保守党と労働党と自由民主党での連立政権に変えたのですか?
選挙の結果、過半数を獲得した政党がなかったので二党の連立になりました。
もっとも議員数の多い保守党が単独で少数与党になることもできましたが、その場合は、保守党政府が議会に提出する法案が野党の反対で成立せず、結局何も決められない状態が続くことが目に見えていました。また、議会の50%+1名の議員が集まれば議会の解散を要求できる(できた)ので、年内にもう一度総選挙があると見込まれていました。
今現在、イギリス経済は危機的状況にあり、そのような混乱を避けるために(国民の利益のために)、政策上では水と油ほどにも違う保守党と自由民主党が連立しました。と、建前では言われています。
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今回は自由民主党(リブデム)に入れてみようと考えていたイギリスの有権者の少なくない人々が、投票所に入ってから、やはり二大政党制以外の政権交替を想像できず(平たく言えば勇気がなくて)、保守党か労働党に入れたようです。そのせいで、かなり議席数を延ばすであろうと誰もが予想していた自民党がむしろ議席を減らしてしまいました。
でも、ほんとに面白いことに、蓋を開けてみたら二大政党のどちらも過半数に届かなかった。なぜだかわかりませんが、二大政党制は「やだ」、どっちも「やだ」という民意が結果的に選挙に出てしまいました。国というのは生きものなんだなあ、これがイギリスの民意なんだなあと感慨深かったです。
イギリスの自由民主党に関していえば、プログレッシブパーティ(進歩的な政党)の定義で間違いないです。プログレッシブ(進歩)はコンサーバティブ(保守)に対抗する政治姿勢で、労働党も本来ならプログレッシブパーティです。戦前は自由対保守、戦後は労働対保守といった具合に、イギリスは常にこの二つ(進歩と保守)のあいだで政権交替してきました。左右の分け方なら進歩が左です。
ところが、ブレアが党首になって労働党は進歩的な政策を転換し、かなり右に寄りました。なぜなら左寄りの政策では選挙に勝てなかったからです。ですから97年の地滑り勝利後の特に2001年の9.11以降、イギリスの二大政党は「中道の右寄り」と「中道のもっと右寄り」という、ほとんど違いのないものになってしまっていました。
第三党の自由民主党は進歩的な政策を掲げる党です。例えば、核ミサイルを単独で廃棄して防衛はもっと経済効率のよい手段に替えるとか、いま国内にいる不法移民に恩赦として市民権を与えて犯罪を防ぐとともに納税者にするとか、廃棄物の処理などにお金がかかる原発はやめて代替エネルギーを推進して環境産業を発展させ輸出するなどなど。
というわけで、今回は予期せぬ結果で連立政権が誕生しましたが、まだ二大政党制は終わっていません。自民党が保守党との連立の条件として出した選挙制度改革のための国民投票が実施され、現在の単純小選挙区制はなくなれば、二大政党のあいだで政権が入れ替わる二大政党制が終わる可能性があります。
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