帰国子女というと、バイリンガルで国際的などなど成功例ばかりが耳に入ってきますが、
外国で子どもを現地校に通わせた場合のデメリットはなんでしょうか。
取り返しのつかないような失敗例はありますか?
14歳の息子を3歳半から現地校に通わせています。日本人学校に通わせたことはありません。
ずっと現地校なので言葉も勉強も特に問題ありませんが、日本語との完全なバイリンガルに育てるのは半ばあきらめました。家の言語環境が日本語なので聞くと話すは人並みにできますが、読むのは漫画止まり(読みがながあるので)、書くのはひらがな、カタカナ、漢字は多くても200字程度だと思います。
小学校のときは家で教えることでなんとか維持していたのですが、中学になって学校の勉強が忙しくなり、それどころではなくなってしまいました。また、日本の慣習や常識にも疎いので、ときどき会話がすれちがいます。
以上の経験から思うのは、小さいうちから土曜補習校に通わせるなどして習慣付けするとか、「不自然な日本語学習環境」を整えない限り、読み書きは維持できないということです。
とは言え、それ以外の不便は感じませんから、その他の点では日本人学校より現地校がいいと思います。
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息子の日本語と英語の会話には少なくとも2歳ぐらいのギャップがある(読み書きのギャップはそれより遥かに大きい)。英語は学校の科目としても得意なので、おそらく一般の14歳よりは高度な会話ができると思う。それに比べると日本語はかなり劣り、ボキャブラリーも限定的だ。そのため日本語で話せる内容には限りがあり、英語でなら話せること(抽象的な内容など)が日本語では話せない。
かれの場合、今のところ、このギャップがそれほど大きくないのでまだ日常的に日本語で話すことができるが、そろそろ受験体制に突入するので、いまから2年たったらどうなっているかわからない。英語はますます高度になり、日本語の出来はいまより悪くなっても良くなる見込みはないからだ。
片親(多くは母親)が日本人の家庭の場合、多くがもっと以前に子どもに日本語を話させることをあきらめてしまう。子どもに自意識が芽生えてくるころ(小学校に入るころ)、英語で話せる内容を日本語でも同じように話せなくなると、恥ずかしさから話すことをやめてしまうのだ。特に女の子の場合にこの傾向が顕著で、女の子の方が言葉の発達が早いせいではないかと思う。
子どもにとっては、自尊心を守るためにはしかたのない選択かもしれないが、親が日本語(や他の様々な言葉)で話しかけ、子どもが英語で答える光景をしばしば目にする。ちゃんと答えているのだから親の質問は理解できているのだが、自分は日本語を使おうとはしない。
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イギリスの場合、(あまり成果があがっていないにもかかわらず)政府が早期教育にやたらと熱心で、フォーマルな教育がスタートする年齢がどんどん下がっている。いまでは3歳児に対して言葉の発達に関する検査が行われ、遅いとか早いとかやっていて、ネグレクトされている子どもを見つけるには有効かもしれないが、それ以外の点では意味がないどころか害になるように見える。
移民家庭の子どもの場合、3歳の時点で英語が得意でないのはまったくおかしなことではない。まだ母語を身につけている段階だなのだから、第二言語である英語の導入は母語の発達を疎外してまですべきではないと思う。でも、教育制度は待ってくれない。小学校は5歳から始まり、その前年の4歳にはレセプションクラスが始まる。だから、その前にはフォーマルな勉強を始められる程度の英語を身につけておかなければならないってわけだ。
そうして子どもは母語をゆっくりと学ぶ機会をなくし、英語はどんどん達者になっていくのだが、親の英語能力は子どものそれに追いつかない場合がほとんどなので、やがては親子のあいだでの親密な会話が困難になる。ひどいときには、英語がうまく話せないというだけで子が親を馬鹿にしたりもし、そして同時に母国の文化を英語圏の文化より下に見たりするようになる。
そう悲観的なことばかりではないけれど、バイリンガル教育が陥りやすい間違いについて考えてみた。
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