2010年11月05日

[知恵袋] イギリスはガーデナーの地位が高いと聞きました。ほんとうですか?

イギリスではガーデナーの地位が高いと聞いたのですが、ほんとうですか?
芝刈りや花を植えたりは自分でしそうですが、
ガーデナーはどんな仕事をするんでしょうか?

地位が高い=収入が多い、と規定するのでなければ、「イギリスではガーデナーの地位が高い/相応の敬意を払われている」と言っていいかと思います。(ガーデナーに限らず、一般的にイギリスでは、社会的地位が高い/敬意を払われる職業につくことが収入に結びつかない場合が多いです/多かったです。逆に言えば、資産のあるなしにかかわらず尊敬される職業がいろいろあります/ありました。←最近はものごとをお金で測る傾向が強くなってきてます)

ガーデナーの仕事は庭全体の管理です。大掛かりな土木工事を伴う庭の設計からこなすランドスケープアーキテクトやガーデンデザイナーもいますが、そこまでやらないまでも、どんな庭木を植えるかや花壇の花の植え込みのデザインやそれに伴う実作業をガーデナーは担当し、その庭が1年中美しく健康であるように管理します。



イギリスは公園も多いですし、また一般公開されていないコミューナルガーデンもそこらじゅうにありますから、仕事は多いです。コミューナルガーデンというのは、多くは表通りに面していないパブリックなグリーンスペースで、その庭を囲む数十軒の家の住人だけが使える半プライベートな空間です(映画の『ノッティングヒルの恋人』でジュリア・ロバーツがフェンスを乗り越えて入った庭もそのひとつです。あんなことをしてるのがばれたらポリスが呼ばれますから、いい子はまねしてはいけません)

公道に面したコミューナルガーデンの入り口(鍵がかかってます)

NottingHill Gardens.jpg

コミューナルガーデンが利用できるフラットに10年ほど住んでいましたが、カウンシルが契約したガーデナーが季節の節目は(シーズン中は何度も)派遣されてきて芝刈りから落ち葉の片付け、コンポスト作り、植物の管理までやってました。そこの住人は何もしなくてもきれいな庭を1年中楽しめますが、その分地方税が高いです。



以前住んでいたところの隣人は自分の庭の管理を全部ガーデナーに任せていました。そんなに広い庭ではないんですけど(15 x 20メートルぐらい)、自分ではせいぜい家に飾るバラを庭から摘むぐらいで、芝刈りから草むしり、花の管理から落ち葉や落下リンゴの片付けまでガーデナーが通ってきてやってました。隣人は(水まきのホース以外は)庭仕事の道具など何も持っていないという徹底ぶりで、ガーデナーは毎度芝刈り機と脚立持参でした。

植え込みの刈り込みや芝刈りなど誰にでもできる庭仕事にだけ呼ばれるのは、ガーデナーではなくてハンディマン(便利屋)です。


イングランド史上(おそらく)一番有名なガーデナーはケーパビリティ・ブラウンというニックネームのランドスケープアーキテクトのランスロット・ブラウンです。かれは新しく庭(といっても広大なものですが)を設計するときに、その場所(原野など)のケーパビリティ(可能性)を見抜くことをモットーとし、それを口癖にしていたのでこういうニックネームがついたそいです。

ウィキペディアのかれ紹介ページの下の方に設計した庭の一覧があります。

ケーパビリティ・ブラウンの設計した庭のひとつ、ロングリートについては、こちら(イングランドの上流階級って年収1億円超ぐらいですか?)もあわせてご覧下さい。



イギリス全体でガーデニングに熱心な人は1200万人いると言われています(人口の2割)。そういう人たちが毎年楽しみにしているのがチェルシーフラワーショーで、会期中はBBCで毎日中継があります(昼はライブ、夜は録画放送)。

2010年の受賞作品の一部がチェルシーフラワーショーのホームページで見られます。

フラワーショーでは鉢植えの花や品種改良など多くの分野でその年の受賞作が決められますが、中でも注目はガーデンデザイン部門でデザイナーの登竜門になっています。チェルシーのすぐあとにはハンプトンコートで同様のフラワーショーがあります。

BBCのチェルシーフラワーショーのプレゼンターとして毎度おじみのアラン・ティッチマーシュ。ワイドショーのプレゼンターですが、ものすごく熱心なガーデナーとして有名(ガーデニング番組ももってます)。

chelsea flower show.jpg



イギリスの家のメインの庭は家の裏側にあり、たいがいの場合、他の家の庭と背中合わせになっているので表通りからは見えません。ですから、お家に呼ばれて庭の見える部屋までいくと、思いもかけないような風景が広がっていることが時々あります。そういう素人の自慢の庭がチャリティで一般公開されています。イエローブック(情報本)が毎年出ていますから、旅行のときに利用するとガイドブックには載っていないお庭を訪問できますよ。

2010年のイエローブックはこちらをご覧下さい。



これらをほんの一例として、とにかくイギリス人は庭好きです。ですから、庭と植物のすべてに精通したガーデナーには、当然のことながら相応の敬意が払われています。

とは言え、数年前に読んだ新聞記事に、昨今のイギリス人は庭作りにせっかちになってきていて、じっくりと庭木が育つまで我慢できなくなってきているとありました。その結果、庭を作る時はガーデンデザイナーを頼んで庭の設計をまかせるほか、すでに育った木を植え込むなどした完成品を求める傾向がでてきているそうです。
posted by nfsw19 at 00:00| ロンドン 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 知恵袋回答 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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