イギリスでは半数近くの人が自分を無宗教と考えているそうです。宗教を問うアンケートなどにもたいがい「無宗教/神の存在を信じない(Atheism)」という選択肢がありますよ。(「答えない」という選択肢もあります、もちろん)
というわけで、イギリスでは無宗教は嫌われません。
いま議会の三大政党の党首のうち、保守党とともに連立内閣を構成する第三党の自由民主党党首ニック・クレッグと、野党の労働党党首エド・ミリバンドは無宗教であることを公言しています。ちなみに首相のデイヴィッド・キャメロンはアングリカン(英国国教会)です。
でも息子の友人のブラジル人の子に宗教を聞かれて「無宗教」と答えたらものすご〜く不思議みたいだったので、カソリック国では無宗教は嫌われはしないまでも不思議がられるかもしれません。(日本人は仏教徒と考えている人が多いような気がしますが、たまに神道じゃないの?と聞かれることもあります)
とは言え、アメリカではバイブルベルト地帯に集中するキリスト教右派が、大統領選挙の結果を左右する大きな勢力になっているようですし、プロテスタントの国といってもいろいろですね。
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話は変わりますが、イギリスの場合、カソリック系の公立中等学校(無料)に評判(とアカデミックな成績)の良い学校が多く、そういう良い中等学校に子どもを入学させるためには両親の少なくともひとりと子ども本人がカソリックであることが最低条件なので、子どもが生まれると(おそらく便宜的に)カソリックに改宗する人もいます。
ブレア元首相の息子たちは、かれが首相として在任中にそういう有名公立カソリック(ロンドンオラトリー)に通っていて、首相官邸からハマースミスにあるその学校までいくつも区をまたいで通っていたので問題になっていました。(公立学校は通常家が近い子から入学を許可するものなのに、首相の子どもたちを特別扱いしたのではないかということで)ただし、ブレア家の場合は妻のシェリーが元々カソリック家庭出身なので、子どもの教育のために改宗したわけではありません。
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政治家は自分の政治信条にあわない行動をとると批判の対象になるので、子どもをどこの学校で教育するかはけっこう大きな問題です。
小学校のあいだは多くの政治家が子どもを近所の公立にやりますが、中等学校の場合、私立と公立では教育法にも在校生の素行にも大きな違いがあり、そう簡単にどの公立でもいいというわけにもいきません。特に労働党の政治家の場合は党是として子どもを私立に通わせるわけにはいかないので悩みは深かろうなあと、これはイギリスで子育てするわたしの個人的な感想です。
ブレアの場合、公教育を立て直すという公約で選挙に勝ったばかりか、自分自身はスコットランドのイートンとも言われる有名私立校出身(労働党の政治家としてはマイナス点)なので子どもたちを公立に通えわせるしか選択肢はなく、息子たちをオラトリーに通わせるかたわら首相官邸で家庭教師をつけていたと言われています。
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イギリスでは無宗教は問題にならないと書きましたが、首相の場合、カソリックだと問題になるのかもしれません。と言うのも、はやりブレアの場合ですが、そういうわけで妻と子どもたちはカソリックであったにもかかわらず、かれ自身はずっとアングリカンで、首相職を辞すると早々にローマンカソリックに改宗しました。
ただし、アングリカンでないと首相になれないということはなく、ブラウン前首相は親がスコットランド国教会(長老派プロテスタント)の聖職者であり自身も信徒です。(50年ぐらい前まではアングリカンでないと議員にもなれないと法律で規定されていたようです)
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