2012年07月08日

[TUP速報941号(1/3)] アラブの春その後−アサンジ連続インタビュー「明日の世界」第1回配信

速報941号:アラブの春その後
−アサンジ連続インタビュー「明日の世界」第1回配信
2012-7-8 8:42:07

アサンジと語る「明日の世界」エピソード4(TUP速報第1回配信)

ジュリアン・アサンジが監修しホストを務めた連続インタビュー番組「明日の世界」は、4月中旬に開始され、7月3日に今期シリーズの幕を閉じた。毎週火曜日にRT(ロシアの公共放送機関)その他のテレビ・ネットワークやユーチューブなどインターネットを介して、多言語、世界規模[注*]で12回のエピソードが放映された。

「ウォールストリートを占拠せよ」や「サイファーパンクス」の活動家たちとのディスカッションに登場するゲストは、西欧諸国で物議をかもしている人物たちだ。また「アラブの春」を経て民主政治の出発点に立ったチュニジアの新大統領、米国が操るクーデターを生き延びたエクアドルの大統領、政治的に仕組まれた性犯罪のスキャンダルや投獄を乗り越えて台頭するマレーシア野党勢力リーダーへのインタビューなど、アラブ・アジア諸国や南米諸国出身のゲストの多くは独裁政権下で弾圧を受け、人権を侵され、投獄さえも経験してきた筋金入りの「反逆者たち」である。これら、欧米中心の地政学的視点から除外されてきた語り口を伝えるゲストは、欧米諸国の主流報道機関で紹介されることは稀であったことから、多くの視聴者にとってはほぼ無名の存在だ。しかし、アサンジの的確な質問と情報提示、軽妙な対話やユーモアによって、ゲストの等身大の視点や思考が生き生きと浮かび上がる。ウィキリークスが開いた情報の扉から、欧米主流文化を機軸としない「別の」世界観が紹介される。

本来の番組放映時間は26分前後であるが、実際のインタビューにはその何倍かの時間が充てられ、進行具合によってはさらに長時間のインタビューが録画されている。「独裁者打倒・初級編」と銘打って放送されたシリーズ第四回目がその良い例で、当初は録画予定1時間だったものが3時間近くに及んだ。話題は「アラブの春」の背景にある革命の歴史や方法論、イラク戦争、シリア、一連の革命におけるサッカー応援団「ウルトラ団」の活躍など多岐に亘る。

プロデューサーの許可を得て、3時間弱のトランスクリプト(書き起こし文)のすべてをTUP速報としてお届けします。放映された番組の下記動画リンク(英語)をご覧になりながら読まれると、臨場感が感じられるかと思います。

[注:全世界100カ国以上におけるこの番組の対象視聴者は、RTの契約者5億3000万人。番組放映日には一日中、二時間おきに放送され、インターネット上でも同時に視聴可能だった。この契約者数には8500万人の米国ケーブル視聴者(タイムワーナー、コムキャスト)が含まれており、全世界のケーブル・ テレビ視聴者の25%。放送後1日ほど経つとインターネットでユーチューブに番組全体がアップロードされ、この視聴回数は世界各地で少なくとも7億回を超えた。]

RT放映日:2012年5月8日(火)(12回シリーズの第4回)
RTリンク:http://assange.rt.com/episode-four/
ユーチューブ・リンク:http://www.youtube.com/watch?v=HdVoBlABSpc
公式リンク:http://worldtomorrow.wikileaks.org/episode-4.html

(前書き・翻訳/ 宮前ゆかり:TUP)

「The World Tomorrow(明日の世界)」は、世界で最も興味深い人物たちとジュリアン・アサンジとの対話をお届けする12回シリーズのインタビュー番組です。この番組は、各国の国内放送局および国際放送機関に対するライセンス供与を行っています。お問合わせは配給会社Journeyman Picturesまで電子メールmark@journeymanpictures.comにてご連絡ください。

Creative Commons License
This work is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-NoDerivs 3.0 Unported License.


アラブの春:夢の行方
ゲスト:ナビール・ラジャブ、アラー・アブドゥルファッターフ


<ゲスト紹介>

「これこそが戦い、これこそが自由、これこそが僕らが勝ち取ろうとしている民主制なんだ。それには犠牲がともなうし、僕らはその犠牲を払わなければならない、僕らがバハレーンで膨大な犠牲を払ったようにその犠牲はとても高くつくかもしれない、そして僕らが戦い取ろうとしている変革のために僕らはその犠牲を払うつもりだ」――ナビール・ラジャブ

<ナビール・ラジャブ>

[2012年]5月5日(土曜日)に逮捕されたナビール・ラジャブは、生涯にわたるバハレーンの活動家でありアル=ハリーファ政権の批判者だ。断固たる政権支持派の一族に生まれたラジャブは、1988年に[海外での]大学教育を終えて帰国して以来、バハレーンの改革を求めて闘ってきた。バハレーン出身でデンマーク国籍も持つ人権擁護活動家アブドゥルハーディ・アル=ハワージャとともに、ラジャブは2002年にバハレーン人権センターの設立を支援した。各派間での差別や移民労働者の権利など、バハレーンにおけるさし迫った問題に何年も取り組んできたラジャブは、真珠広場で行った果敢な座り込みの後、2011年2月14日に勃発したバハレーン人民蜂起の「顔」となった。以来、彼は革命の矢面に立ち、政権側の広報を担う企業に対抗してツイッターを駆使したソーシャル・メディアでの戦いを繰り広げてきた。アル=ハワージャが拘禁されると、ラジャブは彼の解放を求める抗議行動を率いた。彼は民主化要求のデモ参加に対する暴行、逮捕、そして法律上の嫌がらせを耐えてきた。5月5日の土曜日、ラジャブはマナーマ空港[バハレーン]で逮捕され、翌日「不法な抗議活動」に関与し、それを助長した疑いで告訴された。ナビール・ラジャブは番組放送時点で身柄が拘束されたままである。(注:6月末に一時釈放となったが7月初旬に再逮捕され、投獄が続いている)

<アラー・アブドゥルファッターフ>

アラー・アブドゥルファッターフは、長年にわたるエジプトの政治活動家、プログラマー、ブロガーである。アブドゥルファッターフは2006年にムバーラク政権下で抗議活動を行い45日間勾留され、さらに革命後の軍事政府であるエジプト軍最高評議会(SCAF)の下で抗議活動を行ったことから再び68日間の勾留を強いられた。彼はさらに2011年のエジプト革命でも活躍した。革命当初、国外にいたアブドゥルファッターフはムバーラクによるインターネット封鎖を迂回する援助を行った。抗議行動の絶頂期にエジプトに戻り、治安部隊からタハリール広場を守る活動に参加した。ムバーラク辞任後、SCAFに対する抗議行動に関わったことで、2011年10月再逮捕され、勾留された。アブドゥルファッターフの両親はアンワル・サーダート政権下の人権運動家だった。妹モナ・セイフは2011年のエジプト革命当時ツイッター上でスターとなり、アブドゥルファッターフの勾留を受けて組織された「No Military Trials for Civilians(市民に対する軍事裁判反対)」グループの創立者でもある。アブドゥルファッターフの解放を求める運動はオンライン上で#FreeAlaaのハッシュタグを使って展開され、SCAF政権の不正が世界中で広く注目を集めるきっかけとなった。アブドゥルファッターフの息子、ハーレドは彼が身柄を拘禁されている間に生まれた。アブドゥルファッターフは12月に解放され、このインタビュー撮影当時は旅行禁止令の下にあったが、5月初めに彼に対するすべての容疑が取り下げられた。

アサンジは次のように述べる。

「アラブの春は実現しつつある夢なのだろうか、またはありえない空想なのだろうか。メディアの作り話は相手にせず、僕は直に現場の人間たちに話を持ちこんでみる。」

当番組は下記の多言語でご覧になれます
RT – English
RT – Arabic
RT – Russian
RT – Spanish
L’Espresso – Italian

編集前トランスクリプト(2時間50分)

ジュリアン:
やぁ、ナビール。

ナビール:
こんにちは。会えてうれしいよ。

ジュリアン:
こちらも。

ナビール:
君はアメリカ人にたくさん厄介ごとを持ち込んでいるんだね。バハレーンだけの僕とは違うね。

ジュリアン:
旅行の具合はどうだった?

ナビール:
会えて嬉しいよ。君はどう?

ジュリアン:いいよ。

ナビール:
すべて大丈夫だった。電話を切ろう。うん、すべて上手くいったよ。君のほうは?

ジュリアン:
僕は大丈夫。昨日はとても大変だったんだ。かなり疲れた。君はまだ聞いていないと思うけど、ある大きな企業から出たファイルを公開したんだ。

ナビール:
バハレーンのことで何か見つかった?

ジュリアン:
まだ分らない、実際のところ。かなりあるからね。君の名前を探してみたらいくつか報道記事があったけど…始めたばかりだし、今のところたったの0.001パーセントしか公開していないわけだし…

ナビール:
大仕事だね…ジュリアン…、で、全部終えるのにどのくらいかかるの?

ジュリアン:
多分4ヶ月くらいかかると思う。

[番組スタッフがナビールの準備を整える]

ジュリアン:
準備はできたかな?

ナビール:
どうなるのか教えてね。

ジュリアン:
そうするよ…

ナビール:
これ、録画しているの?いつ録画されているのか、されてないのか言ってね。

ジュリアン:
ずっと録画されるんだけど、多分この部分は使わないと思う、最初の画像で、椅子に座って挨拶する場面だ。それで次にアラーを待っているところで、アラーが電話かけてきたら始めよう、説明するよ…

ジュリアン:
アラーが向こう側でスカイプを用意していて、カイロにいる、彼はカイロの活動家だ。彼は2006年に何度も投獄されたし、最近もさらに投獄されたわけだけど、5カ月前にエジプトでとても有名になった「夢」という作品を書いた人物だ。その作品はエジプトの革命やタハリール広場で起きたことを、未来の国家という、ある理念を具現化したもの、エジプトのあるべき姿、として見ていて、この未来の国家の可能性というものをエジプト全体に、そして世界の他の地域に示す必要があった。だからその意味で、人々の前で物語を伝えるパフォーマンス的要素が不可欠だった。このタハリール広場での対立の中で彼らはある物語を語っていた、この物語でみんなに希望をもたらすためにね。だって、何かをやるんだったら、何らかの目的を果たすべきだろう?だから、ただ反対だとか、ムバーラク政権の汚職が嫌だというだけではないんだ。

ナビール:
僕らの国をどう築いていくのか、ということだね。

ジュリアン:
でも僕らはそれ以上のものを求めているし、それ以上のものを手に入れることができる、というのがアラーだ。そろそろ電話をくれるはずだ。…音声をチェックする必要があるんだよ、接続の関係でね…接続があまりよくないんだ。

ナビール:
それで、どのくらいの時間、僕らみんなで話すのかな、全体で。

ジュリアン:
そうだね…

ナビール:
僕はどのくらいの時間もらえるの?

ジュリアン:
うん、そうだな...

ナビール:
彼と話し続けるってことか。

ジュリアン:
礼儀正しく、普通にしていればいいんだよ。

ナビール:
そう、ずっとここに座ってるのかな。

ジュリアン:
そうだよ。そして「ここはどう思う?ジュリアン、アラー…」という風に聞けばいい…

ナビール:
なるほど、三人同士での話し合いなんだね?

ジュリアン:
そうだよ。で、誰かがひとつのテーマについて細かすぎる話をしてる場合には、僕が「こういう問題について話題を進めてほしいな」というかもしれないけどね、かなり気楽な感じだよ…

ナビール:
わかった。

ジュリアン:
ひとつの話題についてあまり長く話さないようにね。

ナビール:
焦点を当て、集中的にってことだね。

[番組スタッフが最終的な放送時間を伝える]

ジュリアン:
26分だ。そう。

ナビール:
そうなの?このために2時間も話すわけ?

ジュリアン:
[スタッフをさえぎって]だいたい1時間くらいかな、で、インターネット上で1時間分全部を公開するかもしれないけれど、テレビ番組としてはこの26分が放送される。こういう理由があるので、ひとつの話題についてあまり長く話をしないように、というか、僕が退屈そうな顔をしてるかどうか見たらいい…[スタッフ:止めるために触って合図してもいい]…僕が「この点はどうだい?」とか「アラー、それについて君はどう思う?」とかなんとか言うよ[聞き取り不可]

[スタッフ:ジュリアンは長い質問のリストがあるんです]

ジュリアン:
まぁ、実際のところ、かなり短いリストだよ…

ナビール:
君のツイッターのアカウントはアクティブなの?

ジュリアン:
僕はツイッターのアカウント持ってないんだ。

ナビール:
今日ひとつ見かけたよ。

ジュリアン:
それはウィキリークスのアカウントだよ。

ナビール:
いやいや、君のだよ。

ジュリアン:
ううん、それは偽者だ。

ナビール:
あれ、偽者って、本当に?

ジュリアン:
うん、その偽者アカウントには52,000人のフォロワーがいるんだ。それは偽者で、僕じゃない。誰か…

ナビール:
でも悪意があって、君の評判や名前を落とそうとしているのか、単に応援をしているのかな?

ジュリアン:
ううん、ただ単に…それを使って何か商品を売るとか、何かそんなことをしてる、だからそいつらは…

ナビール:
それで君はそれが偽者だって言ったのかい?

ジュリアン:
そうだよ、そう、あれは偽者だ。52,000人ものフォロワーがいるんだけど[聞き取り不可]…わからないけど、彼らは南米で携帯電話を使っているみたいだ…誰か南米の人がやっている。@JulianAssange_ …それで、僕らはツイッター社を相手に大きな訴訟を争わなければならなかった…僕らには商標があるんだけど誰かがその商標を横取りしようとしてたので、5カ月もかけて訴訟の戦いがあった…

ナビール:
とても複雑なんだよね、ツイッターって。僕も問題があってね…5つか6つの偽の名前のアカウントがあって僕の名前を汚そうとしている奴がいるからなぁ。

ジュリアン:
あぁ、実はそれについてぜひ君に聞きたいと思っていたんだ。フェイスブックとツイッターについて、ある時期を境にして突然バハレーン政府がそっちのほうに力を入れ出したことに気がついた、突如として政権支持派の人々から何千件ものツイートがあったけど、その一定時点の前にはそれがなかったんだ。

ナビール:
奴らはソーシャル・メディアを使うことにかけては一番頭のいい政府だ。

ジュリアン:
そうなの?ただの一般政権支持者たちのようには見えなかったし、違うんじゃないのかな?

ナビール:
PR会社なんだ。

ジュリアン:
プロパガンダか、そういえばプロパガンダっぽかったな。

ナビール:
そうさ、PR会社なんだ。やつらは一番賢い…

ジュリアン:
で、アカウントのいくつかは以前には存在しないものだった。

ナビール:
まさにそうなんだ、まず、バハレーンの国民はツイッターをとてもよく使うようになった、もしかしたらツイッター使用ではアラブ圏で一番活発な国かもしれない。だから僕がアラブ圏では四番目、自分の国では一番フォロワーが多いのもそのためだ。ツイッターが始まってから3年目に自分のアカウントを開いたとき、僕のツイートは200回とか300回くらいリツイートされていた、つまりバハレーンの国民がいかに活発なのかを示している。今、バハレーン政府は同じツールを学び、それを使って反撃しようとしているんだ。

[電話が鳴る]

ジュリアン:
OK、アラーからだ。

ジュリアン:
アラー。

アラー:
こんにちは。はい。まだ君のことが見えないよ。

ジュリアン:
すぐに見えるようになるよ。

アラー:
おぉ、今見えるようになった。

ジュリアン:
僕のこと見えるんだね、そしてここにはバハレーンからナビールが来ているよ。

アラー:あの…[アラビア語で話す]

ナビール:
そうか、お父さんの具合は?

アラー:
うん、元気だよ。

ナビール:
奥さんやご家族はどうなの?皆元気かい?

アラー:
うん、みんな元気、みんな元気。

ナビール:
顔が見られてよかった。僕らは君のこと心配してたんだよ。

アラー:
会えてとっても嬉しいよ。うん。

ジュリアン:
やぁ、今、彼は出獄してるけど、そんなに長くは続かないさ…

アラー:
長くは続かない、そうなんだ。僕らは誰も長くは娑婆にはいられない身の上だよね。

ジュリアン:
そうかもな、でも僕らには部屋代と食事が無料の生活が待ち受けているんだ。一生無料の宿泊施設がね。

アラー:
で、君はどこの国で投獄されることになるんだい?

ジュリアン:
うん、これは現在のところ興味深い疑問なわけさ、英国での在宅軟禁、英国でちょっとだけ収監されるかもしれない、もしかするとスウェーデンで投獄されるか、米国かもしれないな。で、君はどうなの?バハレーン?

ナビール:
僕はバハレーンをお薦めするね。

ジュリアン:
彼はバハレーンを薦めるんだって。

ナビール:
僕はバハレーンをお薦めする。

ジュリアン:
じゃ、ここで話をしよう…ちょっとだけこれから何をするのか、どういうことをするのか話をさせてくれよ。彼の言っていることわかるかい?

ナビール:
うん、大丈夫。

ジュリアン:
OK、それはよかった。で、アラー、僕らの言っていることわかるかい?

アラー:
うん、うん。

ジュリアン:
OK、よし。

アラー:
でも、君は英国アクセントになったりしないよね?どう?

ジュリアン:
[笑]いいや、僕は…でもオーストラリアの友達に言われてしまったよ…だんだんと染み付いてきてるなって、残念ながら。さて、これから…


ジュリアン:
録画が始まります…番組は25分…僕らは約1時間ほど録画します。できるだけ生で録画するつもりなので、「あ、そういうことを言うつもりはなかった、そこをカットして」というようなことはないようにしてください。そういうことはしないつもりなので。できるだけ切れ目のないようにしてください。それで半時間くらい経ったらさらにしばらく続け、もしその部分の会話で余分にいい材料があった場合はそこをカットして挿入するかもしれないし、時間があればその1時間分全部をインターネットで公開するかもしれない。まぁ、これはかなりの会話です。明らかに、この録画では君たちの話のほうが僕のことよりもずっと重要なんです。なぜかというと僕はいつもここにいるので…僕は君たちがどんなことを話すのかを聞きたい。実際、最初にこのアイデアが生まれたのも、僕が在宅軟禁の身の上でとても退屈になってきて、とことん退屈で誰か面白い人たちと話がしたいなぁと思ってね、じゃあ、お客さんをここに連れてくる方法を考えようということになったわけだよ。

ナビール:
僕らにとってもすごく面白いよ、君だけじゃない。

ジュリアン:
それでアラーのように、誰かをここに呼べない場合――アラーは国を出ることが許されてないんだ…君は国内軟禁の身の上なんだろう?または在宅軟禁なの?国内軟禁状態にあるのかな?

アラー:
うん、つまり…[聞き取り不可]

ナビール:
つまり、実際には在宅軟禁なんだね、僕も何カ月も旅行禁止だった。ありがたい事に、やっと国外への旅行が許されてから二、三カ月経ったよ。

ジュリアン:
まったく、本当にやっかいさ。旧ソ連圏に友達がいるんだけど――彼女は当時幼かった――その彼女は他の国の市民権を取得しようとしてて、彼女が「あなたにはわからないのよ、ジュリアン。わたしは他の国の市民権が本当に必要なの」と言ったので、僕はこう言ったものだ。「どうしてこんなことに無駄な時間をかけるの?」って。僕らにとってソ連は単に大きな監獄のように見えたんだ。この一連の国々というひとつの馬鹿でかい監獄――なぜならば外に出ることができなかったから。以前は監獄だなんて考えなかったかもしれない、全然外へ出たいなんて思わなかったかもしれない、でも誰かが壁を閉じて外には出られませんよと言ったら、だんだんそれが監獄であるように感じはじめる。

ナビール:
でも、同時に活動家としては…それが原因で世界中でもっと名前が広がるんだと思う。

アラー:
そうだね。

[音声の問題発生]

ナビール:
ちょっと待って…スピーカーがおかしいぞ…

ジュリアン:
こっちで音声の問題が起きてるんだ、アラー。なにか音楽が聞こえるな…そっちのほうで何か音楽が鳴っているのかい?

アラー:
礼拝の時刻を告げる詠唱(アザーン)だよ。

ジュリアン:
礼拝告知の詠唱か、わかった。2007年にカイロに住んでたことがある、たったの二、三カ月だったけど、よく覚えているよ…

アラー:
そうだね。[聞き取り不可]ナビールが見えない…ちょっと直してくれない...

[スタッフが設定を調整する。JAがアラーをスタッフに紹介し、アラーは自分のスタッフを紹介する]

アラー:
僕らはエメットのコンピューターを使っているんだけど、彼のマシンに米軍級くらいのスパイウェアがインストールされてしまったと今エメットは確信したんだって…

ジュリアン:
多分以前から入っていたんだろうから、心配しなくていいよ…

アラー:
すでにスカイプ使っているわけだから、そんなことは仕方がないよ[?]

ジュリアン:
じゃ、準備はいい?OK、では技術的な面で準備完了だね。では内容について話そうか…

ナビール:
君のほうを向いたほうがいい?それとも彼のほう?

[スタッフのアドバイス、カメラ外の会話]

ジュリアン:
ではいくつか話したいことがあるんだけど、まずアラブ圏の外にいる人たちは君たちのことについてほとんど何も知らないんだ。なので君たちの家庭での生活とか、どういう生い立ちなのか、[ナビールに]君は誰なのか、アラー、君は何者なのか、とかそういった背景について少し触れようと思う。そうすることで観てる人々もこれが人間同士の会話だと感じることができる…僕が人間と話をしているんだと、ただどこかのアラブ人とか、だれかエジプト人とかじゃなくて、実際に一人の人間と話してるんだってこと。

その後で今度は、君たちの活動がどれだけ君たちの家族や環境から生まれたものであるかという点についても話題を向けたい――君たち二人とも実際にとても興味深い家族の背景を持っているし、それは君たちがやっていることとなんらかの形で深く切っても切れないかかわりがあるように見える――おそらく君[ナビール]の場合は、家族の一部に反逆をしたわけだよね。アラー、君はカイロの徹底的な活動家の家族の出身だ――そして、次に僕はエジプトで起きていることとバハレーンで起きていることの違いやそれに対する反応について目を向けたいと思う。

エジプトは、アラブの春の見本というか、最も大きな役割を担った見本になるという風に評価されている。チュニジアは多分最も成功した、エジプトは今も陣痛みたいなものを体験しているところ、そしてもちろんバハレーンの場合は、活動家たちの大きな運動が打ちのめされたという失敗の例になる…

ナビール:
違う、それを失敗と言っちゃだめだ。失敗じゃない。失敗という言葉を使ってはだめだ、まだ完了していないだけだ。

ジュリアン:
まだ完了していない、わかった、そうだね。僕らにとって…僕が関わってきた…僕らの仲間には中東のアラビア語を話す人たちがいる…バハレーンの現場にいる人たちと僕らは関わってきた…とても酷いことが起きてた…彼らが追跡され、携帯電話が切られたり、とても酷い、辛いことになった。スカイプはまだ少しだけ使えるけど…ほんの少しだけね、そして何百人もの人々がバハレーンから逃げ出し、かなりの人々が拘置所に閉じ込められ、空港からロンドンの拘置所に送り込まれる人たちもいたし…。だから、それはなぜなんだろうかと考えたんだ。エジプト政府は崩壊したのに、バハレーン政府が未だに崩壊していないのはなぜなんだろうか。なんらかの…戦術的なことに関係があるんだろうか…

アラー:
エジプト政府は正確にはまだ崩壊したとは言えないよ、でも…

ジュリアン:
そうだね。一部…エジプト政府の一部――君のこの観点、つまりエジプトに重要な根本的変革があったのかどうかという君の観点はとても大切だ。どのくらい…

ナビール:
[スタッフに]あまり具合がよくない……あ、これでよくなったよ。

ジュリアン:
実際にどれだけ変わったのだろうか…

アラー:
うん、だけど今またナビールが見えなくなったよ。

[NBの調整]

ジュリアン:
では、実際にエジプトではどれだけの変化があったのだろうか…そして報道の問題だ、例えば、アルジャジーラによる報道にはバハレーンとエジプトで違いがある。この地域について現在サウジアラビアの役割は何なのだろうか。その後は…君たちが言いたいと考えている話題について話を進めよう、もちろん、君たちにとってこういった質問はそれほど興味がないかもしれないけれど、でも…この革命的期の背景にどんな要素があったのかということを見ていきたい。

そして僕は君の、アラー、君が5ヶ月くらい前に書いた『夢』というとても詩的なエッセイを読んで、タハリール広場での抗議運動に火をつけ力を与えたこの未来のエジプトへのビジョンについて話したい。そのビジョンは今でも生きているのか?それは必要なのか?バハレーンにも似たようなものがあるのか?どういうところにそれが見えるのだろうか。どこへ向っているのだろうか。そして…その他の小さな事柄についても話そう。例えば…僕がそのひとつを提供しようかな――イラクの役割、そしてイラクが民主主義を植えつけるドミノの最初の駒だと言ったネオコンの言葉の意味だ。

アラー:
まったくその通りだけど、彼らが考えているのとは別の意味でだよね。

ジュリアン:
実は、どうかな、君たちの履歴に行く前にこの話題で始めようかな…いや、僕は…まず君たちの家族の履歴について話すという方針を守ろうと思うんだけど。いや。いいよ、やっぱりこの議論満載の問題から始めたほうがいいんじゃないかと思う。そうしよう。では、チェイニーやウォルフォウィッツのような人たちが2003年に大量破壊兵器が理由でイラク侵攻をするべきだという見解を推し進めたわけだけど、それと同時にイラクに民主制を挿入し、イラクでの民主社会を見せることで、…他の国々にも民主制が広がるだろうという理由を挙げていた…だから今エジプトやチュニジアでの革命は連中のおかげだと主張していて、イラクに民主制を導入するというアイデアは彼らのものだったからだと言っている。で、…[ナビールに]じゃ君からどうぞ…

ナビール:
本当に、可笑しいよね、アメリカ人にはチュニジアやエジプトでの革命など思いもかけないことだったわけだろう。彼ら…アメリカ人たちはああいった革命のことなどまるで知らなかったし、チュニジアの革命の最後の何週間か、数日前になるまで自分たちがどういう立場を取ったらいいのかさえわからなかったのに…アメリカの革命だなんて、ひどいよ。米国で「我々は革命を支持した」と言っている人たちには異議を唱える。米国はエジプトの革命を支持してこなかったし、それは彼らがチュニジアの革命を支持しなかったのと同じだった。

でも、この革命が事実であり、必然的であり、自分たちの支援があろうとなかろうと、それが起きているんだと悟ったとき、米国は立場をあきらかにしなければならなかった、そして将来これらの政府と敵対するようなことになるよりは、最後の最後になって正しい方向に歩むことを強いられたわけだ。どんなエジプト人やチュニジア人であろうと、米国が彼らを支援したとか革命を支援したなんて考える人は誰もいない、なぜならばこれらの弾圧的独裁者たちは米国によって長年支援されてきたからだ。独裁者は米国によって強化され、権限を与えられてきたし、彼らは僕らの地域における米国の傀儡だったという事実がある。だから僕はそういったネオコンの主張には同意しない。

ジュリアン:
アラー、「アラブの春」を巻き起こした功績はすべて自分たちにあると主張するネオコンの見方について、君はどう思う?

アラー:
あのね、すごく可笑しいんだけど、僕はチェイニーの意見に賛成するだけじゃなくて、革命を起こした功績はベン・アリとムバーラクにもあると思うんだよ。イラクは、イラクに対する戦争は、イラクへの侵攻は…アラブ圏の人々を揺さぶり動かした。まったく肯定的な意味ではなくてね。実際のところ、本当に最後の…アラブ政権が持っていた正当性の最後のひとかけらが、イラクを守ることができなかったということで剥ぎ取られてしまった。 僕らが受けてきた講釈はね、少なくとも我々は国境を守っているんだから、民主制の欠如くらい受け入れるべきだというものだった。我々はアラブ世界の統一を守っているんだと、我々は侵略を狙うありとあらゆる帝国主義的権力に囲まれていて、我々は国民をそれから守っているんだという講釈だった。

だからイラク…つまり、イラクに対する戦争…そしてこういったアラブ諸国がいかにイラク戦争に加担していたかということ――実際に軍事基地を提供したり、場合によってはアメリカ軍を支援したりアメリカの軍艦を通すためにスエズ運河を開いたりしたわけだ。それほどのレベルの支援をしたわけだ…それはまさに見ての通りで、単なる仮説ではない。

実際、ムバーラク政権反対を唱えたカイロでの最初の巨大な抗議運動は、2003年3月21日、このイラク侵攻への反応として起きた。この革命は反戦運動の抗議として始まったんだ。人々は米国大使館に向って進もうとしていた。ムバーラクの警察隊は僕らみんなを滅茶苦茶に叩きのめした。街頭に何万人もの人々が繰り出していたから、すぐにムバーラクに対する抗議の呼びかけに変わっていき、カイロのダウンタウンにある与党の全国本部へとなだれ込んでいった。これはタハリール広場で起きたことで、それはもう…。たったの二、三日しか続かなかったので、とても小さな蜂起だったけれど、その後起きることの予備練習みたいな感じだった。だからね、ネオコンたちは確かに革命を起こす手助けをしたと言えるよ、彼らがどれほどの破壊をもたらしたかという点で、そしてね、単なる政権だけじゃなく、この国際的序列構造全体から自分たちを解放するには、もう革命しかないんだということをネオコンたちは示してくれた。

アラー:
あのね、アラビア語で「ニザーム」という言葉は、英語の言葉で「政権」という言葉を聞いて頭に浮かぶ意味よりももっと大きな意味があるんだ。だから僕らが「ニザーム」に対する抗議の声を上げているとき、僕らは世界秩序全体に抗議の声を上げているんだよ。

ジュリアン:
この地域出身の僕の友人の一人は、チェイニーは正しかったと、イラク侵攻は確かに「アラブの春」の一部に対する種を蒔いたと考えているけれど、それはチェイニーが考えているのとは別の意味でのことだと言っている。その友人の考えでは、米国がイラク国内のシーア派抑圧に失敗したことは、反政権勢力を抑圧できるほど米国は全知全能ではないということをMENA(中東・北アフリカ)地域の他の国々に対して立証したのであり、米国によって後押しされてきた各政権には地域の国内人口を完全に弾圧するためには米国を頼りにできないということを知らしめることになった。

ナビール:
まずね、イラクは今や民主国家だというのが事実だ。イラクが侵攻されたときの僕らの立場――あれは侵略だったと僕らは考えているし、アメリカはあの国を侵略する権利はない――でも現実としてイラクは現在民主国家であり、民主制を望み、独裁者の追放を望んだイラクの人々の意志によって行われたことで、民主制には肯定的な影響があるかもしれない、それはありうることだ、でもチェイニーやその他の人々…によって行われたこと、あそこで起きたことは違う…なぜならばアメリカ人は最初からこれらの独裁政権を変えることを望んでいなかった、彼らはエジプトの政権を変えたくなかった、あの政権を変えたくはなかった。つまりね…今、例えばバハレーンはそのよい見本だよ。イラクは僕らが考えている民主国家に一番近いかもしれないけれど、アメリカ人はバハレーンに今民主制が確立することに反対しているんだ。

ジュリアン:
でも君たち、両方とも、アラー、エジプト出身だろう?

ナビール:
僕はバハレーン出身のナビールだよ。

ジュリアン:
あ、ごめん。ナビール、君はバハレーン出身だ。それで、この二つの国の軌跡を比べるのは非常に興味深いんだけど、では、アラー、まず君の家族について話題を変えたい。君は由緒ある活動家一家の出身で、君の家族はこれまでにも君の活動を支援してきた。君のお父さんはカイロの著名な人権活動家で、君の裁判で君にとって有益な証拠を提出した。君のお母さんは君が勾留されたことに抗議してハンガー・ストライキをやった。君の奥さんと妹さんは熱心なブロガーで、エジプト革命の殉難者の一人から名前を継いだ君の息子ハーリドは、君がこの12月に拘置所にいたときに生まれた。こういった由緒ある血筋から、君がカイロで活動家の一人になるのがいかに自然なことであるか、わかりやすい。君は、自分の家族に反逆して保守派になりたいとは決して思わなかったのかな?

アラー:
う〜ん、いや。[笑]僕は反逆したかったんだよ…両親は70年代の大学の左派活動家出身だった。僕の父は実は共産主義者だったんだ。ちょっと君を脅かしてやろうか――僕の父は元テロリストだったんだよ、彼は武装共産主義者の地下組織の一員で、5年間留置所で過ごしたんだ。つまり、僕の両親は、人が組織的分派に属し、地下組織があり、すべてが秘密で行われていたという背景から来ている。…組織や動員の方法論でイデオロギーがとても重要な役割を果たしていたんた。だから僕が反逆したのはこの点なんだ。僕は、活動家になることについてはそれほど反抗しなかったけれど、でも…何か党派とか分派に属したり、秘密に組織したりとか、そういうことには徹底的に反逆したんだ。…だけど僕は2005年までは批判的で…彼らは失敗したプロジェクトに力を注いでいるというふうに考えていた。彼らのやっていることがよく分らなかったし…だから影響を…

ジュリアン:
君が言ってる…力を注いでいる彼らって誰のこと…

アラー:
ああ、僕の両親のことだよ。僕の両親、父と母のことを話しているんだ。で彼らはそれ以降も活動をずっと続けて…ごめん、ごめん、ちょっと話が飛びすぎた…それで、両親は70年代にそういうことに関わっていた。もちろん90年代の頃には話がまったく変わっていて、父母は人権運動に関わっている――母は実際のところ学問の自由について取り組んでいるし、両親とも拷問について闘っている、でもそれはいかにも小さなステップで、絶望的な課題であるように感じられた。だから僕は両親がやっていることにいつも尊敬の念を感じていたし、僕は常々何かに取り組みたいと思っていたんだけど、これがどうやったら実際に効果を上げることができるのかさっぱりわからなかったんだ…わかるだろ…でも実際に活動を続けたいという興味は少しずつ高まってきて、それはあの運動、あのイラク戦争が起きて僕が実際に群衆と出会うまでゆっくりと続いてたんだ。

丁度、70年代頃にエジプトで起きたいくつかの民衆蜂起があって、当時、僕の両親も若者たちの指導者で、そういった民衆蜂起を起こすために重要な役割を果たした、という話はずっと聞いていた。…だけど、そういった話は僕が生まれる前に起きたことだったから、僕の頭の中では大衆とか群衆とかは存在しなかったんだ。だって僕がそれまでに見たことのある一番大きなデモの群衆はたった数千人、多分二、三千人くらいだったから、カイロで何万人もの人々が集まって、警察隊に抵抗して、しかも単に警察隊の暴力にやられているだけではないというような場面を2003年に目撃したときには、さすがに僕のターニング・ポイントになったと思う。だから僕は運動の総論では反逆しなかったけれど、具体的な方法論の各論では反逆してきた。僕は正しかったと思うよ。

ジュリアン:
ナビール、君の場合はどう?君はどういう出身なの?

ナビール:
うん、僕は、バハレーンの国の歴史にも名を残し、王族の公然たる擁護者でもあるバハレーン最大のシーア派一族の出身なんだ。僕らの祖父の一人はポルトガルと闘って彼らを国から追い出した。その後で僕ら一族は王族擁護者になったので、現在に至るまでは確固たる政権擁護者一族、最大の王族支持者一族として知られてきたんだけど、僕は学校時代から人権擁護運動を始め、大学に行くようになってから今までずっと活動をつづけてきて、一家の厄介者、ブラック・シープなんだ。多分、僕は家族の中で一番過激な男かもしれない…

ジュリアン:
君の家族の他の人たちはどうなの?…何人かは…

ナビール:
今はね、みんな全員が動いている。つまり、一族のほとんど全員が政権擁護者から僕の側に移ってきたんだ。それに[言葉が重なる]

ジュリアン:
それは君がクロだったから家族にもクロの烙印が押されたの、または皆の意見が変わったの…?

ナビール:
ううん、みんな気がついたんだ…あの一族…支配者エリートたちが非常に圧制的だということにみんなが気がついた。政権支持派一族だからといって弾圧を免れるようなこともないし、僕が君と話しているこの瞬間にも、僕らの一族の子どもたちが何人か投獄されているんだ。一族の多くの親戚たちが投獄されていて、政権支持派であるとされていたにも関わらず、弾圧を免れることもない。バハレーンで過去二、三年ほどの間に起きたこと、多くの人々が殺され、拘置され、拷問を受け、攻撃の的になり、差別され、社会の隅に追いやられ――人、もの、家、モスク――の破壊、窃盗があった後で、バハレーンの国民の多くがこの政権はとても抑圧的で本当に悪い連中だということに気がついて、皆が動き出した。僕の家族以外の多くの政権支持派の人たち、以前は政権支持派だった各大臣の一族、各知事の一族など多くの家族が今や反対派に変わっている。

ジュリアン:
過去二、三週間に何かあったの?僕が君をここに呼ぼうと思って電話したとき、君は…牢獄に入れられていたよね、だから…

ナビール:
ああ、この前のことか…あ、あれはね、うん、僕は牢獄の中だった…僕は半日ほど勾留されていたんだ、抗議行動をしてたという理由でね。――僕は妻と子ども二人を連れて真珠広場に向って歩いていたんだよ。――で、その前の月は道で袋叩きにあった。二、三カ月前は覆面の治安職員に自宅から誘拐されて別の場所に連れて行かれた、目隠しされて手錠をかけられた後、拷問にあって、その後で自宅に放り返された。

ジュリアン:
それはいつのことなの?バハレーンの抗議デモの道筋、そこへ向っていたの?

ナビール:
うん、そうなんだ…去年の三月の後のことで、いつも僕が受けるような嫌がらせだよ。僕の家族、僕の妻や子どもたちもこういう嫌がらせを受けるんだ。例えば、昨日のことだけど、それにこれは君のせいでもあるんだよ。僕がツイッターのアカウントでジュリアン・アサンジに会いに行ってテレビの番組で彼と話をするって呟いたらね、昨日の夜、僕の家は武装して機関銃を持った約100人ほどの警官に取り囲まれたのさ。で、僕が家にいないということがわかったら、今日の4時までに検察官のところへ出頭するように僕に伝えろと家族に言ったんだ。だけど、僕はここにいるんだよ。

ジュリアン:
で、君は今日の4時にここにいる。

ナビール:
僕はもうここにいた。その電話は昨夜受け取ったんだけど、…僕は慣れている…

ジュリアン:
どうするの?

ナビール:
僕は帰るよ。だって、きちんと対処しなくちゃ。これは初めてのことじゃないし、これこそが戦い、これこそが自由、これこそが僕らが勝ち取ろうとしている民主制なんだ。それには犠牲がともなうし、僕らはその犠牲を払わなければならない、僕らがバハレーンで膨大な犠牲を払ったようにその犠牲はとても高くつくかもしれない、そして僕らが戦い取ろうとしている変革のために僕らはその犠牲を払うつもりだ。

ジュリアン:
アラー、君が書いた作品…

アラー:
あのね…

ジュリアン:
ごめん、いいよ…どうぞ、アラー。

アラー:
僕は家族について言いたいことがある。ある側面についてね――それぞれ個人にとって違った物語があるけど、エジプトの革命でこの側面についてみてきたし、それが今起こっている…ものすごい大きな出来事だし、単に活動というだけじゃなくって、これは革命なんだから、ね、家族も段々と何らかの形で動員されるんだよ――君の仲間になるとか、彼らと喧嘩になるとか、そんなことさ…それぞれ個人的な物語の一部で…皆からいろんな話を聞いている。

例えば、タハリール広場にいたある女性のことを覚えている、ムバーラクを退却させた最初の18日間の最初の座り込みにいた人だ…彼女はとても若い花嫁だったんだ、結婚したばかりのね…でも彼女はプロテスト、座り込みに参加してタハリール広場で夜を過ごしてた。彼女の夫はまだ確信を持てなかったのでそこにいなかった。だから僕らは彼女をからかったものさ、ムバーラクが失墜しなかったら君の家庭生活は危機に陥るよとか、結婚生活はダメになるぞとか、ムバーラクが失墜したら君はだんなを尻に敷けるぞとか、そんなことだけど、その一部は冗談ではないんだよね。実際にダイナミックスがそういう風になるんだ、で終わりのほうで彼が彼女に同行するようになった。それはいつもこんな風なんだよ、僕にとってね。家族のことと政治活動のことを切り離すことはできない、だからね、僕がプロテストにでかけるのは、結婚して家を出て、家族と一緒にやるにはいい活動だったからだけど、だんだん成長してね…

ジュリアン:
アラー、君はたとえ社会が変わっても今のようにムバーラク政権下と同じような社会なら、子供を作るに値しないと言ったらしいけど、気持ちが変わったんだね。

アラー:
僕は一度もそんなこと言ったことないよ。なぜ僕らが…僕とマナールが長いこと結婚していて子供を作らなかったかについて、他の人が下した解釈だ。僕は一度もそんなことを言っていない。

ジュリアン:
そうなんだ。で、何があったの?

アラー:
いや、僕らは、分らないよ…僕らは子供を持つことにそれほど興味はなかったし、お互いに合意していた、革命の時が来るまではね…でも2012年とか2011年頃には子供を作ろうとすでに決めていたんだけど、最終的な決定はしていなかった。それで、革命が始まって僕らはそれに参加して、なんて素晴らしいんだろうという発見をして、僕ら、よし、と決めた。子供をつくろうってね。

ナビール:
エジプトの革命はまだ完了していないよ。エジプトの革命はまだ完了していないんだから、残りの半分をやる必要がある、でその半分が終わったらもっと子供をつくらなくちゃ。

アラー:
そう、そう、そう、そのつもり、そのつもり。

ジュリアン:
僕らは今どこにいるんだろう…?現在の状況はどうなんだろう…現在バハレーンの動きはどうなの?

ナビール:
僕は三つの異なるステップがあると思う。チュニジアでは革命が完了した、政権を完全に打倒し、完全に新しいシステムが…

アラー:
チュニジアでは全く完了なんかしていないよ。

ナビール:
そう、では、エジプトでは革命は半分までいってるが、完了していないね、軍やシステムや政権がまだ存在する。そしてバハレーンの場合は、革命はまだ存在していて動いてはいるけれど、まだ何も達成していない、でも革命は今もその過程にある。一年経った今もまだ続いている。本当に多くの人々が殺された。割合でいうと、チュニジアやエジプトの人々よりも多くの人命が失われた。勾留された人の数でも割合からいうとチュニジアでの場合よりもずっと多いんだ。人々は仕事から解雇されたり、組織的な拷問を受けたり、殺されたりしているし、今、モスクが破壊され、家屋が略奪されている…

ジュリアン:
この…この…この[アラビアの帆船の帆を表す]6本の支柱を持つモニュメントを破壊するなんて…

ナビール:
そういう精神構造を示しているんだ、部族主義だ…

ジュリアン:
…なんというか、自虐的な9/11意識じゃないかな?だって、バハレーンの建築物でもっとも重要な建物を壊してしまったんだよ。

ナビール:
実際にはね、彼らは以前はシンボルではなかったそのモニュメントをシンボルにしてしまったんだ。だって今、人々が身につけているあらゆる服装にそのシンボルが描いてあるし、どの家に行っても真珠広場の絵や写真が額縁に入っている。人々は真珠広場のモニュメントをかたどって作ったアクセサリーを身につけはじめ、[モニュメントが描かれた]500フィルス硬貨を持っている人は闇市でそれを売っている――それもみんな、取り壊しという政府のとんでもない反応があったからこそなのさ。記憶を崩壊させることはできないんだ、歴史を解体することはできないんだ――存在、事実、現実なんだから。

じゃあ、どうするのか?作り出すのさ…人々は心の中でそれを強化させるんだ。そういうことを奴らがやったわけだよ。記憶はそこにあり続ける。だからみんな今その同じ場所に戻るために闘っている。僕も…僕と家族は一緒にそこへ歩いて行く、なぜなら奴らがあの場所をシンボルにしたからさ。あの建物を壊さなかったら、あの朝早くあれだけの人々を攻撃しなかったら、あの朝早くあれだけの人々を殺さなかったら、僕らにとってあの場所はシンボルにはならなかった、でも今や奴らはあの場所をシンボルにしてしまったんだ。ああいう行為は、政権の部族主義的精神構造を示している、支配政権、世界のこの部分を支配する奴らのね。残念ながら、僕らは10代目以来…二、三百年くらいの間、一族、独裁者によって支配されてきた地域に住んでいるわけだけれど、奴らの力は富によって、米国の支持によって、奴らの持っている軍隊によって支えられているのであり、国民からはまったく正当性を認められていない。他に何もない…国民から正当性を認められていないんだ――だけど、奴らが僕らを支配していることは現実であり、僕らがそれを変えることができないのは誰も奴らのことを話したがらないからだ。

ジュリアン:
アラー…アラー君、エジプトは今どういう局面にあるの?今朝気がついたんだけど…丁度二時間くらい前に読んだんだ――裁判官…NGOの裁判を監督していた三人の裁判官が辞任したそうだ。これはどういうことなの?

アラー:
うん、けっこう長い話なんだ。

ジュリアン:
概要を教えてくれよ。

アラー:
うん、うん、革命のことを話してから、このNGOの件について話そう。

ナビール:
でもチュニジアの革命はまだ完了していないって君は言ってたけど…どうしてなの?

ジュリアン:
どうしてなの?

ナビール:
どうしてチュニジアの革命はまだ完了していないの?

(2/3に続く)


参考リンクについては「3/3」をご覧ください。

*上記コンテンツの著作権はクリエイティブ・コモンが適応されます。コンテンツの使用条件は以下のようになります。

CC BY-NC-ND

CC(Creative Commons):以下の条件に従う場合に限り、自由に本作品を複製、頒布、展示、実演することができます。

BY(Attribution):表示―原著作者のクレジットを表示すること。
NC(Noncommercial):非営利―この作品を営利目的で利用しないこと。
ND(No Derivative Works):改変禁止―この作品を改変、変形または加工しないこと。


トランスクリプトへのリンク
http://worldtomorrow.wikileaks.org/episode-4.html
番組へのリンク
http://assange.rt.com/episode-four/comments/


本速報は、以下のTUPウェブサイト上に掲載されています
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=974


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

TUP速報 http://www.tup-bulletin.org/

配信責任者:坂野正明

TUPへの問い合わせ:
http://www.tup-bulletin.org/modules/main/index.php?content_id=8
過去の TUP速報:
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/

■旧Yahooメーリングリストによる速報配信は廃止されました。
freeML.com の新メーリングリストに移行をお願いします!
上の「TUPへのお問合せ」から「配信希望」と明記してご連絡下さるか、
または以下から直接御登録下さい。
http://www.freeml.com/tup-bulletin/

■TUP速報は、ウェブフィード(RSS)配信、フェイスブック(Facebook)
およびツィッター(Twitter)でもアナウンスされます。
http://www.tup-bulletin.org/
中の右側の"Follow us"の該当アイコンをクリックして御登録下さい。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【関連する記事】
posted by nfsw19 at 03:00| ロンドン ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | TUP速報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。