<エジプトがイスラエルとの和平条約を
破棄する可能性はありますか?
破棄されたら中東戦争がまた勃発しそう... >
エジプトが和平条約を破棄する可能性は「ありうる」と思います。どういう方法でかはわかりませんが、なにしろ、それ(エジプトの和平条約破棄)が今回イスラエルがガザへの攻撃を始めた理由の一つでしょうから。エジプトがイスラエルの挑発に乗らないでくれるといいんですけど。
イスラエルは今回のガザへの攻撃を「雲の柱作戦」と名付けています(もう名前をつけてるんです)。作戦名まで付けたのは、これはガザへの一時的な攻撃ではなく(そんなものは日常的に行われてましたから)、4年前の「キャストレッド作戦」と同様に徹底的にやるぞ、という意味でしょう。もう3万人の予備役を招集し、地上戦も含めて「すべてのオプションがあり得る」と発表しています(核兵器まで含むかどうかはわかりません)。もう何ヵ月も準備してきたみたいに手際がいいです。
今回の作戦名の「雲の柱」は「出エジプト記」に出てくるそうです。モーゼに先導されたイスラエルの民のエクソダスの際に、荒野を追いかけてくるエジプト軍に対して、イスラエルの民を「昼は雲の柱が導き、夜は火の柱が導き」、エジプト軍が追いつくと「雲の柱がイスラエルの民とエジプト軍のあいだに入って」目くらましになり、かれらの脱出を助けたとあるそうです。ムバラクなきあと、いまや地理的にだけでなく精神的にもパレスチナと地続きになったエジプトに当てつけた作戦名でしょう。やれるもんならやってみな、とあおっていると思いませんか。
4年前のようにガザを痛めつけて、子どもを殺して、周囲の国々の市民の怒りが燃え上がるのを待つ作戦でしょう。そうなれば、市民はまだ新しくて脆弱な政府に対して「パレスチナを見殺しにするな」と迫るでしょうし、それに答えなければ政府が倒れかねません。
そうして中東におけるイスラエルの孤立が深まり(イスラエルが自らそういう状況を作ってるんですよ)、パレスチナ以外のどこかからイスラエルにロケットが飛ぶと、アメリカとヨーロッパも座視できなくなります。イスラエルはロムニーが米国大統領になるのを望んでましたが、それがかなわなかったので何か始めるかもと思ってましたけど、介入に消極的なオバマを行動させるためなら自国民だって見殺しにするんじゃないでしょうか。
そうなるということは、またガザで虐殺が起こるということなので、そういう展開にならないことを望んでいます。でも、どういう褒美を手に入れたら、イスラエルが抜いた刀を鞘に納める気になるかわかりません。
* * *
「雲の柱作戦」下のガザ
<2012年11月16日付けメールの引用>
イギリスでは一昨日(14日)からイスラエルのガザ攻撃がトップニュースです。外務大臣は、ハマスが先に手を出した、イスラエルには国民を守る(ためにガザを攻撃する)権利がある、と会見で発表しましたが、先に手を出したのはイスラエルであることは他のニュースが報じています。
今回の「作戦行動」は、オバマが大統領に再選されると(イスラエルが強く望んでいたロムニーの落選が決まると)すぐに開始されました。イスラエル軍の地上作戦で13歳の少年が殺され、ハマスの報復ロケット攻撃はこのあと開始されたものです。続いてハマスはガザとの境界付近でイスラエル軍を攻撃してイスラエル兵が負傷、双方の攻撃が激化しそうになったためエジプトが介入し、イスラエルとパレスチナ(ハマス)のあいだで休戦が決められていました。これに対し、一昨日、イスラエルはハマスの軍事部門のトップをミサイルで暗殺し、休戦を破りました。昨夜のチャンネル4に出演したハマスの報道官の話によると、この間に市民(子どもを含む)など19名がイスラエル軍に殺されたとのことです。
ハマスは、「アラブの春」でイスラエル寄りのリーダーがいなくなったエジプトを初めとするアラブ諸国が(ハマスをトップとする)パレスチナ支持を鮮明にする行動を求め、一方、イスラエルは中東へのこれ以上の介入をしぶるオバマにプレッシャーをかけるために、双方が作戦を激化させようとしています。市民(特に子ども)が多数死ぬほどどちらにとってもプロパガンダの材料が増えるわけで、攻撃を弱める理由にはなりません。
現在、エジプトの首相がガザを訪問し、ハマスにロケット攻撃をやめるよう説得しているようです。ガザ側では引き続き犠牲者が増えていますし、イスラエル側にもハマスのロケットによる市民の死者が出ています。昨夜までは3万人だった予備役の招集が6万人まで引き上げられたようですし、本格的な地上作戦の準備が進んでいます。
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