地元では核実験の開始から現在まで、量においても内容においても凄まじいとしか言いようのない放射線被害が続いている。セミパラチンスクの産科病院に保存されたホルマリン漬けの奇形児のなかに、まるで地獄絵から抜け出してきたようなひとつめの赤ん坊がいた。顔の真ん中に大きな目がたったひとつだけある。
最近になって奇形の内容が変わってきたと看護婦は証言する。前には見たことのなかった両腕のない赤ん坊などが生まれるようになった、と。世代をまたいだ遺伝によって、より深刻な奇形が増えているのかもしれない。ベビーベッドの中に横たわる赤ん坊はかわいい顔をしていて、両肩がら先がすっぽりないことを除けば健康そうに見える。
産科病院では妊婦の健康管理をするとともに、危険限度である22週までに堕胎させる胎児を見つけ出すのも大事な仕事になっている。深刻な奇形や障害がある胎児と、その可能性のある危険因子をもった女性の妊娠を見つけ出し、堕胎を勧め、手術を実施する。毎月数十人がその対象になる。
番組中どこに行ってもガイガーカウンターがジジジー、ジジジーっと警告音を発していた。
*
早尾貴紀さんのメールを転載します(nfsw19)。
*
date Wed, Jul 20, 2011 at 11:45 AM
subject 講義終了/地下大学アーカイヴ/名古屋大学講演案内
原発震災でご心配くださっているみなさま
BCCで早尾です。
1
大学の講義がだいたい終わりつつあり、もうすぐ夏休みになります。
一ヶ月遅れで5月に始まった前期の大学の講義。シラバスに書いたことは
すっ飛ばして、原発震災にどのように向き合うのか、ひたすらにそればかり
を話し続けました。最初は、何回かと思っていたのですが、結局前期の終わ
りまで、さまざまな角度から、避難の決断、避難生活、内部被曝、原爆症、
核の「平和」利用、日本の原発導入、六ヶ所村再処理工場、東北地方の位置、
差別の構造、世界の原発事情、東南アジアや中東への原子炉輸出競争、最終
処分地問題、、、話すべきことはいくらでもありました。
そして最後の日。学生らへーー
ドキュメンタリー「永遠のチェルノブイリ」の一部。25年経っても何も問
題が解決していない現状、石棺作業に終わりはなく、核燃料の状態を確認す
ることもできず、健康被害も続出、、、
福島の25年後がそこに映し出されている。もっとひどいことになるかもし
れない。福島の収束には半世紀はかかる。だから、私が生きているあいだは
もちろん、20歳のあなたたちが生きているあいだに「解決」を見ることは難
しい。あなたたちはポスト〈3.11〉世代ということになる。〈3.11〉で世界
はどう変わったのか。
スベトラーナ・アレクシエービッチさんという人の『チェルノブイリの祈
りーー未来の物語』(岩波現代文庫に入ったばかり)という本がある。いわ
ゆるチェルノブイリ本のなかでいちばん私の好きな本。彼女は、戦争で傷つ
き絶望した小さな人間の声を拾い続けてきたルポルタージュ作家だ。彼女は
こういうことを書いている。
「チェルノブイリ後、私たちが住んでいるのは、前の世界とは別の世界です。
何かを理解するためには、人は自分自身の枠から出なくてはなりません。苦
悩の歴史、人間の命の意味、私たちが地上に存在することの意味について、
人々を訪れては語り合い、記録しました。そして何度もこんな気がしました。
私は未来のことを書き記している、、、」と。
私たちはこの「チェルノブイリ」を「福島」に置き換えてみなくてはなら
ない。フクシマ後、世界は別物に変わってしまった、と。
そして、どのように変わったのか、故郷を失って生活の基盤を失って、根
底から価値観が変わってしまった人たちが、もう何万人にも達している。動
くに動けない人たちがその数十倍もいる。その絶望の淵にある「小さな声」
にどれだけ耳を傾けられるのか。ポスト・フクシマ世代の課題でもある。
そんなふうな前期の講義を締めくくりました。
2
大学と言えば、先日の地下大学、「汚染される私の選択」、盛況のうちに
終わりました。
ustreamでアーカイヴが見れます。3時間もあるので、お時間のあるとき
にどうぞ。
http://www.ustream.tv/recorded/16006418
映像の46分頃に、4月7日の仙台で最大余震(震度6強)のときの映像が、
さらに1時間59分頃、地下大学当日の会場でも地震があり、そのときの映像
が入っています。進行の浜邦彦さんから「雨男ならぬ揺れ男」とか呼ばれて
しまっていますが、ともあれ、まだ揺れつづける大地と私の生々しさが伝わ
ると思います。
また、2時間37分のところで私が言及している本ですが、そのときタイト
ルを思い出せなかったので、ここで補足しておきます。野崎泰伸『生を肯定
する倫理へーー障害学の視点から』(白澤社)です。大事な本です。
3
来週は、来週名古屋大学で話します。
7月29日(金) 14:00〜16:00
「世界ヒバク状況を生き抜くーー原爆=原発が規定した戦後世界の果てで」
名古屋大学東山キャンパス文系総合館7階カンファレンスホール
主催:比較マイノリティ学研究会
付記
こうしてこの4ヶ月、いろいろな局面で自分自身、思考を重ね、問題提起
を続けてきました。
しかしそうこうしているうちに、どんどん疲れてきてしまっていることを
自覚します。何か状況が好転するわけでもなく、吐き出し続けて空っぽにな
っていくような感覚。
いま、地震被災地、津波被災地、原発被災地、そしてその外部に出た避難
地、それぞれの中で疲労が出て来て、良くも悪くも「次の段階」に入ってき
ている、あるいは移らざるをえないのだと感じています。より「震災鬱」を
深めていくのか、あるいは、いつまで「被災者」のままでとどまっているわ
けにはいかないのだから、新しい生活をつくりだすのか、できるのか。
被災地の中で、避難した先で、それぞれ生のあり方の模索が続きます。
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早尾貴紀
p-sabbar@mrg.biglobe.ne.jp
「緊急、原発震災関連」(過去のBCCもこちらに)
http://hayao2.at.webry.info/
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