[2011年5月9日 20:00 GMT 電気料金についてのやりとりを末尾に追加しました]Mon, 09 May 2011 03:49:57 +0900
山崎さん(たんぽぽ舎):
福島第一原発は「PSA報告」の想定通りに壊れました(1) これまで東電社長などは「想定外の津波に襲われたから」とかなんとか言い逃れに汲々とし、なんとか賠償額を抑えようと必死の様子ですが、そう世の中甘くはありません。
ちょうど米国のニューレグ1150と同様の確率論的安全評価(PSA)の手法を使った津波の影響評価がされており、とっくに一定の確立で炉心損傷することは分かっていたのです。
福島第一原発の津波被災については、
平成21年度
地震に係る確率論的安全評価手法の改良
=BWRの事故シーケンスの試解析=
という表題の報告書に、地震や津波により原子炉炉心損傷が起きる確率の解析が載っています。
http://www.jnes.go.jp/content/000117490.pdf この中の「3.津波PSAの試解析」という部分に、今読んでも背筋が凍り付くことが書いてあります。特に3−11にある「図3.2 津波時のイベントツリー」を見ると、海水ポンプの破壊でもう炉心損傷が起こりえることが示され、海水ポンプが機能しても全交流電源喪失が回復しなければRCIC(原子炉隔離時冷却系統)継続運転不能により炉心損傷に至ることが書かれています。まさに福島第一で起きたことがそのままです。
さらに3−8、3−9ページを見ると、「8時間以内の外部電源復帰」は津波波高が13メートルを超えたら「0.0」すなわち復帰の可能性ゼロと書かれています。
「図3.1 津波時の解析シナリオ」3−10ページは、今回の福島第一原発の運命を正確に記述していました。津波が海水ポンプを破壊し、さらに外部電源喪失に至った場合、もはや望みは絶たれていたと言うことを。
もうちょっと詳しく引用します。
「本解析条件のもとでは、津波の波高が一定値以上(防波堤の効果を考慮しない場合には約7m、考慮した場合には約15m)の場合に条件付炉心損傷確率がほぼ1.0 となり、炉心損傷頻度(相対値)は津波発生頻度(相対値)とほぼ同一となる。これは、それぞれのケースでこの波高を超えた場合に海水ポンプが機能喪失すると仮定していることによる。」
解析はたった一つの、実に簡単なことを書いています。津波波高が7メートルに達したら福島第一原発に望みは無かったのだと。そして実際に津波が来てしまったこと、そして波高が7メートルを超えていたこと。それが全てだったのです。防波堤の効果は、期待は出来ません。なぜならば福島第一の防波堤は5.7メートルしかなかったからです。7メートルを超えれば全て同じということになります。
この後、どのようにしすれば最悪のシナリオを脱することが出来るのかについては、この報告書には一切書かれていません。なぜならば、この報告書の任務では無かったからです。
東電は知っていました。このような事態になることを。そして最悪の事態を回避したいのであれば、別に外部電源を引き入れて、冷却ポンプを動かせば良いことも。そうしていればもしかしたら炉心は破壊されても大量の放射能放出は回避できたかもしれないのです。TMIレベルで回避できたかもしれなかったのです。海や大地をこれほどまでに汚染せずに済んだかもしれないのです。
報告書が作成されたのは昨年12月でした。
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Mon, 09 May 2011 12:51:16 +0900
山崎さん(たんぽぽ舎):
福島第一原発は「PSA報告」の想定通りに壊れました(2) 「地震に係る確率論的安全評価手法の改良・独立行政法人 原子力安全基盤機構10 原確報」(以下PSA解析)について紹介をしたが、これを福島第一に即して見直してみよう。
PSA解析では防波堤の高さを基準海面+13mとしているが、福島第一はそんなに高くは無かった。実際の高さは5.7m。さらに海水ポンプ設置高はそれよりもさらに低く基準水面から4mしかない。これを先のPSA解析に照らせば、もともと波高が6m程度で海水ポンプは使用出来なくなることになる。6mの津波が「とても予想が出来ないほどの大津波」だろうか。
ここでも東電と報道によるミスリードがある。
津波の波高が6mで、福島第一は海水ポンプの破損により冷却不能になり、炉心損傷は免れない。PSA解析はそう断じていたのだ。
2010年12月公表のPSA解析は、BWR4について津波波高が少なくても15mあればアウトと書いていた。
微妙に福島第一と似ていて違えている。
BWR4とは、日本で最も古いBWRである敦賀1や福島第一1の後継としてGE社が開発したもので、日本では福島第一の2〜4と浜岡1,2、女川1がこれにあたる。BWR5(改良標準型を含む)は東海第二、福島第一6、第二、柏崎刈羽1〜5など多数ある。
BWR4で敷地高さ13mというと、福島第一の5に相当する。1〜4は10mしかないのだ。この3mの差が、福島第一の1〜4と5,6の運命を分けた。
さらに言えば女川もまた、敷地の高さが津波の高さをやや上回ったこと、外部電源が取れていたことが幸いした。福島第一は外部電源が無く、非常用ディーゼルも6号機の1台だけしか動いていなかった。
PSA解析は、海水ポンプが水没し、非常用ディーゼルや外部電源の全喪失が起きれば、炉心損傷を免れないことを明確に記述しており、その最初の関門が津波波高6m超えだった。1〜4号機については、敷地の高さが10mしかないので、2m高い12mが最終防衛線だった。ここを超えたら、もはやなすすべはなかったのだ。
まとめると、既に昨年のPSA解析において、福島第一は津波波高6mで海水ポンプは使用不能となり、炉心損傷の確率が極めて高くなり、波高が12mに達したら、その確率はほぼ100%になっていたこと。その対策をしなければならないという危機感が当時も無かったし、地震発生時点でも無かった。すなわち、原子力安全基盤機構という原子力産業の側の機関が行っている解析に対してさえ、真剣に対処する必要を感じていない人たちが、現在の原発を動かしていることになる。
ことは東電だけの問題ではない。この解析に従って津波対策を強化していた原発など一つも無いのだから。
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Mon, 9 May 2011 08:13:00 +0900 (JST)
Mさん:
福島第一原発は「PSA報告」の想定通りに壊れました(1)から続くさらにこんなこともあります。
5月1日予算委員会の質疑をご存知なら重複になります。ごめんなさい。知人からの情報です。
4月下旬の共産党議員の追及(外部電源喪失は地震による鉄塔損壊が原因。国会で前から約束していた対策がとられていなかった)も説得力ありました。ただ、こういった「対応がなってない」批判が「安全な原発要求」に収束されないように、同時にその本質的絶対的危険性にもスポットをあて続けないといけないと思います。共産党はメーデーでの志位さんの演説から判断する限り、反原発へと方針を転換したように思われますが。
(以下知人からのメール)
> 5月4日に、ハイロアクション福島原発40年実行委員会の大賀あや子さんから「昨年6月に福島原発で燃料棒露出」というお話を聞きました。その時は確信が持てませんでしたが、森ゆう子民主党参議院議員がTさんに宛てた手紙で解った気がしました。以下、抜粋してお知らせします。
mmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmm
日付: Mon, 02 May 2011
差出人: "参議院議員 森 ゆうこ"
件名: 昨日の予算委員会について
いつも私の政治活動にご指導ご支援を頂き、本当に感謝申し上げます。また、昨日の質問にたくさんのご提言と応援をありがとうございました。
昨年6月に全電源喪失、冷却水2m低下が30分継続し、あわやメルトダウン という事故を起こしていたことを東電清水社長の答弁で確認しました。 佐藤栄佐久前福島県知事から頂戴した1枚の要請書を基に質問したものです。
昨年全電源喪失を経験しながら対策を講じなかった東電。
そして事実を知りながら指導しなかった保安院。
今回の原発事故は明らかに「人災」です。
放射線管理区域は立ち入り禁止ですが、その4倍が福島の学校安全基準値になっていることを示して、20ミリシーベルトの即時撤回と子どもたちの安全確保を求めましたが、総理も閣僚もそして安全委員会も曖昧な答弁を繰り返すばかり。
予算委員会は与野党を超えて非難の嵐。
国民の生活と命が第一の民主党はどこに…
今まで、子どもたちを一時避難させ、新学期が始まる前に除染作業を行い、数値が下がっていれば授業再開すべきと再三再四要請してきました。
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Mon, 09 May 2011 13:32:35 +0900
山崎さん:
福島第一原発は「PSA報告」の想定通りに壊れました(1)から続く 国会で鉄塔倒壊が取り上げられていたことは知りませんでした。たぶん吉井さんでしょう。
「安全な原発」に収束されるといけないということですが、それにどれだけの費用がかかるかと言うことも問題になると思います。浜岡1,2号機が廃炉になったのも、実は耐震性工事を行うと合わせて2000億円を超えるという結果が出て、そんなにつぎ込んだら新しい原発が建ってしまうと言うわけで、止めています。
仮に浜岡耐震津波対策が1兆円になるとしたら、一体誰がその費用を負担するんだと言うことになると思います。国も地元対策でこれまで以上に莫大な税金をつぎ込む必要があるなどとしたら、誰もそんな政策には賛成しないはずです。
なので、本当に安全な原発なるものがあるとしたら、一体いくらかかるんだと、そういう追求もあっていいと思います。
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Mon, 9 May 2011 16:24:58 +0900 (JST)
Mさん:
「真に安全な原発は高くつきすぎる」についてそれはそうでしょうが。さっきの自分の意見にちょっと追加すると反原発の声が高ければ高いほど「安全な原発」への圧力も高まるともいえるでしょう。
ところで、私もこの311以降に知ったことですが日本の電気料金は総コスト方式で決定されるので設備費がかかる原発にはむしろうまみがあるといわれていますね。それなら、安全対策にお金がかかっても回収できるリクツにはならないのでしょうか?
あんまり高価だと資金繰りができないとか?
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Tue, 10 May 2011 02:42:00 +0900
山崎さん:
「真に安全な原発は高くつきすぎる」について 電気料金を決める方法を総括原価方式といいまして、必要経費を積み上げた上に、その4.4%相当分の報酬を乗せて、電力料金を決められる仕組みになっています。そのうえ石油の値段が上がったら(下がってもですが)三ヶ月後にその価格に見合って変動させることが出来ますから、至れり尽くせりです。
他の産業ではエネルギーコストが増えても簡単に商品価格に転嫁など出来ませんから、異常な過保護体制です。
必要経費には当然ながら発電所建設費用が含まれますので、発電所コストか電気料金に跳ね返ります。これ自体は当然ながら高ければ高いほど利益が上がる仕組みであることになりますが、ものには限度があり、いまでさえ日本の電気料金は世界でも高いとされています。欧米諸国の倍くらいなので、そろそろ限界ですが、それ以上に、この総括原価方式と地域独占がセットになって、電力のやりたい放題を許してきたわけですから、今後も継続できるとも思えません。いいかげん、この方式そのものを転換しないと、日本ではエネルギー政策を転換することなど不可能です。