2011年04月08日

<原発震災>福島1号炉では再臨界が始まっているのではないか

福島第一1号炉では再臨界が起きているのではないか

東日本大震災特別番組
京都大学原子炉研究所 小出裕章先生のインタビュー
2011年4月8日金曜日20時30分から30分間

FM797京都三条カフェラジオ Ustream
http://www.ustream.tv/channel/fm797-radiocafe-live-program-from-kyoto

[画像開始30秒ぐらいから番組開始。以下番組を聞きながらのメモ。話された言葉の通りではありません。疑わしいところは必ず聞いて確かめてください。著しい間違いがあればお知らせください。nfsw19]

昨日の地震以来いろいろな動きがあるが、1号機についていまわかっていることは?

小出:1番心配なのは、1号機の格納容器の中の放射線量が昨日から今日にかけて急増したこと。激増と言っていいくらいに急増した。ということは、格納容器の中に大量の放射線物質が流れ込んで来たことを示している。それがどういうことかを考えないといけない。

激増したということは?

小出:2倍か3倍に増えた。

何が推測できますか?

小出:原子炉の中の温度が上がっている。格納容器の中の圧力も上がった。窒素を入れたからということもあるかもしれないが、放射線量が上がり、原子炉の中の温度も上がったということは、原子炉の中で何らかの異常があり、放射能が格納容器の中に吹き出してきたと推測できる。

窒素との関係は?

小出:窒素を入れたことは格納容器の中の圧力には関係があるかもしれないが、原子炉の中の温度の上昇とは関係ないはず。

窒素は水素爆発を防ぐためにいれたんですよね。それはよかった?

小出:そうではない。もともと格納容器の中は本来は窒素だけが入っていた。それが事故により大量の水素が入り、放射能も充満してきた。一時期ベントで外に出したが(間に合わず)建屋で水素爆発を起こした。水素だけならいいが酸素も格納容器の中に蓄積している。水素と窒素だけなら爆発しない。

小出:酸素はどこから来たか。水が放射線にあたり、酸素と水素に分解する。その量だけなら大したことはないと思う。しかし、東電が爆発を心配しているということは、格納容器にどこかから酸素が入ってきているのかもしれない。そうなると酸素を窒素に置き換えないといけない。そこで窒素を入れることにした。

小出:しかし、格納容器の大きさには限りがあるので窒素を入れるといままで入っていたガスを出さないといけない。そのガスとは水素と放射能。それを放出しなければならないところまで追い込まれていると考えられる。いまはまだ保っているが、格納容器の中の圧力があがって来ているのでいずれ出さないといけない。

放出させないともっとたいへんなことになる。放射線量、温度、圧力が高まっている。手当の方法は?

小出:方法はたった一つ、水を入れること。これをずっとやってきたし、これからもやらないといけない。しかし、2号機3号機と違って、残念ながら1号機は水を入れても温度が下がらない。それは再臨界が起きているからではないのかというのが心配。

再臨界というのは?

小出:臨界というのはウランが核分裂をすることを示す言葉。原子力発電は運転中はずっと臨界(核分裂している)。だから、事故があるとまず核分裂を止めなかればいけない。そこで制御棒を原子炉に入れてウランの核分裂反応を止める。今回もウランの核分裂反応は止まったものと推測しているが、原子炉の中には大量の核分裂生成物、放射能がが溜まっている。ウランの核分裂反応は止められたとしても、放射能それ自体が出す熱は止められない。崩壊熱はずっと出続ける。そのために原子炉はどんなときにも水をかけて冷やし続けなければならない。

小出:今回は(冷却装置が壊れてしまったので)水をかけて冷やし続けているが、その間に原子炉が壊れてきてしまっている。壊れてきて、原子炉内部の形が変わってしまった。

小出:原子炉は燃料棒という直径1センチで長さが4メートルの細長い物干し竿が、たくさん林のようにたてて並べてある。その棒の中にウランを瀬戸物に焼き固めたペレットが入っている。止めるときは燃料棒のあいだに制御棒が入って核分裂を止めるのだが、今回の場合は燃料棒そのものがもうぐずぐすに壊れている。1号炉は70%壊れていると東電は言っているのだからつまり形がない。中に入っていた瀬戸物もぼろぼろになってあちこちに崩れている。

小出:形があって制御棒が入ればウランの核分裂反応を止めることができるが、形がなくなっているので核分裂反応を止められない場合が出てくる。そうなると、また核分裂反応が始まって熱が出てくるし、放射能がどんどん出てくる。それを心配している。

テレビに出てきた学者は、臨界できるような状態が整えられたときに臨界は起きるが、崩れたときには臨界しないと言っていましたが?

小出:ウランが崩れてひとかたまりになったときにはむしろ臨界しやすくなる。

臨界が起きて中性子が検出されている?

小出:原子炉の中に中性子を計るものがあるが数値は公表されていない。ひょっとすると壊れていて使えないのかもしれない。外部で検出された中性子は参考にならない。

小出:そこで、温度が下がらないのは再臨界が起きているのではないかと予想。限られた情報の中で合理的に推測するとそうなる。1号機から目を離せない状況。圧力を抜いて爆発しないようにしなければならないが、もし再臨界が起きていたとすれば、もっと濃度の高い放射性物質が外に吹き出してくる。

東電の記者発表では、高い数値について計器がおかしいという話もあったが?

小出:そうであったほしいが、そうでない場合は問題だ。

小出:大気中に高濃度の放射性物質が放出されることになると周りはさらに気をつけなければならない。いままでに沖縄にも広島にも届いている。最悪の事態にはチェルノブイリと同じ規模になる。チェルノブイリの場合は発電所から700キロまで放射線汚染指定区域になった。

小出:拡散データが出るようになったが、データは出すほうはちゃんと出すし、受け取るほうもちゃんと受け取ることがだいじ。東電、政府は混乱を何よりおそれる。パニックにならないようにしようとすると安全です、が先に出て、説明はあと。

海に放出した低レベル放射物は低レベルと言っても少しも低レベルでない。小出先生が普段処理しているものの100倍、1000倍で、それが大量にある。

東京新聞に水棺冷却を検討とあるが何?

小出:初めて聞きました。

いまやらなければいけないことは?

小出:原子炉を冷却する。水を入れなければいけない。水を入れなければいけないが、外部から入れた水は外にださなければいけない。そのために「低レベル」の汚染水を海に捨てている。

小出:再臨界が起きてしまうと、放射能を冷やす程度の水では足りなくなる。しかし、それに失敗すると最悪の事態、水蒸気爆発が起きる。そうなったら、風向きによっては東京も放棄しなければいけない。

小出:かける水の量は増やせるが、急激にたくさんいれると中で蒸気が大量に発生する。そのため、水を入れる量の加減がたいへん。闇雲に水をかければいいというものでもない。臨界は長い時間にわたっては続かない。臨界が始まるとその部分が膨張する。そして止める。また始まるというふうに繰り返し続く。



新論文:「意図しない再臨界」が起こっているのか。
Is Unintended Recricality Ocurring?
ピース・フィロソフィー・センター(カナダ・バンクーバー)ウェブサイト掲載

Friday, April 01, 2011 
http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/04/is-unintended-recricality-ocurring.html


(★翻訳の修正も終わりました。転載していただいて大丈夫です)
(★ダルノキ―ベレス論文を訳していただける方が見つかりました。もうすぐ発表します)

アジア太平洋ジャーナル:ジャパンフォーカスに昨日(3月31日)発表された、モントレー国際問題研究所不拡散研究センターの研究員、フェレンス・ダルノキ―ベレスによる論文の解説文(解説はIEERエネルギー環境研究所所長アージャン・マキジャーニによる)を翻訳し、配布します。この論文は『ネイチャー』誌ウェブサイトにさっそく取りあげられ、アジア太平洋ジャーナル(APJ)のウェブサイトにも今アクセスが集中しています。このピース・フィロソフィー・センターのブログの運営者はアジア太平洋ジャーナルの編集委員も務めており、この論文の解説文を翻訳・発表する経緯となりました。解説文の翻訳については正確を期したつもりですが、英語版が唯一の正式な文書であり、英語版と日本語版の間に意味や解釈に違いが生じた場合は、英語版を優先してください。転送転載は自由ですが、全文が条件、そしてこのサイトへのリンクを明確に記してください。解説の翻訳文に問題がある場合、info@peacephilosophy.com に連絡ください。また、この論文の本文を至急訳してくれる人―物理化学系の方が望ましい―を募集します。その場合もinfo@peacephilosophy.com に連絡ください。また、この論文の内容自体について質問やコメントがある場合は、英語で info@peacephilosophy.com に送ってくれれば著者たちに転送します。その場合は、議論を広く共有するために、質問やコメントもウェブサイト等で公表する可能性があることをご承知ください。日本語でコメントや質問を送っていただいた場合は、受け取りますが、翻訳の人手が足りず、著者に届けるのは現時点では難しいことをご了承ください。

ピース・フィロソフィー・センター

What Caused the High Cl-38 Radioactivity in the Fukushima Daiichi Reactor #1?


福島第一原発の1号機(タービン建屋)に見つかった
高い濃度の放射性塩素38の原因は何か?


F. Dalnoki-Veress with an introduction by Arjun Makhijani
F.ダルノキ―ベレス
解説文 アージュン・マキジャーニ

(掲載誌 アジア太平洋ジャーナル:ジャパンフォーカスによる導入文)
This is a first for The Asia-Pacific Journal: publication of a technical scientific paper addressing critical issues pertaining to the leakage of radioactive water at the Fukushima reactors. Our goal is to make this information available to the Japanese and international scientific communities, to Japanese government authorities, and TEPCO as they address the formidable issues of cleanup and safety. But we also believe that the information is of importance to informed citizens and the press in the face of further dangers that have gone unmentioned not only in government statements, but also in the press. Arjun Makhijani’s introduction provides a lucid explanation of the problem and the issues, followed by F. Dalnoki-Veress’s paper. Asia-Pacific Journal

アジア太平洋ジャーナルは今回初めての試みをした。福島第一原発の原子炉において、高い濃度の放射性物質を含む水が漏れたことに関連する重要な事柄を議論する科学技術論文の掲載である。この論文が、汚染水の除去と作業員の安全確保という大変な課題を扱うものであり、私たちは、日本の、そして世界の科学技術学界、日本政府当局、東京電力にこの論文を提供したいという目的をもって掲載に至った。また、この論文の内容は、政府関係の書類や報道ではまだ触れられていない危険性について論じており、一般市民やメディアにとっても重要であると信ずる。まずアージュン・マキジャーニ博士の解説文によりこの論文の扱う問題を明らかにした後、F・ダルノキ―ベレス博士の論文を紹介する。(アジア太平洋ジャーナル)

解説文(IEERエネルギー環境研究所 所長 アージュン・マキジャーニ)

The presence of highly radioactive water in three turbine buildings at the Fukushima Daiichi nuclear plant is widely understood to be from the damaged fuel rods in the reactors. This has rightly raised concerns because it indicates several problems including extensive fuel damage and leaks in the piping system. Less attention has been paid to the presence of a very short-lived radionuclide, chlorine-38, in the water in the turbine building of Unit 1. The following paper evaluates whether its presence provides evidence of a serious problem – one or more unintended chain reactions (technically: unintended criticalities) – in the reactor. Such chain reactions create bursts of fission products and energy, both of which could cause further damage and aggravate working conditions that are already very difficult.

福島第一原発の3つのタービン建屋(訳者注:1号機から3号機のタービン建屋)の溜まり水の高放射線の原因は、原子炉の炉心が損傷を受けていることであると広く理解されている。これは炉心の損傷が進んでいることと、配管システムに漏れが生じていることをはじめとする数々の問題を示唆しており、懸念が高まるのは当然である。しかし1号機のタービン建屋の溜まり水に、塩素38という短命の放射性核種があることにはあまり関心が注がれていない。この論文は、この物質の存在が深刻な問題、つまり、意図しない連鎖反応が1回か複数回起こっている(技術的には、「意図しない再臨界」といえる)ことの証拠になっているかどうかを検証する。このような連鎖反応は、核分裂生成物とエネルギーの急速な放出をもたらし、その両方が損傷を悪化させ、すでに非常に困難な作業環境をさらに悪化させる可能性がある。

Chlorine-38, which has a half-life of only 37 minutes, is created when stable chlorine-37, which is about one-fourth of the chlorine in salt, absorbs a neutron. Since seawater has been used to cool, there is now a large amount of salt – thousands of kilograms – in all three reactors. Now, if a reactor is truly shut down, there is only one source of neutrons, namely, the spontaneous fission of some heavy metals which are created when the reactor is working and remain present in the reactor fuel. The most important ones are two isotopes of plutonium and two of curium. But if accidental chain reactions are occurring, it means that the efforts to completely shut down the reactor by mixing boron with the seawater have not completely succeeded. Periodic criticalities, or even a single accidental one, would mean that highly radioactive fission and activation products are being (or have been) created at least in Unit 1 since it was shut down. It would also mean that one or more intense bursts of neutrons, which cause heavy radiation damage to people, have occurred and possibly could occur again, unless the mechanism is understood and measures taken to prevent it. Measures would also need to be taken to protect workers and to measure potential neutron and gamma radiation exposure.

塩素38は半減期が37分と短く、天然の塩素に4分の1ほど含まれる塩素37が中性子を吸収するときに作られる。海水が冷却に使われたために、3つの原子炉すべてに何千(何万)キロもの大量の塩がある。原子炉が本当に停止しているのなら、中性子の出所は1つしかないはずだ。それはすなわち、原子炉が稼働しているときにつくられ、炉心の中に存在し続けるいくつかの重金属(訳者注:超ウラン)の自発的な分裂のことである。一番重要なものとして、プルトニウム2つ、キュリウム2つの同位体がある。しかし、もし予想外の連鎖反応が起きているとしたら、ホウ素を混ぜた海水で原子炉を完全に停止しようとする努力は、完全には成功していないということになる。断続的な臨界が起きているとしたら、いや、1回だけ偶発的に起きたにせよ、高い放射能を持つ放射性核分裂生成物と放射化生成物が、原子炉停止後も(少なくとも1号機では)生成され続けている(もしくは生成された)ということを意味している。それはまた、人に多大な放射線被害をもたらす中性子の集中的な発生が、1度かそれ以上起きていたという意味であり、その仕組みがわかり、もう起こらないような予防策が取られない限り、さらに起こる可能性があるということである。作業員を安全を確保し、発生している可能性がある中性子とガンマ線被ばくを測定するための対策を取るべきである。

This paper examines whether spontaneous fission alone could be responsible for the chlorine-38 found in the water of the turbine building of Unit 1. If that could be the only explanation, there would be less to be concerned about. However, the analysis indicates that it is quite unlikely that spontaneous fission is the sole or even the main explanation for the measured concentration of chlorine-38. Presuming the reported measurements are correct, this leaves only one other explanation – one or more unintended chain reactions. This paper is presented in the spirit of encouraging discussion of whether further safety measures might be needed, and whether supplementary measures to bring the reactors under control should be considered. It is also presented as a preliminary analysis for scientific discussion of a terrible and technically challenging nuclear crisis at the Fukushima Daiichi plant.

この論文での分析結果は、1号機の溜まり水から検出された塩素38の原因として考えられるのは自発的な核分裂だけなのかということである。それしか説明として考えられいのであれば、それほど心配することではない。しかし、この論文の分析では、計測された塩素38の濃度は、自発的な核分裂が唯一の原因であるどころか、主要な原因でさえない可能性が高いということを示唆する。報告されている計測値が正確であると仮定すると、残された可能性は一つしかないことになる。それは、1回かそれ以上の連鎖反応である。この論文は、安全策のさらなる強化が必要なのか、また、原子炉を安定させるための追加策が必要なのかという問題意識のもとで提示している。また、福島第一原発における、悲惨で、技術的にも困難な核の危機の、科学的議論の予備的分析を提供するものである。

(解説文 以上)
(フェレンス・ダルノキ―ベレス論文の本文は、まだ翻訳されていません。アジア太平洋ジャーナルのウェブサイトでご覧ください。)
リンク: http://www.japanfocus.org/-Arjun-Makhijani/3509


解説者・著者紹介

アージュン・マキジャーニ
エネルギー環境研究所所長。カリフォルニア大学バークレー校工学博士(専攻は核融合)。過去20年間、核兵器製造、実験、核廃棄物等、核燃料サイクルの分野で多くの研究業績と論文がある。著書のCarbon-Free and Nuclear Free: A Roadmap for U.S. Energy Policy (『CO2と核からの脱却:米国エネルギー政策のロードマップ』)では、化石燃料や核エネルギーに一切依存せず、米国経済を完全に再生可能エネルギーに移行させる初めての分析を行った。Nuclear Wastelands(『核廃棄物の土地』)のの共編者、Mending the Ozone Hole (『オゾン層の穴を治す』)の主著者でもある。メールアドレス: arjun@ieer.org 

フェレンス・ダルノキ―ベレス
モントレー国際問題研究所、ジェームズ・マーティン不拡散センターの研究員。核軍縮・廃絶と核分裂物質の世界的拡散についての専門家である。カナダ・カールトン大学で高エネルギー物理学の博士号取得(超低レベル放射線バックグラウンド測定器の研究)メールアドレス:ferenc.dalnoki@miis.edu 電話番号:831-647-4638.

著者注:この論文を注意深くレビューしてくれた、モントレー国際問題研究所不拡散センターのパトリシア・ルイス博士、IEERのアージュン・マキジャーニ博士に感謝する。ルイス博士の連絡先: patricia.lewis@miis.edu 

(Translation by Satoko Norimatsu)



ラベル:原発震災
【関連する記事】
posted by nfsw19 at 18:00| ロンドン | Comment(0) | TrackBack(0) | 記事&番組クリップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。