2010年04月22日

[知恵袋] イギリスでは出身階級を飛び越えるのは非常に困難と聞きましたが。

イギリスでは出身階級を飛び越えるのは非常に困難と聞きましたが、
民主主義国家であるイギリスでの階級ってなんのことですか?

イギリスの階級制度は、インドのカースト制度のように社会的宗教的に縛られているわけではないので越えられます。ただし、ワーキングクラス(労働者階級)の家庭に育った人が、その人の一生のうちにミドルクラス(中流)になれるということはまずめったになく、俗に1階級上がったり下がったりするのに三代はかかると言われています。

と言うのも、階級は単に財産のあるなしでも、サーの称号のあるなしでも、パブリックスクールの出身であるかないかでもなく、その人がどの階層に属しているかを他の人がどう判断するかなので、それには、よく言われるように上流の言葉をしゃべることができるかできないかだけでなく、話の内容や物事の考え方が大きくかかわってくるからです。

スポーツや芸術で、あるいは経済的に社会に貢献すればサーの称号はだれでも(日本人でも)もらえますし、親にお金があるか、あるいは勉強ができれば奨学金制度でパブリックスクールにはだれでも入れます。また、アクセントの問題だけならアナウンサーや俳優がやっているように訓練すればだれでもできるようになりますが、話の中身については一朝一夕では変えられず、ここまで変わるには子の代では足りず、孫の代までかかると言われています。

また一方で階級の流動性は、実はこれがけっこう重要ですが、その人がどの階級に属していたいかでも変わります。自分の出身階級へのこだわりもその一つですし、また、上になればなるほど社会からの期待値が高くなります(自分の資産や能力を用いて社会に貢献することなど)。

たとえば、有名スポーツ選手やミュージシャンなどは大金持ちになってもワーキングクラス・ヒーローと位置づけられることを好み、逆に、ミドルクラス出身のミュージシャンなどはあまり出身階層について語りたがりません(ストーンズのミック・ジャガー、ブラーのデーモン・アルバーン、ジャミロクワイのジェイ・ケイなどがミドルクラス出身です)。

この階級社会というものと階級の固定化についてイギリスでは常に政治問題になっていて、階級間の移動(クラス・モビリティ)をよくするための制度がいくつも導入されてます。

例えば最近では、全国の大学進学準備校(中等学校のあとに行く学校、日本の高校生の年齢の生徒が就学する)に対して学校別の点数制が導入され、パブリックスクール(私立)やグラマースクール(選抜の公立)はポイントゼロであるのに対し、無試験の公立学校のうち、特に貧しい地域にある学校などは5点といったぐあいに大学入学資格試験に加点されるようになっています。以前からある、大学は一定の割合以上の学生を公立学校から入れなければ行けないといったアファーマティブ制度とあわせると、公立学校出身者はかなり優遇されるようになってきていて、そのあおりで、あまり有名でないパブリックスクールの子どもたちは苦戦しているようです。

アッパークラス(王族を含む上流階級)にはあまり流動性はないと思いますし、アンダークラス(ワーキングクラスのその下の階層)は固定化されがちですが、そんなわけで、ワーキングクラスとミドルクラス、特にミドルクラスのうちの下の層(ロワーミドルと言います)はしばしば入れ替わります。

***

イギリスのような階級制度というものがない日本でも実は目に見えない階級の壁はあり、可視化されていないからこそ実際にその壁にぶつかるまで階級を意識することは少なく、壁があることさえ広く知られていない。ゆえによりいっそう克服が困難だとの説もあります。
ラベル:英国文化 階級
posted by nfsw19 at 00:00| ロンドン ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 知恵袋回答 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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