2010年09月19日

[知恵袋] イギリスの王室はもう要らないんじゃないでしょうか?

イギリスでは女王が全部の土地を所有しているようですが時代遅れじゃないですか? 王室を縮小して土地を自由に売買できるようにしたほうがいいんじゃないでしょうか。

王室や一部の貴族をはじめとする上流階級がいまでも広大な土地を所有しているのは事実ですが、一般庶民が土地を所有できないという情報は間違いです。いまでは、イギリスの不動産市場で売買されている不動産の多くはfreehold(無期限所有権付き)であり、leasehold(借地権)で売り買いされている物件のほとんども家ではなくフラットです。また、フラットでもその建物のフラットの所有者全員が資金を出し合い、freeholdの持ち主からfreeholdを買い取ることも可能で、その場合、所有に関する表記はshare of freeholdになります。

というわけで、土地取引に関してはすでに多くの場合、「土地を自由に売買できるように」なっています。

制度的にいつの時点でそれが可能になったかは知りませんが、理由として考えられることは二つあります。一つは土地所有者(貴族など)が生活に困窮するか遺産分けを可能にする(通常は長男のみが相続)などの理由で土地の所有権を売りに出す場合、もう一つは建物の持ち主がその建物を売り出す場合にfreeholdのほうが高く売れるので、不動産価値を高めるためにfreeholdを買い取る場合です。

ただし、イギリスの不動産市場の特殊性として土地単独の取引はきわめて少なく、ほとんどの不動産取引は中古あるいは骨董住宅の取引ですから、所有権がfreeであるかleaseであるかはその住宅の建っている土地がfreeholdであるかleaseholdであるかの違いです。そして、たとえfreeholdを持っていたとしても所有する土地に好きなものを建てられるとは限らず、非常に厳しい土地利用規約に従わなければなりません。

蛇足ですが、leaseholdは最初は通常999年で契約されます。leaseholdが例えば300年残っていれば(300年は土地を持ち主に返還する必要はないので)不動産取引にはなんの問題もありませんが、60年を切ると銀行からのローンはきわめてむずかしくなります。しかし、逆に、leaseholdの年数の短い物件は同じ地域に建つ似たような物件に比べて割安なので、15年だけ住めればいいといった具合に割り切って現金買いすればお得な買物も可能です。実際、ごくたま〜にですが、チェルシーの超高級住宅街にある、リースの残り年数が短いフラットが通常の半額ぐらいで売りに出されることもあります。

さらに蛇足ですが、貴族の土地所有は必ずしも悪いことばかりではありません。例えば、高級デパートのハロッズや高級ブランドの旗艦店が立ち並ぶロンドン西部のナイツブリッジ地域一帯は貴族のカドガン家の所有です。一族は地域の高級感を保つためにファーストフード店などの進出を阻んでいるそうで、つまり、銀座の表通りにマツモトキヨシの派手な看板が並ぶようなことはここでは起きません。

また、ロンドンの通りが整然と土地開発されていて、古くから電柱が地中に埋め込まれていたり下水道が敷設されていたのも、その一帯を所有する貴族がそれぞれ自分の土地の不動産価値を高めるために開発投資した結果だそうです。また、やはり同じ理由で土地いっぱいに家を建てず、広い公園や広場を街の中心に残すように開発したそうです。


イギリスの王室は観光には役立っていますがけっこうバカにされてりしていますね。もう要らないんじゃないでしょうか?

これはイギリス人の権威を小馬鹿にする文化と無類のゴシップ好きという二つの面が同時にあらわれた結果で、こういった傾向の犠牲になっているのは王室だけではありません。王室と同様に権威の象徴とされている人物(政治家、宗教家、教師、警察官、裁判官など)や団体は、何か落ち度があればすぐさま嘲笑の対象にされます。

いい悪いは別にしてこれはイギリスのカルチャーの一面であり、嘲笑の対象になっている人物が愛されているか否かはあまり関係ありません。ダイアナ妃も存命中は、特に知性の面でしばしば嘲笑とゴシップの対象になってましたが、一方でものすごく愛されてもいました。

王室は歳費としてかなりの額を国家予算から受け取っています。そのために、それだけの税金を投じる価値があるか否かといった議論は常に起きています。今年、数年ぶりに王室から予算増の要求が出ましたが、財政の厳しいおり、突っ返されました(政府はむしろ減額したいと言っています)。歳費だけでは暮らしの維持が難しいのでロイヤルファミリーは各自事業をしていて、例えばプリンス・チャールズの有機栽培農場の製品は国内のスーパーなどで人気です。

そんなわけで、納税者が王室は不要と判断すれば、王室はいつでも単なる貴族の一員となる可能性があります。

posted by nfsw19 at 00:00| ロンドン | Comment(0) | TrackBack(0) | 知恵袋回答 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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