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『銃・病原菌・鉄―1万3000年にわたる人類史の謎』 ジャレド ダイアモンド 著
ヨーロッパ大陸の人々がアメリカ大陸を征服したのは歴史的事実ですが、ではなぜ逆ではなかったか。当時のアメリカ大陸にも高度な文明が発達していたことはよく知られていますが、他の大陸まで出かけるほどには発展していなかったのか、それとも別の理由によるのか。
人種によって優劣があるという説はほんとうか。もし、ほんとうでないなら、世界にはなぜこれほどの格差があるのか。
上下巻あって長いですけど、読み終わって(もちろん、読んでいる途中でも)目からウロコがぼろぼろと剥がれ落ちる本です。
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10年前に初めてこの本を読んだときに、次はアジアの時代がくるなあと確信したんだけど、以来、中国とインドがぐんぐんのして来た。
生まれたばかりの生命が簡単には奪われない程度に衛生状態が整っていて、しかし全員が成人になれるほどではない程度の厳しさはあり、そのうえ誕生する人口が多ければ、DNAが切磋琢磨されて優秀なものが生き残るはずってことをわたしはこの本から学んだ。著者が言いたかったことがそんなことだったかどうかはわかないけど、わたしはそういう知識を得たってこと。
ブラジルの台頭については見逃していたんだけど、それはわたしに南米についての知識(と関心)がなかったからで、原理は同じ、やっぱりあそこも人口が多いし平均年齢が低い。
逆に言えば、人口増加が頭打ちか、あるいは減少に向かっていて、平均年齢の高い(すなわち医療制度が整っていてなかなか死なない)国では必然的にDNAは劣化する。それらの国はたいがい一度は繁栄の側にいたことがあり、技術や知識や資産を持っているのでそう簡単にはつぶれないが、人口増が止まって一世代(30年)か二世代程度で国全体のDNAの劣化がはっきりしてくるだろう。
この場合のDNAとは遺伝学的なDNAだけでなく、それそれの国の社会や、社会の最小単位である家庭で、もっとも若い構成員に対して長老から何がどのように伝えられるかも含む。つまり、親が劣化すれば必然的に子は劣化するってことだ。
言うまでもなくイギリスは長いこと、この劣化の途上にあり、特に「イギリス人」の劣化が著しい。しかし、国としてはすっかり沈没してしまわないように対策がとられていて、一つがエリート教育であり、もう一つが移民政策だと思う。
善悪の判断を保留して言えば、イギリスには、国を動かしていくのに不足しない程度の数の人間に対してエリート教育を施すシステムがあり、エリートがエリートとして(憎悪の対象になりつつも)尊敬される、あるいは畏怖される社会システムがある。
また、常に新しい移民を異文化ごと受け入れることで、国全体の「血」が淀まないようにかき回しているし(時々乱暴過ぎることもあるが)、移民によって新鮮な(そして優秀な)DNAが運ばれてくる。東ヨーロッパからの移民の次世代が社会の中枢に入った時、イギリスはけっこう元気になるだろうと予想できる。
日本にはどちらのシステムもないし、それに代わる対策もない(ように見える)。
しばらく前から、立っては降りるを短期間で繰り返す日本のリーダーの顔ぶれを見ると、どれほど優秀なリーダーのDNAでも、いかに簡単に劣化してしまうかがわかるってもんだ。
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