ほとんどの学校に制服があります。
公立小学校は学校のエンブレム入りのスウェットシャツなどのトップに、ボトムは色が決まっていて形は自由(だいたい黒、紺、グレイ)。夏になると女の子はギンガムチェックのワンピースというのもよく見ます。デパートなどで新学期前にどの学校でもだいたいOKの制服用衣類を売ってます。
私立の小学校はジャケットと、低学年の男の子は半ズボン、上になると長ズボン、女の子はジャケットにスカートかワンピース。帽子をかぶっているところも多いですし鞄まで決まっているところもあります。スクールショップで購入します。
中等学校は公立私立、男女ともジャケットとボトム(グレイなど)の組み合わせで、ときどき上がスウェットシャツやセーターなどの場合もあります。
シックススフォーム(大学受験準備校、日本の高校生の年齢)は制服はありませんが、だいたいスーツか上着を着てくることが奨励されているようです。
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小学校のときは息子をシュタイナー学校にやっていて制服はなかった。日本のシュタイナーには制服のようなものがあったり、たとえなくてもシャツの色など細かい規定があると聞いたが、イギリスのシュタイナーには制服はない。キャラクター入のTシャツはだめといった禁止事項があった程度だ。
「自由であること」が重視されていたからではないかと思うが、もうひとつには児童の親がほとんど例外なく同質のミドルクラスだったことも関係しているのではないかと思う。つまり、子どもの日常着に過剰に高価だったり派手だったりするような服装は選ばないとう常識が共有されていて、また、子どもどうしがファッションで張り合ったりしないように目を光らせることができ、そして何より季節や成長や場合にあわせて衣類を買い替えるだけの経済力がある。
言い換えれば、こういったことが親のあいだで共通に見出されない場合は子どもの通学着は制服のほうがいいということになるかもしれない。実際には3番目の経済的な理由が比重としては大きいように思う。公立校には難民の子女も通う。
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通わせていたシュタイナー学校はまだ新しい学校だったので独自の校舎がなく(いまもまだない)、公立の小学校の2フロアに間借りしていた。公立小学校には制服があったので(トップはスウェットシャツ/夏はポロシャツでボトムは黒だった)、同じ学校にまったく見た目の違うふたつの子どものグループが存在することになった。
その学校に息子を通わせることに決めた時、公立校に間借りしているという普通ならデメリットである特徴をわたしはポジティブにとらえていた。シュタイナーの子どもたちだけで小さくまとまらず、同じ建物内、敷地内にいる公立校の子どもたちと交流を持てるかもしれないと期待したからだ。しかし、これは非常に甘かった。
公立校の校長はふたつのグループが混じり合うことをよしとせず、それぞれの学校の開始時刻、終了時刻を30分ずつずらした。休み時間もずれるようにスケジュールが組まれ、ふたつのグループが校庭でまじりあう機会もなかった。存在は知っているのにニアミス以外に交流のないふたつのグループのあいだには緊張が生じ、時々対立が表面化するようになった。具体的には公立校の子どもたちが集団でシュタイナーの子どもたちに向け、あからさまに侮蔑を混めて「ドロボー!」とはやし立てるようになったことがある。実際にはけっこうな多額の賃貸料をその学校に払っていたのだが、一種の階級闘争だったのかしら。
いまはどうなったか知らないが、息子がその学校にいたあいだ、公立小学校との交流は何もなにもなかった。残念なことだと思った。
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ヒュー・グラント主演の映画『アバウト・ア・ボーイ』に、もうひとりの主役の中学生マーカスが通う学校として、その小学校の校舎の外観と校庭が出てくる。このあいだ、久しぶりに見て懐かしかった。
マーカスがニューエイジかぶれの母親と歩く板塀のある道は学校の裏手にあり(映画ではメインエントランスになっていた)、その道を挟んだ向かいにわたしたちが借りていたオフィスのある建物群(ビクトリア時代のガスマントル工場)があり、学校の隣にはわたしたち一家の住まい(賃貸)があった。つまり、当時、わたしたちは家庭と仕事場と息子の学校を徒歩3分圏内に配置して生活していたのだ。まず学校を決め、続いて仕事場を移し、最後に家を借りた(自宅は通うには遠過ぎたので人に貸していた)。
ヒュー・グラントの映画の中では『アバウト・ア・ボーイ』がいちばん好きだ。ヒューの役どころは、一発屋の父親がヒットさせたクリスマスソングの印税でけっこうなバチェラー暮らしを営む三十代の男。これがなんとも「はまり役」で、なさけないミドルクラスのイギリス人をやらせたらヒュー・グラントの右に出る者はない。
『アバウト・ア・ボーイ』予告編 2分10秒あたりに学校の校庭が出てきます。
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