米原万里の「愛の法則」 米原万里著 集英社新書(p173〜p174)
攻撃的で立体的な読書
日本の国語の教科書は名作をリライトしたり、あるいはダイジェストにしたりして載せますが、わたしが通っていたソヴィエト学校では、国語の授業と宿題で実作品を大量に読ませるのです。かなり十九世紀の古典偏重でしたけれども。それから学校の図書館に本を返すときに、司書の先生が生徒に読んだ本の要約を、毎回毎回言わせるんです。感想は聞かれません。つまり、その本を読んだことがない人に、どんな内容かわかるように伝えるということを、毎回やらされるのです。国語の時間もそうです。
(略、日本の小学校の国語の授業での朗読の様子)
けれども、ソヴィエト学校の国語の時間は、一段落を声を出して読みますね。そして読み終わったら「はい、今読んだ内容を自分の言葉で要約しなさい」と言われるのです。声に出してきれいに読む、純粋に音だけ、文字だけを追って読むことは、ある意味では内容を把握していなくてもできるんです。ところが、読み終わった後すぐに内容をかいつまんで言わなくてはいけないとなると、ものすごく攻撃的で立体的な読書になっていくわけです。国語の時間は段落ごとの要約ですけれども、図書館に本を返すときは、本一冊の梗概、要旨を、毎回客観的に、読んでいない人にもわかるように話す訓練をさせられました。
***
毎年のことながら少しも慣れることができないのは息子の夏休みに何も宿題がないこと。学年末の長期休みで、新学期には新しいクラスになるのだから宿題を出しても採点する先生がいないのは頭では理解できるが、2カ月もの休みのあいだ、何もしなくていい。ただ遊んでいればいい。
シュタイナー学校に通っていたころはまだ小さかったし、それに普段も宿題がなかったので夏休みだろうが何だろうが宿題がないのが普通だったけどいまは違う。普段はどっさり宿題を持ち帰るし、試験前には大慌てで詰め込んでいる。だからこそ遊べってことではあるんだろう。
というわけで、息子はほんとうに毎日遊んでいる。スポーツ好きでないのでもっぱら家の中で読書、マンガ、映画、ゲーム、マンガを書く、お話を書く、エトセトラ。傍から見ているとなんともったいない日々の過ごし方と思う。時々、帰りにケバブを食べさせるのを(文字通り)エサに水泳に引っ張りだす。今日は友達が来てゲームをやっていた。
以下の中から少なくとも2冊読むようにとEnglish department(国語科)からのレタ−にあった。休み明けのクラスでディスカッションをやるそうだ。
The Wasp Factory Iain Banks
蜂工場 イアン・バンクス
Regeneration Pat Barker
邦訳不明 パット・バーカー
The Boy in the Striped Pyjamas John Boyne
縞模様のパジャマの少年 ジョン・ボイン
Enigma Robert Harris
暗号機エニグマへの挑戦 ロバート・ハリス
About a Boy Nick Hornby
アバウト・ア・ボーイ ニック・ホーンビー
The Secret History Donna Tartt
シークレット・ヒストリー ドナ・タート
Fingersmith Sarah Waters
いばらの城 サラ・ウォーターズ
At Home Bill Bryson
邦訳不明 ビル・ブライソン
Solar Ian McEwan
邦訳不明 イアン・マキューアン
Waterlog: A swimmer's Journey through Britain Roger Deakin
イギリスを泳ぎまくる ロジャー・ディーキン
男の子たちが興味をもちそうな、かなり刺激的かつコントラバーシャルなタイトルもあり。
【関連する記事】
- さくら。ねこ(泣ける動画、腹がよじれて)。
- パトリック・チャンと『けいおん』
- ルー・リード死す
- 2013年の対日戦勝記念日が終わり、映画『レイルウェイ・マン』が来る
- チャベスの死
- 究極のエキゾチシズム、ガラパゴス化をきわめるという手もある
- ハマス-イスラエル休戦協定発効とバス爆弾の謎
- 今年もぐっと来るジョンルイス百貨店のクリスマスTVアド
- 革命なう@リビア カダフィの後継、サイーフは自由の身、とBBCが報じる
- ロンドン(イギリス)暴動ーーキャメロン首相のマッチョな対応にあきれる
- ロンドン・イズ・バーニング、文字通りの。ロンドン暴動が全国に飛び火。
- 今日のNEWS‥ノルウェイの銃乱射+自動車爆弾続報とエイミー・ワインハウスの死
- 素浪人バグダティスと職人ルビチッチ<ウィンブルドン1週めの面白試合>
- 伊達vsヴィーナスのテニス史に残る試合。もう1回見たいマッチなんてそうはない。
- マフーvsイズナー、ウィンブルドン2日目に因縁のふたり再び相まみえる
- 「夏休みに一時帰国」なんて、そんな「蛮勇」できません。
- ウィキリークス、日本の原発の暗い歴史を大量放出
- 春のガーデニングすごろくーー1回休み
- 日本の加害者化 ーー対岸から火事を眺めて
- 映画『東京原発』ーー日本原子力発電の闇に切り込む