2012年07月08日

[TUP速報941号(2/3)] アラブの春その後−アサンジ連続インタビュー「明日の世界」第1回配信

アサンジと語る「明日の世界」エピソード4(TUP速報第1回配信)
(1/3からの続き)

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前書き・翻訳/ 宮前ゆかり:TUP (前書きは1/3をご覧ください。)
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アラー:
チュニジアの革命。うん、それはね…。どんな革命でも完了したということはありえないと考えている。革命の完了ということは、新しい正義の世界が創られたということで、そういうことはまだ起きていない。僕は南アフリカに3年住んでいたことがある、そこの革命はまだ完了していない。もちろん敗北したんじゃない、革命には完全に勝利したんだからね。でもニーズというものが未だにあるだろう?まったく違った生活に対するニーズがね。

チュニジアで起きていることは、あそこの政権はエジプトやバハレーン、またはリビアやシリアの政権よりもずっと賢いということなんだよ。あそこの政権は、権力を放棄しようと決めた、だから権力は選挙で選ばれることになり、国民は元の生活に戻って路上から去っていくわけだ。でも失業率が高く、労働者の権利なんかも…窓の外に放り投げられるような社会秩序の下にあって、戦略的外交政策やその他の決定事項は、本物の――言葉はなんだっけ?――本物の主権に基づくものではないんだ、わかるかな、そういった決定はチュニジアの利害に関わっているどんな実質的な独立層にも地盤がない、そしてその代わりに国際的…

ジュリアン:
[アラーの言葉をさえぎって]なぜ、チュニジアはシリア承認を止めることにしたんだと思う?

アラー:
シリア政府という意味かい?

ジュリアン:
そう。

アラー:
ううん、チュニジアは選挙で選ばれた政府だからだよ、もちろん。いや。つまりね、僕は、選挙で選ばれた政府は意味がないと言っているわけじゃない、意味はあるよ、だけどそれは単なる改正だ、小さな改善だ――いや重大な改善さ、でもそれは実際の国民の願望にまで至らないものだ。

チュニジアの支配階級または支配特権クラスの人々はごく初期の頃からとても賢かった、わかるかな、ベン・アリは早いうちに逃亡した、ムバーラクなどのように打倒されるまで待たなかったんだ。彼らは一貫して賢い動きをしていたけれど、革命はまだ終わっていない。チュニジアでは最近ストライキがあったんだけど、選挙で選ばれた政府に攻撃されたんだ。抗議運動には、両方の勢力とも、サラフィストも――サラフィストの抗議は宗教問題に関するものだ、そして労働組合による抗議行為も…

ジュリアン:
アラー…

アラー:…攻撃され、催涙ガスで打ちのめされたりして、それがまだ続いている。

ジュリアン:
現在エジプトで起きている状況はどうなの?エジプトにはものすごく大きくて強力な派閥があるし、複数の企業があるし、独自の経済を持つ軍組織がある。エジプトには当初から革命運動に関わってきた人々がいるし、ムスリム同胞団、コプト正教会がある、これらすべてがどんな風に動いているんだろうか?

アラー:
まずね、18日間[続いた革命]の出来事はかなり意外な出来事だったし、ムバーラクがあんなに素早く退却するとは思わなかった、犠牲は高くついたけれども、僕らとしては犠牲はそれよりもずっと多くなるのではないかと考えていた。だから、エジプトで何が起きているかというと、僕らがこうなるだろうと予測していた出来事、つまり僕ら皆が考えていたのは、革命は多分一年くらいかかるんじゃないだろうかということだったから、ムバーラクを倒すのに一年はかからなかった分、軍隊とのことで今それが起きているわけなんだ。

人々は最初の頃、軍隊は介入せず政権側を擁護しないことによって、団結と社会的地位を挽回することに決めるかもしれないと考えていた。だけど、実際には軍隊こそが政権の中枢なわけで…だからこの革命は今や軍事政権の支配に抗う革命であり、もっと深いところに入っていっている…つまり、現在の目標はただ単に軍事委員会――将軍たち――を支配階層から追い出すことだけではなくて、文民が就任すべきすべての地位からあらゆる軍人を追い出すことであり、選挙で選ばれた権限に軍隊を従わせることであり、軍隊から経済的権力を剥奪することによって、軍が国家の中にある国ではなくなるようにすること、軍は行政権が持つ単にひとつの手段でしかなくなるようにすること。こういったことは膨大な仕事です。

これは一度にすべての権益を敵に回すということだ。そしてあきらかにそれは実際にはアメリカの権益――そしてサウジ・アラビアの権益――のことであり、彼らにとってエジプトが軍事政権の手中にあることが戦略的に望ましいわけだ。例えば、国防に関する決定事項とか、スエズ運河のこととか、イスラエルとの関係とか、外交政策とか、国内の治安とか、エジプトが「テロとの戦争」に関わっているのかどうかだとか、――彼らにとっては、こういったすべてのことが諜報機関、軍隊によって掌握されている必要があり、選挙で選ばれた[文民の]権力の手に入らないことが望ましい。だからこういったことがこの闘いの本質だ、難しいことだ…人々が殺されているんだ…

ジュリアン:
でも…現在あの革命勢力はどうなっているの?君たちを支えた…サッカー・クラブ、あのウルトラ団[フットボール応援団]、組合、そういったグループは今どこにいるのか、何をしているのか、君はどういうふうに捉えているんだい?この人たちは解散したのか、今でも特定の方向に向って改革を推し進めているんだろうか?逮捕されたのだろうか?ムスリム同胞団は逮捕されたの?

アラー:
ううん。ムスリム同胞団は革命からはほとんど降りてしまった。彼らは選挙で議会に参入し、今は軍隊とアメリカと交渉することとか、ものすごく緩やかな改正とか、権力取得、つまり選挙を介した権力取得だから彼らにその権利はあるんだけど、そういうことに興味を持っていて、でも活動だとか、対立だとか、革命の継続などといったことには興味がない。彼ら…組織のほとんど…例えば公式の政党などはもしかするとムスリム同胞団よりはもう少し批判的な立場を取っているかもしれないけれど、でもそういった組織は、なんというのかな、革命的な行動はしていない。もっと小さな、あまり政治的ではないけれども組織されたグループ、例えばフットボールのウルトラ団、フットボールのファン――独立したフットボールのファン組織は警察との路上での戦いでは王者だった――そういった人たちは今もまだ強力だし革命に力を入れていて、今は警察に追われたり拷問されたりしているんだ。

アラー:
で、労働組合はね…独立労働組合というのは新しい現象なんだ…革命の前はたった三つの組合しかなかったんだけど、今は100とかそのくらいあって、いまだに増えている。まさに今日起きたばかりのことだけど、裁判所の書記たちが起こしたストライキがあって全国の裁判所がすべて閉鎖されてしまった。そういったことが続いていて、最近の動きだし小さいけれども増えている。それから今は学生運動も広がっているんだ。学生運動はエジプトの歴史で常に甚大なる役割を果たしてきた。今、学生たち…そして若者たちこそが革命なんだけども、ここで僕らが話しているのは、実際に大学や高校の内部で起きている組織化された学生運動だということ、だから単に学生たちが抗議運動に参加しているということじゃなくて、学生たちが実際に自分たちで意思決定の仕組みを組織し、それを形作っているということだ。

ナビール:
君の言ったこと、ちょっと…まとめてみようよ…

アラー:
それに、地域住民委員会なんかもあるんだ。でも…

ジュリアン:
そうだ、アラー、思い出したんだけど…

アラー:
ごめん、言いたいことがある…

ジュリアン:
ごめん、続けて…

アラー:
君の言葉を遮ったのは、言っておくべき点を明らかにしたいからなんだ…こういったあらゆる派閥や多様な組織グループはね、革命のほんの小さな部分でしかないという点だ。そして最も大きな…革命の実体というのは、まだどのような公式の構造にもまったくつながっていない。それは、集って、抗議デモに行ったり、ストライキしたり、はっきりした指導者が誰もいない山猫ストをしたりしている大群衆のことだ。そしてこういった群衆は街頭の戦いにもわざわざ乗り出してくる。だからストライキ、座り込み、街頭闘争がある――これがこの革命だ。それで、これがいまだにとても優勢なんだ。これが政権を揺るがしているし、大きくなっていて、小さくはなっていない、実際にどんどん膨らんできている、でももう一年も経ったしいつまでもこんなふうに続けていけるのか、またはもっと正式な組織に移行する必要があるのかどうか、人々は考え始めている。僕の考えでは、こういった正式な組織はまだ何も答を示していない。僕が話してきたような独立労働組合とか学生運動だとかは、いわば興味深いおまけみたいなもので、確かに拡大しているし重要な役割を担うはずだけど、でも政党な
どは決して解決策にはならないと思う。だから、僕らはこの膨大な社会運動が道筋を明らかにしていくこと、…もっと素早く意思決定をするのを待っているんだ。なぜならば、現在この運動はあまりにも有機的で意思決定にはものすごく時間がかかる。こういう暴徒、こういう集団、こういう部族、こういう群衆、彼ら大衆、民衆によるこういうあらゆる現象は消滅するかもしれない。

[AEのスタッフ、カード交換のために休憩必要]






ジュリアン:
いいよ。そこで止めていい…カードを入れ替えるのを待ってるから。

アラー:
僕ら…この点については言いたいことは言ったよ。要点は、無秩序な革命というのが革命だってことだ、それがどうなるかわからない…僕はそれを信じているけど、それがどこへ向っているのかわからない…

ナビール:
でも問題はね…

ジュリアン:
何…あ…続けていいよ…

ナビール:
エジプトの完全な革命を減退させている問題は、イエメンがそうだったように、既存のプロセスに追従して政権との妥協を望む従来の政党という、現在エジプトが直面している問題、イエメンが抱えるのと同じ問題だと思う。一方で、革命を完成させたいと願う若者たちの、真剣な若者たちの運動がある。問題は…、確かに彼らはとても強靭だし街頭での活動も活発だけど、何年もの間存在してきた政治党派ほどきちんとまとまっていないため、エジプトやイエメンでは、こうした政党がこの事情を利用しているということだ。政治グループ、政党はそれに乗じてシステムどおりの道を歩み、妥協の道を歩んでいる。バハレーンでは、僕らは既存の伝統的グループ、政治グループなどと若者たちの運動との間にあるギャップを最小限に抑えることができた。僕らはこの距離がとても緊密になるように努力しているし、ほとんど近い関係にある――彼らはひとつの言語で話しているし、要求もひとつ、ひとつの屋根の下にいると言ってもいいかもしれない、だけどエジプトではいろいろ違った声があって、街頭にいる人々は…

ジュリアン:
でも、どちらの場合も…権力構造の外に追いやられている――バハレーンの政治グループは…

ナビール:
両方とも――もちろん、それが権力の外に置かれたひとつの理由なんだ、両方とも…






ジュリアン:
ところで、…バハレーンの革命グループやこういった抗議運動を支持する人々はけりをつけてしまったのだろうか?おそろしくて行動できないでいるのだろうか?バラバラにされてしまったのか?それとも無関心になってしまったのだろうか?まだ残っているのはどういう人たちなの?どんな人たちがまだ前に進むために闘っているの?

ナビール:
うん、いまだにたくさんの人々がいるよ。例えばね…バハレーンの人口の半分がひとつの抗議行動に繰り出したとしても僕は驚かないだろうし、君も驚くべきではないと思う。未だにこの運動は生きている。どんな革命においても起きていないようなことがあるんだ。過去50年の歴史の中で起きたどんな革命でも、ひとつの街頭デモに人口の50パーセントが出てくるなどということはなかった、だけどバハレーンではそれがきっと起こるはず。残念ながら、多くの国々でまかりとおっているダブル・スタンダードのおかげで、例えばアルジャジーラなど多くの国営チャンネル、アル・アラビアとか、その他ヨーロッパのチャンネルによるダブル・スタンダードのおかげで、メディアはこのことに焦点を当てることはないけれど、デモに人口の半分以上の人々が街頭に繰り出したということ、これが現実であり、これが事実だ。たしかに…奴らはたくさんの人々を殺し、多くの人々を勾留したけれども、現在まで僕らには多くの人々が味方についているし、しっかり結束しているんだ。

ジュリアン:
アルジャジーラはなぜバハレーンの取材をしないのか…言い方を変えよう…バハレーンにおける抗議運動についてアルジャジーラの報道はどうなんだろうか?

ナビール:
アルジャジーラはエジプトでは積極的だった、チュニジアでも積極的だった。実際のところ、アルジャジーラは、アラブ圏での革命にとって、それが確かな革命なのかどうかを示す合図のようなものだった。アルジャジーラがこれらの革命を報道するのであればそれには信頼性があるということになる、でもバハレーンについてはアルジャジーラは沈黙した。僕が話しているのはアラビア語のアルジャジーラで、英語版のことではない――英語版はまったく違う。

ジュリアン:
うん。英語版はよかったと思うけど、どう?

ナビール:
まだそれなりに限界はあったけれど…よかった。アラビア語版は、完全な沈黙だった。実際、多くの地域で彼らは政府側についたんだ。

ジュリアン:
どうして?

ナビール:
どうしてって?それは、彼らが似たような支配層の一族で同様な地域の出身者だからだよ。バハレーンに民主主義が実現すると、それは[アルジャジーラのある]カタールに影響を及ぼすし、アル・アラビアのテレビ・チャンネルを持つサウジ・アラビアにも影響を及ぼす。

ジュリアン:
じゃ、サウジはどうしてバハレーンに軍隊を送り込んだの?

ナビール:
それは…これについては、どんなことが起きたかについて全世界が声をあげて糾弾すべきことなんだけど、どの国も、一言も声を上げることなく、サウジが僕の国を侵略するにまかせた。今度また同じ各国政府がリビアの政権と戦うために軍隊を送り込み、次にシリアのアサドに攻撃をする――その必要があるのかもしれないけれども――でもバハレーンになると、彼らはまったくの沈黙を守るんだ。サウジと軍隊と…

ジュリアン:
バハレーンの活動家シーア派がサウジに広がるのを怖れていたのだろうか?

ナビール:
いや、サウジは米国やヨーロッパに対して大きな影響力をふるっているからだよ。米国の権益のため、多くのヨーロッパ諸国の権益のため、武器取引のため、原油の流通のため、相互利益に対する影響力があり、多くの国々にとってそういったことはバハレーンの人権よりも優先度が高いわけだ。例えば、シリアに武器を売るなとロシアに要求した同じ米国がだよ、バハレーンに武器を売っている。トルコ政府は、支持しなければならない立場にあってロシアの革命を支持しているけれども、その同じトルコ政府がバハレーンに戦車を売っていて、それを隠そうとしていた、今日になるまでバハレーン政府を支持しようとしていたんだ。昨日は人権委員会の米国代表が「バハレーンは自ら改善を行っており事態が良好なので、このセッションではバハレーンについて討議しない」と発言したんだよ。みんなどこを見てるの…今こうやって僕が君と話している間、二、三時間前に、一人の男が催涙ガスのために死んだ。僕らの国で…毎日人々が死んでいるんだ。

ジュリアン:
イランは…革命勢力を煽っているの..?

ナビール:
それが政府の言っていることさ。それが米国政府が信じようとしていることだ、だけど何も根拠がない…革命勢力には何も[聞き取り不可]…

ジュリアン:
聞いたかな…?およそ8ヶ月前にバハレーンの抗議デモがあった頃の大使館公電を読んだんだけど、僕が公開したこの米国大使館公電によると、バハレーン政府高官が米国大使館にやってきて「いいですか、バハレーンの人権要求の動きの背後にはイランがいるんですよ。イランがバハレーンの抵抗勢力に資金や武器を注ぎ込んでいるんですよ」と伝えたことについて、ワシントンに報告書を出した米国大使は、それが真実であるという証拠は何も見つからなかったと書いている。こういう主張がずっと続いている…この主張がずっと続いているけれども何年経ってもまったくその証拠が見つかっていない、と。

ナビール:
そう、そう。それによく似た、少なくとも一通の公電には僕のことが書いてあって、政府職員の一人が米国大使館に出かけ、ナビール・ラジャブはイラン政府から資金を受け取っていると言い、米国大使館の職員は国務省にそれは真実ではない、根拠はまったくないと伝えている。でも…

ジュリアン:
イランに対する恐怖を煽っていることが、西欧の支持を妨げている主な理由だと思うかい?

ナビール:
バハレーンには第五艦隊司令部が置いてあるように、西欧諸国はバハレーンの安定を望んでいることは確かだ。バハレーンがひっそりと平穏で安定していることを望んでいて、この革命はそういった安定を崩している…

ジュリアン:
第五艦隊はバハレーンの港に司令部を置いており、それはイランのすぐとなりにあるわけだろう?

ナビール:
そうなんだ。だから…分りやすい言い方をしてみよう。ムバーラクを失ったということ…チュニジアのベン・アリを失い、エジプトのムバーラクを失ったということは、サウジ政府を非常に怒らせた。ほら、電話で喧嘩があっただろう――サウジ国王とオバマとの間でね?だからバハレーンのことでは、サウジとしては絶対に避けたいことがある――バハレーンの革命だ。国境の目と鼻の先なわけだから、サウジ・アラビアに悪影響を及ぼすことになる――だからこそ、サウジはバハレーンに軍隊を送り込んで弾圧に手を貸し、人々を殺し、勾留した。そしてサウジが手を貸した血みどろの弾圧は…国際社会が完全なる沈黙をまもった中で行われた。そう、サウジは民主制を望んでいない、そう、カタールはシリアやその他の地域での民主制推進を望んでいるけれども、カタール国内での民主制は望まない――その地域を、あたかも自分の農場や会社であるかのように、この地域全体を動かしたいんだ。現時点では、この地域はこういった一族が所有する企業であるかのように支配されている。

民主制になれば、こういう仕組みを止め、国民に意見を聞く必要があるし、権力を共有しなければならない、富を分かち合わなければならない、そんなことをこれらの国々の政府は受け入れないだろう?だから、米国はサウジの顔色をうかがっている。サウジが大きな影響力を振るっているのは…サウジは二、三カ月前にあった最大の武器購入によって、米国の沈黙を買い取ったからね…

ジュリアン:
これはバハレーンとの取引?それともサウジとの取引なの?

ナビール:
サウジとの取引だ…

ジュリアン:
そうだった――800億ドルとかの規模だ。

ナビール:
バハレーンのことで沈黙を守ることは、バハレーンの機嫌をとるというよりはサウジの機嫌をとるということなんだ。

アラー:
でもこれは米国の権益の問題でもある、それはすべて国際的権益の問題だということをここで明らかにしようよ。民主的アラブ圏は軍事基地を許さない、外国の軍事基地を圏内に置くことを許さない、軍艦がスエズ運河を通過することを許さない、石油の売却とかそれについて影響力を振るうこと…その決定…なんと言ったらいいんだろうか、石油企業による石油掘削などを許さないだろうし…。多分、誰にいつどのくらいの量の原油を売るか、さらに一部は将来に備えて取引するかとかいったことに関わる政策は、急激に変わるだろうな。それに、人々は戦争には興味がないという意味ではイスラエルとの平和を望むだろうけれど、イスラエルと友好関係は持たないだろうし。だから民主的アラブ圏は戦略的政策の観点からすると完全に違ったものになるだろうし、米国の国益のため、欧州連合の利益のためにさえ、さらにイスラエルの国益のために、この地域での民主制が実現しないように全力を注いでいるわけで、各政権はそれを理解している。そしてアラブ諸国の政権は、これら諸外国の権力の代理人となることによって自分たちの財産や権力を構築し、今ではサウジ自身が自らを代弁できる
ところまで大きくなった。もちろん諸外国に比べたらそれほど力はないかもしれないが、守るべき独自の権益を持つようになったため…

ジュリアン:
アラー…

アラー:
…サウジは米国に似た立場で交渉したり、圧力をかけたり、議論するようになった。

ジュリアン:
アラー、覚えていると思うけど、エジプト革命が絶頂だった頃、ジョセフ・バイデン[米国副大統領]によって、国務省によって、ヒラリー・クリントンによって、エジプトの国内諜報機関の長官スレイマンがムバーラクの代わりとなる人物、妥協的人物として推薦されたときに、僕らは彼に関する大使館公電を公開し、イスラエルとの関係についての彼の立場や彼の米国との関係について、そして彼が…拷問の責任者であることなどについても…

アラー:
つまり拷問に関することだね…

ジュリアン:
そうだよ、だけどね、スレイマンが成功しないだろうということが明らかになった直後に、ヒラリー・クリントンが態度を翻してエジプトの革命を褒め称えはじめた。そしてエジプトやチュニジアの革命は、実はツイッターとフェイスブックという素晴らしい米国企業のおかげだと言ったんだ。[全員爆笑する]君は多分何度もこのことについて耳にしたと思うけど、僕は例のサッカー・クラブ、ウルトラ団のハンドブックを読んでたんだ――彼らの役割についてちょっと説明してもらえるかな――それで、このハンドブックの最初のページには、逮捕されるから「ツイッターやフェイスブックは使わないように」と書いてあるし、最後のページにも「ツイッターやフェイスブックは使わないように」と書いてある。エジプトの人たちは[ヒラリーの]この主張についてどう思っているのか、少し話してもらえないかな、なんらかの真実があるんだろうか?





アラー:
うん、わかった。そうだね、よし、ひとつずつ説明する必要がある。まず、革命には…何をどう語るか、という「語り方」をめぐる戦いというものがある、ということに気がつく必要がある。革命というのは、理念に関する出来事なんだよ、つまり、街頭に繰り出し体を張っている人間の数や銃弾その他のことであるのと同時にね。だから、革命に関しても「語り方」をめぐる戦いがあるんだ。

転換が起きたとき、つまり、米国が公式に革命を讃える立場をとり始めた時、国営メディアを含むエジプトの公式報道機関や政府代表者の論調にも変化が起きたし、その時、軍事政権の支配者たちもその話題を持ち出し始めた。この「語り方」をめぐる戦いの中でも最も重要な点は、この運動がいかにもフェイスブック系の若者たちのことであるかのように革命というものを矮小化しようとする試みがあったことだ。これは、若者たちが革命にとって重要な役割を果たさなかったと言っているのじゃないよ――もちろん彼らは重要な役割を担ったさ――でも革命の一側面を丸で囲って、これこそが本物の革命だ、他の連中は本物じゃない、などと言うことで、いろいろなことをないがしろにすることになる。階級意識の問題や、身を守るために人々がどれほど暴力をも辞さなかったかといったことが軽視され、革命の主導勢力を分断隔離することになる。だから、裕福な中産階級で高等教育を受けた、インターネットでつながっている若者たちが革命に重要な役割を果たしたんだ、という話になる。若者たちは、もちろんきわめて戦術的な理由で、革命のシンボルになった。全世界にエジプトの革命を
熱烈に支持してもらうことが必要だったからね。

だから、ウッドストックみたいな、でもドラッグやセックスなしのこのタハリール広場のお祭り騒ぎはね、とても素晴らしくて、驚きに満ちていて、ものすごく感動的で――そしてとても本物だった、あそこには幻想のひとかけらもなかった、…それがタハリール広場のお祭りだった…でもそういう物語を語った場合…タハリール広場についてそれは間違ってはいないよ、でもエジプトの革命について、こういう素晴らしい若者たち――見栄えもよくて、恵まれた若者たちがタハリール広場に集ってやったことだという物語にしてしまってそれを語ったとしたら、労働者たちを疎外することになるし、街頭での攻防戦を無視することなる、僕たちが自分たちの身を守るためにどれだけ暴力を行使しなければならなかったかということも見過ごすことになってしまう。もちろん、そうじゃなかった…あれを暴力という言葉で表すのは間違っている、だって機関銃を撃ちまくる武装戦車に向って石を投げる行為を暴力と呼ぶべきではないと思う――でも僕が言いたいのは、革命の外にいる人々が中で起きていることを想像しているようなシナリオに僕らはけっして従っていたわけじゃないということなんだ


だからヒラリーは単に米国の企業を押し付けていただけじゃなくて、彼女はこの革命を止めるために考えられた語り口を押し付けていたということなんだ、革命が決してムバーラクよりもっと深いところへ向わないようにするためにね。うん、だからこそ、この話はとても議論を呼ぶ問題なわけさ。ツイッターやフェイスブックはとても便利だよ、…でもこれがどれだけ便利かなどと僕が話したことによってこのツールが革命を壊すために使われるようなことがあるならば、僕はこれらはまったく役に立たないと発言したいな。でも実際には…ツイッターやフェイスブックはとても役に立ったんだけどね。

ジュリアン:
ナビール、バハレーンでのフェイスブックやツイッターの現状について話してもらえるかな。というのも、このミーティングのために今朝リサーチしてたら、政権支持者が作ったフェイスブック・ページに、政権側が活動家を追跡しやすいようにバハレーンの活動家たちの顔写真がたくさんリストアップされていたのを見たんだ。どういうことが起きているんだい?

ナビール:
うん、まず、バハレーンはアラブ圏の中でもツイッターの使用では最も活発な国だということを知る必要がある。僕らはチュニジアの人たちから学び、エジプトの人たちから学び、僕らの革命のためにツイッターやフェイスブックを使う知恵を学んで賢くなった。同時にツイッターやフェイスブックやソーシャル・メディアを使うということでは、政府は僕らと同じくらいアラブ圏で最も賢いわけで、君が観察したことはそういう現象の一部だ。政府は、米国、英国、ヨーロッパのPR企業の10分の1を雇って、いろんなアジア諸国やアフリカ諸国から何百人もの人間たちを連れてきて、日夜休むことなくソーシャル・メディア、ツイッターやフェイスブックに力を注ぎ、偽の世論を作り出し、世論を誘導し、バハレーンで起こっている出来事とは違った物語を展開することで、バハレーンで起きていることの現実や事実を捻じ曲げている。

でも、これほどの労力を費やしても、何百万ドルものお金を費やしても――政府は何百人もの人々に投資したんだ――、現実は明らかになる、事実は明らかになる。活動家たち、無報酬の活動家たち、ボランティア、少数のボランティアが現実と事実を国際的な場面に持ち出すはずだ…だからだよ…僕が今日ここで話しているのは。…僕はPR企業などないし、僕には雇っている人もいない、でも一生懸命真実を求めるならそれは見つかる。政府にはこの作業をやっているたくさんの会社があるけれど、失敗した…でも彼らは賢いし、…

ジュリアン:
君には5つの偽アカウントがあるんだよね…

ナビール:
僕には5つ…6つの…偽アカウントが作られている――ツイッターとフェイスブックでね…

ジュリアン:
君のふりをしているんだね…

ナビール:
僕のふりをして英語やアラビア語で悪い言葉を使って…それを信じる人もいるけど今はフォロワーの数をみてこれは本物のナビールじゃない、これは本物のナビールだ、ということが分る。それでも…闘わなければならない…これが新しい体制だ――政府のソーシャル・メディア、ツイッター、フェイスブック。90年代、じゃなかった、70年代にはいろんな革命があったけど、残念ながらあの時代の人たちにはこういう手段はなかった…

ジュリアン:
二人に質問したいことがある…一時期テクノロジーが民主化されるとき、または新しいテクノロジーがその枠組みに参入する場合――例えばインターネットが比較的新しいテクノロジーだった頃、またはフェイスブックやツイッターやウィキリークスは新しい出来事だね――そんなときにある人々は素早く動き、素早く適合する――そういう人々は若い人たちだ、紐付きの社会構造にまだ束縛されていない人たち、自分の地位を維持するために全力を注いでいない人々、彼らがこのテクノロジーを受け止めて素早く適合する最初の人々だ。でも、既存の政権がその重要さを理解し、それが静的で変化しないことをみてとったときにはそれに全力を投入しはじめる、学習は遅いけれどリソースはより大きい。バハレーン政権はフェイスブックやツイッターを征服するだろうから、人々はもっと新しいテクノロジーに移行すべきだと思うかい?

ナビール:
そうだね、チュニジアではツイッターもフェイスブックも閉鎖になった。エジプト政府はインターネットを遅らせようとしたり、インターネット全体を閉鎖しようとして…

アラー:
でもそれは完璧にはうまくいかなかった…

ナビール:
…完全に切り離そうとした。バハレーンでは、すべてのツイッター活動家たちに的を当て、逮捕したし、その何人かは拷問されて死んだ。だから、どこでも政府はさまざまな手段を使う。そしてバハレーンの人々の多くが仮名や秘密の名前を使うようになったのはそれが原因なんだ、でも同時に、良いことも起きている――バハレーン人の大部分が革命のおかげでインターネットの使い方やソーシャル・メディアの使い方を学び始めたんだ。肯定的なことと否定的なこと。でも肯定的なことは、僕の一族の少なくとも20パーセントがインターネットやソーシャル・メディアの使い方を学んだ…すごいよ、全員さ、僕の母さんもだよ…

ジュリアン:
うん…そうなんだよ、僕の母だって今や、僕のことが原因でツイッターやってるよ。

ナビール:
うん、うん、僕の母さんは年齢80歳を超えてるんだけど、彼女がね「ツイッターを電話につないでおくれ」って言ってた。母さんはわかってないんだけど、一緒にいる人に「何が起きてるのかチェックしてちょうだい。誰か何か書いているかい?」ってね。こういったことは前にはなかったことだ。誰もがインターネットを使っている、誰もがね…今、革命が起きているからさ。

ジュリアン:
アラー、タハリール広場での抗議運動のときにあった、インターネットの接続を維持したり、回復させるための戦い、電話システムを復元させるための戦いについて話してくれないか。ISPが一社、人口の6パーセントをカバーしていた。

アラー:
うん、6パーセントあったかどうか確かではない。6パーセントのコネクティビティがあったけど、実際には個々の接続ユーザーは非常に少なかった。

ジュリアン:
でも、あの展開について話してもらえるかな。すべてが接続されていたのに、少しずつ、時間が経つにつれて接続が切断されていった…

アラー:
[言葉を遮って]そう、だから…情報の流れを確保するために、継続的な戦いがあった。僕らは国の外で情報を動かすようなことには焦点を当てることはなかったけれど、革命は複数の都市で起きていて――革命蜂起はまだまだ続いていた――複数の都市で人民蜂起が起きていたから、ひとつの都市から他の都市へ流れる情報の流通が必要だった。それで、あらゆることが起きた。陸上回線がまだ生きていたので対話形式に戻る人もいたし、国際電話の回線を使ってダイアルアップを使っていた人もいれば、国際電話での通話もあった――政治的取引などがあったからかもしれないが、監視に使う必要があると考えたのか、とにかくISP一社に接続があった。なぜISPを一社だけ接続しておいたのかわからないけれど、最小限の通信ユーザーを持つ一社ISPが接続を保持していた。それと衛星通信があったんだ――誰かが衛星インターネットの接続を持ち込んだ、ほとんどが国外から持ち込まれた。実際、訪問中にバハレーンでの革命が起きたためにエジプトに閉じ込められたバハレーンの友人たちがエジプトの革命に参加することになって、そのときに衛星用設備を持ちこんだんだ。

アラー:
人々は衛星通信の電話を使っていた、でもこういったことはそれほど重要じゃない。何が重要かというと…いったん人々が街頭に繰り出したら国内での情報の流れはそれほど重要ではないんだよ…わかるかな、スエズで何かが起きていると聞いても、君がアレキサンドリアにいたとしたら出来ることはほとんどないよね…自分の居る地元を押えるまでは。でもあらゆることがとても素早く起きた。28日には警察が敗北し、3日後にはインターネットが復旧した、なぜならその頃にはもう通信を閉鎖する意味がなくなっていたから――すでに奴らは街頭での戦いで負けていたんだ。ね、面白いよね、こういう話は…。それで、事実、僕はそれに関わっていた、なぜなら僕はその頃は国外にいたんだ。だから僕は絶え間なく固定電話に電話したり、ファックス機を使って情報を国外に流し、それをオンラインで公開したんだ。僕は人権擁護に関するほとんどのウェブサイトのユーザー名とパスワードを事前に持ってた、閉鎖が行われるというリークがあったからね、

でもこんなことは革命にとってそれほど興味深い話ではない。本当はどうでもいいことだ。何かを始めるためには情報は欠かせないし、何が起きているのか、についてのイメージを確立すること――そして理解――がとても重要だけれど、リアルタイムの情報の流れは、僕らが考えるほど大切ではない。または、いつもそれが必要だということではない。つまり、なくてもいいということ、なくてもやっていけるということだ…うん、もちろん犠牲は減らせるけどね。死んだ人たちの中には、電話さえかけることができれば死なずにすんだ人たちがいるかもしれない。だから、意味がないと言っているわけではないけれど、僕が言いたいのは大きな構図から見るとそれほど重大なことではないということさ。

ジュリアン:
ほとんどの革命は…少なくとも歴史の本によれば、広場で始まった――人々が皆一緒に会合する大きな広場だね――そして、挫折したバハレーンの革命でさえもそのようにして始まった。実際、政権は会合の場としての広場を取り除こうと躍起になっていた。ロシア革命は…広場で始まった。タハリール広場はエジプト革命で有名になった。それは…なぜだろう?どうしてこれらの広場が重要なんだろうか。それはきっとこういう広場にいる人々の間の情報の流れになんらかの関係があるのじゃないだろうか、もしかしたら皆がお互いを見ること、皆、人数がいるということがわかるから、皆がそういう意志を持っているということがわかるから。

ナビール:
うん、インターネットの前は、ソーシャル・メディアはなかった。[革命が起きる]場所として、ほとんどの人が行き来するところだったり、国の中央にある場所、首都の真ん中に位置するところが必要だった。でも今の時代では、広場は…もちろん僕らも広場を使うよ。僕らは真珠広場やタハリール広場などを使っている、でも革命はそういった広場がなくてもソーシャル・メディアを使って実行することができるはずだと思う…たとえば、バハレーンにはもう広場がなくなってしまったけれど、いまだにニュースが流れている、バハレーンの革命について何が起きているのか毎日耳にする、なぜならばインターネットで情報交換があるからね。これはね…つまり、バハレーン政府はいくつかのウェブサイトをブロックしようとしている、例えば僕が仕事をしている組織「バハレーン人権センター」のウェブサイトは過去6、7年前からブロックされているけれど、でも人々は今でも情報を得るためにちゃんと使っている。だから、広場は70年代とか90年代の頃ほど重要ではないかもしれない。もちろん、外の世界に向って僕らの強さを見せたり、僕らの存在を示したり、僕らが皆で一日、二日
ほど一堂に集るためには広場はあったほうがいいけれど、前のように広場がないから革命を続けることができないというほどの重要さはないと思う。昔ならばそういう広場の存在は国際社会に向けて僕らがそこにいること、そしてたくさんの人が集まっていることを見せるということで、重要だった。

ジュリアン:
アラー、[物理的]空間なしにこの空間を持つことはできるんだろうか?君は特定の空間で語り口を管理することの重要性について書いているね。僕の感じとしては、人々は人数がいること、大勢の人々が集まっているということ、勇気は伝染するということ、誰かが警察に抵抗するのをみて自分も警察に抵抗できるんだ、とか、他にたくさんの人たちが関わっていることが分れば自分が逮捕される可能性も減るとか、そういったことなのではないかと思うんだけど。そういったことを物理的な構造物なしに実行する手段はあるのだろうか。または革命的瞬間に必要な勇気というのは、元来、物理的なものなのだろうか?

アラー:
うん、これは本質的に物理的だけど、それは広場の中である必要はない。つまり、例えば…でも、広場はすごいよ――だから広場については戻って話す――じゃあ、チュニジアのことを思い出してみよう。チュニジアには広場はなかった。ガフサでの座り込みがあったけど、実際のところチュニジアの革命にはとても違った筋書きがあった。チュニジア革命は首都ではなく地方で始まり、少しずつ積み上げられていったんだ…丁度シリアの場合と似ているけれど、シリアではまったく首都へとは向っていないようだ。チュニスで…首都圏に革命勢力が到達した手段というのは、地方の人々が首都へと無理やり入り込んでいったんだ。シーディ・ブジードからはるばるチュニスまで人々は黙々と行進していった、そして行く手のチュニスの上流中産階級の人たちに対して、こっち側につくのか、あっち側につくのかと…まぁ選択を迫ったんだね。でも、この物理的空間の要素は決して存在しなかったし、ガフサの座り込みでさえもそれはなかった…ガフサの座り込みは…それほど重要ではなかったと僕は考えるし、タハリール広場のような象徴的な意味を持つにはまったく至らなかった。

でも広場に関しておもしろいなと思うのは、…僕が理解している歴史の中で、こういった広い大通りとか大きな広場とかは本来国民をコントロールするために設計されたものだということだ。つまりね、都市をどうやって設計するかという考え方は、フランス革命の後またはパリ・コミューンやそういったことが起きた後で出てきたもので、とにかく非常に迅速に軍隊を配備したり、非常に迅速に警察を配備してコントロールする必要があった…それで…国家がすべての市民に対する完全なアクセスを持つことができるということだね。基本的に、こういった構造が存在するのはそういう理由によるものだ。だから…このような構造はファシストやナチスのような連中がグラスルーツではないけれど自分たちの集団を大きくするために、そして自分たちの集会を構築するために活用した。だから…こういうことが革命だ。

アラー:
革命っていうのはね…わかるかな、政府がどんな風にインターネットを使うのかについて君は話していたけど――どうでもいいんだよ。政府はね…権力は持てる限りのあらゆるツールを持っている。ある都市のレイアウトを変えたり、[聞き取り不可]政治的転換があったときに起きる変化こそが、新しいツールを人民の手にもたらすことになる。政府がその同じツールを手に入れようがまったく関係ないんだよ、なぜならば政府は常にあらゆるツールを手に入れることができるんだからね。

それで本当に可笑しいんだけれど、僕の理解するところではね、広場というのは国民をコントロールするために設計されたものなのに、政権側は国民がそこになだれこむのを許した。権力側は、国民がひとつの実体であり、ひとつの集合体であり、人民であることを自ら想像することを許したという点が…この現象の一番肝心な側面だ。「語り方」をめぐる戦いということを話したけど、広場は人の目を惹きつける光景の戦いだ。皆が集ってこの驚異的光景の瞬間を創りだすことが、僕らの心の中で革命となっていく…僕らは夢を抱くことから物事を始めるのではないんだ。僕らは完全なるエジプトという夢を抱いて自分の家を出て、それから革命に参加するわけじゃない。ちがう。まず外に出ることから始まる。それは単なる好奇心からかもしれないし、または政権側がすでに催涙ガスを撃ってそれが自分のアパートの室内に広がったので、息をするためにしかたなく外に出るのかもしれない。いろいろあるだろう。それで自分が広場にいることになって、そしてお互いを見つけあうことになったりする。――それが僕らが話している情報の流れだし、そうやって実現していくんだ。それと、これは
ソーシャル・ネットワークじゃない、フェイスブックじゃない。

あのね、政府がインターネットを閉鎖したとき、インターネットの閉鎖が起きるということを僕らが知ったとき、広がっていった呼びかけは「自分の元々のネットワークに戻れ」ということだった。――モスク、教会、広場、そして大学。これこそが社会的ネットワークなんだ。だから、そこへ戻れ、と。そこで僕らは群衆となることができ、そこから前に進め、と。

ジュリアン:
エジプトでのインターネットの閉鎖、携帯電話の閉鎖が人々を街頭に向わせた、なぜならば情報がなかったから、他の人々と物理的に一緒に行動する必要があったからだと、そう思うかい?

アラー:
ああ、まったくその通りさ。絶対そうだよ。でも、いつでも政権側がなにか極端な反応、過剰反応を示すときには、それがこちら側の強みを示してくれるんだよね。だから、例えば、2月11日にゼネストの呼びかけがあったんだけど――それは丁度ムバーラク失墜の記念日だった――その呼びかけは見事に失敗してしまった。でも政権側があまりにも強行な手段で反応したので――いやはや、軍隊はゼネストをものすごく恐れていたんだ。それでテレビなどでプロパガンダのキャンペーンを始めたものだから学生運動に火をつけてしまった。学生たちが大学内での…ストライキを組織していたんだ、だからゼネストは[聞き取り不明]起こらなかったけれども…でも、無気力になって敗北感に溺れているよりもこの運動を続けようという決心を学生たちにさせることになったのは、こういう過剰反応なんだよ。だから、インターネット閉鎖のおかげで人々が街頭に繰り出すことになった。なぜならば、何が起きているのか知りたいなら外に出るしかなかったし、何が起きているのか知りたくなるのは情報がないからだ…デモに参加しようと思わなかったとしても、すでにそれに参加している誰かがそ
こにいるから、その人たちの安全を確かめたい。それに、こういう過剰な…極端な反応があることで相手側の弱点も見える…

ジュリアン:
ありがとう。

アラー:
…そういうことが起きたんだと僕は思う…それがアル=ルウルウ[真珠広場]で起きたことだ、彼らは…あれはひとつの証明だと考えた…バハレーンではあれは希望を示すものだと考えられていた、でも広場の象徴を破壊したというのは弱さの証明だったんだ。

ジュリアン:
どう思う?

ナビール:
もう一度質問してくれるかな。ちょっと聞きそびれた…

ジュリアン:
じゃ、僕がとても興味を持っている別の質問に移ろうと思う。君もご存知のように、2010年以来この組織[ウィキリークス]は――僕らの活動はもっと前からやってきたことなのだけど――米国、特に米国の国務省と米国ペンタゴン(国防省)と重大な対立関係に直面しているので、だから僕は…これらの二つの組織については、かなり詳しい知識を持つようになった…この対立関係から学んだだけではなく内部での通信を読むことでね。

そのひとつに、親米派であるバハレーン政権による申立てがあり、君のやっている人権擁護基金が2008年に米国民主主義基金(NED)から4万3000ドルを受け取った、というものなんだけど、バハレーン政権が君たちに対してこういう非難を投げつけるのは注目すべきことだ。エジプトには多くのNGOやその他の市民権擁護グループがあり、エジプト革命の前から米国政府から時には何億ドルにも及ぶ資金を受け取っていた。これについて…君はどう考える?こういった米国からの資金がなかったら、エジプトの革命は起こらなかったのだろうか?こういったNGOはどれだけ米国の資金によって汚染されているのだろうか?米国の資金は現在エジプトで形成されている新しい政権を腐敗させているのだろうか。米国国務省の内部で、なんらかの形で支離滅裂なことが起きているのだろうか?…片方ではムバーラクとその子息たちに革命運動を鎮圧する手段――催涙ガス弾筒、暴動鎮圧装備、諜報設備――を与え、もう一方では…こういった運動をやや穏便な形で行っている団体いくつかに対し支援や奨励を与えている。どうなんだろう。

ナビール:
うん、まず、君が話題にしている僕らの組織に関する情報だけど、それは僕らの政府ではなくて、その組織[NED]の間違いだ。彼らから資金を受けたとしてバハレーン人権センターの名前がウェブサイトに掲載されたけれど、僕らは資金を受け取っていないし、僕らは彼らに電話して名前を削除してもらった。

ジュリアン:
今朝チェックしたら君らの名前は今は載ってなかった。

ナビール:
僕らの名前は載っていないけど、以前そこにあったことがある。まず、区別するべきことがある…「アメリカの金」だとか「ヨーロッパの金」だとかいう言い方はできないよ、民間社会と政府との区別をしなければならない。もちろん、僕らは政府からお金を受け取ることには反対だ、それがロシアであろうと、米国であろうと、ヨーロッパであろうとね。でも組織運営のために世界中の基金団体から資金を受け取る権利はある。

ジュリアン:
でもね、議会はものすごい巨額の金額をNEDに付与したばかりだし、NEDはその金を渡す…たくさんのやり方があるからね、どちらにせよ結局は米国政府から出た金がこういった名目上の組織を介して合法的に流通しているわけだろう。

ナビール:
特に注意が必要な組織はある。ただ、僕が言いたいのは、僕らの地域で知られていることは、米国であろうとヨーロッパであろうと…政府と組織とを区別する必要があるということだ。エジプトや世界中の組織のほとんどが、政府からではなくて団体から資金を受け取っている。もちろん、政府の金は非常に危険だ、それが実際に自分の組織に影響を及ぼす手段であるかどうかは別にしてもね。でも、自分の組織の名前や評判やイメージを良くしたいと思っている政府からお金をもらってしまうと、それが理由で地元の地域や人々に影響を及ぼせる効果は非常に低くなるから、政府からの資金には常に注意をしないといけないんだ…

ジュリアン:
わかる…それはわかる、評判のリスクだね、でも僕がもっと興味を持っていることが二つあって、一つ目は、実は…

アラー:
いかに名誉を傷つけることになるかだね。

ジュリアン:
この大量のお金が中東に投げ捨てられていることの実際の影響とは一体どんなものなんだろうか――良い意味でも悪い意味でも――それに…国務省内部で足並みの乱れがあるんだろうか、それはどこに由来しているのだろうか。それは、米国国務省が一方では米国の武器取引のために、世界中で戦闘爆撃機を販売したり、コカコーラの特別取引を交渉したりする強硬な影響力を振るいながら、もう片方では人権擁護という寛容な影響力を示そうとしていることに由来するのだろうか。またはこれは単なるマーケティングにすぎないのだろうか。または…国務省内に実際に人権擁護を信じている一部署があるのだろうか。そしてその部署はどんな影響力を持っているのだろうか。アラー?

アラー:
[咳き込む]うん、それは難しいなぁ。えーと…

ナビール:
うん、言ってみなよ。だって彼は…

アラー:
つまり、寄付された資金で…ごめん。寄付資金で運営される組織には重要な役割を担っているところがあるけれど、米国政府が投下しているお金を受け取っている組織というのはほどんどなくて、[聞き取り不可]、だから基金から支援を受け、寄付金による運営にはあらゆる側面で問題があるんだ、そして、実際にまだ…人権擁護グループ、とかね、そういう語彙を使って…あ、ごめん、こちらで技術的な問題があるようだ…あまり、彼らに面倒をかけたくない…

ジュリアン:
よし、ナビールに応えてもらおうか。

ナビール:
では、基本に戻ろう、それはアメリカ人…

ナビール:
そう、アメリカ人のこと――彼は人権について話す、民主制を語る、常に政府ごとに違ったパッケージを用意している。今見てのとおり、バハレーンの革命に対する反応は、シリアの革命に対する反応とは違う。アメリカ人にとって、民主制とは時に彼らの都合のよいときだけのこと…彼らにとって問題のある国家に対して主張することなのであり、仲良くしている独裁者のいる国には当てはまらない。それが…先ほど話した米国政府のダブル・スタンダードであり偽善に話が戻るわけだけど、でも僕は米国が、米国がというふうには言いたくない。僕は、多くを学んだことを…認めるよ。

ジュリアン:
でも、偽善のことは…もう少し微妙な点について話を進めたいな、つまり、偽善はそれほど悪くはないかもしれないという点だ。例えばね、武器取引にしか興味を示さない、傀儡…を支えることにしか興味を示さない、全体主義的側面しか持たない米国政府というのもありうるわけだよ。でも、米国国務省の内部、NEDの内部、Freedom Houseの内部が示すもうひとつの側面、米国議会から人権擁護組織に資金を提供したり、民主制推進組織に資金を提供したりする側面がある――こういった側面のどれほどが肯定的なのか、それとは反対に、こういう資金提供という側面によってこれらの組織が吸収されてしまい、米国が実践している強硬な権力行使を隠す単なるマーケティングの効果をもたらしているのか。そうすることで、兵器や武器取引や諜報などを使ってムバーラクを支えることができるわけだ。その一方で、エジプト国内でなんらかの説明をして人権擁護のプロジェクトを支援したりする。…ね、どんなふうに…どうやってこのバランスが展開するのだろうか。

アラー:
[スタッフに]大丈夫だ… いいかな?ごめんね。つまり、僕が言おうとしていたことは、人権擁護運動には二つの種類があるということだ。例えば、エジプトのような場所、――すべてのアラブ諸国も同じだと思うけど――二種類の人権がある、いや、三つの人権擁護運動がある。実際には政府の機関なんだけど、非政府機関のふりをしていて…でも完全に政府のために仕事をしているというのがひとつだ。さらに、米国政府の金に完全に直接汚染されているのがもうひとつ、それから寄付金に依存しているけれども寄付提供者を注意して選び、組織の独立をなんとか保っている組織がある。

それで…この三番目の組織ね、それは小さいけれど、その組織は本物だ、こういう組織だけが影響力を持って革命の場で役割を担う。もちろん、お金の影響を避けるのはものすごく難しいけど、それでも…地元で資金を調達しようと苦労している。だから、こういった人権擁護グループ、例えば、僕らが逮捕されたときに弁護士を提供してくれたのもこういうグループだし、彼らが僕らを支えてくれる…ミーティングの場所を提供してくれる、支援してくれる…勾留されたときに弁護士を提供してくれるだけじゃない、勾留されたときに食べ物を供給してくれるんだ、牢獄内の事情は酷いからね、特に――家族の支援がある僕のような人間のためじゃなくて――もっと貧しい階層出身で勾留された人々のためにね。彼らのような人権擁護団体は支援してくれるんだ…労働運動に対する法律的な援助を提供してくれたし――それは単に労働法の弁護士が法廷にでかけるというだけのことではなくて、労働組合は貧しすぎてこういった手続きその他にお金を払うことができないんだ。

でもこのようなグループは急進派の人権擁護グループだ。賃金はとても低く、リスクはとても高く、ひも付きではない資金提供源は非常に小さいし、いろんなリトマス試験が常にある、なんというか、例えばイスラエルのような問題に対する立ち位置とかね、…だから、本当に独立した組織なのかとか、資金源は影響を及ぼしていないのかどうか、とかわかるのはこういうときだろう。詳しくは説明できないんだよ、なぜならこれらの組織のうちいくつかは今容疑をかけられているから。僕が偽者だろうと疑っていた団体で容疑をかけられているグループもあれば、僕が偽者ではないと考えている団体にも容疑をかけられているグループがある、だからね…

ジュリアン:
うん、なぜ…そう、どうして…今エジプトでは米国資金をNGOから受け取った多くの人々があちこちで逮捕されているんだろうか、なんだか…外からみているとちょっとおかしいなぁと感じるのは、米国政府は今や、少なくとも公には、革命の結果を支持すると言ったわけだし、軍隊は…権力のほとんどを握っている。う〜ん、いったい何を怖れているんだろうか。

アラー:
この件に関しては、二つの側面がある。まず一方では本当のターゲットは[聞き取り不可]の人権擁護グループだけど、まだそのグループには手を出していない、だから資産を凍結したり、これらのグループは捜査を受けたりしているけれど、まだ裁判沙汰にはなっていないし、そうならないかもしれない――ただ、こういったことを言い訳に使うつもりだけかもしれない。そんなわけで、過去四ヶ月の間、僕らの人権擁護弁護士たちはずっと報酬を受けていないし、彼らはすでにものすごい薄給で仕事をしてきた… それで…何百人もの人々、…何千人もの人々が牢獄に入れられていて支援を必要としている、でも弁護士たちは報酬を受けていない、それで僕らは地元で資金を集めている、…革命的な時期にあるからこそできることだ…――でも僕らは給料を払うために資金を使うことはできない、資金は交通費とか、囚人たちの食べ物などのために使っている。なので、僕らはこの「本物の」――僕らが「本物の」人権擁護団体と呼んでいるグループ――このグループが実際に裁判にかけられるかどうかわからない、だからこれが主な戦いなんだよ。

でもその他にも争いごとがあって、それは軍事政権指導陣とアメリカ人、つまり米国政府との間の争いだ。僕たちはそれがどういうことなのか正確にはわからない――もしかしたら、う〜ん…そうだなぁ…で、こういったNGOがその争いごとの人質として利用されているんだと思う。そしてこの争いごとは敵同士の戦いではなくて、二つの権力者勢力の間の戦い…普段は一緒なんだけれども、これからどういう方向へ進むべきかという点で意見が異なる…二つの勢力の間の諍いなんだ。もしかしたら、米国政府がムスリム同胞団と直接交渉しているからなのかもしれない、もしかすると米国政府は現在の状況に嫌気がさしてきているのかもしれない…SCAF、エジプト軍最高評議会が失敗であり、永久に権力を維持することができないということを悟ったためなのかもしれない。…米国政府は戦略的にエジプトは軍隊と諜報機関によって支配されているという考えを支持し続けているけれど、でもね、実際には、ムバーラクが任命したこれら70歳過ぎの将軍たちである必要はないわけだ。米国政府側としては、軍隊内での政権交代を求めているのかもしれない、僕らにはわからないけれどね。両
方側とも僕らには何も言ってくれないんだ。いつか、君が何かこれについてどういうことが起きているのか情報漏えいをしてくれるといいな、だって、本当に僕らは気が狂いそうだよ、でも…

ナビール:
何かある?

ジュリアン:
[笑]さて、僕は…

アラー:
あのね、本当に小さな…わずかな意見の相違なんだよ。

ジュリアン:
時間が足りなくなってきたので、僕は次に進みたいんだけどね、アラー、君が書いた文章に触れたい…僕は将来の展望について、バハレーンとエジプトの未来について考えたい。君たちは二人とも…もちろんこういった地元での問題や特定のグループ、特定の分派勢力、そして牢獄に入れられている友達などのさまざまな問題にどっぷりと没頭専念している。

アラー、君は五カ月くらい前に書いたエッセイの最後のほうでこう書いている。「広場は伝説である」、タハリール広場のことをそう表現しているんだね。「この広場の伝説は、殉難者たちの家族がそれを信じることをやめたときに崩壊するだろう。この夢こそがあの政権を置き換える選択肢なのであり、もし優先順序どおりに現実的で、理屈にかなった、堅牢な議論のためにこの夢を手放すことがあったとしたら、それは儚く消えてしまうだろう。もし伝説が崩壊し、夢が消えたら、この集団共同体はきっと分裂するだろう。運命の女神は、分裂した集団共同体には応えてくれない。僕らが知る神は、この集団共同体とともにある。専門家たちのことはほうっておいて、詩人たちに耳を傾けよう。なぜなら、僕らは革命を生きているのだから。思考から自由になれ、夢を手放すな。なぜなら、僕らは革命を生きているのだから。警戒心には用心し、未知なるものを受け入れよう。なぜなら、僕らは革命を生きているのだから。殉難者たちを称えよう。なぜなら、アイデア、シンボル、物語、すばらしい眺め、そして夢の真っ只中で、彼らの流血以外は何も実在するものはなく、彼らの永遠性以外には
何も確かなことはないからだ。」

エジプトの革命でこの部分――広場――は今や終わった。でも夢は終わったのだろうか。まだ夢はあるのだろうか。

アラー:
終わってない。

ジュリアン:
それは何?そしてその夢――その夢は――これは君たち二人に対する質問だよ――その夢というのは単に非宗教的で先進的西欧経済国になることなのか、またはエジプト特有の夢があるのか。アラー、どうぞ。

アラー:
その夢というものが一体何なのかという明確な説明は存在しない。少なくとも、例えば英国が国民の合意なくして戦争に突入したような形で国家が戦争したり、米国のように希望を約束した大統領を選挙で選出することが、希望を約束しなかった大統領を選挙で選出するのとほとんど変わりがないような、そういった退屈な西欧の間接民主制などではないことは確かだよ…ね、わかるだろ…だからその夢は…その夢はね、ジュリアン、君の仕事が必要なくなるような世界を創ること、「ウォールストリートを占拠せよ」とか「ロンドンを占拠せよ」とかギリシャでの暴動とか、――スペインで起きた運動の名前、忘れたけど、ああいうことを起こさなくてもいいような民主制のことさ。だから…まだとても…とても力強く、まだまだ活気があるけれど、でも…まだそれがどういうことなのかという明らかな説明はない。僕らには理論はない、僕らはそういったものを持っていないんだ――まだね。

だから、この夢はね、ふと詩的な感性が浮かんだときに垣間見ることができるものなんだよ、ちょうど僕がどういうわけかその文章を書いたときのようにさ。この夢は壁画の落書きに表れている、そして、この夢は殉難者たちにとても強いつながりがある。つまり、僕らは殉難者のことを単に亡くなった人たちとして扱っていないんだ、あの人たちは永劫の存在となった。だから、今カイロの街を歩くと、壁画に描かれた彼らの顔を見ることができるんだけど、時には顔の詳細が省かれ、彼らのエッセンスが表現されている、時には彼らを讃えるものがあり、時にはミナ・ダニエルってこういう魅力のある笑顔をしていたよね、というような細かい点に焦点を当てたものもある、そして時には、ね、これのように…これは…の子供だった…アナイスは14歳だったんだけど、この子は実際に遺言状を書いたんだ、遺言状というか最後のメッセージだ、それは彼が自分は死ぬだろうと感じたからなんだね。うん、だからね、夢はこういった人々の犠牲の中にあるのではなくて、僕らが彼らの犠牲をどういう風に見るのか、彼らの犠牲を僕らがどんなふうに表現するのか、彼らの思い出を僕らがどうやって
活かし続けていくのか、というところで僕らはこの夢が何であるかということに触れることになるんだ――でもそれが正確に何なのかということは君に言葉で言うことはできない。

アラー:
…そしてね、闘いの最中に、もう少しでその夢に触ることができそうだな、という瞬間があるんだ、ああ、もう少しで…というような。僕らが…警察隊と闘っているとき、いつも、あまり長続きのしない停戦の時間があるんだけど――普通は、警察隊が弾丸を詰めなおしている時間なんだと思う――警察隊が発砲を止めると自動的に僕らも止めるんだけど、そういった時間にね、人々は輪を作るんだよ。あちこちに火が燃えていて、ほら、みんな火炎瓶とか使っているからね、もう炎があがっていて、だからこういった火の回りに皆が集って焚き火みたいな感じになって、その周りに皆が座っている。うん、それで[聞き取り不可]突然、どこからともなく屋台の商人たちが現われて、あっという間にみんなお茶を飲んでたり、一緒に歌ったり、なんてことになっている。

僕らが実現しようとしているポストモダン状態というものがあって、それが一体何なのか僕らにははっきり分らない、でも、だからこそ僕らは革命を起こしているのであり、単なる秩序ある改革ではないということの理由なんだし、だからこそ、米国政府が何を求めていようが、アルジャジーラが何をしていようが、実際にどうでもいいわけさ。それはね、この夢は何かもっとずっと深い意味を持っているからなんだ。僕らが今回勝利を得ることができるかどうか、僕はわからないし、僕が生きているうちに勝利を得ることができるかどうかもわからない、でもね、それで充分なんだよ、僕…僕はね、もう毎週のように、もう少しでそれに触ることができそうだという瞬間がある、それだけでいい。

ジュリアン:
ナビールはどう?

ナビール:
僕はこう考える…2010年末に起きたブアジージー[訳注*]のことで、大きなうねりが起きた――津波だ――そして、僕はこれが地域全体を変えると思う、多分、二、三年も経たないうちにこの地域全体がすっかり変わると思う。この地域諸国の賢い政府は自らすばやい改革を行うだろうし、変化に抗う政府は、きっとこの津波に押し出されてしまう…政権の座から追い出されるだろうと思うんだ。これまで外交関係を構築してきた…米国やヨーロッパ諸国の政府、自分たちの利害、長期的戦略利害関係をこれらの独裁者たちと結んできた各国の政府は多くを失うだろう。こういった独裁者たちとではなく、国民たちとの関係を維持する賢明な政府は、きっと利益を得るだろう。変化…僕は変革、肯定的な変革が僕らの地域に起こるだろうと非常に楽観的に考えている。

[訳注*:12月17日にチュニジア独裁政権への抗議として焼身自殺をした。「アラブの春」の口火を切るきっかけとなった]

ジュリアン:
僕は残った質問が二つある。まず、一つ目は僕が個人的な興味を持っているもので、しばらく独房監禁されたことがあるからだ。君たち二人とも…僕ら全員、牢獄に入ったことがあるんだよね…

ナビール:
僕は違うよ。

ジュリアン:
君は違うって?

ナビール:
たった数時間だよ、一日にも満たない。

ジュリアン:
一日にも満たないのか。

ナビール:
撲られたり、誘拐されたり…

ジュリアン:
君は撲られたのか…[笑]

ナビール:
そう、でも監禁はまださ。多分、君のおかげで今回帰国したらそうなるかもね。

ジュリアン:
そうなるかもしれない、うん、そうならないかもしれない。こういった時期に、牢獄に入れられたり、拘束され誘拐され撲られたりするような状況にあったり、…最大限の隔離状態に置かれるような場合、自分の物理的空間を意のままにすることができない、自分の体を自由にできない。誰かが君の体を所有しているというか、最も基本的な意味で自由というものがないわけだ。どんなことを考え、どうやって自分の感情をコントロールしようとするんだろうか、この時期を切り抜けるためにね。

ナビール:
目標を持っているなら、自分の目標、自分の戦いが正しいということを信じるなら、必ず…きっとこういう困難を克服するだろう、と思うよ。君が闘っているのは変革のためだということはわかっているだろう、そこに何百年もあったものを変えるんだから、そんなに簡単にはいかないさ、だから、こういった変革を達成するためには、そのための犠牲を払う覚悟がなければならないし、その…犠牲は自分の命かもしれない、そして、アラブ圏で運動を指導している人々は、自分たちの命を犠牲にしてでもこういう変革を達成するつもりがある、そういう種類の人間たちだということを僕は確信している。

ジュリアン:
アラーはどう?

アラー:
ごめん、5秒待ってくれるかな。そう、カメラが…そこだ、よし。

アラー:
まったく、牢獄はほんとに最低だよな。僕の場合、信念によって自分の精神力を支えることができるとは言えない。どうしても、そんなことができるなんて言えないよ…だってね、大変なんだよ、ものすごい不正が存在するんだ。僕が監獄の中で出会った人々、獄内の被拘束者のほとんどは、全然あそこにいるべきではないし、この不正によって僕などよりもずっと深い傷害を受けている…なぜかというと、僕にはなんらかの理念があるわけだけど…でも耐えられないよ…僕にとっては、とても個人的なことが支えになってる、それは家族、それは愛情。

前回の勾留では――僕が二回目に牢獄に入れられたとき――僕のこの時の戦いは軍部検察官との対決で、僕は軍部の司法制度の正当性を認めることを拒否した。それで僕は――あれこれあったけど、ようやくこの大きな勝利を得ることができて、相応の判事のところに送られた――そうしたらこの判事はそれでも僕を拘禁し続けたんだ。この瞬間、僕は完全に打ちのめされてしまった、完全にくじけてしまったんだ、僕は心からそこを出たい、そして僕の最初の子どもである長男の誕生に立ちあいたい、と思った、でもこの勾留のためにそれができなかった、だから僕はすっかり崩れてしまった、そして息子が生まれた、その3時間後に僕の家族がなんとかして赤ちゃんの写真を送ってくれたんだ。そうしたらね、もうどうでもよくなった、――その瞬間に、何もかもがすっかりどうでもよくなったんだよ…だからね、それ以来というか、ずうっとそうなんだけど…愛情に包まれているという体験、すごく個人的なレベルでのそういう体験、それと同時に連帯しているんだという体験が支えになっている。僕の場合、とても恵まれていて、幸運なことに、僕が投獄されると世界中のあちこちで本当にものすごい、とても大規模な連帯行動が起きる、そしてそれは普通とても個人的な形で表現される。僕の顔が壁画の落書きに現われたり、僕の投獄について誰かが詩を書いてくれたり、そんなことが…

ジュリアン:
でも君は牢獄の中にいるし、わからないだろう…

アラー:
そういうことが僕を支えてくれるんだよ。え、何?

ジュリアン:
君が牢獄の中にいたとき、外の世界で君が支援されていたことを知っていたかい?

アラー:
うん、あの、家族の訪問のときに聞いた。だから、隔離ではないね――きっと耐えられなかっただろうと思う――僕が耐えられないのは、危険な犯罪者と一緒にものすごく狭い牢獄に入れられるということじゃない――だけどもし訪問が許されなかったとしたら、どうやって生き延びることができたかわからないな…奴らに言っちゃだめだよ!

ジュリアン:
アラー、君は牢獄にいる間に最初の子供が生まれたばかりなんだね、そしてナビール、君は二児の父親だね。

ナビール:
僕には二人いる、そうだよ。

ジュリアン:
君は二児の父親だ。君の子供たちに大きくなったら自分のような活動家になれと、誘拐され、牢獄に入れられ、撲られるような目に遭え、と言うかい?

ナビール:
何も言う必要はないんだ。自然にそうなるだろう…

ジュリアン:
お手本を見て学ぶということ?

ナビール:
そうだよ、僕の息子も娘も今は抗議デモの先頭にいる。僕はつい最近彼らを転校させたばかりだ、嫌がらせをうけていたのでね。この王族の子供たちが行く同じ学校から転校させたんだけど、子供たちは大きな犠牲を払っているんだ、もしかしたら僕よりも大きな犠牲を払っているのかもしれない、なぜなら、僕は自分の戦いを闘っていて、その反発に応える用意があるけれど、子供たちは自分たちにとっては理由がわからない反発を見て育ってきた。自分たちの家が真夜中に襲撃されたり、父親が寝床から引きずり出され目の前で撲られたりした。自分たちの家に、過去一年にわたって多分20回以上も催涙ガスが撃ち込まれた。僕の子供たちは普通の子供たちが一生見ないようなことを見てきた、でも彼らは多くのことを学んできたし、年齢以上にとても大人になった。子供たちが…

ジュリアン:
いくつなの?

ナビール:
僕の娘は、9歳で、僕の息子はちょうど14歳になったばかりだ。息子は5歳の頃から僕と一緒に毎回すべてのデモに参加してきたし、僕の娘は――彼女は人権だの政治だのといったことには一切興味を持っていなかったんだけど――でも僕が娘の目の前で誘拐されたり撲られたりして以来、娘は今や急進派になり活動家になったよ。それに僕の妻だってね、彼女はとてもおとなしい人なんだけど、活動家だ。もう親族全員が活動家になったよ。僕の親族は全員で1000人以上いるんだけどね、そういう話は…

ジュリアン:
一族全員が?

ナビール:
そうだよ、一家総出だ…そうさ、今は多くの家族が活動家になったと思う。もう国全体だよ――この革命は国全体を活動家にしたのさ。バハレーン政府がジャーナリストが入国することを止めたとか、人権擁護団体が入国することを止めたとか想像してごらんよ、でもほとんどの人たち、若者たちがジャーナリストになり、人権擁護の活動家になり、ブロガーになり、インターネットの活動家になり…

ジュリアン:
商売のチャンスだね。[笑]

ナビール:
神様に感謝だね、バハレーン政府はこんな若々しい運動を…僕らはこれらの運動から恩恵を受けるはずだし、アラブ諸国圏全体がそれぞれの革命の中で恩恵を受けるだろう。

ジュリアン:
アラー、君の息子は新しいエジプトへと育っていくわけだね。二人目の子供を作るつもりなの?

アラー:
うん、もちろんさ。いや、僕らは女の子がほしいので、女の子が生まれるまでは子供を作り続けなきゃならないなぁ。うん。でも…僕の息子のことで心配なのは…実はね、二、三週間前にポート・サイドのスタジアムで虐殺が起きたんだよ…これには陰謀があった…単なる暴動のように見えるけれど、これはあきらかに警察によって計画的に行われたことで…それはウルトラ団、僕らがよく話題にするあのフットボールのウルトラ団だよ、警察を悩ませ、革命のときに…とても重要な役割を果たしたウルトラ団をつぶすための計画だった。74人の人たちが死んだ――僕らはこの人たちのことを革命の殉難者だと考えている――ほとんどがとても若い男性だ。その一人は14歳で、いや、三人が14歳だったと思うけど、エジプトでの革命家たちのほとんどがそうであるように、僕は感情的にこういった殉難者たち、そして彼らの思い出にとても強い愛着心があるんだ、それで僕はある詩を読んでいたんだよ、14歳の殉難者の中でも最も有名になったアナイス君について書かれた匿名の詩なんだけど、僕は…考えが浮かんできて…僕は息子がフットボールが嫌いになるように育てなくちゃならない、息子が殺されるのを避けるためにはそうしなきゃ、ってそういう考えが浮かんだんだ。そしたら[雑音が入る]ハーリド・サイード、警察による拷問の犠牲者だ――革命の前、2年前にアレキサンドリアで亡くなった男性で、彼の顔はこの革命の象徴のひとつになっている――アレキサンドリアで亡くなったその彼のことを思い出したんだ。この人は何もしなかったのに殺された…彼を守れなかったのなら、僕が息子を守ることなんてまったくできない。

だから、息子が活動家にならないようにと言ったり、そういう風に育てたりすることに意味はないし、例えば政権派になれとか、そういったことでさえ無駄で、何の役にも立たない。弾圧があり、無差別な暴力がまかりとおっている限り、どうしたってその影響を受ける。不正が無差別にまかりとおっていれば、誰だって影響される。自分の子供によい人生を保証するためには、他のすべての子供たちのためにそれを保証しない限り、それは不可能だ、…僕の手には追えないってことだ、僕にはなす術は何もない。

(3/3に続く)


参考リンクについては「3/3」をご覧ください。


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