2013年04月09日

サッチャーがフェミニストだって!?

[知恵袋回答] 2013/4/9 11:38:13

<亡くなられたサッチャー元首相についてどう思いますか?
 ウーマンリブ志向で憧れの存在だっただけにショックです>


質問者さまをはじめ、好意的な意見が多いのでとても驚いています。日本ではサッチャーの位置づけはやっぱりそんなもんなんですかねえ。

イギリスでは、サッチャーについてはもともと賛否両論(というか、中間の意見などというものは存在しない)なので、亡くなった日のその晩の放送だというのに、お悔やみもそこそこ、生放送のニュース解説番組もあらかじめこの日に備えて作ってあった証言番組も、いやまあこれほどとたまげるほど否定的な意見が矢のように飛び交ってました。もちろん保守党支持者はこれ以上ないほど褒めちぎってますけど。

ネットでも、昼のニュースでサッチャー死亡が伝えられて以降、フェイスブックやツィッターでは「オズの魔法使い」がぐるぐるまわり、ほとんどお祭り状態。たとえばこれ。

悪い魔女が死んだ〜、悪い魔女が死んだ〜、というお祝いの歌です。


サッチャーがおもに経済と福祉の分野を通じてイギリスに持ち込んだ哲学(というか「生き方」と言ってもいいかも)は「自助努力」と「自己責任」です。サッチャー自身が、八百屋の娘→公立進学中等学校→オックスフォード大学→国会議員→野党党首→首相、という絵に描いたような立身出世街道を歩んだ人物であり、自分がしたこと(自分にできたこと)を国民全員に求めたと言っていいでしょう。努力さえすればだれでも理想のコースを歩むことができ、そうならないのは努力が足りないからだというのが彼女の言い分で、「運や才能」あるいは「社会システム」の寄与についてはなかったことにしたんですね。

その結果、第二次大戦後のイギリス政治最大の成果であった(それが一方で経済低迷の原因にもなったのではありますが)「だれも不幸にならない社会」の仕組みが取っ払われ、労働者から誇りが奪われただけでなく、わがままが美徳として奨励されるような現在のイギリス社会になったと言われています。



「サッチャーは女性の味方」とか「サッチャーはフェミニズムの推進者」と唱える人の多くは、その理由として「サッチャーの性別は女」以外の根拠を持たないだろうと推測する。

確かに(たぶん?)サッチャーは女性あり、双子(ろくでもないマーク・サッチャーと「密林の女王」キャロル・サッチャー)の母であり、首相になってからは服装に気を使い、毎朝30分美容師に髪を整えてもらっていたそうだが、それ以外の面でサッチャーの「女性」性が発揮された場面をあいにく見つけられない。

サッチャーはメリトクラシー推進者であり、エリート主義者であり、比較的恵まれないバックグラウンド(たとえば「女性である」とか「労働者階級出身である」など)から成り上がった人間を強く支持したが、女性の地位向上のために目立った功績があったわけではない。11年間もの長期政権を維持しながら一人の女性閣僚も起用しなかった点に、その哲学の一端が読み取れるだろう。

もしサッチャーが女性の地位向上のために何か役立ったとすれば、「わたしのようになりなさい」がすべてと言ってよく、それに励まされた人がいたかもしれないだけだ。



サッチャー以前にも「鉄の女」と呼ばれた女性政治家がイギリスにはいて、労働党の閣僚経験者バーバラ・カッスル(またはキャッスル)は本物のフェミニストと言えるだろう。
http://en.wikipedia.org/wiki/Barbara_Castle,_Baroness_Castle_of_Blackburn

彼女は、雇用大臣だった1968年、フォードのダゲナム工場で実施された女性労働者の賃上げ要求ストライキを支持して女性労働者の地位向上に貢献し、1970年には賃金の性差別を撤廃する同一賃金法を成立させた。

このストライキと同一賃金獲得(男性の給与の97%)までの女性たちの行動を描いたのが2010年の英国映画『メイド・イン・ダゲナム』で、3年前に帰国便の機内で何気なく見始めたらあまりにも面白くてたまげた。あちこち史実とは違うようだが、ともかく脚本がよく、役者の演技はうまく、涙あり笑いありで無類に面白いし励まされる。60年代の庶民のファッションやインテリアや音楽に興味があれば、なお楽しめる(バーバラ・カッスルは実名で出て来ます。もちろん役者です。もう死にましたから)。

Made In Dagenham - Official Trailer [HD]




posted by nfsw19 at 04:00| ロンドン ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 知恵袋回答 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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