http://ameblo.jp/nfsw19library/entry-11009831891.html
英国発再生可能エネルギー100%の電力会社ビジネスモデル
ーースマートグリッドを待ちながら
現在の住まいを購入した5年前に、元の持ち主が契約していたユティリティ会社(高熱水道を供給する会社)をそのまま引き継いだ。すべて大手だった。イギリスでは電気とガスについては利用者が自由に会社を選ぶことができるので、電力を再生可能エネルギーを供給している会社に変更しようと思って調べたが、ロンドン近郊で該当する会社が見つけられなかった。
再生可能エネルギーを供給する会社はイングランド南西部に複数あったと思う。いすれも小規模で、契約可能な地理的条件が「地産地消」の範囲に留まり、我が家のあるロンドン南西部は契約可能な条件を満たしていなかった。
イングランド南西部はイギリスでも有数の高額所得者の集中する地域だ。だから、他の電力会社より少々高めでも再生可能エネルギーを選ぶ顧客が比較的見つけやすいとも言えるが、だからと言って、その人々が他の人より高額の請求書を受け取っているとは考えにくい。あえて再生可能エネルギーを選ぶぐらいだから環境への配慮は人一倍であろうし、おそらく電気をできるかぎり使わない生活にシフトしているのではないだろうか。イギリスの場合、高額所得者は往々にして高学歴である場合が多いので、この想像はまず外れていないと思う。
また、南西部の特に海岸線沿いにはヒッピーやアーティストなどのボヘミアン的な生活を送る人が多く住んでいる地域がいくつかある。そういう人たちの生活スタイルもまた、電気をあまり使わないよう工夫されていることが多い。
*
日本の場合、教育の普及率の高さと、伝統的にもっている自然の力への崇敬の念をあわせると、再生可能エネルギーを普及させる条件は揃っているようにみえる。法律が整備されて電力供給が自由化すれば、各地でそれぞれの自然条件にあわせた小さな再生可能エネルギー会社が次々興るのはないか、
野田政権にそれができるか。菅直人を手放したつけは大きいのではないか。とても不安だ。
***
新エネ100%の電力会社が成り立つワケ
英ベンチャー「原発は古い、時代は分散電力へ」
日経ビジネス編集部 大竹剛(ロンドン特派員)
2011年9月5日(月)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20110831/222362/
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以下抜粋。全文は上記の日経ビジネスか<ロンドンSW19のライブラリ>にあります。
フクシマ後も原発推進の方針を貫く英国で、火力や原発を使って発電した電力を拒む消費者の“反乱”が一部で広がっている。風力や太陽光など再生可能エネルギーだけで発電する電力会社が、規模こそまだ小さいものの顧客を確実に増やしている。そんな電力会社の1つが、イングランド南西部のチッペナムという町に本社を構える、社員88人のグッドエナジーという電力ベンチャーである。
英国には、再生可能エネルギー専門の電力会社を運営するベンチャーが複数ある。元ヒッピーが立ち上げた、風力専門の電力会社エコトリシティーもその1つだ(詳細については「元ヒッピーのグリーン革命」をお読みください)。だが、エコトリシティーが電力供給を再生可能エネルギーだけで賄えないことから、その約半分を電力卸市場から購入しているのに対し、グッドエナジーは電力供給の100%を再生可能エネルギーだけで満たしているのが特徴だ。
*英国発! ビジネス最前線 元ヒッピーのグリーン革命 2010年7月8日(木)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100701/215228/
電力の安定供給には、一定の電力供給量を常に保ついわゆる“ベースロード”用の発電設備が不可欠だというのが、大手電力会社の常識である。大量の電力を安価に、安定的に発電できる原発は、このベースロード用の電力源として適しているとされてきた。一方、風力や太陽光など再生可能エネルギーは、「風が吹かない」「太陽が照らない」といった天候に左右される。そのため、安定供給には不向きで、再生可能エネルギーだけで顧客の電力需要を満たすのは難しいとされている。
だが、グッドエナジーは、こうした常識を覆そうと挑戦している。同社のジュリエット・ダヴェンポートCEO(最高経営責任者)は、「そもそも中央集権的なベースロードという発想自体が時代遅れだ。ベースロードではなく、地産地消を目指す分散型の再生可能エネルギーを全国に展開したほうが今の時代、理にかなっている」と断言する。
グッドエナジーの顧客数は約3万世帯で売上高は約2000万ポンド(25億円)と、数100万世帯の顧客を抱える大手電力会社と比べれば事業規模は極めて小さい。だが、70万ポンドの税引き前利益を生み出し、ゆっくりだが着実に成長し続けている。
いかにしてグッドエナジーは再生可能エネルギー100%の電力会社を運営しているのか。その事業を成り立たせている要因を分析すると、これから再生可能エネルギーを本格的に普及させようという日本にとっても役立ちそうなヒントが見えてくる。
まず、グッドエナジーが電力市場に新規参入できたのは、電力市場の完全自由化が実現しているからだ。英国の電力自由化は1989年、電力会社の分割民営化から始まり、98年には電力の小売り事業が完全に自由化されて、消費者は自由に電力会社を選べるようになった。グッドエナジーはその翌年、99年に誕生した。
最初は、再生可能エネルギーの小売り事業から参入した。その事業モデルは、小規模な再生可能エネルギーの発電設備を持つ“マイクロジェネレーター”と呼ばれる家庭や事業者から電力を購入し、その電力を環境意識の高い消費者に販売するというものだ。マイクロジェネレーターの発電方法は、風力や太陽光、バイオマス、水力など幅広い。英国で最初に稼働した波力発電も、同社と契約しているマイクロジェネレーターが始めたものだった。
2002年からは電力供給能力を高めるために、顧客から出資を募り、自ら風力発電施設を買収して発電事業にも参入した。現時点で同社は既に2000以上のマイクロジェネレーターと契約し、自社の風力発電設備も合わせると、発電能力は合計で約15万キロワットまで増えている。原発1基の発電能力を約100万キロワットとすると、その7分の1以下の規模ということになる。
グッドエナジーは今後、風力や太陽光をさらに拡充し、1〜2年内に発電能力を合計25万キロワット程度まで増やすことを目指している。ちなみに、風力や太陽光は天候に左右されることなどから、その設備利用率は10〜20%程度と言われ、利用率が世界平均で8割弱の原発より発電効率は低い。
短期間で、原発のような大規模な発電能力を手に入れることは確かに難しい。だが、英国では小売り、発電の両方が自由化され、競争を促進する発送電の分離が実現しているからこそ、グッドエナジーのような挑戦もできる。ダヴェンポート氏は、「将来的に石油やガスの価格は上昇する。環境問題の視点からだけではなく、経済的にも化石燃料に依存しない再生可能エネルギーは重要になる。自由化によって、化石燃料に依存しない電力を選びたいという消費者に選択肢を与えるチャンスが到来した」とダヴェンポート氏は参入当時の背景を振り返る。
グッドエナジーが顧客の需要を賄える十分な量の再生可能エネルギーを確保するには、自社の発電能力を高めるとともに、同社と契約するマイクロジェネレーターの数を増やす必要がある。そこでグッドエナジーは、政府の電力固定価格買い取り制度「フィードインタリフ(FiT)」を上手く活用し、マイクロジェネレーターの囲い込みを図っている。8月26日に日本で成立した再生可能エネルギー特別措置法案は、このFiTを国内に本格導入するものである。
手間のかかるFiT申請を代行しているほか、一定以上の発電能力を持つマイクロジェネレーターに対しては、FiTが定める価格より3割以上高い値段で電力を買い取っている。マイクロジェネレーターがグッドエナジーに電力を売ることのメリットを打ち出すことで電力を安定調達する狙いだ。
(略)
一方、顧客の確保については、「英国で唯一の再生可能エネルギー100%の電力会社」という点を強調し、環境意識の高い消費者を引き寄せている。電力料金は、一般の大手電力会社より高い。だが、その価格差は同社のコスト削減努力とエネルギー価格の上昇に伴う大手電力会社の値上げによって徐々に狭まり、昨年の約7%から現在は5%程度にまで縮小している。
(略)
さらに、スマートメーターが今後普及すれば、電力需要の動向に応じて電力料金を柔軟に設定するなどして、需要と供給のバランスをより精緻にコントロールできるようになると期待する。バックアップ電力には水力が有効だとしており、余剰電力を蓄電する装置が開発されれば、火力や原発など旧来型の発電設備の必要はさらに薄れていくと考えている。
ダヴェンポート氏は、「確かに、今すぐ原発をゼロにすることは無理だろう。しかし、だからといって古いやり方にこれからも固執していく必要はない」と言い切る。
グッドエナジーが直面している課題は、再生可能エネルギーを本気で増やそうすれば、どの電力会社でも、そしてどの国でも、直面するものだ。再生可能エネルギーは、どうしても天候に左右される。ならば、そのリスクをいかに減らしていくのか。電力市場の制度改革から技術革新まで、取り組まなければならない課題は山ほどある。再生可能エネルギー100%を目指すグッドエナジーは、まさにその実験場とも言える。
「再生可能エネルギーを普及させれば、エネルギー価格に与える世界経済の影響を減らすことができる。それは消費者にとって非常に価値のあることだ。フクシマの事故で、これまでの中央集権的な電力体制への信頼は失墜した。これは、日本にとっても従来とは違った世界を作り出す絶好のチャンスだ」とダヴェンポート氏は指摘する。
日本では、再生可能エネルギーの普及に効果を上げた欧州のFiTを手本に、再生可能エネルギー特別措置法案が成立した。しかし、電力市場の改革は遅々として進んでおらず、依然として新規参入や新技術の普及が妨げられている。
(略)
日本が再生可能エネルギーを本気で増やそうと考えるなら、電力ベンチャーが参入しやすい環境を、制度面においてもインフラ面においても早急に整備すべきだろう。それは、グッドエナジーの事例が示すように、再生可能エネルギーの普及に伴う様々なリスクに対処する経験を、実際の事業を通じて蓄積する効果がある。中長期的に見れば国際的な競争力を持つ新たな電力会社を育てることにつながるかもしれない。既存の電力会社では真似できない事業モデルを掲げた電力ベンチャーが、日本からも数多く誕生することを願いたい。
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