2010年08月17日

[TUP速報859号] グーグルは何をめざすのか

TUP速報859号 グーグルは何をめざすのか
2010-8-17 18:34:10

◎クラウド・コンピューターと諜報・産業複合体

『1984』というジョージ・オーウェル著の名作小説があります。第二次世界大戦後まもない 1949年に出版された本で、全体主義が極端に進んだ 1984年の仮想世界が小説の舞台です。そこでは、国家によって情報は徹底的に統制され、国民一人一人の生活の隅々まで 24時間監視された日常が描写されています。

『1984』が書かれた当時は、言うまでもなく国民全員を24時間監視するのは単純に技術的に想像をはるかに超えた状況でした。だから、『1984』は架空の世界を扱った、という大前提が成り立って、興味深く面白い風刺「小説」たり得たと想像します。

さて、60年後の今、技術革新ははるかに進みました。実はそのため、ある意味で恐るべきことに、『1984』の世界は少なくとも技術的には現実味を帯びていると言えそうです。自由民権、平等といった概念が 60年前よりずっと世界に広がっている現在、これは皮肉な状況と言えるかも知れません。現在のところ、少なくとも公に認められた形では、『1984』に描写された全体主義の恐怖社会は実現してはいません。ただし、技術的には可能になりつつあるという現実には大いに注意を払っておくべきでありましょう。

以下、クリストファー・ケッチャム、トラヴィス・ケリー共著の諜報・産業複合体を論じた記事を邦訳しました。月刊『世界』(岩波書店) 8月号に掲載されたものです。

この記事では、インターネット界の巨大企業として今や知らぬもののないグーグル社が、技術的に何が可能で、実際に何をしてきたか(たとえば諜報・軍事企業との協力関係)、そしてそれが個人や社会に与える影響について、豊富な実例や証拠とともに解説、議論されています。ここで槍玉にあげられているのはグーグル社とはいえ、これは原理的に同社一社だけに根ざすような単純な問題ではない、つまり、グーグルを使わなければいい、という問題ではないと確信します。この 7月末に「Yahoo! JAPAN の検索サービスにおけるグーグルの検索エンジンと検索連動型広告配信システムの採用、ならびに Yahoo! JAPAN からグーグルへのデータ提供」の提携が結ばれたことが発表された[*]のは、その端的な例でありましょう。
[*]http://i.yimg.jp/images/docs/ir/release/2010/jp20100727.pdf

結局、究極的には、この高度に技術が発展した、そしてさらに発展しつつある現代社会においては、それら技術とどう向き合い、何を利用し、その代償として何をどこまで切り捨てたり犠牲にすることを許容できるか、という課題が、私たち市民ひとりひとりに否応なく突きつけられている、と言えそうです。気がついたら『1984』の世界になっていた、ということのないように。

〔翻訳: 坂野正明(前書とも)/TUP〕

※凡例: (原注) [訳注]
※注1: 以下、1米ドル=87円として換算しています。
※注2: 『世界』にて「ステファン・アーノルド」と表記した人名は、米国在住の人であることから、おそらく「スティーヴン・ アーノルド」の方がよりもっともらしいと考えられます。 以下ではそう表記してあります。

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グーグルは何をめざすのか ―― クラウド・コンピューターと諜報・産業複合体
クリストファー・ケッチャム、トラヴィス・ケリー

2007年6月、イギリスに本拠を置くプライバシーの権利を監視する団体プライバシー・インターナショナルは、インターネット関連の23の企業の中でプライバシー侵害が最悪なのはグーグルだと発表 した。「悪をなさず[*1]」という人々を、マイクロソフト、アップル、アマゾン、イーベイ[*2]、リンクトイン[*3]、フェイスブック[*3]、AOL[*4]よりも性質が悪いと結論づけたものだ。 同報告書では、他のどの会社も「プライバシー侵害への特有の脅威 という点で(グーグルの)水準に遠く及ばない」としている。報告書でもっとも懸念されているのは、グーグルが「各利用者の生活の詳細および日常生活における細かい選択について深く入り込む能力を高めている」ことである。その結果は「インターネット上でのもっとも厄介なプライバシー環境」。事実、グーグルは現在、ネット上の検索市場で70パーセントのシェアを占めていると推定されている。利用者の情報、たとえばどのサイトを見ているか、誰にメールするか、ブログに何を投稿するか、どんな写真を公開するか、どこの地図を見るか、どんなニュースを読むか、といったことにグーグルが積極的になっている中、それはもはや単なる検索事業を 超えて、一種の「総合的情報認識[操作]」を含むものになっている。そしてそれこそ、前ブッシュ政権で画策された悪名高い総合的情報認識計画そのもので、プライバシー侵害に反対する活動家がまさに恐れていたことである。

[訳注:
[*1]「悪をなさず("Don't be evil")」は、グーグル社のモットー。
[*2]イーベイはネット上で世界最大のオークション・サイト。
[*3]リンクトイン、フェイスブックとも、世界最大級のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)。同種のサービスとして日本ではたとえば mixiが有名。
[*4]AOLは米国の大手インターネットサービス会社。


プライバシー関連の専門家であり、またプライバシー、言論の自由、 今日のデジタル社会における知的財産に関する問題について唱道す るNPO電子フロンティア財団[EFF: Electronic Frontier Foundation]の顧問弁護士でもあるケビン・バンクストンは、考えられる可能性について警告している。「人類の歴史を通じて、米国国家安全保障局[NSA]を除いて、単一の機関がこれほど多くの人々のこれほど多くの機密情報を保持している例はないか、あってもごくごく限られています」。これは、諜報機関にとって「期待でよだれが止まらない」ような話だ、とバンクストンは言う。そして実際そうなのだ。情報技術の専門家であり、軍事および諜報を請負うブーズ・アレン・ハミルトン株式会社に勤務したこともあり、またグーグルの相談役もひとたび務めたことのあるスティーヴン・ アーノルドは、2006年1月にワシントンで開かれた諜報関係の現任および前任の高官たちの会議での演説で、この点に触れた。筆者が入手したこの会議の音声記録テープには、アーノルドが席上、クリック関連情報、そしてグーグルが保管する他の全ての情報が「諜報組織にとってすばらしい機会になる」ため、米国諜報機関はグーグル にどんどん強く秋波を送っている、と報告しているのが記録されている。グーグルは「データ集積について理解することが全てだ、と見極めた」とアーノルドは発言した。政府との関係が十分に密になったため、「どこの諜報機関所属の人かは言えないが」少なくとも3人の政府高官が、カリフォルニア州マウンテン・ビューのグーグル本社に配属された、ともアーノルドは同席上で述べている。そ れら配属された政府高官がそこで何をしているのかは、アーノルド は明らかにしなかった。

グーグル社広報担当のクリスティーヌ・チェンは、「弊社は噂や憶測に関して回答いたしません」と言う。 何人の元諜報機関役人がグーグルで勤務しているのかと別の機会に尋ねられた時、チェンは「弊社は人事情報は公開しません」と答えている。

この会議は、オープン・ソース・ソルーションズ・ネットワーク後援で、ロバート・デイヴィッド・スティールが計画、開催したものだ。スティールは、20年前に退官するまで米国中央情報局[CIA]の高官で、また、オープン・ソース・ソルーションズ・ネットワーク株式会社、別名 OSS.Net の創業者で、現在も経営最高責任者である。同社は教育訓練サービスを提供する株式会社で、「オープンソース情報の使用を促進する」ことを旗頭に、今までに 50カ国以上の政府から仕事を請け負っている。スティールは、アーノルドの話は爆弾発言だと受取った。米国諜報部は、今や「グーグル複合体」の心臓部に入り込み、この民間部門の巨頭から学べることはすべて学びつつある。CIAを辞して以来 20年間にわたりデジタル・コモンズ[*5]を推奨してきたスティールは、数あるグーグル批判勢力の中でも急先鋒だ。「グーグルは人類へのまたとない貴重な福音でもあり得ました。しかしグーグルは、デジタル・コモンズを乗っ取りにかかっています。私個人としては、グーグルが公共に対して潔白であることを示さない限り、同社は今や悪をなしている見なしてゆるぎません」とスティールは言う。現在の問いは、グーグルが 実はその方針の変更を余儀なくされることがあるかどうかだ。 そして議会と諜報機関がそうなることを望むか、ということも。

[訳注:
[*5] デジタル・コモンズ: 主に学術関係の文書や記録を統一的な様式で一括管理する枠組で、2002年に開始された。歴史的に変遷はあるものの、2010年現在はバークレイ電子出版社(別名ビープレス社)が主導している。

グーグルのデータ収集能力は、消費者の選択にかかっている。 あなたがコンピューターを使うなかでどれほどをグーグルの手に委ねるか、ということだ。グーグルのアプリケーションを使えば 使うほど、グーグルはあなたについていっそう深く知ることができる。極論すれば、グーグルの機能により、あなたの一挙手一投足がグーグルに追跡され得る。あなたがグーグルの検索窓を使う時を考えてみよう。何千万[*6]もの人が毎日のようにしていることだ (グーグルは毎秒約11000件の検索を処理している)。その時、同社はあなたの入力したすべての検索文字列も検索の結果としてあなたが訪問したウェブサイトも追跡できる[*7]。もしあなたがグーグル・ ツールバーを使用すれば、同社はあなたがネットサーフィンする時間を監視できる。あるウェブサイトの各ページに 3分かけているか3時間かけているか、という話だ。グーグルが 2006年にユーチューブを買収して以来、閲覧の趣味についても追跡可能だ。グーグルのフレンドコネクト(FriendConnect)とオーカット(Orkut)とは、社交関係情報を収集記録する。グーグルのニュース、ブックス、フィー ドバナー(Feedburner)、ブロガーは、どんな文書を読むかという習慣の記録を残す。あなたが書いた文書はグーグル・ドックス[ドキュメント]に保存され、購買傾向とクレジットカード番号はグーグル・チェックアウトより捕捉される。声紋や電話の傾向もまた、グーグル・ボイスで収集される。旅行の興味や傾向やゆかりある土地はグーグル・マップ、グーグル・アース、グーグル・ストリートビューで、健康状態や医療履歴、処方薬の使用はグーグル・ヘルスで、友人や家族の写真はグーグルのピカサ上のアルバムで、そして日々の行動はグーグル・カレンダーで、といった具合だ。そして、グーグル・デスクトップというものもある。これはかつて、「パソ コン内の検索」と称される一見とくに害のない機能を提供していた。 この機能は、グーグルがあなたのパソコンを走査して見つかったテキスト文書の複製を保管することを許すものだった。言葉を替え れば、あなたのパソコン内にあるおよそすべてのもの、ラブレター、 納税申告書、業務記録からお粗末な詩文まですべてが複製され、 彼方にあるグーグルのサーバーに保管されるものだった(この機能 は、本年[2010年] 1月より全てのコンピューター環境で停止された)。

[訳注:
[*6] 原文ママ。原文中で引用された毎秒約 11000件という数字から単純計算すれば、1日にグーグル検索を使用するのべ人数は約 10億人になる。ただし現実には一人で複数回検索をかける人が多いと思えば、実際の検索使用者の数は 10億人よりずっと小さくなると自然に予想できる。
[*7] 原文ママ。正確には、利用者が検索結果をどう使用するかによる。すなわち、グーグル(などの検索エンジン会社)が「あなたが訪問したウェブサイト」を知ることができる場合も確かにある一方、それが技術的に不可能か極めて困難な場合も少なくない。

グーグルの検索窓ひとつを取ってみても、利用者のこのうえなく個人的な情報の貯蔵庫である。「人々は、検索窓を最高に信頼できる助言者のように扱っています。グーグルの検索窓に、母親にも伴侶にも精神科医にも司祭にも言わないようなことを書込んだりするのです」と電子フロンティア財団(EEF)の顧問弁護士ケビン・ バンクストンは語る。あなたがごく最近入力した検索語句を思い浮 かべてみるとよい。自分の「肛門のいぼ」とか、「結婚したのに愛せない」「自己嫌悪」、あるいはあなたが興味を持つ「鉄パイプ爆弾製作」工程などだったりしないか。検索窓は、グーグル複合体がどのように利用者にラベル付けしているかを理解するのに最高の場のひとつだ。あなたが検索をかけた時、あなたのパソコンに設定された「クッキー」がパソコンのIPアドレス(あなたのパソコンを同定するために使われ得る数字列)を記録するため、グーグルは多くの場合において、利用者を特定できる。そしてグーグルは、グーグルのどのアプリケーションにおいても利用者を特定できるのである。

これらすべて、パソコンをシャットダウンして外出すればそれまでだと思うかも知れない。しかし、グーグルは 2008年に「位置情報」アプリケーションとして、ギア位置情報API[*8]を公開した。ギアを用いることで、「利用者の現在位置を取得」でき、「利用者の位置が時間とともに移動するのを監視」でき、「利用者の最後に確認された位置を迅速かつ安価に取得」できるというものだ。グー グルの技術ブログは、ギアを使うことで「携帯電話ならば最寄りの携帯電話中継塔または GPS[*9]を用い、あるいはノートパソコンならばコンピューターのIPアドレスを用いることで、あなたの位置を特定できます」と説明する。2006年に『テクノロジー・レビュー』 誌[*10]に掲載されたある記事では、グーグルの研究部門取締役のピーター・ノーヴィグが、パソコンがある部屋のテレビでかかって いる番組を割出し、ついてはそれに関連する広告をパソコン上に表示するために、パソコンに備え付けのマイクを用いることまで提案した、と報告されている。そのようなデータは音声指紋として処理され、利用者の位置情報特定やプロファイリング[人物像作成] の助けとなる可能性もあると思われる。(グーグル社広報担当のクリスティーヌ・チェンは、「グーグルはそんな開発計画を立てたことは過去も現在もありません」と電子メールにて回答した。)

[訳注:
[*8] API: ある機能を使うための入口となるもの。 (アプリケーションの)機能を使うためのインターフェース。
[*9] GPS: 全地球測位システム。
[*10] マサチューセッツ工科大学(MIT)発行の技術革新に関する隔月刊誌。1899年創刊。
http://www.technologyreview.com/


グーグルがデータベースを精査しようとする意欲はとどまるところを知らず、私たちの物理的そして精神的存在の核心にまで迫ろうとしている。『ザ・エコノミスト』誌によれば、グーグルの共同創業者のセルゲイ・ブリンと彼の妻で生物工学の専門家であるアンヌ・ ヴイチツキーとは、人類遺伝子の高名な研究者少なくとも一人とともに「ブレーンストーミング」を行ない、遺伝学を「データベースおよび計算上の問題」として取組んだという。これは、グーグル・ ヘルスとうまく関連づけられそうだ。グーグル・ヘルスは、健康状態をオンライン上で記録保管する傾向が高まっていることを受けて、 多岐にわたる健康管理サービス業者とのやりとりを容易にするために、2008年に開始された枠組である。グーグルはアンヌ・ヴイチツキーの生物工学会社「23andMe」社[*11]に今までに 390万ドル [約3億4000万円]を投資している。この 23andMe社は、「世界的に信頼される個人遺伝情報の典拠となることを使命とし」、顧客の家系、病気になる危険度、薬にたいする反応を探り出すための遺伝子試験キットを提供する事業を展開している。グーグルの 2008年「時代思潮」会議の席上において、ブリンは自身がパーキンソン病の遺伝因子を保有していることを告白し、つづけて健康管理と医学研究とを促進するために個々人の遺伝コードを記録することが大切だと説いた。この論理的帰結としては、あなたの人体遺伝情報がそのうち出てくるであろう「グーグル・ゲノム」に登録され、その際におそらくは 23andMe社に集積されたデータベースの力を借りることになる、という成行きが予想される。またグーグルは、精神の領域にさらに深く切り込むため、広告代理店業界の巨人、WPPと協同して460万ドル[約4億円]をオンライン広告の研究に出資しており、その中には新興分野である「神経販売促進活動[ニューロマー ケティング]」への奨励金も含まれる。これは、人が広告に接するという外的刺激を受けた時に、オンライン上でどのような行動を取るかということに始まり、はては脈拍、眼球の動き、脳波活動といった生体的反応の韻律学まですべてを追跡するものだ。グーグル社のチェンは、これら研究の成果は産業界全体に供され、「グーグルはこれら奨励金の援助を受けた研究成果について、そのいずれにもなんらの特別な権利を持ちませんし、また成果を使用する予定もありません」と述べている。

[訳注[*11]: https://www.23andme.com/

グーグルの立場としては、広告がグーグルの 230億ドルの年間総収益の大半を占める以上、マーケティング(監視とは呼ばない)は情報という収穫を得る目的そのものである。同社は、行動ターゲティング広告の革新を推し進めている。すなわち消費者についての個人情報を集めれば集めるほど、より有効に的を絞った広告を打ち出すことができ、広告の価値が上がり、収入が増えることになる(Gmail の利用者ならば、最近送信したメールや検索に直接関連した広告がブラウザ上に現れることに気付くことがしばしばあろう)。そんな行動ターゲティング広告手法の分派として政治広告があるのは驚くに当たらず、実際、ワシントンにあるグーグルの選挙および課題宣伝チームが新市場として開拓している。ネット上のキャンペーンは、今や被選挙候補者や政治団体にとってテレビ放映やラジオ放送で圧倒することと同じくらいの重みを持つようになってきていて、そ れには人々の政治的行動を今まで以上に広範に調べることが要求される。ちなみにこれは諜報組織の興味とも大いに重なりを持つものだ。

電子フロンティア財団の顧問弁護士バンクストンは、2007年にグーグル社と個人的な諍いを経験した。氏の個人事務所の外のサンフランシスコ 19番通りを歩いていた時、世界中の実質上すべての道の写真をひそかに集めて回っているグーグルのストリートビュー撮影班の一隊が、氏が喫煙しているのを捉えた。『ワイアード(Wired)』誌編集者のケビン・ポウルセンは、シリコンアレー[*12]で開かれたあるパーティーでバンクストンを捕まえ、持参のノートパソコンを取り出して言った「これを見て御覧なさい」。それを見てバンクストンは気分を害したという。「当時、私は、家族や周りの人々に、喫煙量を減らし禁煙さえしている、と言っていました」とバンクストンは語る。バンクストンがグーグルに対して彼の顔にモザイクをかけるよう電子メールで要求したところ、同社法律部の渉外担当者は、運転免許証と本人であることの誓書とをファックスで送ってもらう必要がある、と答えた。「私は、自分のプライバシーを守る ために、プライベート情報を引渡さなくてはならなかったのです」 とバンクストンは言う。1週間にわたって催促し、並行して『ワイ アード』誌に二部構成の記事が載った後、グーグルはようやくバンクストンが 19番通りで煙草をふかしている姿が写った画像を削除した。そして[その 1年後の]2008年夏、グーグルはストリートビュー に写る全ての顔にモザイクをかけた。

[訳注:
[*12] ニューヨーク市マンハッタンにあるインターネット関連の企業が集中している地域の愛称。サンフランシスコ郊外のハイテク企業が集まる地域シリコンバレーにかけた名前。


プライバシー関係専門の弁護士としてバンクストンがもっとも憂慮するのは、グーグルに対して彼にはなんら明確な法的保護がなかったことだ。バンクストンは言う。「法的な意味では、グーグルは無法地帯にいます。法整備は未だ追いついていません」。この 法整備の遅れは、グーグルによる情報蓄積の方法が革命的であることによる。

グーグルは、ソフト会社としてマイクロソフトに比肩するほど成長してきたが、両社には大きな違いがひとつある。すなわち、ほとんどすべてのグーグルのソフトは、あなたのパソコン上ではなく、 グーグルの巨大コンピューター銀行に鎮座するサーバー上で稼働することだ。これは、記録内容を所有するのはあなたではなくグー グルであることを意味する。これが、「クラウド・コンピューター」という発想の転換であり、クラウド[雲]という命名は的を射ている。情報はあなたのノートパソコンやデスクトップから蒸散、「クラウ ド[雲]」の中へ凝結し、利用者がそれら情報が雨として降り注ぐよういつなりと、あるいはどこからなりと望む時に備えて、そこに保持される。顧客としては、デスクトップ上で実作業を行なうのに比べて、その利点には魅力がある。顧客はほとんどのソフトを無料か比較的安価に入手できる。バージョン更新は自動的になされる、データは冗長性の確保された遠隔サーバーにバックアップされるため(言うまでもなくグーグルが潰れない限りにおいて)壊れる心配がない。コンピューターやワイアレス機器を選ばず、どこからでもアクセスできる。そして遠隔地にあるプロセッサーやデータストレージ機器がほとんどの処理をこなすため、手元のデスクトップやノー トパソコンへの負荷が少ない。最近登場した安価なハードウェア (なかでも小型ネットブックはクラウドと連動して使うことを特に 念頭において開発されたものだ)がパソコン市場で成長著しく、市場を席捲しつつあることも、クラウドへの移行をスムーズに行なう助けとなっている。そのほとんどはウィンドウズ上で動くものだ。しかし、グーグルは、独自のクローム(Chrome)・ブラウザを使った時により効率的に動くことを目指して、クローム・ブラウザ共々ネット接続して使う用途に最適化されている独自OS、クロームの開発を宣言した。これは、マイクロソフト社への挑戦状となるもの だ。

しかし、クラウドの大きな問題点であり危険性の一つは、合州国憲法修正第四条で保障された捜索および押収に対する保護が適用されないことにある。新しいアプリケーションをインストールする際、関連する但書きは条項の奥深くに埋込まれていて、利用者はたいてい読むこともなく「受入れる」をクリックする。しかしバン クストンによれば、その結果は重大であり、「私的データがグーグ ルのような第三者によって保持されている場合、最高裁は過去、その人はデータが開示される『危険性を受入れている』と見なしています」と説明する。電子メールを[グーグルの]Gmail、あるいはヤフーやホットメールなどの類似のクラウドに保存している時点で「あなたは憲法に保障されている保護の権利をただちに失います」。 個人のデスクトップに保管されている情報を捜索し押収する際、その法令の実行には、あるいは諜報機関は、判事または執政官に正当な理由があることを示した上で、令状または大陪審による文書提出命令を取得する必要がある。あるいは、(外国諜報監視法 [FISA: Foreign Intelligence Surveillance Act]に定められた手続きによって)外国諜報監視裁判所(Foreign Intelligence Surveillance Court)が発行する命令、あるいは連邦警察(FBI)または国防総省または CIAが発行する国家保安公文書(National Security Letter)を取得する必要がある。しかし、グーグルのサー バーに保存された同じ情報を得るのには近道がある。グーグルは、他のプロバイダと同じく、政府が同情報が「緊急」に必要とされるものの一部だと主張できる限り、それら情報を自主的に提出するかも知れないのだ。

「あなたのデータは、クラウドでは、他の場合に比べて法的な保護に劣ります。これは、クラウドへデータをどんどん注ごうと推奨しているグーグルのような会社が存在する現状では、大きな問題です」とバンクストンは言う。たとえば、グーグル・ヘルスに保存されているデータを見てみよう。健康サービス業者や健康保険会社が保管している医療記録のプライバシーは、「医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律」によって保護されている。しかし、同法は第三者によって保管されているデータのプライバシーについては当てはまらない。あるいは、バンクストンの喫煙の話を見てみるとよい。バンクストンは写真公開されたことに対して何らの賠償請求権を有しない。グーグルは、声が大きくメディア上で強い抗議をしたプライバシー活動家の機嫌を取るために件の写真を削除したに過ぎない。

検索入力語句については、法律がどう適用されるか全く不明だ。 おそらく 1986年に制定された「電子通信プライバシー法」が関わることになるだろう。同法では、第三者によって保管されている情報のプライバシーについて、その情報がどれくらい新しいかによって異なる標準を要求している。「しかし、この項は法廷で議論されたことは一度もありません。議会が、 23年前に制定されたこの法律を修正して同法がどのように適用されるかを明確にすることは、 極めて重要だと私は思います。法が曖昧であればあるほど、利するのは政府です」とバンクストンは言う。

政府にはグーグルのデータを入手するいくつもの方法があることは 確かだ。しかし、それらもまた未知のベールに覆われている。たとえば、国家保安公文書を発行する過程は完全に機密扱いであり、関係者すべてに箝口令が敷かれている。言葉を替えれば、あなたのプライバシーがどう扱われるかはグーグルと政府とが非公開で決めている。「政府がグーグルの持つ情報を必要以上に入手しているという恐れは現実のものです」とバンクストンは言う。同社のプライバシーに関する方針は「場合によっては、弊社は、提携広告会社などの第三者のため、その指示に従って、個人情報を処理する可能性がある(中略)。弊社は、弊社提供サービスを遂行または発展または改善するために個人情報を必要とするグーグルの従業員、契約会社と代理人以外の者には同情報を提供しない」と記されていて、安心できるものとは言えない。

グーグルと諜報機関とのつながりは、2004年にまで遡るかもしれな い。1999年、CIAは特に諜報収集に的を絞ったコンピューター新技 術の研究と投資のためにインクテル(In-Q-Tel)と呼ばれるベンチャー 企業を設立した。インクテルが出資したキーホール株式会社は人工 衛星による地図作成技術を開発し、それは後の 2004年にグーグル・アースに使われることとなった。インクテルの技術評価部門元取締役のロブ・ペインターは、グーグル連邦の上級部長としてグーグル に加わった。ペインターの主眼は、「諜報および国防関係団体の多数の利用者に、グーグル社の手法の優秀性を説き、提供すること」にあった。

今度は、グーグルの方が、その技術のいくつも、特にグーグル・アー スを、数多くの米国機関に売った。買い手には、米国沿岸警備隊、米国海洋大気庁、米国運輸省道路交通安全局、アラバマ州、ワシントン・コロンビア特別区が含まれる。グーグルは CIAに対しては、諜報情報を内部で共有するために、ウィキペディアに似たイントラネット・システムであるインテリペディアの支援運用サーバーを 提供した。『サンフランシスコ・クロニクル』紙が情報公開法を使って 2008年に実施した調査によれば、グーグルは米国国家安全保障局[NSA]に対して、四つの「検索機能設備」を提供し、その保守契約を結んだ(グーグルのクリスティーヌ・チェンは、グーグルは米国国家安全保障局あるいは他の諜報機関に対して他の製品やサービス業務を提供したかという質問に対して、電子メールで「弊社がいずれかの国家諜報機関と何らかの会話を交わしたかどうか、あるいは仮にそういう事実があったとしてその会話について、弊社はコメントを差し控えます」と回答した)。

CNet[*13] の元ブロガーで、インディアナ大学にてプライバシーとコンピューターについて専攻し、グーグルについて研究してきた博士課程学生のクリストファー・ソゴイアンは、諜報組織はグーグ ルの監視用「バックドア[*14]」プログラムにとりわけ興味津々だろうという。ソゴイアンは、グーグルのアプリケーションは、ネット接続が維持されている限り(ワイアレスのブロードバンドが至るところで利用できることを思えば、これは簡単な話である)、遠隔サーバーにて処理とデータ保存とを行なっているが、起動された時にそれをユーザーに明示しない、と指摘する。グーグルのギアなどのソフトは、インターネット接続がなされていない場合であってさえ、アプリケーションを走らせ、データをパソコンに保存し (これまたただであり、簡単な話)、ネットに再接続された段階でそれら更新されたデータをグーグルにアップロードする、という手段で、クラウドへの「オフライン」のアクセスを可能にする。 したがって、詳しくないユーザーは、情報を知らないうちに第三者に転送することになる。非公然諜報活動の定義そのものに近いやり口だ。

[訳注:
[*13] CNet: コンピューター関係の記事に特化したメディアの一つ。コンピューター関連業界のメディアとしては大手。2008年5月に CBS系列に買収された。
http://www.cnet.com/
[*14] バックドア: コンピューターに密かに仕掛けられた裏口のことで、それを設置した者が同コンピューターに(不法)アクセスするのを容易にするもの。


グーグルは政府系機関から情報を要求する文書提出命令と令状とをおそらく毎年何千件も受取っている(AOL[*4]は民事および刑事事件に関連する要求を月に約一千件受取っている)、とソゴイアンは指摘する。そしてグーグルは、複数の法務省元高官および元米国諜報員を、その処理にあたるための法人団体における法律監査役として雇っている。「政府としては、諜報あるいは法執行に関係する団体出身で、政府がどのように働くかを知っていて、かつひょっとすると政府の方針に同情的かも知れない人々を、政府要請を受取る側に確保していることになります。グーグルは、アメリカ自由人権協会(ACLU)[*15]の元弁護士を監査部門に雇ってはいません」とソゴイアンは言う。グーグルのチェンによれば、そのような人数は非公開とされている。「当然、他の会社と同様、弊社も法に従います。文書提出命令や裁判所の命令を受取った時には、弊社は命令に従う前に同命令が法律の字義および精神の双方を満たすものである かどうかを確認します。もし満たされない場合は、弊社は命令に異議を申立てることも、要求範囲を限定するようにたずねることもできます」とチェンは言う。グーグルは 2006年に法務省が何百万件もの検索入力文字列の提出命令を出したことに対して、それは利用者のプライバシー侵害にあたるとして法廷で争った、とチェンは指摘する。その件はグーグルが勝訴した。

[訳注:
[*15] アメリカ自由人権協会(ACLU): 主に言論の自由を守ることを主眼にした、老舗の有力市民団体。]

しかしながら、ソゴイアンは、協力したくなるよこしまな動機があり得ることを示唆する。法律上、グーグルやプロバイダは、要した時間と労力とへの補償が保証されている。つまりスパイ要員や警官に情報を与えることは、儲かる仕事になり得るわけだ。

グーグルはまた、有名どころではロッキード・マーチン、SRAインターナショナルをはじめとした諜報産業界をリードする会社のいくつかとも共働している。SRAインターナショナルはグーグルの 「共同事業経営者」として挙げられており、実際、グーグルのウェブサイトでは百を超えるそうした共同経営者が列挙されている。 ロッキード、SRAのいずれもデータベース探索調査ソフトを設計し、諜報機関に売っている。たとえば、SRAインターナショナルのソフ ト NetOwl がある団体の勧誘フォーラムで使われているのを見ていたペンシルバニア州立大学のあるブロガーは、同ソフトを指して「グーグルを用いて、ある特定の人に関するありとあらゆる文書を検索する」と描写している。これらソフトの詳しい情報について、またそれらがグーグルと協同してどのように開発されたものか問い合わせたところ、ロッキード・マーチンの広報官は「弊社がグーグ ルと共に行なった仕事は、もっぱらグーグル・アースに関係したものです」と回答した。SRAインターナショナル渉外事務部長のシーラ・ブラックウェルは「弊社は諜報関係顧客の業務の詳細についてはコメントしません」と述べている。

CIA元高官のロバート・スティールは、CIAの研究開発事務局はある時点でグーグルに資金援助していたことがある、と言う。同事務局のパンフレットによれば、CIA研究開発事務局はその憲章において、現在の最先端のさらに先を目指し、商用として実用化されているいかなるものよりも優れた技術および装備を開発・応用する、と謳っていて、それら技術・装備には、通信、感知装置、半導体、高速計算、人工知能、画像認識、データベース処理が含まれるという。 スティールは、グーグルと研究開発事務局とのパイプ役はテロ対策用データベース探索調査の専門家であり、長年にわたって CIAにてアナリストを務めるリック・ステインハイザー博士だと言う(なお、ステインハイザーの仕事について、中央情報局は沈黙を守っている)。

そして、マウンテン・ビューのグーグル本社では諜報関係高官が働いていると言われる。技術関係の専門家、スティーヴン・アーノ ルドが、2006年オープンソース・ソフトウェア会議でこの情報をまず明らかにした。『ホームランド・セキュリティ・トゥデイ』誌の諜報関係に経験豊かな記者であるアンソニー・キメリーがそれに続き、グーグルと米国諜報との間に「秘密の関係」があると主張する報告を発表した。グーグルは「米国諜報機関に協力し、同社の 巨大なデータベースから国家と国土の安全保障に関連する利用者情報を提供」していて、諜報機関の方は、「対テロ戦争における『国家安全保障のための諜報上の利害』に関係する情報を同データ ベースから収集する取組みの一環として『グーグルの(利用者)デー タ監視能力にてこ入れする』よう働いている」という。言葉を替えれば、グーグルの各種データベースあるいはその中で必要と狙いを つけられた部分は、米国諜報機関の奈落の中へと直接放り込まれて いるのかもしれない。

諜報産業複合体の他の巨大企業と同じくグーグルも、バージニア州レストンにある連邦販売促進部がワシントンでロビー活動を行なうのを支援してきている。2009年には 290万ドル[約2億5000万円]をロビー活動に使い、プライバシーがオバマ政権での優先事項になることがないよう、念を入れた。グーグルは、産業界が支援するいくつかの圧力団体とも協力している。これら団体には、米国対話型広告事務局、米国技術政策研究所、進歩および自由財団[プログレ ス・アンド・フリーダム財団]が含まれ、なかでも進歩および自由財団は、その使命として、「政府の適切な役割についての古典保守的観点において、技術が与えるよい影響力を正しく理解する(中略)。これらの機会は、政府が、規制、課税、管理したくなる誘惑に負けないことによってのみ、初めて可能となる」を挙げている団体だ。これらすべての団体は、通信関係の巨人たる有力会社連とならんでグーグルから資金提供を受けている。その使命はこうだ。議会において、合州国憲法修正第四条のような禁止条項をデータベース探索調査を業務とする民間企業にまで拡張するような法律を制定する動きがあれば、すべて阻止する。米国技術政策研究所によれば、 その根拠はこうなる「プライバシーが優先されることがあれば、 (中略)情報流通が減り、広告の価値が下がり、したがって安価な新規サービスを生み出すための資産が少なくなることになるだろう」。言い替えれば、プライバシーは経済活動への脅威ということだ。

グーグルはまた、大統領官邸内にお気に入りをインストールすることにも成功している。グーグルの国際的公式方針および政府関係事務部門の元部長で当時グーグルのロビー団体ネットパック (NetPAC)の会計副課長も兼任していたアンドルー・マクローリンは、プライバシー保護を訴える人々からの抗議にもかかわらず、オバマ 大統領のインターネット政策に関する技術副官に任命された。現在、オバマ政権の行政管理予算局情報部長として配属されているヴィヴェッ ク・クンドラは、以前は、ワシントン市役所の技術部長だった。 当時、クンドラは市政関係の業務においてマイクロソフト社のソフトを廃棄し、グーグルの製品への乗換えを実行した。懸念が強まったのは、昨春、上院法案第 773番が発議された時で、「コンピューターのセキュリティに関する緊急事態」が宣言された場合には関連行政当局が民営ネットワークの接続を切ったり、一定の支配実権を握ることを容認する、という法案だった。それは、ウイルスの攻撃対象を隔離し、ウイルスを撃退する作戦となり得る。一方でそれは、特定のサイトへの検閲の口実にもなり得、コンピューター・セキュリティ機関が従来立ち入りできなかったデータを探索調査する口実にもなる。そのような緊急事態においては、グーグルは「最重要基幹設備」と宣言されるかも知れないし、グーグル経営陣は上院法案第773番に定義された連邦政府お墨付きの「コンピューター・ セキュリティ専門家集団」に一時的に任命されるかも知れない。個々人の行動パターンを集積したグーグルの巨大データベースは垂涎の的だが、それが米国国家安全保障局[NSA]のコンピューター にコピー転送されることはあり得ない話ではない。そして、30年以上にわたって多数の行政命令が積み重ねられてきたことを考慮すれば、上院法案第 773番がなくても、「国家的緊急事態」において行政当局が決定的に重要な通信網を接収するための土台を築いてきただろうことは想像に難くない。

そのような緊急事態宣言が議会を通過することが実際にあるかどうかは別にして、それよりはるか以前の現在すでに、政府と契約するデータベース探索調査会社は政府と膝を突き合わせた話し合いの場を持っている。商業・諜報複合体と安全保障・諜報複合体とは、多くの点で利害や手法を共有する。たとえば、米国中央情報局 [CIA]の MKウルトラ計画[*16]にはじまり米国国家安全保障局 [NSA]で現在進行中の「認知神経科学研究」にいたるような、諜報機関が長らく行なってきた思考操作の研究は、広告専門家集団による「神経販売促進活動[ニューロマーケティング]」研究と相互に補完しあうものとなる。米国国土安全保障省は反体制人物と「潜在的テロリスト」とについて容易に拡大解釈できる定義を採用 しているが、これは、選挙広告を目的とした政治的行動に関するプロファイリング[人物像作成]と補完しあうものとなる。

[訳注:
[*16] CIAによる洗脳の実験的研究の名称で、1950年代から少なくとも 1960年代末まで行なわれていたことが明らかにされている。]

グーグルは、検索の過去ログから IPアドレス情報を匿名化する時期を、従来の[検索実行後] 18カ月間保存という方針から、現在は 9カ月へと短縮している。同社広報担当のチェンは「弊社は、デー タを、提供する機能および利用者へのセキュリティ対策を改善するため、ならびに利用者のプライバシー保護のために用いることを誓約します。そして、過去ログ保存に関する弊社の現在の方針は、そのバランスをよく考慮した優れたものであると私どもは確信しています」と述べている。これは、[検索実行後] 6カ月後には全ての検索データを消去しているマイクロソフトとは好対照をなす。バンクストンは語る。「完全に匿名化された検索入力情報であっても、それらをつなぎあわせれば何らかの身元情報を導き出すことが可能ということを忘れてはなりません。なぜ、グーグルは私たちのデータを永久保存する必要があるのでしょう。グーグルは、その点、非常に曖昧です。」

実際、グーグルは、その気さえあれば、諜報機関とどのように協力しているか、たとえば何件の情報開示要求を受取っているか、どの政府部門からか、何件について要求に応じたかなど、ずっと多くの情報を法に抵触することなく開示することが可能だ。バンクストンは言う。「グーグルはそういった全てを話すことができます。しかしそうはしていません。グーグルは利用者のプライバシーについてそれほど気にかけていないのかもしれません。しかし、利用者が自身のプライバシーについてどう考えているかということは、おっそろしく気にしています。政府が個人データを入手する危険性があるということを公衆に知らせるなどということは、禁忌も禁忌というわけです。」


クリストファー・ケッチャムは、ニューヨーク州ブルックリンの 個人記者で、分離独立運動と合州国解体についての本を執筆中。 christopherketcham.com にて氏の著作物を参照できる。

トラヴィス・ケリーはユタ州モウブの文筆家、漫画家であり、 ウェブ・デザイナーでもある。traviskelly.com にて氏の仕事を参照できる。

この記事のための研究においては、ネーション研究所の研究基金の 援助を受けた。

原文:
"The Cloud Panopticon --- Google, Cloud Computing and the Surveillance-Industrial Complex",
by Christopher Ketcham and Travis Kelly,
CounterPunch, April 1-15, 2010, Vol.17, No.7, pp.1-5.
ラベル:IT アメリカ
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posted by nfsw19 at 00:00| ロンドン ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | TUP速報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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