金融サービスです。
金融サービスとはどのように儲ける仕組みでしょうか?
株の売買など、あっちのお金をこっちに移すと何倍にも膨らむといった、お金を移動させることで設ける仕組みを何通りも考案し、そのお金の移動を代行したり、情報を売ることなどで設ける仕組みです。
以下現在のイギリスの経済状況です。
イギリスは税収の多くを金融サービス関連事業から得ています。ですから、世界の金融が健全に働いているあいだは国全体がその恩恵を受け、活気がありました。ブレアはちょうどその時期に首相だったので、イラクとアフガニスタンという不人気な二つの戦争に国を引きずり込んだにもかかわらず、まだある程度の人気を保っています。運のいいヤツです。
しかし、ご存知のように現在、世界は金融不安から発した不況の状態にあります。EU(ユーロ圏)を揺るがすギリシャの破綻も、元はと言えば世界的な金融不安に端を発しています(借金で国家運営をしていたが元本はもとより利息も払えなくなった)。イギリス経済も例外ではありません。税収の多く(半分程度と言われています)を金融関連サービス業界に頼っていたのにその税収が絶えてしまいました。残ったのは巨額の借金だけです。
ゆえに、今度の総選挙の争点は経済の立て直しでした。公共サービス(教育、医療、住宅その他諸々)にかかる費用を削減し、税金を上げ、年金支給年齢を引き上げるといった、国民の生活に直接影響する削減策を大幅に実施しない限り、再生の見込みはありません。主要三党とも削減の是非については一致していましたが、違ったのは、だれから、いつ、どのぐらい削減するかでした。
選挙の結果、もっとも金持ちを優遇する削減案(例えば、公共サービスを削る一方で相続税の課税対象となる遺産額を引き上げるなど)を出していた保守党が議席数第1位になりましたが、過半数に届かなかったので、第3位で金持ちからまず削減する案(バンカーのボーナス大幅カットや、金のかかる核兵器維持から他の防衛策への転換など)を掲げていた自由民主党(リブデム)と連立を組むことになりました。
そもそもイギリスが金融サービスを中心とした産業構造に変わったのはサッチャーの保守党の時代でした。サッチャーは、いわゆる英国病を克服し、国を再生させるために国の産業構造をすっかり変えてしまったわけです(とても「保守」党の仕事は思えませんが事実です)。
英国病とは、1) 累進課税の導入などによる高税率。たしか、収入によっては80%とか90%とかの税率になっていたと思います。2) 高福祉による労働意欲の低下。有名な高福祉国家「ゆりかごから墓場まで」の定着と国庫の圧迫。3) 公共事業部門でストが頻発し、社会の不満が高まる。4) 公共事業の国有化=無競争によるサービスの低下などを病状とします。
これらは第二次産業(鉱工業)を中心とした産業構造の中で、そこで働く労働者に支持された労働党政権によって実行されていて、戦後復興時には有効に働いていました。しかし、このままでは国は疲弊し、世界の中での立場もますます貧弱なものになっていくばかり。そこでサッチャーは、組合をつぶして労働者の権力を弱め、国有事業を民間に投げ売りし、国の産業構造を製造からサービス中心にすっかり変えてしまいました。ブレア(ブラウン)のニューレイバーはこの新自由主義路線を踏襲したので、イギリス国内には現在、製造に関する大企業はほとんど何もありません。すべて外国に売ってしまいました。
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第二次産業のなかで生き残っているもののうち、大きな影響力があるのは石油などのエネルギー産業(BPなど)と世界最大級とも言われる兵器産業だ。金融サービス業が勢力を弱めるなかでますます幅をきかせるようになっている。
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