ロンドンが燃えている。
そこらじゅうで火の手があがっている。火をつけているのは夏休みで時間を持て余したティーンエイジャー(だと思う)と、せいぜいが二十代前半の男の子たちだ。火をつける前には、あるいは、それとは別にそこらじゅうで店が襲われ、コンピュータコンソール、携帯電話、ゲーム、スニーカーなどなど子どもたちが欲しがるもの(つまり、換金しやすいもの)がごっそり盗まれている。
暴動の火元(文字通りの)はロンドン北部のトテナムで、木曜日に地元の男性が警官に射殺された事件がきっかけだ。6日土曜日、射殺された男性の家族などの一団が警察の前で抗議行動を行ううち、まず(誰からか)警察に火炎瓶が投げ込まれた。その後、周囲の店などが襲われ、20家族以上が入居したブロック・オブ・フラットが放火されて全焼した(20世紀初等の建物だった)。その後、トテナムでいくつかの放火があったあと、深夜(7日日曜早朝)になって隣のウッドグリーンのショッピングディストリクトに盗みと放火が飛び火した(文字通りの)。
80年代にも似たようなきかっけでウエストインディアンを中心にした暴動があり、つれあいは、イギリスの暴動はすぐにあちこちに広がるけど今度もそうなるかもと言っていたのだが、その予想通り、8日月曜日になって暴動はロンドン各所に広がった。
最初はハックニー(東)、ブリクストン(南部)、ペッカム(南部)など、それぞれ大きなウエストインディアンのコミュニティがある地域だったが、そのうちにどんどん拡大し、日が暮れたころにはクラッパム(南西部)やクロイドン(南部郊外)、西ロンドンの住宅地イーリング(郊外)などの比較的裕福な地域や混合エリア(むしろ白人が多い地域)にも拡大。
クロイドンでは140年にわたって5世代で営業してきたという大きな家具屋が丸焼けになった(なっている、まだ鎮火していない)ほか、いくつもの建物が燃え盛っている。クラッパムでは駅前のデパート、デベナムスが襲われ、売り物のスーツケースに売り物の衣類や宝石を詰め込んで持ち出すライオターの姿が報じられていた。イーリングではパナソニックストアがターゲットになった。
テレビにうつるライオターの様子を見るといまは人種が入り交じっている。もはや、人種的な背景も何もない、単なるコピーキャットの便乗犯罪だ。
ロンドンだけでもその後、チョークファームなどにも広がったが、暴動(というより犯罪、盗みと放火)はロンドンの外にも広がり、リバプール、バーミンガム、ブリストルなどなどで同様の犯罪が続いている。エセックスではセインズベリー(スーパーマーケット)の巨大な倉庫が火に包まれている。
ツイッターやブラックベリーのテキストで呼びかけられているらしい。盗みと放火がセットになっているのが特徴で、衆人環視の真っ昼間にショーウインドウを割って押し入ったりしている。報道のヘリコプターがとらえた映像には、店でもなんでもない民家に押し入るごろつきの姿も映っており、行動になんのルールもないので予防のしようもない。
また、撮影している報道のカメラが盗まれたり壊されたり、時にはジャーナリストが襲われて負傷したりしているようだ。
盗みはともかく、放火はなんともやりきれない。放火によってホームレスになる家族や破産する人、職場を失う人の数は相当数になると思われる。犯行に及ぶ子どもたちがそれほど遠くから来ているとも思えず(なにしろ、そこらじゅうで起きているので)、つまりかれらは地元のコミュニティを一時の熱狂と楽しみのために壊している。多くの子どもたちはこの犯罪に、ハロウィンのときに近隣にお菓子を集めにいくのとたいして変わらない気持ちで「参加」しているのではないか。
親への呼びかけが行われている。子どもがどこにいるか確認し、家から出すな、と。しばらく息子をひとりで外に出さないこと。サグか、警官か、どちらかに襲われないとも限らないので。
ウインブルドンはこの一帯の中高生のターミナル駅だ。駅前には子どもたちを誘惑するチェーン店がどっさり軒を連ねている。ショッピングモールもあるし、クラッパムで襲われたデベナムズ(デパート)の支店もある。警官が警備しているだろうか。
さて、この緊急時にイギリスの閣僚はそろってホリデイ中で、土曜日の暴動の知らせにもだれも帰ってこなかった。月曜日に暴動が拡大したのを受けて内務大臣のテリーザ・メイと副首相のニック・クレッグ(自民党)が今日、公務に戻っていたが、キャメロン首相とロンドン市長のボリス・ジョンソンはまだホリデイをやめず、明日、公務に戻るそうだ。
キャメロンの状況を読む力の弱さについては、リビアでの邦人救出の遅れを思い出した。
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