<パレスチナ問題とはなんですか。
どうしたら解決できるでしょうか>
まず、解決策から。
パレスチナ問題とは、宗教とか民族とかいったそこに住む人々の属性を取っ払うと、古典的な領土問題です。シナイ半島にある「パレスチナ」と呼ばれる土地がだれのものかについての争いで、争う両者がどちらもそこに住むことを主張して譲らないのであれば、第三者の調停によって土地を分け、二つの国を作るのがもっとも現実的な解決策になるでしょう(倫理的な問題などは無視して考えた場合には、ですが)。あるいは、すべてを国連の管理下におく方法も考えられますが、国連が弱っちいのでこれは現実的ではありません。
話は2000年前にさかのぼります。当時シナイ半島にはセム語族に分類される人々が住んでしました。ユダヤ人もパレスチナ人(シナイ半島のアラブ人)もどちらもセム語族です。当時その地はイスラエルと呼ばれていましたが、ローマがユダヤ人を追放して名前をパレスチナに改めました。
それから約2000年のあいだ、シナイ半島にはおもにパレスチナ人(アラブ人)が住んでいましたが、ユダヤ人も少ないながら住んでいて両者は共存していました(ほかに放牧民=べドウィンもいましたが生活圏が違います)。19世紀の終わり頃、ヨーロッパに移り住んでいたユダヤ人のあいだにシオニズムという思想が生まれます。長らく強いられていた流浪の生活から、ユダヤ人が故郷と考えるシオン(英語ではザイオン、エルサレムにある丘の名前)の地に帰ろうという思想です。それ以降、パレスチナに移り住むユダヤ人が増加しましたが、当時アラブ人はユダヤ人の境遇に同情的で、移り住んできたユダヤ人に土地を分けたりしていました。
第二次世界大戦後、(ナチスによるホロコーストを見過ごした罪滅ぼしとして)ユダヤ人国家の建設が国連で承認され、ユダヤ人が故郷と主張するパレスチナの地を二つに分けてユダヤ人国家が建設されることになりました。その際に、ユダヤ人とパレスチナ人の人口比とは矛盾する分割が行われ(イスラエル側のほうがずっと大きかった)、これがそもそものパレスチナ問題の始まりです。
その後、何度かの中東戦争(イスラエル対アラブ諸国)を経てイスラエルが領土を拡大、別の国であったはずのパレスチナを占領したまま、現在に至ります。現在、パレスチナはイスラエルの中に自治区として存在していますが、実質的に占領下にあり、イスラエルとの行き来も、二つの自治区間の行き来も、まして外国との行き来も、すべて(人についても物についても)イスラエルの管理下にあります。イスラエルは占領地に市民を閉じ込めたまま空爆を実施したり、占領地の住民に対する福祉を怠るなど国際法違反を繰り返していますが、イスラエルの強力な援助国であるアメリカが必ず拒否権を行使するために、国連決議が発効されることはありません。
個人的には、もともとそうであったように、ユダヤ人もムスリムもクリスチャンも共に暮らす一つの共和国になるのがいいと思います。もし二つに分けると、イスラエルの中のムスリム差別がそのまま続くことになりますから。二国家解決案も、(かつてのユダヤ人のように)難民なって世界中に散ったパレスチナ人の帰還権をイスラエルが認めないので、そう簡単ではないです。
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