2011年02月04日

革命なう@エジプト 第11日-2

13.35 GMT

しばらく前に、今日最初のクラッシュがあったとBBCのティム・ウィルコックス。広場の中に集まっている数万人の反政府勢力に対し、広場の北のはずれ、昨日一昨日、最前線となっていた国立考古学博物館のあたりのフライオーバーに千人規模のムバラク支持者が集まり、広場に向けて投石しているという。

そんなことが起きている一方で、別の入り口では広場に入ろうとする人々がまだ何百メートルにもわたって長蛇の列を作っている。広場に入るためには厳しいIDチェックと持ち物チェックがあり、そのために列はなかなか進まない。でも、みな穏やかにおしゃべりとしながら待っている。

今日は、昨日までとはうってかわって、アーミーが戦車も人員を相当数出して、広場の民衆が周囲から攻撃されないように厳重に取り囲んでいる。ムバラク支持のデモも小規模ながら起きているが、広場に向かう道は軍用車でふさがれている。



15.35 GMT

カイロの雲行きが怪しくなってきた。雲が垂れ込めて風が強まり、雨が来るかもしれない。ロンドンにも強風注意が出ていて雲行きも同じように怪しいのでテレビの中と外がひとつながりみたいだ。タフリール広場では再び祈りが始まっている。

15分ぐらい前にムバラク辞任との噂が広まり、人々は色めき立ったと、広場内で取材中のジム・マーが伝えた。

ティム・ウィルコックスが、現在カイロに留学中(だと思います、聞き逃した)で、昨日、秘密警察に尋問された西欧人女性に電話インタビュー。同じく西欧人の友人と二人で歩いていたところ、秘密警察に捕まり、その場でジャーナリストかと尋問された。ふたりともアラビア語を話せるのでアラビア語で答えると今度はスパイかと尋問された。否定しても聞き入れられず、手錠と目隠しをされてバンに載せられ、秘密警察の拘置所に連れて行かれた。そこでも別々に取り調べを受け、ジャーナリストかスパイだと認めるように自白を迫られた。拒否していると一晩留置された。

そこには他に外国人はいましたか、とウィルコックスが尋ねると、「50〜60人いました。ジャーナリストも多く、みな口々にカメラを壊された、メモリーカードを抜かれた等と話していました。アメリカ人、ベルギー人、日本人、ドイツ人などがいました。もちろんエジプト人もたくさんいました」

「朝になって、9時ごろに外国人は全員が解放されたのですが、解放された直後にまた別の秘密警察に捕まってしまい、別のオフィスに連れて行かれてそこでも同じ尋問を1時間受けました」



朝から噂されていたが、タンタウィー新防衛相が広場を抜き打ちで訪問してプロテスターと対面。いますぐ政権を去るようにとの容赦ない歓迎を受けた。

アレクサンドリアでも大きなプロテストが起きているが、ムバラク支持と民主化支持が街中で対峙し、つかみ合いに発展する場面があった。秘密警察とスパイが多数繰り出し、プロテスターに混じっている模様。外国人ジャーナリストはかなり危険な状態で、この1週間、アレクサンドリアに張り付いていたBBCの記者の顔がずいぶん年取ったように見える。



18.00 GMT(現地時間:20.00)

アルジャジーラ・イングリッシュ。

カイロはもう暗い。オレンジ色の照明に照らし出される広場の大群衆は、ムバラク辞任の知らせを待っている。すごい盛り上がりだ。お祭りのようだし、コンサートのようだし、すごく熱い。

昼間の金曜の祈りの様子が録画で放送される。説教(というのかどうか知らないが)の途中でイマムの声が涙でつまり、人々が頭を垂れて祈る間、イマムのすすり泣きが聞こえている。内容はわからなかったが胸がつまった。(イマムはエジプト人とエジプト人が殴り合う、殺し合う様子について嘆いていたそうだ)

今日から外出禁止が緩められ、午後5時から朝6時になった。とはいえ、広場の中はまだ人でいっぱいだ。

アレクサンドリアでもまだ大群衆がプロテストを続けている。



アルジャジーラの記者がチュニスからチュニジアの若者たちの動きを伝える。チュニジアのジャスミン革命の成功はエジプトの民衆蜂起に大きな勇気を与えたと言われているが、いまチュニスの若者がエジプトの蜂起を側面からサポートしようとしている。顔を隠した映像で出てきたかれはハッカーで、エジプトの政府サイトに潜り込む予定だという。



アラブ連盟の現事務総長のアムル・ムーサーが広場に来ているそうだ。アラブ連盟が反政府側を承認したと考えていいだろうってことと同時に、あるいはムーサーが政権転覆後のリーダーになるとか? かれは衛星テレビでムバラクの今後について尋ねられ、「ムバラクの尊厳」を強調したそうだ。チュニジアのベンアリのように、受け入れ国を探してうろうろするようなことがないようにってことだ。ムーサーは外交官出身でエジプトの国連代表も務めた。

これはエルバラダイも同様で、尊厳をもって国を出て行けるようにすべきだと言っている。エジプト人のだれもかれを恥辱のうちに追い出すようなことはしたくないだろう、と。

反政府勢力が呼びかけたデモに参加した人でも、実はムバラクの業績を評価する意見が少なくない。年配の人たちにとってかれは戦争の英雄であり、中年層には国の安定が評価されている。だから、ムバラクが9月引退を表明したことでとりあえず勝利と考える人も多いようだ。

民主化支持の活動家ブロガーがインタビューに答えて、「町中クレージーだ。今日1日で3回も警察に捕まった。たぶん、僕の髪が長くて西欧人みたいに見えるからだろ」。ユースの運動にはリーダーがいないことについてどう思いますかとの質問に対しては、リーダーがいなくても自分たちはうまく組織化し、平和に効果的にやってきたと答えていた。まだ、具体的にだれとは言えないのかもしれない。



これは(おそらくこれからもっと増える)、インターネットなど新しいコミュニケーションツールを使った民主化運動のひとつの雛形かもしれない。巨大な周縁だけがあって中心がない。

ミドルサイズのリーダーが衛星のようにあっちこっちにいて、例えばフェイスブックやブログやどこかのフォーラムのようなところで人や情報の流れをさばく。この場合、それらのリーダーたちに必要なのはカリスマよりもファシリテータとしての能力だ。そして、それらの衛星とネットワークがセットになって上下斜めに自由につながり、ケースバイケースで組み合わせを変えて肉体化する。

情報は必要なら即時に共有可能だし、だれでも拡散できるので、広報係も印刷工場もHQも要らない。一方で、発信する情報を多くの人に読んでもらうには説得力のある内容と言語能力が必要であり、また受信する側に回ったときにはその情報の価値を選別する能力が必要になる、そして、おそらくこれがもっとも大事だと思うんだけど、これらの発信選別再発信の作業を瞬時の判断でこなされなければならない。こんなところで鍛えられれば、参加する人間の知力は自ずと高くなる。

いったいどんなことが話されているんだろうと思って「4月6日ムーブメント」のフェイスブックを見てみたら、アラビア語でした〜(笑)。読めん。みんな英語がうまいのでつい英語でやってるのかと思ったんだけど、つまりこの世界では英語は標準装備なわけね。それに、母語として使用する人口は英語よりアラビア語のほうが実は多いのかも(調べてないですが)。特に新しいコミュニケーションツールについてはそうなんじゃないだろうか、若年人口が多いし。

以前、ほとんど初対面に近いイラク人芸術家とスーダン人元弁護士(どちらの女性も戦争難民だった)がいきなり親密に話し始めるのを見てびっくりしたことがあるが、ふたりの母語はアラビア語だった。つまり、この「4月6日ムーブメント」のフェイスブックにしろ、今度の民衆蜂起で使用されているフェイスブックにしろ、世界中のアラビア語使いが読んで共有しているわけだ。失敗も成功も情報はすぐさま伝わるから、後から蜂起する側は同じ徹を踏まないように学習も可能だ。

そんなわけで全然読めなかったんですけど、このページのアドの1番上にはイギリスのコメディアンのデイヴィッド・ミッチェルの「THE SOAP BOX」が出てた。これなら読める(笑)。

写真のページにはかなり凄惨なものが混じっています。不用意に開けないように。ビデオページにはこの数日間に何度もテレビで見た映像、プロテスターを蹴散らして走り去る政府側のバンの映像があります。0.21のものが抜粋、3.28のものがその全体。
http://www.facebook.com/group.php?gid=9973986703

この動画を持ってこようとしたんですが、息子のフェイスブックのページにダウンロードされちゃうみたいなので止めました(わたしはまだフェイスブックのアカウントを持っていないのにフェイスブックが読めるのは、息子のアカウントを経由しているからです)。前にウィキリークスのフェイスブックを読んでいて、つい「LIKE」をクリックしたら、以来、息子のフェイスブックにウィキリークス関連のニュースがどんどん届くようになって怒られた。



話を「4月6日ムーブメント」に戻せば、かれらは何度も政治的なグループでないとノンポリを強調しているんだけど、やっていたこと(労働運動とストライキのサポート)は十分に政治的動機に基づいており、エジプト当局に運動をつぶされないための方便だったんだろう、やっぱ。それでも何度も逮捕され、時には大量に逮捕されながら、とうとう百万人のデモ(と独裁政権の転覆)を実現させる一翼を担うまでになった。

政治的な能力の高さはもう証明されたも同然であり、社会を変えたいと思うからには政治的な野心がないはずがない。アルジャジーラやBBC、SKYニュースのインタビューに答えるかれらは明晰で志も高い。エジプトは人口の半分以上をこのようなユースが占める国だ。イランもそうだし、中東には平均年齢の若い国が多く、その可能性は底知れない。



かれらは11回目の夜を解放広場で過ごしている。風も強いし、ひどく寒そうだ。これが最後の広場での夜になるように。



[つけたし]

日本のマスメディアのみなさんへ:「opposition」 を「野党」あるいは「野党勢力」と訳出していると、こういう有能な集団を取りこぼすことになります。政党でもなければ結社でもない、志を共有する個人さえも含むのが「opposition」ですから、「反政府勢力」あるいは「反体制勢力」等ケースバイケースで訳し分けてください。

エジプトの場合、「opposition」を「野党」と訳していると、非合法化されているとは言え、いちおう政治結社の形をとっているムスリム同胞団を実際より巨大化して見せることになります。ムスリム同胞団は大きな勢力かもしれませんが、23あるといわれる反政府勢力の一つに過ぎません。

「opposition」が「野党」になるのは明確に「opposition party」の文脈で使われている時か、大文字の「O」で始まる「Opposition」の時です。大文字の「Opposition」はイギリスの二大政党制の中で使用される言葉で、政権交代可能な二大政党のうちの下野している政党を指します。イギリス議会には野党第一党を正式に「Opposition」と指定する制度があり、議会での与野党の活発な議論を促すため、また次の内閣の人材を育成するために Opposition の「影の内閣」には予算がつきます。



ラベル:エジプト
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posted by nfsw19 at 23:45| ロンドン ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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