3月22日

福島原発事故、チェルノブイリと同じ「レベル7」も=報道
ロイター 4月12日(火)8時16分配信 JST

福島第1原発事故、最悪のレベル7に 保安院検討
日本経済新聞 2011/4/12 9:26 JST

Japan raises nuclear alert to highest level
Aljazeera English Last Modified: 12 Apr 2011 09:10 GMT



2011年4月6日記す:

これはほんとうだろうか。福島第一原子力発電所の事故は、スリーマイル島の原発事故よりは大規模だが、25年前のチェルノブイリ爆発ほどではない。沈静化するまでの道のりは長期戦になるが、事態は安定しつつあり、チェルノブイリには至らない。

スリーマイル(レベル5)以上、チェルノブイリ(レベル7)以下、どんなに悪くてもレベル6というマントラが蔓延し、地球規模の大悲劇チェルノブイリに次ぐか、もしかすると超えてしまうかもしれない規模のカタストロフィー(なにしろチェルノブイリは4号炉1基だったが福島第一では1〜4号炉まで4機に事故が発生)が進行しているという自覚が、当事者である日本の人に薄いように見える。原発がしょっちゅう事故を起こしていたので慣れているのか。

チェルノブイリから学べることがたくさんある。特に事故当時と、将来の政府の対応など。




科学者としてチェルノブイリの事故処理にあたった清算人(リクビダートル)のひとり、ナタリャ・マンズロワが米国のAOLの取材に答えた記事『生き残ったチェルノブイリ事故処理従事者から日本へのメッセージ――「できるだけ早く逃げてください」』の全訳を、TUPのチームメイトの荒井さん訳で掲載します。AOLから再配布の許可は得ていないので取り扱いに注意してください。

リクビダートルのその後については、ドキュメンタリー『汚された大地で 〜チェルノブイリ 20年後の真実〜』をご覧になると、いっそう理解が深まると思います。
http://newsfromsw19.seesaa.net/article/193558472.html?1302596935




生き残ったチェルノブイリ事故処理従事者から日本へのメッセージ
――「できるだけ早く逃げてください」


AOL 2011年3月22日
ダナ・ケネディ

Chernobyl Cleanup Survivor's Message for Japan: 'Run Away as Quickly as Possible'
Aol Mar 22, 2011 – 1:23 PM
http://www.aolnews.com/2011/03/22/chernobyl-cleanup-survivors-message-for-japan-run-away-as-qui/


長期にわたったチェルノブイリの事故処理に直接携わった関係者の中で、生き残っている人は数少ない。ナタリャ・マンズロワはその一人だ。1986年4月、ロシアのオゼルスク原子力発電所の技師だった35歳のマンズロワは、13人の他の科学者とともに、ウクライナ北部にある、破壊され、まだくすぶる発電所 へ赴くように言われた。

世界最悪の原子力災害が大気中に膨大な量の放射能をまきちらし、10万人が強制避難をさせられてから、まだ4日しか経っていなかった。

マンズロワと同僚たちは、現在でも「死の地帯 the dead zone」と呼ばれている場所で、すべての汚染の除去と埋め立てにあたった約80万人の「事故処理班 "cleaners"」「精算人"liquidators"」 に属する。

マンズロワは、4年半にわたって、見捨てられたプリピャチの町の処理にあたった。プリピャチはチェルノブイリ原子炉から2マイル [訳註:1マイルは約1.6キロ] も離れていない。ここには以前、原子力発電所の従業員が住んでいたが、突然退避させられていた。

現在、世界中の放射能犠牲者のために声を上げる59歳のマンズロワは、「チェルノブイリの首飾り」――甲状腺を切除した喉の傷跡――をつけ、さまざまな健康上の問題を抱えている。だが、彼女の話によれば、すでに(彼女以外の)全員が放射線障害で世を去ったチームの同僚や、他の多くの事故処理従事者と違って、彼女は生きている。

AOLニュースはバーモントに滞在しているマンズロワに月曜に電話をかけ、通訳を介して日本の核災害について話を聞いた。マンズロワは今もオゼルスクに住んでいるが、 米国の原子力監視団体「ビヨンド・ニュクリア(核を越えて)」が企画した一週間の啓発ツアーを米国で始めるところだった。

AOL:福島のことを聞いたとき、まずどうお感じになりましたか。

マンズロワ:デジャヴュ(既視感)のようでした。日本の皆さんのこと、特に子どもたちのことが本当に心配です。どんな経験が皆さんを待ち受けているかわかるのです。

AOL:でも福島はチェルノブイリほどひどくはないと専門家は言っています。

マンズロワ:原子力事故はそれぞれ違い、影響を本当に測ることができるのはずっと後です。政府はいつも本当のことを言うわけではありません。もう家に帰ることができない方たちも大勢出るでしょう。そういう方たちの人生は二つに分かれてしまいます。福島の前と後です。自分と子どもの健康の心配が続くでしょう。政府は放射能は大したことはなかったとか健康に害はなかったとか言うでしょう。また失ったものすべてを補償してはくれないでしょう。失ったものは計算できません。

AOL:日本へのメッセージをお願いします。

マンズロワ:できるだけ早く逃げてください。待っていてはだめです。自分で自分を救ってください。政府に頼ってはだめです。政府は嘘をつきますから。政府は皆さんに本当のことを知ってほしくないのです。原子力産業があまりに強力だからです。

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2011年04月09日

<電力の将来>スペインの風力発電、最大の電力源に成長

朝日新聞に掲載されたイギリスの原子力安全性専門家ウォルト・パターソンさん(英国在住のカナダ人科学者)のお話にもあったが、スペインでは風力発電が最大の電力源に成長したことを紹介する記事。


スマートグリッド:
スペインの風力発電、最大の電力源に成長


欧州の沿岸諸国は風力発電の採用に熱心だ。スペインの送電企業REEは、2011年3月、風力発電が原子力や水力を上回り、最大の電力源に成長したと発表した。

2011年04月04日 21時15分 UPDATE
[畑陽一郎,@IT MONOist]
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1104/04/news113.html

 スペインの送電企業であるRed Electrica de Espana(REE)は2011年3月31日、スペインの電力供給に占める風力発電の比率が前年同月比5%増の21%(4738GWh)に達し、月別統計では初めて最大の電力源になったと発表した。REEは政府系企業が1985年に設立したスペイン全土の送電を担う企業。

 スペインは再生可能エネルギーの採用に熱心であり、風力発電(21%)と水力(17.3%)、太陽光(2.6%)の合計が電力供給の4割を超える(図1)。同社は温室効果ガスの排出削減にも熱心であり、2011年3月には、CO2を発電時に発生しない技術によって、電力の57.9%を生み出したという。

図1キャプション スペインの電力供給 2011年3月の値。発電量の大きい順に、風力、原子力、水力、ガス火力(コンバインドサイクル)、コージェネレーションシステム、石炭火力、太陽光が並ぶ。出典:Red Electrica de Espana
(図=円グラフは当該ページにアクセスしてご覧下さい)



同じニュースを報じる4月1日付けのAFPの記事によると、同国の3月の風力発電量は、ポルトガル程度の広さの国の電力消費1月分をまかなえるという。ホセ・ドノソ(Jose Donoso)スペイン風力発電協会会長は、「この歴史的な成果は、風力が自然のクリーンなエネルギー源である上に競争力もつけており、スペインの300万世帯に供給する能力があることを示している」と語ったそうだ。



風力発電が全発電量の20%を超えて、しかも、それはポルトガル規模の国なら100%にあたる量というだけでも大したものだが、なんと過去には、瞬間的にとは言え40%を超えたこともあるそうだ(2008年3月)。Mottainai Lab.のアーカイブからコピペします(無断です)。


風力発電量が40%越え!
ドン・キホーテが生まれた国が、風力発電大国へ

(2008.08.15)
http://mottainai-lab.jp/wakuwaku/2008/08/001668.php

スペインから誕生した物語ドン・キホーテには、風車を巨人と間違えたというエピソードがあり、昔ながらの風車がスペインのシンボルとなってきた。しかし、近い将来、「風力発電の風車」がそのシンボルとなる日がきそうだ。

スペイン風力エネルギー協会(AEE: Asociacion Empresarial Eolica)が3月22日発表したのは「風力発電による発電量が全電力需要の40.8%となり、一時40%の大台を突破していた」というニュース。

40%を越えたのはスペイン全土で強風が吹き荒れ、また電力消費も少なかったことによる一時的な現象だが、スペインは2007年1年間の全発電量の9.5%を風力によってまかなっており、その発電量はドイツについで世界第2位となっている。

風力発電は、今後最も成長が見込めるクリーンエネルギー産業とも目されており、インドや中国でも風力発電産業の成長が目覚しい。スペインには世界第2位の風タービン製造会社ガメサ・エオリカ社など風力発電業界でリーダーシップをとる企業も多くあり、世界有数の風力発電大国なのだ。

日本は風力発電に向く土地が少ないという地理的条件や、設備に対して一定の制限があり、世界の2%弱の発電量を占めるに過ぎない。また、内の全発電量に占める割合は0.001%にも満たないというのが現状。しかしながら、日本の風土にあった風力発電装置の開発も進んでいるようなので、今後の展望に期待しましょう!

●スペイン風力エネルギー協会
http://www.aeeolica.es/
●Photo by boskizzi
http://www.flickr.com/photos/18548550@N00/20688048



上記の記事で日本の風土には合わないと言われている風力発電をはじめ、様々な再生可能エネルギーの実際については<緊急会議 田中優×小林武史 (2) 「新しいエネルギーの未来」>で語られている。この対談をツイートする人がどっさり出てきたら、これへの反論もどっさり出てきたが、なんだかとてもいい眺めだ。

いままでは「CO2を出さないクリーンな電気」と言えば主力は原子力というのが前提で、自然エネルギーについてはほとんど添え物、色物扱いだった。それに比べれば、その可能性について真剣に議論する人がたくさん出てきたのは何倍も喜ばしい。


それにしても「緊急会議 田中優×小林武史」は元気の出る対談なのでぜひ一読を。
緊急会議 田中優×小林武史 (1)今だからこそできる話がある
http://www.eco-reso.jp/feature/love_checkenergy/20110318_4983.php
緊急会議 田中優×小林武史 (1)新しいエネルギーの未来(2)
http://www.eco-reso.jp/feature/love_checkenergy/20110319_4986.php#e_teisei






ラベル:電気 原発震災
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2011年04月08日

<原発震災>福島1号炉では再臨界が始まっているのではないか

福島第一1号炉では再臨界が起きているのではないか

東日本大震災特別番組
京都大学原子炉研究所 小出裕章先生のインタビュー
2011年4月8日金曜日20時30分から30分間

FM797京都三条カフェラジオ Ustream
http://www.ustream.tv/channel/fm797-radiocafe-live-program-from-kyoto

[画像開始30秒ぐらいから番組開始。以下番組を聞きながらのメモ。話された言葉の通りではありません。疑わしいところは必ず聞いて確かめてください。著しい間違いがあればお知らせください。nfsw19]

昨日の地震以来いろいろな動きがあるが、1号機についていまわかっていることは?

小出:1番心配なのは、1号機の格納容器の中の放射線量が昨日から今日にかけて急増したこと。激増と言っていいくらいに急増した。ということは、格納容器の中に大量の放射線物質が流れ込んで来たことを示している。それがどういうことかを考えないといけない。

激増したということは?

小出:2倍か3倍に増えた。

何が推測できますか?

小出:原子炉の中の温度が上がっている。格納容器の中の圧力も上がった。窒素を入れたからということもあるかもしれないが、放射線量が上がり、原子炉の中の温度も上がったということは、原子炉の中で何らかの異常があり、放射能が格納容器の中に吹き出してきたと推測できる。

窒素との関係は?

小出:窒素を入れたことは格納容器の中の圧力には関係があるかもしれないが、原子炉の中の温度の上昇とは関係ないはず。

窒素は水素爆発を防ぐためにいれたんですよね。それはよかった?

小出:そうではない。もともと格納容器の中は本来は窒素だけが入っていた。それが事故により大量の水素が入り、放射能も充満してきた。一時期ベントで外に出したが(間に合わず)建屋で水素爆発を起こした。水素だけならいいが酸素も格納容器の中に蓄積している。水素と窒素だけなら爆発しない。

小出:酸素はどこから来たか。水が放射線にあたり、酸素と水素に分解する。その量だけなら大したことはないと思う。しかし、東電が爆発を心配しているということは、格納容器にどこかから酸素が入ってきているのかもしれない。そうなると酸素を窒素に置き換えないといけない。そこで窒素を入れることにした。

小出:しかし、格納容器の大きさには限りがあるので窒素を入れるといままで入っていたガスを出さないといけない。そのガスとは水素と放射能。それを放出しなければならないところまで追い込まれていると考えられる。いまはまだ保っているが、格納容器の中の圧力があがって来ているのでいずれ出さないといけない。

放出させないともっとたいへんなことになる。放射線量、温度、圧力が高まっている。手当の方法は?

小出:方法はたった一つ、水を入れること。これをずっとやってきたし、これからもやらないといけない。しかし、2号機3号機と違って、残念ながら1号機は水を入れても温度が下がらない。それは再臨界が起きているからではないのかというのが心配。

再臨界というのは?

小出:臨界というのはウランが核分裂をすることを示す言葉。原子力発電は運転中はずっと臨界(核分裂している)。だから、事故があるとまず核分裂を止めなかればいけない。そこで制御棒を原子炉に入れてウランの核分裂反応を止める。今回もウランの核分裂反応は止まったものと推測しているが、原子炉の中には大量の核分裂生成物、放射能がが溜まっている。ウランの核分裂反応は止められたとしても、放射能それ自体が出す熱は止められない。崩壊熱はずっと出続ける。そのために原子炉はどんなときにも水をかけて冷やし続けなければならない。

小出:今回は(冷却装置が壊れてしまったので)水をかけて冷やし続けているが、その間に原子炉が壊れてきてしまっている。壊れてきて、原子炉内部の形が変わってしまった。

小出:原子炉は燃料棒という直径1センチで長さが4メートルの細長い物干し竿が、たくさん林のようにたてて並べてある。その棒の中にウランを瀬戸物に焼き固めたペレットが入っている。止めるときは燃料棒のあいだに制御棒が入って核分裂を止めるのだが、今回の場合は燃料棒そのものがもうぐずぐすに壊れている。1号炉は70%壊れていると東電は言っているのだからつまり形がない。中に入っていた瀬戸物もぼろぼろになってあちこちに崩れている。

小出:形があって制御棒が入ればウランの核分裂反応を止めることができるが、形がなくなっているので核分裂反応を止められない場合が出てくる。そうなると、また核分裂反応が始まって熱が出てくるし、放射能がどんどん出てくる。それを心配している。

テレビに出てきた学者は、臨界できるような状態が整えられたときに臨界は起きるが、崩れたときには臨界しないと言っていましたが?

小出:ウランが崩れてひとかたまりになったときにはむしろ臨界しやすくなる。

臨界が起きて中性子が検出されている?

小出:原子炉の中に中性子を計るものがあるが数値は公表されていない。ひょっとすると壊れていて使えないのかもしれない。外部で検出された中性子は参考にならない。

小出:そこで、温度が下がらないのは再臨界が起きているのではないかと予想。限られた情報の中で合理的に推測するとそうなる。1号機から目を離せない状況。圧力を抜いて爆発しないようにしなければならないが、もし再臨界が起きていたとすれば、もっと濃度の高い放射性物質が外に吹き出してくる。

東電の記者発表では、高い数値について計器がおかしいという話もあったが?

小出:そうであったほしいが、そうでない場合は問題だ。

小出:大気中に高濃度の放射性物質が放出されることになると周りはさらに気をつけなければならない。いままでに沖縄にも広島にも届いている。最悪の事態にはチェルノブイリと同じ規模になる。チェルノブイリの場合は発電所から700キロまで放射線汚染指定区域になった。

小出:拡散データが出るようになったが、データは出すほうはちゃんと出すし、受け取るほうもちゃんと受け取ることがだいじ。東電、政府は混乱を何よりおそれる。パニックにならないようにしようとすると安全です、が先に出て、説明はあと。

海に放出した低レベル放射物は低レベルと言っても少しも低レベルでない。小出先生が普段処理しているものの100倍、1000倍で、それが大量にある。

東京新聞に水棺冷却を検討とあるが何?

小出:初めて聞きました。

いまやらなければいけないことは?

小出:原子炉を冷却する。水を入れなければいけない。水を入れなければいけないが、外部から入れた水は外にださなければいけない。そのために「低レベル」の汚染水を海に捨てている。

小出:再臨界が起きてしまうと、放射能を冷やす程度の水では足りなくなる。しかし、それに失敗すると最悪の事態、水蒸気爆発が起きる。そうなったら、風向きによっては東京も放棄しなければいけない。

小出:かける水の量は増やせるが、急激にたくさんいれると中で蒸気が大量に発生する。そのため、水を入れる量の加減がたいへん。闇雲に水をかければいいというものでもない。臨界は長い時間にわたっては続かない。臨界が始まるとその部分が膨張する。そして止める。また始まるというふうに繰り返し続く。



新論文:「意図しない再臨界」が起こっているのか。
Is Unintended Recricality Ocurring?
ピース・フィロソフィー・センター(カナダ・バンクーバー)ウェブサイト掲載

Friday, April 01, 2011 
http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/04/is-unintended-recricality-ocurring.html


(★翻訳の修正も終わりました。転載していただいて大丈夫です)
(★ダルノキ―ベレス論文を訳していただける方が見つかりました。もうすぐ発表します)

アジア太平洋ジャーナル:ジャパンフォーカスに昨日(3月31日)発表された、モントレー国際問題研究所不拡散研究センターの研究員、フェレンス・ダルノキ―ベレスによる論文の解説文(解説はIEERエネルギー環境研究所所長アージャン・マキジャーニによる)を翻訳し、配布します。この論文は『ネイチャー』誌ウェブサイトにさっそく取りあげられ、アジア太平洋ジャーナル(APJ)のウェブサイトにも今アクセスが集中しています。このピース・フィロソフィー・センターのブログの運営者はアジア太平洋ジャーナルの編集委員も務めており、この論文の解説文を翻訳・発表する経緯となりました。解説文の翻訳については正確を期したつもりですが、英語版が唯一の正式な文書であり、英語版と日本語版の間に意味や解釈に違いが生じた場合は、英語版を優先してください。転送転載は自由ですが、全文が条件、そしてこのサイトへのリンクを明確に記してください。解説の翻訳文に問題がある場合、info@peacephilosophy.com に連絡ください。また、この論文の本文を至急訳してくれる人―物理化学系の方が望ましい―を募集します。その場合もinfo@peacephilosophy.com に連絡ください。また、この論文の内容自体について質問やコメントがある場合は、英語で info@peacephilosophy.com に送ってくれれば著者たちに転送します。その場合は、議論を広く共有するために、質問やコメントもウェブサイト等で公表する可能性があることをご承知ください。日本語でコメントや質問を送っていただいた場合は、受け取りますが、翻訳の人手が足りず、著者に届けるのは現時点では難しいことをご了承ください。

ピース・フィロソフィー・センター

What Caused the High Cl-38 Radioactivity in the Fukushima Daiichi Reactor #1?


福島第一原発の1号機(タービン建屋)に見つかった
高い濃度の放射性塩素38の原因は何か?


F. Dalnoki-Veress with an introduction by Arjun Makhijani
F.ダルノキ―ベレス
解説文 アージュン・マキジャーニ

(掲載誌 アジア太平洋ジャーナル:ジャパンフォーカスによる導入文)
This is a first for The Asia-Pacific Journal: publication of a technical scientific paper addressing critical issues pertaining to the leakage of radioactive water at the Fukushima reactors. Our goal is to make this information available to the Japanese and international scientific communities, to Japanese government authorities, and TEPCO as they address the formidable issues of cleanup and safety. But we also believe that the information is of importance to informed citizens and the press in the face of further dangers that have gone unmentioned not only in government statements, but also in the press. Arjun Makhijani’s introduction provides a lucid explanation of the problem and the issues, followed by F. Dalnoki-Veress’s paper. Asia-Pacific Journal

アジア太平洋ジャーナルは今回初めての試みをした。福島第一原発の原子炉において、高い濃度の放射性物質を含む水が漏れたことに関連する重要な事柄を議論する科学技術論文の掲載である。この論文が、汚染水の除去と作業員の安全確保という大変な課題を扱うものであり、私たちは、日本の、そして世界の科学技術学界、日本政府当局、東京電力にこの論文を提供したいという目的をもって掲載に至った。また、この論文の内容は、政府関係の書類や報道ではまだ触れられていない危険性について論じており、一般市民やメディアにとっても重要であると信ずる。まずアージュン・マキジャーニ博士の解説文によりこの論文の扱う問題を明らかにした後、F・ダルノキ―ベレス博士の論文を紹介する。(アジア太平洋ジャーナル)

解説文(IEERエネルギー環境研究所 所長 アージュン・マキジャーニ)

The presence of highly radioactive water in three turbine buildings at the Fukushima Daiichi nuclear plant is widely understood to be from the damaged fuel rods in the reactors. This has rightly raised concerns because it indicates several problems including extensive fuel damage and leaks in the piping system. Less attention has been paid to the presence of a very short-lived radionuclide, chlorine-38, in the water in the turbine building of Unit 1. The following paper evaluates whether its presence provides evidence of a serious problem – one or more unintended chain reactions (technically: unintended criticalities) – in the reactor. Such chain reactions create bursts of fission products and energy, both of which could cause further damage and aggravate working conditions that are already very difficult.

福島第一原発の3つのタービン建屋(訳者注:1号機から3号機のタービン建屋)の溜まり水の高放射線の原因は、原子炉の炉心が損傷を受けていることであると広く理解されている。これは炉心の損傷が進んでいることと、配管システムに漏れが生じていることをはじめとする数々の問題を示唆しており、懸念が高まるのは当然である。しかし1号機のタービン建屋の溜まり水に、塩素38という短命の放射性核種があることにはあまり関心が注がれていない。この論文は、この物質の存在が深刻な問題、つまり、意図しない連鎖反応が1回か複数回起こっている(技術的には、「意図しない再臨界」といえる)ことの証拠になっているかどうかを検証する。このような連鎖反応は、核分裂生成物とエネルギーの急速な放出をもたらし、その両方が損傷を悪化させ、すでに非常に困難な作業環境をさらに悪化させる可能性がある。

Chlorine-38, which has a half-life of only 37 minutes, is created when stable chlorine-37, which is about one-fourth of the chlorine in salt, absorbs a neutron. Since seawater has been used to cool, there is now a large amount of salt – thousands of kilograms – in all three reactors. Now, if a reactor is truly shut down, there is only one source of neutrons, namely, the spontaneous fission of some heavy metals which are created when the reactor is working and remain present in the reactor fuel. The most important ones are two isotopes of plutonium and two of curium. But if accidental chain reactions are occurring, it means that the efforts to completely shut down the reactor by mixing boron with the seawater have not completely succeeded. Periodic criticalities, or even a single accidental one, would mean that highly radioactive fission and activation products are being (or have been) created at least in Unit 1 since it was shut down. It would also mean that one or more intense bursts of neutrons, which cause heavy radiation damage to people, have occurred and possibly could occur again, unless the mechanism is understood and measures taken to prevent it. Measures would also need to be taken to protect workers and to measure potential neutron and gamma radiation exposure.

塩素38は半減期が37分と短く、天然の塩素に4分の1ほど含まれる塩素37が中性子を吸収するときに作られる。海水が冷却に使われたために、3つの原子炉すべてに何千(何万)キロもの大量の塩がある。原子炉が本当に停止しているのなら、中性子の出所は1つしかないはずだ。それはすなわち、原子炉が稼働しているときにつくられ、炉心の中に存在し続けるいくつかの重金属(訳者注:超ウラン)の自発的な分裂のことである。一番重要なものとして、プルトニウム2つ、キュリウム2つの同位体がある。しかし、もし予想外の連鎖反応が起きているとしたら、ホウ素を混ぜた海水で原子炉を完全に停止しようとする努力は、完全には成功していないということになる。断続的な臨界が起きているとしたら、いや、1回だけ偶発的に起きたにせよ、高い放射能を持つ放射性核分裂生成物と放射化生成物が、原子炉停止後も(少なくとも1号機では)生成され続けている(もしくは生成された)ということを意味している。それはまた、人に多大な放射線被害をもたらす中性子の集中的な発生が、1度かそれ以上起きていたという意味であり、その仕組みがわかり、もう起こらないような予防策が取られない限り、さらに起こる可能性があるということである。作業員を安全を確保し、発生している可能性がある中性子とガンマ線被ばくを測定するための対策を取るべきである。

This paper examines whether spontaneous fission alone could be responsible for the chlorine-38 found in the water of the turbine building of Unit 1. If that could be the only explanation, there would be less to be concerned about. However, the analysis indicates that it is quite unlikely that spontaneous fission is the sole or even the main explanation for the measured concentration of chlorine-38. Presuming the reported measurements are correct, this leaves only one other explanation – one or more unintended chain reactions. This paper is presented in the spirit of encouraging discussion of whether further safety measures might be needed, and whether supplementary measures to bring the reactors under control should be considered. It is also presented as a preliminary analysis for scientific discussion of a terrible and technically challenging nuclear crisis at the Fukushima Daiichi plant.

この論文での分析結果は、1号機の溜まり水から検出された塩素38の原因として考えられるのは自発的な核分裂だけなのかということである。それしか説明として考えられいのであれば、それほど心配することではない。しかし、この論文の分析では、計測された塩素38の濃度は、自発的な核分裂が唯一の原因であるどころか、主要な原因でさえない可能性が高いということを示唆する。報告されている計測値が正確であると仮定すると、残された可能性は一つしかないことになる。それは、1回かそれ以上の連鎖反応である。この論文は、安全策のさらなる強化が必要なのか、また、原子炉を安定させるための追加策が必要なのかという問題意識のもとで提示している。また、福島第一原発における、悲惨で、技術的にも困難な核の危機の、科学的議論の予備的分析を提供するものである。

(解説文 以上)
(フェレンス・ダルノキ―ベレス論文の本文は、まだ翻訳されていません。アジア太平洋ジャーナルのウェブサイトでご覧ください。)
リンク: http://www.japanfocus.org/-Arjun-Makhijani/3509


解説者・著者紹介

アージュン・マキジャーニ
エネルギー環境研究所所長。カリフォルニア大学バークレー校工学博士(専攻は核融合)。過去20年間、核兵器製造、実験、核廃棄物等、核燃料サイクルの分野で多くの研究業績と論文がある。著書のCarbon-Free and Nuclear Free: A Roadmap for U.S. Energy Policy (『CO2と核からの脱却:米国エネルギー政策のロードマップ』)では、化石燃料や核エネルギーに一切依存せず、米国経済を完全に再生可能エネルギーに移行させる初めての分析を行った。Nuclear Wastelands(『核廃棄物の土地』)のの共編者、Mending the Ozone Hole (『オゾン層の穴を治す』)の主著者でもある。メールアドレス: arjun@ieer.org 

フェレンス・ダルノキ―ベレス
モントレー国際問題研究所、ジェームズ・マーティン不拡散センターの研究員。核軍縮・廃絶と核分裂物質の世界的拡散についての専門家である。カナダ・カールトン大学で高エネルギー物理学の博士号取得(超低レベル放射線バックグラウンド測定器の研究)メールアドレス:ferenc.dalnoki@miis.edu 電話番号:831-647-4638.

著者注:この論文を注意深くレビューしてくれた、モントレー国際問題研究所不拡散センターのパトリシア・ルイス博士、IEERのアージュン・マキジャーニ博士に感謝する。ルイス博士の連絡先: patricia.lewis@miis.edu 

(Translation by Satoko Norimatsu)



ラベル:原発震災
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2011年04月05日

リアム・ギャラガーが主催してロンドンで地震津波チャリティコンサート

出がけなので一読の記憶に頼って書きます。間違いがあればあとで訂正するかもしれません。

4月3日日曜日、ロンドンのブリクストン・アカデミーで日本の地震&津波被災者を支援するチャリティコンサートがあった。このイベントをオーガナイズしたのは元オアシスのリアム・ギャラガー。素行の悪さで有名な不良中年には、このような「ボブ・ゲルドフ型チャリティイベント」の主催者はおよそ似つかわしくないが(と新聞には書かれてました)、ギャラガーは地震と津波の被害に心を揺さぶられ、支援したいと強く希望して仲間に声をかけたそうだ。

5時間にわたるコンサートにギャラガーは自身の新しいバンド、ビーディ・アイ(Beady Eye)を率いて出演、ほかにポール・ウェラー、プライマル・スクリームなどブリティッシュロックの精鋭が集まった。このような顔合わせはグラストンベリーあたりでなければ見られない。

出演者は自分の最近の仕事を見せたいという欲を捨て、5000人のオーディエンスを楽しませることに傾注した。例えばポール・ウェラーはジャム時代の曲も歌い、出演者の何人かは日本で人気のあるビートルズの曲を演奏した。

このイベントで集めた入場料15万ポンドは英国赤十を通じて日本赤十字に寄付される。とは言え、会場で日本の被災地の様子が見せられる事もなく、日本の災害とは多少遠い感じがしたとこの批評家は注文をつけている。

新聞ではこの他に日本赤十字の現地での働きなど書かれてましたがウェブ記事はコンサートのレビューに重きがおかれてます(アート欄なので)。ウェブ掲載は5日付けですが新聞掲載は昨日4日。


Japan Disaster Benefit, Brixton Academy, London

Tuesday, 5 April 2011 The Independent
http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/music/reviews/japan-disaster-benefit-brixton-academy-london-2262383.html

Reviewed by Enjoli Liston

Boasting a line-up more suited to the Glastonbury main stage than the Brixton Academy, Liam Gallagher, Paul Weller and Primal Scream were among the cream of British rock acts who performed a one-off gig in aid of relief efforts for victims of the Japan earthquake and tsunami.

Gallagher, the event's organiser, headlined the show with his new band, Beady Eye, and the five-hour concert also included sets from Kelly Jones of the Stereophonics, Richard Ashcroft and The Coral.

Ambitions to promote new material were put aside as all bands played crowd-pleasers to the capacity 5,000 crowd. Paul Weller's set featured several Jam songs, with old favourites such as "The Eton Rifles" mixed with the title track of his latest album, Wake Up the Nation.

Several of the bands played Beatles covers as those songs still have massive appeal in Japan. The Coral, who kicked off the show, found a particularly warm reception for their cover of "Ticket to Ride". Surprisingly, the only sombre moment came during singer-songwriter Richard Ashcroft's set as he performed The Verve's "Bitter Sweet Symphony".

Japan was mentioned relatively infrequently and none of the harrowing images from Japan that prompted Gallagher to gather his band of friends together were shown. This gave the gig a sense of detachment from the harsh realities facing people in Japan now.

The £150,000 raised here will go towards providing aid and healthcare for those affected by the disaster – and the feeling of goodwill in the crowd was noticeable, although that didn't stop grumblings among some fans that Gallagher's new band are not yet heavyweight enough to warrant a headline slot among an A-list of British rockers. These grumblings were soon quashed in characteristic Gallagher style, however, as numbers such as "Bring the Light" and "Kill for a Dream" showed the band's mettle. Soaring guitar riffs and bashing drums underlined Gallagher's infamous drawl, much to the delight of the crowd, who had clearly saved their biggest cheers for the last act.

ラベル:原発震災 music
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2011年03月31日

直チニハ健康ニ影響ナイ、影響出るのは10年後?20年後?30年後?

汚された大地で 〜チェルノブイリ 20年後の真実〜

いまから見ます。見ながらメモとってあとでアップします。
見ました。内容について簡単な箇条書きをつけました。時間がないときは興味のあるパートだけでもご覧ください。画面上部の数字は視聴所要時間です。「削除される可能性があるので早めの視聴をお勧めします」とのことです。

ドキュメンタリーは、チェルノブイリ原発事故に関するIAEAの調査報告について何度も言及し、IAEAが放射能と病気(各種ガン)の因果関係を認めたがならいことに対して疑問を突きつけています。IAEAに関しては、当ブログの
<チェルノブイリ事故処理専門家が証すIAEAの正体>
ぜひお読み下さい。



汚された大地で 〜チェルノブイリ 20年後の真実〜 1_5.avi 9'31
http://www.youtube.com/watch?v=PHeq8TfSRBM&feature



1986年4月26日、ソ連のチェルノブイリ原子力発電所で4号炉が爆発。
爆発直後から数年間にわたって事故処理にあたった60万人を
リクビダートル(後始末をする人)と呼ぶ。
20年後の今(放送時、2006年?)、ロシア全土に住まうリクビダートルにガンが多発。
事故当時、放射性物質は600キロにわたって飛び散り500万人が被曝。
汚染された地域はいまだに放射能の除去が行われておらず、
放射性物質は放射能を出し続けている。
チェルノブイリ原発から南へ120キロのキエフにある
リクビダートルのためのアパート。
リクビダートルとその家族あわせて4万人が入居したが
その数はいまでは2万人までに半減。
ガンが多発し、50歳前に死んでしまう人が多い。
事故当日50レントゲンを被曝後、
リクビダートルの放射線量を量る仕事に9年間就いていた男性。
その間、低線量被曝が続き、65歳で胃がんを宣告される。
英雄として国から勲章と保障をもらったが大事な健康を手放していまったと語る。


2_5.avi 9'14
http://www.youtube.com/watch?v=8hXmoNuJHKs&feature



ソ連が崩壊し、リクビダートルは
ウクライナやベラルーシ、ロシア各地に分かれてすむことに。
住まい、高額の年金、一生の医療保障は各国に引き継がれたが
それぞれの国の国庫に金がなく約束は実施されていない。
胃がんの元リクビダートル、被災地に住んでいた妻も子宮ガンを宣告された。
しかし、自分の手術で貯金を使い果たしてしまい、妻の治療ができない。
広島でガンが増えたのは原爆投下後20年後。
ウクライナに居住するリクビダートル20万人追跡調査によると
2000年までのガン発生率は一般の3倍。
2000年以降は予算がなく調査は行われていない(増加していると予想)。
しかし、IAEAは放射線とガンの因果関係を限定的にしか認めない。
IAEA委員長エルバラダイ(当時)は
「チェルノブイリ事故の死亡者が何万、何十万人にものぼるという誤った情報が
事態を悪化させ、原発への不信をかきたてている」と語った。
ガンによる死亡は放射線の影響というより
医療の不備や貧困、タバコ、飲酒が原因とIAEAは結論づけた。
IAEAによる2005年チェルノブイリ報告書によると、
死亡したリクビダートルのうち、放射線に由来するのは50人。
チェルノブイリ原発の爆発事故で飛び出した放射性物質は40種以上。



3_5.avi 8'57
http://www.youtube.com/watch?v=Fgx1mcUgHnA&feature



チェルノブイリから400キロ離れたブレスト市(ベラルーシ)で
中年女性の甲状腺ガンが急増。
日本人医師が検査したところ、3日間で52人検査し、7人から甲状腺ガンを発見。
チェルノブイリ事故後、5年で小児甲状腺ガンが急増。
その後、数のうえでは小児甲状腺ガンの発症は下火になったが、
実際はその子どもが成人して今度は成人のガンが増加している。
白血病も増加している。
放射能の除去が行われていないので低線量被曝がずっと続いている。


4_5.avi 9'56
http://www.youtube.com/watch?v=BiFTMaApEpw&feature



セシウムの半減期は300年(タイプミス、30年)、
除去しないと放射線を出し続けて低線量被曝の原因になる。
低線量でも長期間被曝すればガンになる(原発労働者に多い)。
これはIAEAの報告書には取り込まれていない。
ベラルーシでは多くの人が汚染された野菜を買って食べたのが
病気の原因になっている。


5_5.avi 11'14
http://www.youtube.com/watch?v=ZK7T6BDiB1c&feature



放射能の影響によって先天性の病気をもつ子どもは事故以前の2倍になった。
IAEAは放射能と病気の因果関係を認めない。
報告書を発表後、医者などからクレームがたくさんあり、記述が改められた。
訂正後の記述は「放射能の影響によるガンなどの死亡者は推定不可能」。

posted by nfsw19 at 21:30| ロンドン ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | 記事&番組クリップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

フクシマ・フィフティの顔と声ーー恐怖と背中合わせの勇気

*表題の記事は2011年3月31日付けのものですが、朝日新聞で福島第一原発の吉田所長(故人)の調書の連載が始まって以来「フクシマ・フィフティ」の検索によりアクセスが増加。朝日の連載記事とあわせて読むと興味深いと思われるのでしばらくこのあたりに置いておき、いずれ元の位置に戻します。リンクが切れているものもありますがそのままにしてあります。(2014.05.21 nfsw19)
*オリジナルの日付に戻しました。(2014.06.15 nfsw19)

英国在住の友人、神宮ぴーまんさん(仮名、当然ですね)が、2011年3月27日付けテレグラフ紙日曜版に掲載された「フクシマ・フィフティ(福島の50人)」のインタビュー記事を全訳して自身のブログ「エゲレスよろずNews@UK」にアップしてくださったので、本人の許可を得て転載する。当該記事を読む前に、まず日本ではかれらのことがどのように報じられていたかを記録として残しておく。

外国の記者に話すときと、日本の記者やテレビカメラの前で話すときは、当然のことながら使う言葉も話す内容も変わってくるだろう。しかし、それは聞く側の態度にも大きく影響されるのではないかと両者を読み比べて思った。



2011年4月8日、新聞記事2本とネットメディア記事1本を追加。


***

見えない「敵」、暗闇、怒声…
ハイパーレスキュー隊員が見た放水の現場


2011.3.22 20:34 MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110322/dst11032220410050-n1.htm

 歴戦の“勇士”たちは冷静に、前向きに「災害」へ立ち向かった。福島第1原発事故で、放射能漏れを起こす3号機への放水活動に従事した東京消防庁ハイパーレスキュー隊の福留一彦消防司令補(44)と國澤健一消防司令補(41)が22日、産経新聞の単独取材に応じた。「再び指令が下れば迷わず飛び込む」。2人は険しい表情で現場の惨状を振り返りながらも、そう力を込めた。(中村昌史)

 18日午後11時ごろ。原発に到着した2人が目の当たりにしたのは、無残に破壊され尽くした施設の不気味な姿だった。津波や爆発などで散乱したがれき。建屋が吹き飛んだ1号機と3号機は、鉄骨の骨組みがむき出しになっていた。

 「文字通りの真っ暗闇。静寂の中で、隊員の怒声だけが響いていた」

 放射能という見えない敵への恐怖心に加え、がれきの山が隊員の行く手を阻んだ。

 本来は車両で引き延ばすはずだったホース。爆発で散乱したがれきで車が通れず、隊員が4人1組で約100キロのホースを担ぎ、暗闇の中を駆け抜けた。福留消防司令補が目をこらすと、通り道のマンホールのふたが吹き飛び、口を開けていた。海水をくみ上げるポンプを設置した國澤消防司令補。海に面した岸壁はボロボロで、今にも崩れ落ちそうになっていた。

 「一瞬の判断ミスが命取りになる」。シミュレーションを繰り返して乗り込んだはずの現場は“想定外”の連続だったが、隊員同士の励ましが心を支えた。

 放射線量を測定し、隊員に被曝(ひばく)の状況を逐一伝えた隊員。原発建屋の数メートルまで接近して、放水塔を準備した隊員。防護服やマスクで声はまともに届かないが、「まだ大丈夫。がんばれ」と互いに声をからした。

 被曝の恐れから時計を外して作業にあたったため、時間の感覚は吹き飛んだ。「物すごい早さで時が進んだ。すべてがあっという間の出来事だった」(福留消防司令補)という。

 そして、恐怖と苦難が吹き飛ぶ瞬間が訪れる。「いい水が出てるぞ」。19日未明、放水塔から放たれた水が白煙を上げる3号機にかかった瞬間、現場には隊員の大歓声が響き渡った。

 無事に帰還した2人だが、家族には多くを語らなかった。

 「カミさんも『お疲れさまでした』とだけ声をかけてくれた。消防官の妻は、みんなそんなものです」。國澤消防司令補は、静かにほほえんだ。

 「支えてくれた仲間や上司、家族に感謝します。そして、現場で今も奮闘している自衛官、警察官、東京電力のみなさまのことを忘れないでほしい」。2人は声を合わせるように語った。

***

2011年3月27日付けテレグラフ紙に掲載された「フクシマ・フィフティ」のインタビュー記事を神宮ぴーまんさんのブログから許可を得て転載します。行替えと句読点と訳の一部を許可を得て変更しました。



日本の津波:フクシマ・フィフティ初インタビュー
Japan tsunami: Fukushima Fifty, the first interview

独占:フクシマ・フィフティが語った
日本の核危機に取り組む緊急チーム「フクシマ・フィフティ」の
メンバーが語る危険と恐怖

Exclusive: in their own words, members of the Fukushima Fifty - the emergency crew tackling Japan’s nuclear crisis - tell of the dangers and fears they face

2011年3月27日 サンデイ・テレグラフ [*編註1]
アンドリュー・ギリガン、ロバート・メンディック [*編註2}
By Andrew Gilligan and Robert Mendick 7:00AM BST 27 Mar 2011
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/asia/japan/8408863/Japan-tsunami-Fukushima-Fifty-the-first-interview.html

telegraph p1-2.jpg

(写真キャプション)

Akira Tamura (たむらあきら氏)
予想と異なり順調に進行しておらず,それが懸念となっています。

Nobuhide Suzuki (すずきのぶひで氏)
隊員達は不安になり,現場は,かなり緊迫しています。重責が肩にのしかかっていると感じています。

***

同じような形の灰色のフード付きジャージの上着と茶色の運動ズボンを着用し、放射線で汚染された私服を透明なビニール袋に入れて持ちながら、彼らは放射線値測定検査のために並んでいる。無精髭がはえ、目の下に黒いくまを作り、どっと疲れた表情で疲労困憊した様子の人も何人かいる。彼らがどこから来て、ほんの数時間後には、またその場所に戻らなければならないと考えれば無理もないことだ。

国家を核危機から救うために自らの命をなげうった必要最小限に絞られたチーム、「福島の50人(フクシマ・フィフティ Fukushima 50)」の驚異的な勇気は世界中をくぎ付けにした。フクシマ・フィフティは実際には数百人いて、シフトとローテーションで勤務しているのだが、彼らはスポットライトの真ん中にいながら、影の英雄として暗闇の中にいた。今までは……。

放射線もれを続ける原子力発電所のそばの廃港に、また、東京郊外の消防署に、サンデイ・テレグラフ紙(The Sunday Telegraph)は彼らを追跡取材した初の新聞となった。彼らは、顔の無い無名のスーパーマン達から、名前も家族もある現実の懼れる人々に変わった。狭く暗い場所でのぞっとするような仕事についての懸念、愛する人々の心配、そして決してあきらめないという決心について語ってくれた。

「そこは真っ暗でした」。東京消防庁ハイパーレスキュー隊から隊員を率い、溶融をはじめた第三号機に赴いたカズヒコ・フクドメ(Kazuhiko Fukudome 福留一彦消防司令補)隊長は語った。「真夜中で、たよれるのは自分達のヘルメットの灯りだけ。原子炉から煙や蒸気が立ち上げっているのが見えました。全ての策が失敗したために、海水をくみあげて冷却するようにと私達が呼び出されたのです。私は東京都に勤めるもので国家公務員でさえありません。政府は切羽詰まっていた。最後の手段だったんでしょう」

ハイパーレスキュー隊の最も危険な任務は夜11時の電話で始まった。「家にいました」。福留氏は語る。「非常に手短な電話でした。隊員を募って福島に行ってくれとだけ言うと電話は切れました。妻を振り返り、『福島に行くことになった』というと、妻はショックを受けた表情をしましたが、すぐに落ち着いた顔をとりもどし、『気をつけてね』と言いました。気丈な様子を示すことが私のためになるとわかっていたからです」

福留氏の頭には「行かない」という考えは全く浮かばなかった。しかし、様々な懸念はあった。「発電所までの道のりは、みな静かでした。みな心配していたのです。私達の任務のほとんどは普段から訓練しているものですが、これは目に見えない敵であり、非常に懸念されたのです」

危惧は現実となった。

午前2時に発電所に到着すると隊員は3組に分かれた。はしご消防車の1台が海岸ぎりぎりまで近づいて必要な水をくみ上げ、もう1台が原子炉建物の2m以内にまで近づいて実際に水をまき、3台目が、その間で1キロ近くに及ぶ黄色いホースをつなぐ役目をはたすことになっていた。

「予想より遥かに悪い事態でした。あたりは瓦礫の山でした」。福留氏は語る。「壊れたコンクリートの塊が散乱し、マンホールの蓋は、何故か全て吹き飛んで口を開けており、道は通れない状況になっていました。海まで運転していってホースを海から出すことは不可能だったので、完全な暗闇の中、ホースを抱えて、1キロ近くの距離を走らなければいけませんでした」

「お互いに『もうちょっとだぞ。続けろ。ホースをもうちょっと遠くまで引っ張れ』等と呼びかけ合いました」。福留氏は言う。「防毒マスクをかぶっていたので、本当に大声を出さなければなりませんでした。お互いに怒鳴り合っていたのです。ホースから水が出て原子炉にかかった時、みな、やった!と叫びながら、こぶしを天に突き上げました。そしてホースが自動的に作動するようになったので、みな少し下がることができました」

防毒マスクは別として、隊員達はバーナード犬のイラストの腕章がついたオレンジ色のユニフォームしか着ていなかった。「放射線が、どれだけのレベルかわかっていなかったのです。みな、今の私と同じ格好をしていました」。「オーバーオールの上に薄手の白い上下、さらにその上にユニフォームのコート、その白い服の他には何も着ていなかったのです」

放射線汚染されたかという質問に「ええ」と答えたが、特に心配しているようには見えなかった。「私達は26時間現場にいましたが、休憩所に戻ると検査を受けました。私の服にも靴下にも放射線汚染が見られ、没収されました。徹底的に洗って、また計測すると完全にクリアにはなっていませんでしたが、最低値は満たしていましたので、もう行ってもよいといわれました」。大丈夫でしょうか、との質問に、氏は笑いながら「はい」と答えた。「いや、これはちょっとおかしく聞こえるかもしれませんが、大丈夫だろうと思ってますよ。着ていた服は影響を受けているでしょうが、体は大丈夫だと思います」

多くのフクシマ・フィフティ隊員達の休憩所となったのは、奇妙な事に、ホノルルでの練習生訓練から、別の意味での「熱い」任地に送られた美しい大型帆船、海王丸だった。原発より数マイル [訳註:1マイルは約1.6キロ] 下がった沿岸にある津波の襲撃を受けた小名浜港では、船が波止場に打ち上げられ,クレーンは20度の角度で曲げられ、電気も水洗設備も止まっていた。しかし、海王丸は比較的被害の少ない桟橋に止められ、自家発電機、水、そして、元々ハワイでの訓練の練習生達のための必需品が積まれていた。

雑然とした中、ビニールで覆われたテーブルに押し寄せ合って座りながら、フクシマ・フィフティチームの数人はカレーを食べていた。数日ぶりの温かい食事だ。デッキの横には、温かいシャワーも本物のシーツをかけた二段ベッドもあった。日本では大人の読み物である漫画や、新聞を置いたリラックス用の部屋もあった。

しかし、誰もリラックスなどしていない。疲労と懸念で押しつぶされそうになった作業員は沈黙したまま座っている。「みなさん,静かです」。海王丸のトヤ・ススム(Susumu Toya 外谷進一等航海士)船長は言う。「食事中はどなたも喋りません」。ビールを勧めてもみな断る。話を聞くと、暗闇、そして恐怖が、何度も何度も出てくるのであった。

***

「火曜日に発電所の電力が回復したのは嬉しかった。真っ暗な状況で作業を進めるのは大変で、不安感が非常に強かった」と、白いコンバースのスニーカーを履いた岩手県のタムラ・アキラ(Akira Tamura 田村)氏は言う。「修理をするケーブルの一部は非常に高いところにあり、任務の遂行は想像していたほどスムーズには行かず、それがまた不安要因になった」。田村氏は大げさな表現は避け、そう言うに止めた。

消防士達と同じく、電気技術者は最低限の防備服しか着ていなかった。ガスマスクはつけていたが、全身を覆う裏地に鉛を用いた「(英国で)ノディ・スーツ」と呼ばれる防備服を着ていたのはほんの数人の、現場にほとんど居つめなくてはならなかい上司達だけ。全員の分がなかったからだ。

大多数が着ていたのは、タイベックという不織布でできた使い捨ての白いオーバーオールだけ。英国で、スプレー塗装や、工場などの専門的清掃をする作業員などが着るタイプの服である。この作業服は放射線で汚染された物質が直接体に付くのは防げるが、被曝自体は防げない。どの服も、付いた放射線汚染物質の蓄積を防ぐため、一度着たら廃棄される。発電所には、何百もの廃棄された白い作業服が積み重なっていると作業員は言う。

彼らを守っているのは二つのバッジである。被曝値をチェックし、危険なレベルに達すると警報を発するようになっている。「最も問題な(被曝量の多い)現場にとどまる時間が、それほどは長くないのが救いですが……」。匿名を希望する男性が言った。「問題の現場にずっとい続けるわけでなければ、放射線汚染物質の蓄積は問題ないと聞いています」

作業員達は真実だと言われたことを信じるしかない。しかし、それが真実か否かへの疑惑が日々深まっている。

記者が取材をした日、作業員のうち二人が、第三原子炉の冷却プール付近を歩いている時に放射線で汚染された水が長靴の上から入り込み、被曝による足の熱傷で病院に運ばれた。一緒にいたもうひとりの作業員は長靴が二人よりも長かったので助かった。

その放射線で汚染された水の放射能レベルは驚異的に高く、2〜6シーベルト、正常値の1万倍。つまり、最高値の場合、作業員に許されている一年間の被曝量の24倍にもなる。もし、その汚染水が、どんな方法であれ、体内に吸収されていたら、二人の作業員は確実に死亡していたであろう。

しかし、これは、現場にとって非常に深刻な発見である。それは第三原子炉の中心部から汚染水が漏れている事を示すだからだ。日本の菅直人首相は、昨日(3月26日)、原発の状況はいまだ「不安定」だと認め、原発近辺20〜30km域からの「自主的避難」を促した。海王丸が停泊している波止場もその域内にある。

原子炉を冷却する戦いの後には、原発の機能をコントロールするために、一秒でも早く電力を回復する任務が中心となる。その戦いの中心に携わっている田村氏は、作業員全員が原発内の地べたに寝ている、と語り始めた。「シフトのようなものはありません。24時間待機し、作業しています」。「今は(この休憩所に)シャワーを浴びるためだけに来ましたが、明日はまた戻ります。被曝値を最小限にとどめるために、1時間現場で働いたら2時間現場を離れるようにしています。この仕事に携わる作業員は当初10人だけでしたが、今は30人に増えたので、(休憩所に来て)食事をする時間ができました。

作業員達は、吹き上げる熱気と放射線を含む蒸気とも戦っている。現場には現在数百人の作業員がいるが、この任務に必要な専門的な配電技術を持っているのは、ごく少数である。そして、原発の外にいる一般市民たちは、現場の状況が改善されているとの印象を抱いているようだが、作業員達自身は(この戦いに)打ち勝ったという自信を持っているようには見えない。

配電作業員隊のリーダー、スズキ・ノブヒデ(Nobuhide Suzuki 鈴木)氏)は語る。「隊員達は非常に不安になっている。現場はかなり緊迫しているが、任務を続けるしかない。みな,世界中が注目している事を知っており、任務遂行への重責が肩にのしかかっていると感じている。また、人々の支援から大きな力をいただいている。応援によって、私達は孤立していないと感じている」

作業員達の話を聞いた人々からのメッセージは届いているかと聞くと、「今、頭の中にあるのは、とにかく続けていけるようにということだけだ」と鈴木氏は答えた。「私達は毎日、戦っています。どうか私達を応援してください」

福島原発の大部分はいまだに放射線汚染がひどく、作業員が一定以上の時間、とどまる事はできない状況にある。現場から離れる2時間と、放射線レベルが急上昇した緊急時、作業員は原発コンビナートの中心にある「避難所」ーー昨年7月に建てられた2階建て耐震設計のビルに退陣する。ここで、作業員達はガスマスクをとり、最小限の食事ーーカップヌードルとボトル飲料水を、地べたに座り、コンクリートの壁によりかかりながら食べる。最も責任の重い役職、原発運営者や所長など重役達を含む50名が、ほぼずっと原発建屋内に寝泊まりしている。再建任務運営本部は未だ汚染の重篤なコントロール室ではなく「緊急業務室」に設けられている。

田村氏達は、原発内の緊張の日々を生々しく語ってくれた。「怖いです。常に恐怖感があります」。32歳の作業員が匿名で語った。「でも、重要な、遂行しなくてはならない任務という意識に駆り立てられて働いています」

作業員達は、地震が原発を切り裂いた直後、主要電力を破壊した時の様子を語ってくれた。ドーンと、ぞっとする爆発音が、当時いた第4原子炉のサプレッション(圧力抑制)室まで届き、アスファルトと建物の横にひびが入り始めた。みな、津波が来て大惨事を引き起こす前に脱出した。状況が悪化する中、3月14日の最初の爆発は、陸上自衛隊中央特殊武器防護隊が2台に分かれて到着した瞬間に起こった。6名の隊員が飛び散るコンクリートの下敷きになり命を落とした。

海王丸の隊員達は、この救助活動任務に就いて以降、誰も家族と面会していない。「一つだけ望みが叶えられるのなら家内と両親に会いたい」と、田村氏は語る。「eメールを送ることができたが、本当に心配していると返信があった」。「家族とコンタクトが取れたのは一度だけ、電話で話しました。子ども達は応援していると言ってくれましたが、家内は傷心のあまり、ほとんど言葉になりませんでした」

田村一家、鈴木一家を始めとする海王丸のチームのほとんどの家庭は、一時的に夫がいないだけではなく、住む家も失ってしまった。家族達は現在、避難所にいる。もし津波で家がさらわれたのでなければ、原発避難地域に家があったためだ。そして、しばらくは、この避難所生活が続くのである。

勇気とは恐れを感じないことではない[*編註3] 。たとえ恐怖を抱いたとしても前進すること。その観点からみて、この男たちは間違いなくたいへん勇敢だ。しかし、自尊心と仕事への責務とを除けば、彼らがその持ち場にとどまる理由はもしかすると他にもあるかもしれない。かれらには他に行くところがないのだ。(了)



[*編註1] サンデイ・テレグラフ

テレグラフ紙はイギリスの高級紙の中では最も発行部数の多い、どちらかと言えば右派に属する硬派の新聞だ(日曜紙だけだとサンデイタイムス紙のほうが少し多い)。読者の年齢層が高く、保守的。イギリスの高級紙は過去数年のあいだにみな衣替えし、いまではみなコンパクトなサイズになっているのにテレグラフだけは昔ながらのブロードシート版(日本の高級紙のサイズ)で発行しており、レイアウトもまったく垢抜けない。

テレグラフの特徴は軍関係に読者が多いこと。そのため、高級紙だが必ずしもターゲットがミドルクラス以上ということもなく、様々な階層の人が読んでいる。軍事情報についてはもっとも信頼できると言われている。公務に就く人間の「無私の行い」への評価が高いのは、軍人が読者であるという点も関係しているかもしれない。

[*編註2} アンドリュー・ギリガン

取材した2人の記者のうちのひとり、アンドリュー・ギリガンは元BBCの記者。イギリスのイラク戦争参戦への決定要因のひとつとなったと言われる「フセインは45分間でイギリスに向けて最終兵器を積んだミサイルを発射できる」という情報が、事実に「色をつけた」不正確な情報だったとBBCラジオで暴露し、ブレア政府(のスピンドクターのアレステア・キャンベル)とBBCのあいだに真偽争いのもとを作った。ここから派生した問題により、ギリガン記者とかれを擁護したグレッグ・ダイクBBC事務総長が責任を取らされて辞任した。

この件に興味のあるかたは以下の論考を読まれると理解が深まると思います。
森田浩之のロンドン通信 2003.8.14「ブレア政権vsBBC」

検索で偶然見つけましたがたいへん興味深い記事です。特に最後の節(BBCの今後)の中の最後の2行。「BBCが政府と対立するような問題を起こしても信用失墜しない理由」として、筆者は以下の2点をあげています。
(1) メディア内にも競争が必要。
(2) 生え抜きだけを大切にする限り、ジャーナリストの独立心は育たない。
ちょうどいまのいま、東電擁護の横並びから脱却のきざしが見え始めた日本のマスメディアに最も欠けているものかも。

それにしても、この論考に登場するジャーナリストたち(ギリガン、ダイク、キャンベル)がいまだ第一線でばりばり活躍していることと、当時ダメダメと言われていた保守党党首IDS(イアン・ダンカン・スミス)がいまでは内閣の一員であることなど、なんとなしに感慨深いです。

[*編註3] 勇気とは恐れを感じないことではない。

ビートニクのアメリカ作家、アンブローズ・レッドムーン(Ambrose Redmoon)の文章のなかで最もよく引用される一説。全文は「Courage is not the absence of fear, but rather the judgement that something else is more important than fear.(勇気とは怖れを感じないことではなく、怖れることより重要な何かがあるという判断だ)」


Japan tsunami: Fukushima Fifty, the first interview

Exclusive: in their own words, members of the Fukushima Fifty - the emergency crew tackling Japan’s nuclear crisis - tell of the dangers and fears they face

By Andrew Gilligan and Robert Mendick 7:00AM BST 27 Mar 2011
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/asia/japan/8408863/Japan-tsunami-Fukushima-Fifty-the-first-interview.html


翻訳原稿は神宮ぴーまんさんのブログ「エゲレスよろずNews@UK」よりお借りしました。他の写真は下記のページでご覧下さい。
http://ameblo.jp/xinwen/entry-10842926493.html
http://ameblo.jp/xinwen/entry-10843484183.html
http://ameblo.jp/xinwen/entry-10843496049.html

マルチリンガル(英独中日)のぴーまんさんのブログには興味深い翻訳記事がいろいろあります。ご訪問ください。
http://ameblo.jp/xinwen/

***

記録として映像も取り込んでおきます。

福島第一原発 東京消防庁記者会20日 精鋭部隊139人3隊
http://www.youtube.com/watch?v=AliSwOvAwAs&feature



***

マスメディア外のジャーナリストの代表として森住さんの記事も取り込んでおきます。

「森住卓のフォトブログ」
http://mphoto.sblo.jp/

東電作業員へのインタビュー
http://mphoto.sblo.jp/article/43881965.html

2011年03月17日 福島第一原発作業員へのインタビュー

3月16日
福島第一原発のある大熊町の人々は現在いくつかの避難所に避難している。その中の一つで、大熊町在住で福島第一原発のメンテナンスをしている人にインタビューを行った。(匿名で後姿だけ撮影、音声を変えることを条件にインタビューに応じて下さった。)

「地震発生時には施設内にいましたが、発生後すぐに屋外に出ました。その後、施設内の事務所に全員集まり、私は自宅待機を言い渡されました。避難指示後、家族とここに避難してきました。

もし招集がかかれば私も当然行きます。それが私の仕事ですから。その時は最悪の事態も覚悟しています。現在、施設内では千人から数百人が決死の覚悟で作業をしています。今後、この原発事故をどう収拾させることができるかは誰にもわかりません。最悪の事態も考えられます。炉心溶融も考えに入れておかなければならないと思います。」

現在は地元出身者以外で作業をしているとのこと。彼らの決死の作業に数百万の命がかかっている。彼らは、これまで安全だと言い続けてきた政府や電力会社の尻拭いをさせられている。



[参考] 翻訳記事:
福島原発:
被ばく量の限界で作業員交代−東電は人員増強を急ぐ


更新日時: 2011/03/18 08:17 JST ブルームバーグ

3月18日(ブルームバーグ):東日本大震災で被災した福島第一原子力発電所で危機的状況が続く中、東京電力は核燃料が溶け出す事態を回避するため前線に送る作業員を増やしている。ただ、当初派遣された作業員は、放射線被ばく量の限界から交代を余儀なくされている。

  東電は核燃料が融解したり放射性物質が漏れ出したりしないよう、露出した核燃料棒に向けて放水作業を進める中、福島第一原発での作業員数を16日の180人から17日には322人に増員した。元米原子力規制委員会(NRC)の安全性指導員で米科学者団体「憂慮する科学者同盟」の物理学者、デービッド・ロックボーム氏によれば、露出した燃料棒のそばでは放射線量が16秒で致死量に達するという。

  11日の巨大地震発生以降、同原発施設の放射線量は上昇しているが、作業員が施設内にとどまれる時間を延ばすため、許容される累積放射線被ばく量は2日前に2倍強に引き上げられた。英ナショナル・ニュークリア・コープの元安全政策職員で現在はメルボルンを拠点にする産業事故関連コンサルタントのジョン・プライス氏は、一部の場所では1時間の被ばく量が年間上限の半分に相当すると指摘。同氏は電話インタビューで「この状態では、作業員を急速に使い果たすことになるだろう」と述べた。

  東電の広報担当者は、放射線量が最大許容量に達する前に作業員には施設からの退避を命じていると説明している。世界原子力協会によると、年間被ばく総量が100ミリシーベルト以上となれば、がんの増加が明らかだという。日本の衛生当局は15日、原子力作業員の累積被ばく量上限を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げた。日本の原子力安全・保安院は17日にウェブサイトで、作業員1人が106.3ミリシーベルトの放射線に被ばくしたことを明らかにした。


***

追加記事ー2011年4月8日

東電の安全管理に疑問投げかけ 孫請け作業員が証言

2011/03/30 13:39 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011033001000035.html

 建屋の地下にたまった水で作業員3人が大量被ばくした東京電力福島第1原発で、実際に復旧作業にあたった孫請け会社の男性社員が30日までに共同通信の取材に応じ、被ばく事故現場に放射線量を管理する責任者がいなかったことを問題点として指摘した。

 男性はさらに、汚染された水に足が漬かった状態で3人が作業していたことについても「普通は水の中に入って作業なんかしない」と述べ、東電の安全管理の在り方に疑問を投げかけた。

 3号機タービン建屋地下で24日に被ばくしたのはケーブル敷設作業をしていた下請け、孫請けの3人。そのうち、作業をしていたのは孫請けの作業員1人で、下請けの2人は現場監督だった。孫請けの作業員ほど、危険が高い難作業を任される構図になっていた可能性もある。男性は3人が被ばくした事故の問題点として、近くに線量管理の責任者がいなかったことを挙げた。

 現在、放射線量の低い場所の作業は一日8時間に及ぶこともある。作業員は全員、敷地内の免震重要棟で寝泊まりし、乾燥米や缶詰など1日2食、1・5リットルのペットボトルに入ったミネラルウオーター1本という過酷な条件下にいる。

 男性は、東電が作業員を集めるために日当として1人数十万円を払うという新聞記事を読んだ。「そんなことはない。作業は何年もかかるし、多くの人員が必要だ。誰がそんな金を出すのか」とあきれる。

 深刻な状態が続く1〜4号機は廃炉になる可能性が高い。男性はずっと第1原発に携わってきた。「廃炉作業が終わるまでには50年くらいかかるのではないか。できれば最後まで作業を続けたい」と心情を吐露。近く、第1原発に戻るという。

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追加記事ー2011年4月8日

コラムニュースマガジンT24
[編註:3月13日14日ごろに取材した証言のようです。無断転載ご容赦]

福島原発危機 
現場ジャーナリストが伝える「生々しい証言」


ヨーコ 2011年3月31日 11:33 コラムニュースマガジンT24」
http://t24.in/2011/03/post-410.html

 冷却しなければならないのに放射能に汚染された水が漏れ、八方塞がりの福島第一原発。いち早く現地に入り、取材活動を続けている記者のヨーコさんが避難者たちの生々しい証言を寄稿してくれた。証言をしてくれた人の中には東電の下請け作業員もいて、その言葉は重い。

 ヨーコさんが避難した人々の話を聞いたのは福島第一原発からわずか21.6キロしか離れていない避難場所、川内中学校だ。

証言者A(東電の下請作業員 4号機タービン建屋作業員 50代ぐらい 川内中学校避難所にて)

「原因は津波でも地震でもなんでもない。老朽化が原因だ。
満潮や干潮の時期には、海水が地下二階のフロアーに漏れ出すような、酷い状態だったが、東電はあと10年は運転させると言っていた」

証言者B(東電下請け作業員 (4号機タービン建屋) 38歳 川内中学校避難所にて)

「震災時は地下1階で作業中でした。4号機は運転を停止していて、点検作業中でした。
慌てて逃げたんですが、作業員は4号機に何千人もいます。その人数が一気に出口に殺到し、6つしかないゲートに殺到していたから、4号機を出るまでに3〜40分ぐらいかかりました。運転を停止し、点検をしていた4号機までこんなことになるとは......。東電社員はミサイル攻撃にも耐えられると言っていましたし、車の幅ぐらいもあるコンクリート壁が、あちこちにあるので私たちもその言葉を信じていました」

証言者C(東電作業員(詳しい役職は不明) 50代 川中中学校避難所にて)
「どうやってここまで来た?」と筆者に聞くC氏、私がガソリンの予備タンクを2つ用意したことを伝えると......
「そのタンクをいくらで売る? そのタンクを売ってくれたら、こんな所からオレはとっとと逃げ出すよ。
ここの避難所の人間は東電関係者しかおらんよ。この村も周辺一帯の村も、東電しか仕事がないから。事故の原因は老朽化が原因だと、絶対に書いておいてくれ!!」

証言者D(年金生活者 (福島第一原発の元労働者) 70代 川内中学校)

「老朽化した原子炉を建て直すコスト。すなわち廃炉にした原子炉の放射能を何万年も封じ込めるコストと、新しい土地を確保し、新たな原子炉を建てるコスト。ゴミのように移動させて捨てる訳にはいきませんから、建て直すにはこの二つのコストがかかる訳です。
 点検と補強を繰り返し、村に金を落とし、住民を潤し、議員を丸め込むコストの方が、圧倒的に安かったということです」
 
証言者E(年金生活者の老人 詳細不明 川内中学校)

「考えてもみなさい、30年前、40年前のテクノロジーで出来た建造物ですよ。30年前、40年前のテレビにリモコンが出来ただけでも画期的な技術だったでしょう。でも今となってはたかがリモコンでしょう? あの原子炉はその程度の技術でしかないんです。そんな技術で作った原子炉、老朽化した原子炉が壊れない方がおかしくないか?」

証言者F(詳細不明 50代 川内中学校)

「ああ、この避難所にも東電社員は一人いるよ。女だけどね。でも、インタビューしたって無駄だよ。なんにもしゃべらないだろうね」

証言者G(息子が東電で働いているという女性 60代ぐらい 川内中学校)

「インタビューにはお答えできません。うちの家族はみな東電で働いているんです。お世話になっている会社の内情をお話しすることなんて出来ないでしょう?インタビューはお断りします!!」
(※周りの方の情報によると、彼女の息子は13日の時点で、第一原発内で作業をしており、まだ避難できていなかったとのこと)

証言者H(東電孫請け作業員 31歳 4号機タービン建屋 川中中学校)

「タービン建屋は地下2階まであります。地下一階の踊り場のような所で地震に遭いましたが、壁に背をもたせてへばりつき、踏ん張らないと立っていられない、そんな揺れが2分ぐらい続きました。

 逃げるどころかその場にいることしか出来ない。崩れ落ちる粉塵状態のコンクリート片の中、停電はしていましたが、車ぐらいの大きさの配管が、1メートルぐらいの幅で揺れていました。

 うちの親父もここで働いていますが、初めての出来事だと言っています。

仮設電源も機能せず、懐中電灯で煙のような粉塵の中を、退路を探していた時にも地震がありました。偶然仲間を見つけ一緒に待避しましたが、靴を脱ぐべき所、作業着を脱ぐ場所などが、本来は事細かに決められているのですが、何千人かの靴や作業着が散乱している中、それらを踏み分けて、まずは"退出モニター"のゲートを通りましたが、横で東電社員が「認証は行わずに出られます」と、避難誘導を行っていました。しかしゲートの数が圧倒的に少なすぎ、雑踏のなかで列は全く進まず、6つしかない回転式のゲートをくぐり抜けて、ゲートの右手上階にある、更衣所で私服に着替えるまでに、30分ぐらいはかかったと思います。ゲート左手の一階にある更衣所にロッカーを持っている人は、もっと早く退出できていたと思います。階段に人が殺到してとにかく混乱していました。あとで聞いた話によると、筋彫りの入れ墨の人が、パンツ一丁で逃げてきたという話もある程です(笑)。

 今の段階では(3/14の20:00頃)、今回の爆発はそんなにビックリすることはない、チェルノブイリとは違いますから。

 避難所で今の原子炉の状態をこんな例え話で説明する人もいます。袋に入ったまんまのあんパンを、電子レンジで温めすぎると、袋が破裂してしまいますが、中のパンは破れておらず、あんこが飛び散ってもいない。要するに燃料棒のある格納容器がまだ破れていないから、あんパンのあんこがチェルノブイリとは違うということです。

 だからここにいる友人達には、もう少しここで様子を見てみよう、電話は全く繋がらないけれども、
一応の食料はある、暖房もある、風呂は無くとも水はある。ライフラインの復旧していない他の避難所に行くのは、生活のレベルが低下する恐れもあるからと、話し合っています。

 それに放射能のレベルも、今はまだマイクロシーベルトの単位でしかありません。僕たち作業員は1日で100マイクロシーベルトを浴びることもありますが、今のところはまだマイクロの単位でしかありません。距離で言えばメートル単位とキロ単位の違いですから。なので、僕はまだ少し楽観視しているのです。

 でも、1号機と3号機の爆発を止められなかった、そして2号機の水位もまた同じように危険な状態になっていますよね。2号機は明日中に爆発するでしょう。何時とは言えませんが明日であることは間違いないと思います。なぜなら、1号機と3号機で失敗してしまった、同じ方法を用いて、2号機を制御しようとしているからです。失敗するのは目に見えていますよ。良くも悪くも言うつもりはありませんが、東電には頭のいい人が揃っているのに、全く同じ方法で爆発を止めようとしている。結果は火を見るより明らかですよ。(翌日の早朝 3/15未明、H氏の予測は的中した)

 彼らのやっていることは、最小限の対応で最大限の爆発を起こしたようなものです。

 何らかの形で建屋に穴を開け、多少放射性物質が漏れても、圧力を逃がすべきだった。前もってこれこれこういう方法で穴を開けます。それに伴い放射能が漏れますが、大爆発を防ぐための処置であり、この非常事態には致し方ありませんと、事前に世間に公表して、穴を開けていたならば、地域の住民も理解し納得していたでしょう。あんな爆発を起こすこともなく、こんな世界的なニュースになることもなかったはずです。放射能漏れのニュースにしかならなかったでしょう。完全なメルトダウンを起こしたチェルノブイリとは違うんですから。東電は被害を最小限に抑えるよりも、水素で爆破するまで放置したといっても過言ではない。先に穴さえ開けておけば......と、本当にそう思います。遅かれ早かれ爆発するのなら、もっと早く開放した方が良かった。

 老朽化の問題は確かにあります。構内で(地震前から)地割れしているところもあった。4号機の地下二階で、海水が染み出しているのも、貴女が仰るとおり事実です。第二原発では放射能を浴びない場所でも、第一原発では浴びました。第一の方が古いからです。こう言ったことを、東電は公表すべきだと思います。

 今の心配事は、いつまでここにいるのか? ということでしょうか。ストレスで役場の人や消防、この学校の教頭とケンカになる人もいる。オレだって被災者だと教頭は言ったそうですが、家があるだけマシ、仕事があるだけマシですよ。

 今のところは3食おにぎりが一個ずつ配られています。川内村の炊き出しもたまにありますが、豚汁を作ってもらっても、皆に行き渡る量はお玉に一杯分です。毎日食べれるのかという不安もありますね。水はありますが、お風呂はありません。衛生面も心配ですし、放射能の不安、帰れないことによる孤独感。家を失い、仕事を失い、家族の安否も解らない人ばかりですから、皆、何重もの絶望感の中で過ごしています。

 この避難所にも前は1000台近く車が止まっていました。でも、今はかなり減っています。もっと安全な所へという気持ちからでしょうが、野宿になるぐらいならここにいようかと考えています。ここを一度出てしまえば、他の避難所が気に入らないからと言って、舞い戻ってくることは出来ないからです。
それにガソリンも不足していますから、どこまで行けるのか不安もあります。

 4号機で被災して、自宅に戻りました。原発から10キロぐらいの所の自宅ですが、思った程損壊はなかった。家族全員が無事で自宅に戻ってきたのですが、翌日全員が避難しました。

 今後の仕事に対する不安はあまりない。いつ帰れるのかという焦りだけです。いつまで休んでいいのか、原発の避難勧告の解除があれば、すぐに仕事に行きたい。現場をみてみたいです。

 でもしばらくは仕事もないだろう。足場解体や片付けの仕事はあるでしょうが......。再開したならば耐震性に関する仕事は増えると思います」(取材・文 ヨーコ)

***

追加記事ー2011年4月7日

讀賣新聞記事情報 [編註:インタビューに応じているのが広報である点に注意]

原発泊まり込み作業員「厳しいが士気は高い」

(2011年4月3日03時04分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110402-OYT1T00907.htm

 東京電力福島第一原子力発電所に泊まり込み、本店との調整に当たっている同原発広報部の角田桂一・報道グループマネジャー(42)が2日、読売新聞の電話取材に応じた。

 一時不足していた放射線量を測る線量計は920個を確保したといい、食事も1日2回から3回に増えている。角田さんは「環境は整えられつつあるが、依然厳しい」と語った。

 線量計が足りなかった問題は、発覚した直後の1日に、東電柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)から500個を調達するなどし、解消したという。食事の回数も増えたが、非常食や缶詰というメニューは変わらず、「量的には問題なくなったが、メニュー不足は否めない」。

 泊まり込みで作業にあたっている約400人のうち100人程度は約10キロ離れた福島第二原発の施設に宿泊できるようになった。それでも第一原発で作業員らの就寝場所となっている免震重要棟の「緊急時対策室」に入りきらず、廊下で寝る人もいる。

 「睡眠は十分とは言い難いが、報道で激励の声が届くことが支えになっており、士気は高い」と話した。



ラベル:原発震災
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2011年03月30日

無限の資源を利用した<エレガントなエネルギー政策>

朝日新聞衛星版2011年3月30日号(日本国内だとおそらく3月30日朝刊)のオピニオン欄に、英国の原子力安全性専門家ウォルト・パターソン氏の短い、しかし興味深い論考(聞き書き)が掲載された。

たいへん有用な意見だと思い、できるだけ多くの人と共有したいと考えたが、残念ながら、いまのところ朝日新聞のウェブサイトに掲載されていない。そこで全文をタイプした。

タイトル「原発ルネッサンスの逆風に」は一読、原発推進に積極的かと思わせるものだが、内容はもっと複雑で実用的で示唆に富んでいる。特に重要と思われるのは以下の点。


1)地球温暖化をテーマに、「二酸化炭素を出さないクリーンなエネルギー」として原発が見直されていたが、欧州での議論はもっぱら経済性に関するものだった。

2)原発は巨大で複雑な技術のかたまりであり、長大な送電設備もいるため、「比較的安いエネルギーだ」という推進派の主張は正当でない。実際は高くつく。

3)原発推進派は、石油依存からの脱却や生活レベルを守るうえで「原発にイエスかノーか」という議論をするが、原発を複数の選択肢の一つとみなし、原発に注ぐ資金や技術を別のエネルギーに振り向けたら、どちらがより経済的で安定したシステムかわかるはずだ。

4)例えば、スペインでは以前は原発に頼っていたが主力を風力発電に改めた。いまでは国内需要をまかない、電力が余ってタービンの一部を止めるほど。

5)日本は無限の資源、風と太陽を利用する技術にもっと投資すれば、有限な資源である石油やウランに頼らなくて済むエレガントな社会をつくれる。

無限の資源を利用した<エレガントなエネルギー政策>というコンセプトにしびれた。
しかも、儲け話でもある。
すばらしい。



(以下全文です)


<原発ルネッサンスの逆風に>

ウォルト・パターソンさん 原子力安全性専門家

2011年3月30日 朝日新聞衛星版オピニオン欄

 欧州はかつて「脱原発」で世界の注目をあびたが、この5年ほどは原発復権の流れがめだち、「原子力ルネッサンス」を迎えていた。

 地球温暖化が大きなテーマとなり、原発推進側は「二酸化炭素を出さないクリーンなエネルギー」と訴えて奏功した。この間、欧州での議論はもっぱら経済性に関するもので、安全性については気にとめてこなかった。そこに突然、震災で福島第一原発がおそろしい危機に陥った。安全性への巨大な疑問符をつきつけられ、欧州の人々はがくぜんとしている。

 欧州といっても一色ではなく、いくつかのグループに分かれている。第一は原発に積極的な国々だ。筆頭はフランス。政府の力が強く、国民の税金を原発事業に投入しやすい。第二は国内が推進と反対で二分されている国々で、代表はドイツ。産業界は推進に積極的だが、市民の間に強い反原発論がある。第三は懐疑派だ。英国がこれにあたる。チェルノブイリ事故後、新しい原発はできていない。安全性への懸念ではなく、経済的な理由による。経済界は投資の元がとれるか、財政的な「安全ネット」を政府に求めている。

 福島原発の事故は、こうしたすべての国々に甚大な影響を及ぼしている。ドイツのメルケル首相はただちに原発運転延長政策を凍結し、スイスも建設計画の凍結を決めた。これから先、欧州はどこへ向かうのか。いま言えるのはドイツの判断の影響が大きいということだ。大勢の人々は「脱原発」に傾くのではないかと私は思う。少なくとも、原発に税金をつぎこむことは難しくなるだろう。

 原発は巨大で複雑な技術のかたまりだ。利用者から遠いところに建設するから長大な送電設備もいる。そうしたコストを含めれば、「比較的安いエネルギーだ」という推進派の主張は正当でない。実際はとても高くつくのだ。いまフランスやフィンランドが造っている原発の建設費は、当初予定の2〜3倍に膨れ上がっている。

 地球温暖化との関係でいえば、スペインが興味深い。以前は原発に頼っていたが、主力を風力発電に改めた。かなり急激な改革だったが、いまでは国内需要をまかない、電力が余ってタービンの一部を止めるほどだ。

 風力、太陽光、海洋エネルギー。こうした二酸化炭素を出さないエネルギーに切り替えるまで、過渡期は天然ガスを使えばいい。大がかりな施設は不要。小さな施設を網の目状に造れば送電コストを減らせる。暖房や湯沸かしと発電を同時にするコージェネレーション(熱電併給)も効率的だ。

 原発推進派はよく、石油依存からの脱却や生活レベルを守るうえで「原発にイエスかノーか」という議論をする。それに対し、私はいつも「原発を複数の選択肢の一つとみなしてはどうか」と言っている。そして原発に注ぐ資金や技術を別のエネルギーに振り向けたら、どちらがより経済的で安定したシステムか、わかるはずだ。

 日本には風と太陽など無限の資源がある。それを利用する技術にもっと投資すればいい。有限な資源である石油やウランに頼らなくて済むエレガントな社会をつくれるはずだ。(聞き手・橋本聡)


[ウォルト・パターソン] 36年生まれ。原子力安全性専門家。環境団体「FoE(地球の友)」を経て英王立国際問題研究所員。元英下院環境委アドバイザー。


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2011年03月21日

チェルノブイリ事故処理専門家が証すIAEAの正体

3月16日、まだ日本の原発震災情報がBBC24ニュースの放送枠(つまり24時間ですが)のほとんどを占めていたころ、ハンス・ブリクスが原発震災についてのコメンテイターとしてスタジオに呼ばれた。

ハンス・ブリクスは、まだその名前を覚えている人も多いと思うが、国連イラク大量破壊兵器査察委員長としてイラクに赴き、「ないことを証明する」という誰にとっても不可能なミッションに挑戦し、敗れた男だ。かれはそれ以前の1981年から1997年まで国際原子力機関(IAEA)の事務局長を務めた。

先行き不透明な福島第一原発の事故現場の映像を見ながら、ニュースキャスターがブリクスに質問した。「この大事故が元になり、日本では原発推進が滞るのではないでしょうか」と。彼女の質問は、いかにもそれが当然というトーンであったが、ブリクスの返答は意外なものだった。

ブリクスは躊躇することなく即答した。「そんなことはないでしょう。日本には他にエネルギーソースがありませんから、選択は限られています」。そして続けた。

「ほら、ウクライナをみてご覧なさい。チェルノブイリの大事故があったのに原子力発電から撤退してはいませんよ。もう全体主義の国じゃないんですから、やめることはできるんです。でもやめていない。日本もきっと(原発推進を)やめません」

1986年に大事故を起こしたチェルノブイリ原子力発電所はソ連(現ロシア)のチェルノブイリ地方にあり、いまはウクライナ共和国の北の端に位置する。ウクライナの原子力エネルギーについては、データは少々古いが「ウクライナの原子力発電開発」[*]のページに詳しい。これによると2003年現在、同国は総電気量の51%を原子力発電によってまかなっているという。日本よりよほど深刻な原子力頼みの国だ。

[*]ウクライナの原子力発電開発 (14-06-02-03)
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=14-06-02-03

ただし、チェルノブイリ発電所の事故による放射能拡散の悪影響を大きく受けたのは発電所のあったウクライナよりもむしろ北隣のベラルーシで、当時の風向きの影響によりベラルーシの国土のほとんど全部が放射能汚染地域になった。そのため、ベラルーシの子どもの実に3分の1が小児癌などの甲状腺障害を持っていると言われている。ベラルーシもウクライナと同様にソ連から独立した国だが、こちらはいまだに独裁国家だ。

少々話が横道にそれたが、話の核心はここんところ。元IAEA事務局長のブリクス博士は、これほどの大事故にもかかわらず日本は原子力発電を継続するだろうと予言したってところだ。

とは言え、IAEAってなんだと考えるとこの予言を鵜呑みにできないのがわかる。「核の平和利用」である原子力発電を管理する国際組織IAEAは、原発があるからこそ監視機関としての存在意義があるわけで、原発がなくなったらお役ご免と言っていいいだろう。つまり、国際原子力機関という名称は印象として中立であるが、その実、世界に原子力発電を広めるためのお墨付き認定機関だ。[*]

日本政府や官僚たちのように東電と影でべったりくっついてはいないと思うが(そう信じたいし、そう願いたいが)、IAEAが原発推進機関であることは念頭においておくべきであり、したがって、放射能の悪影響についても小さく評価する傾向があることも忘れてはならない。

[*] これはちょっと言い過ぎた。IAEAは核兵器の監視機関なので核兵器が存在する限り必要とされる。(2011年4月8日追記 nfsw19)

以下、こうしたIAEAの姿勢を明らかにするロイターの記事をTUPのチームメイトである荒井さんが訳してくれた。翻訳配布の許可を得ていないのでTUPのプロトコルに合致せず、TUP速報として配信することがでないが、大事な記事なのでここに共有します。



チェルノブイリ事故処理専門家、
日本と国際原子力エネルギー機関(IAEA)を非難


マイケル・シールズ

ウィーン、2011年3月15日(火)ロイター

ウィーン(ロイター)――原子力産業の強欲と、国連の原子力エネルギーの監視機関IAEAに対する原子力業界の影響力が、日本を核破局へと運命づける可能性があると、チェルノブイリの事故処理にあたった要員のひとりが13日、ロイターに語った。

ロシアの原子力事故専門家ユーリ・アンドレーエフは、原子力業界とIAEAが、25年前の世界最悪の原子力事故の教訓を、業界拡張のために意図的に無視したと非難した。

「チェルノブイリの後、原子力業界は全力を挙げて事故の隠蔽を図った。業界の評判を落とさないためだ。チェルノブイリの経験はきちんと研究されなかった。というのも資金をもっているのはだれかといえば、原子力業界だけだからだ」。

「業界は事故調査を嫌った」とウィーンでのインタビューでアンドレーエフは言った。旧ソ連Spetsatom事故処理局の元局長であるアンドレーエフは、現在ウィーンで原子力の安全性についての啓発、助言を行っている。オーストリア環境省はアンドレーエフを顧問としている。

アンドレーエフは、13日火曜日に放射性物質を放出した4号機の火事について以下のように語った。この火事は原子炉の近くに貯蔵されていた使用済み核燃料が関わるものだったが、この火事についてアンドレーエフは、安全より利益を優先した例に見えると言った。

「日本は貪欲に利益を最優先し、スペースを切り詰めて使う。だが使用済み核燃料が貯蔵プールに高密度で詰め込まれていれば、プールの水が失われた場合、火災のリスクが高い」

安全基準については、IAEAも非難を免れないとアンドレーエフは言う。IAEAは、原子力発電所を建設・運転する原子力業界に近過ぎるというのだ。またアンドレーエフは、IAEAが作った緊急事故対策チームについても、「単なるシンクタンクであって実動部隊ではない」と一蹴した。

「IAEAは見せかけの機関にすぎない。どんな機関でも原子力産業に依存している限り――そしてIAEAは原子力産業に依存している――きちんと機能を果たせない」

「IAEAは常に現実を隠蔽しようとするだろう」

「IAEAは、原子力産業で起こり得る事故に注目が集まることには興味がない。一切の緊急体制にまったく興味がない」

IAEAはアンドレーエフの批判に対して今のところコメントしていない。

アンドレーエフは、日本当局が福島で経験していることがわかり過ぎるほどわかると言った。放射能漏れを封じ込めるには、クリエーティブな解決が必要になるだろうとも言った。

「これは静かなパニックの状況だ。私はこの状況を知っている。原子力業界では規律が第一だ。だが緊急対応には創造性が要る。一種の空想さえ必要で、臨機応変さが要るのだ」(編集:アリステア・マクドナルド)

[元記事]
Chernobyl clean-up expert slams Japan, IAEA
By Michael Shields
VIENNA | Tue Mar 15, 2011 11:52am EDT Reuters
http://www.reuters.com/article/2011/03/15/us-japan-nuclear-chernobylidUSTRE72E5MV20110315

[翻訳] 荒井雅子(TUP)
この訳稿はロイターからも筆者からも翻訳の許可を得ておらず、TUPのプロトコルに外れるのでTUP速報として配信することはできないが、だいじな情報と判断してここに保存するものです。無許可の翻訳稿である点を考慮して取り扱いにご注意ください。

*21日に書いた記事ですが、まぬけなことに非公開設定を解除するのを忘れてました。いまから公開設定にします(2011年3月31日)。




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2011年02月17日

革命なう@リビア 民主化要求のデモ隊に傭兵が突っ込んできた!

Date:Thu, 17 Feb 2011 18.00 GMT
Subject:リビア、状況はまずい

http://wlcentral.org/
#Libya People shot while praying, foreign mercenaries brought in, Al Jazeera coverage criticized
傭兵が入ってきたようです。

下記のビデオ、殺人現場なので視聴注意
14名死亡
http://www.youtube.com/watch?v=G5xT-Ljepz0&feature=player_embedded

5:00 PM "@BBC @AJENGLISH @CNN People are getting shot during prayers in #Benghazi #Libya. We dont have many people spreading the word about #libya via @Shergawia

5:00 PM "@AJArabic we need you guys to show smiler to your sister channel the libyans need to see whats going on" via @ShababLibya

5:00 PM "African mercenaries now in #Benghazi #Libya sources in Libya say they're chasing and killing people with knives and swords. We only fear God" via @ShababLibya

5:00 PM "#Qaddafi has threatened to flatten #Benghazi and rebuild it, and place in it African Migrants" via @ShababLibya

5:00 PM "As libyans we expected this from #gaddafi, recruiting protesters to fight us from Africa namely Chad #Libya #Feb17 he warned us about this" via @ShababLibya

5:00 PM "Abdallah: yes there are pro gaddafi protests: but they are not Libyan, they are Africans they are killing everybody" via @ShababLibya

***

バーレインもひどいことになっている。
出かけなくちゃ。絵も記事も持ってくる時間がない。




ラベル:中東 デモ リビア
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2011年02月16日

革命なう@エジプト 暫定軍事政権に政治改革は可能か(不可能か)

暫定軍事政権トップのタンタウィ最高評議会議長は、ご高齢のせいか変化を嫌い、とてもじゃないけどこの人物に改革(特に経済改革)を任せるのは無理、と指摘する公電が露出した(ウィキリークス)。そんなこと言われても他に代わりはいないし、どうすればいいのと人々に気をもませるためにこの公電はいま出てきたわけじゃないだろう。じゃあ、この公電の役割はなんだ。

(ところで、この記事がテレグラフのウェブサイトに上がったのが今日(正確には夕べ)なのでいま上げるんですが、この件、もうあっちこっちに出回っている。BBCでもしばらく前から話題になっていた。このタイミングのずれはなんだろう。それはさておき、)

米大使館公電そのものはなにしろ25万通もあってまだ数%しか暴露されていないので、暴露の内容とタイミングは発表の場となる媒体とアサンジが恣意的に選んでいるのは明らか。こうなると、もはや
報道というより現実政治への積極的なコミットメント
と言っていいかも。てなことを考えると、じゃあ、かれら(アサンジとテレグラフ)はこれをいま公開することでどんな波及効果を期待しているのかを考えざるをえない。

思うに、人々の期待をしぼませるような老人のステイタスクオーぶりを暴露することで、エジプト軍政のお尻を叩いているのかも。その効果があったのか、改憲委員会設立に先んじて民主化支持派の若者を呼んで話を聞いたと報じられている。公電の暴露と話し合いのタイミングが予想にそっているかどうかは確認してません、念のため。

参考:

民主政治制度を機能できるかが課題-全権掌握のエジプト軍部
ウォール・ストリート・ジャーナル 2月14日(月)11時11分配信

エジプト軍最高評議会、スト中止を労働者に呼び掛け
ウォール・ストリート・ジャーナル 2011年 2月15日 8:41 JST

上記ウォール・ストリート・ジャーナル の記事(2月15日付け)によれば、「革命的青年委員会」と称する組織(10の野党グループから13人、非政治的グループから3人)が13日にエジプト軍最高評議会と話し合いを開始した。同委員会のシャディ・ガザリ・ハルブ(32歳、医師)によると、「若者と軍部との間には潜在的な意見の対立点が2つ」あり、それは「軍部が現在の内閣をそのまま在職させたこと、そして政治改革への工程表を野党勢力の意見を取り入れることなく発表したことだ」そうだ。「若者運動指導部は一部の閣僚を直ちに解任するよう希望しているが、軍部はまず憲法委員会を創設することを優先しているという」。この週末に再び話し合いがもたれる予定。

この委員会には例のグーグルのワエル・ゴニムも加わっており、わたしが知る限りでは、4月6日ユース・ムーブメントのアハマド・マッハーも加わっている。ゴニムさんについては、拘束を解かれた直後のエモーショナルなインタビューを聞いただけで、かれの書いたものはまだ一度も読んだことがなく、政治的にどのような考えを持っているか(いないか)さっぱりわからん。

ところで、この「革命的青年委員会」はおそらく「Revolutionary Youth Committee」ではないかと思うが、「若者運動指導部」とはなんだろう。「Youth Movement Leaders」かしら? 

公電の2通目(テレグラフの記事のあとにリンクあり)によると、経済分野をはじめ、国内のありとあらゆるところに引退した元軍人が入り込んでいる。この利権を断つのは容易ではないだろう。富の再分配を実行しようと思えば公共産業や主要産業は国営化せざるを得ないが、それらの企業のトップに居座る元軍人をどうするか。課題は多い。



WikiLeaks: Egypt’s new man at the top 'was against reform'

The military leader charged with transforming Egypt opposed political reform because he believed that it “eroded central government power”, according to leaked US diplomatic cables.

By Christopher Hope, and Steven Swinford
11:31PM GMT 15 Feb 2011 The Daily Telegraph

http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/wikileaks/8326225/WikiLeaks-Egypts-new-man-at-the-top-was-against-reform.html

Field Marshal Mohamad Tantawi, the head of the Higher Military Council that took control of Egypt last week, was also against economic reforms because they create “social instability”.

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posted by nfsw19 at 00:00| ロンドン 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 記事&番組クリップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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