広島・長崎に原爆を投下された日本に同情的ですか?
国のことはわかりませんから、ひとりひとりの人のことについて回答します。
その人の出身国が反米だから、という理由が必要かどうかについては議論の余地があると思いますが、原爆が投下されたあとの惨状をかなり正しく把握していて、その直接の被害者(被爆者)に対して、また被爆国から来た日本人であるわたしに対して同情的である人にはたくさんあったことがあります。イギリス人、パキスタン人、アフガニスタン人、ネパール人、イラク人、スーダン人、フランス人、スペイン人、パレスチナ人、いま思い出すだせるだけでもこのぐらいはいます。
原爆のことを知った外国の人の多くは、原爆は、無条件に、いかなる理由があっても、人が人に対して使っていい武器ではないという点で一致します。モラルの問題として使用を許される武器ではない。日本の人がもしこうしたことを知らないとすれば、外国人と原爆の話をしないからではないですか。
原爆は他の爆弾とはまったく違います。戦争中だったからしょうがないんじゃない、とかいったレベルの武器ではありません。1発で大きな街全体をがれきの山に変え、10万人以上を殺し、さらに10万人以上を後に苦しめながら殺す武器なんてほかにありません。
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戦後の日本に対し、アメリカ(GHQ)が実施した政策のうち、もっとも罪が深いものの一つが原爆被害の隠蔽だと思う。ヒロシマ・ナガサキの原爆の被害は爆弾を投下したアメリカ自身の予想を超えるほどひどいものだったので、それが知られることで日本人がアメリカへの反発を強めることが考えられ、占領政策を手際よく実施するうえで障害になるとの判断から戦後長く伏せられていた。
1952年に連合軍による占領が終わり、原爆被害の公開が可能になった頃、日本は朝鮮戦争(1950〜53年)特需に湧いていて、敗戦のことなど忘れて明日を見ようといった無責任な明るさに満ちていた。そのため、原爆被害者(ヒバクシャ)は自国民から同情を得る機会も失い、それどころか心ない差別から逃れるためにむしろ被害をひた隠しにしていた。
そうした歴史の忘却が続く世代に後遺症としてあらわれ、原爆の被害についても沖縄の苦しみについても同情できないばかりか想像さえできない日本人がたくさんいる。また、なぜだかわからないが、それについて外国人と話すことをためらう人も多い。
戦後の日本人が、ユダヤ人がホロコースト博物館をそこらじゅうに作ったように、世界中に原爆資料館をたてていたら核兵器の広がりはいまほどひどくはならなかったのではないかと想像する。それは被爆国日本の責任だったのではないか。
原爆投下直後のヒロシマやヒバクシャの写真を初めてみる外国人の衝撃を目の当たりにするたび、見せること、知らせることの重大さをいつも考える。
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