2010年04月24日

[知恵袋] 募金って意味ないですか?

ハイチ大地震のニュースを見て募金したいと思いました。でも親は募金なんて意味がないからするなと言います。理由を聞いたら100円とかじゃ何も変わらないとか、募金しても本人に届くことはないから無駄って言ってました。それって本当なんですか?

募金などの慈善行為をしようとする人に対して、それは本人の気休めにしかならないとか、寄付したお金は別のことに使われてしまうとかいった後ろ向きな回答をする人が(質問者さんのご家族だけでなく)知恵袋に参加する大人にもとてもたくさんいて、残念なことだと思っています。

うちにも14歳の子どもがいますから、まず、かれの経験について書きますね。特別な子ではありません。普通の男の子ですが生まれも育ちもイギリスですから、寄付や募金に対する考え方が日本とは違うということを頭において読んでください。

かれが初めてお金を寄付をしたのはインド洋の津波被害のときですからいまから5〜6年前です。被害にあった子どもの映像や寄付を呼びかける番組をテレビで見て何かしたいと言うので、では持ってるお小遣いのうち、あげてもいいと思う金額を持って来ればその金額を10倍にして寄付してあげますと言いました。かれは持っていたお金のほとんど全部(10ポンドぐらいしかなかったのですが)を持って来たので、それを10倍にしてかれが選んだ赤十字に寄付しました。

我が家の経験はこんなものですが、親の助けで善意をもっと大きく育てた子どももいます。これは今度のハイチ地震の話です。

5歳の男の子がハイチの地震被害のニュースを見て、おかあさんに何か助けになることをしたいと言ったそうです。おかあさんは、その子が最近自転車に乗れるようになったのをヒントにスポンサードサイクリングを思いつきました。

「スポンサード〜」というのはイギリスでよく行われる寄付金集めの方法で、大人なら例えばロンドンマラソンを完走するとかいった目標を決め、完走したらいくらといった金額と寄付先を発表して家族友人知人にスポンサーになってもらいます。で、その人が目標を達成したらスポンサーになった人はその金額を指定された団体に直接寄付したり、走った人に渡して代理で寄付してもらったりします。

ロンドンマラソンの場合はこういった慈善目的の参加者が非常に多く、マラソンそのものは参加費がかかるのですが、寄付をいくら以上あつめたら参加費免除といった公式のルールがあります。

小中学校でもスポンサードクロスカントリーなどで寄付金集めをよくします。ほかにも、学校の行事の一環として子どもたちに小額のお金を渡し、各自工夫して増やし(クッキーを焼いて休み時間に売ったりなど)、元手を含めて全額を寄付する活動なども盛んです。

で、元の話に戻りますが、おかあさんと男の子は近所の公園を自転車で5マイル走るという目標を立て、募金の目標額を500ポンドに設定してインターネットの寄付集めサイトにページを作りました。このページが評判を呼び、なにしろ男の子はいっしょうけんめい自転車で走っていてかわいいし、たちまち何千ポンドも集まりました。テレビのニュースで取り上げられるとさらに募金は増え、最終的に2万5000ポンドを寄付することができたそうです。

慈善団体と偽ってお金を集めて自分で使ってしまう人も、そりゃあ、広い世の中ですからいくらかはいるでしょう。でも、そういう少数の不届き者を警戒するあまり、善意から発するほとんどの人の行為を疑うのは自分の心を貧しくするだけです。賢くなることは、ずるくなることとは違います。

***

ロンドンマラソンに限らず、イギリスの一般参加のマラソンはいつも寄付金集めの参加者でいっぱいだ。みな思い思いの扮装をこらし、沿道で応援する人たちの笑いを呼んでいる。

マラソンの応援に行ったこともなければ参加したこともないわたしがなぜこんなことを知っているかと言えば、テレビで中継するからだ。イギリスのマラソン中継は二段構えになっていて、前半はスポーツ、後半はチャリティ番組と言っていいと思う。招待選手など有名アスリートによるスポーツとしてのマラソンの勝負が決すると、あとは寄付金集めの一般参加者が主役になる。

家族が重い病気で亡くなった人が同じ病気の人をサポートする団体への寄付を集めたり、臓器移植で元気になった人が臓器移植を推進する団体の寄付を集めたり、そういったひとりひとりの背景が事前取材の映像やインタビューで丁寧に紹介されるほか、電子メールや手紙が紹介されたり、実際に走っている人を呼び止めてインタビューしたりする。たいがい何人かの有名人が一般参加者に混じって走っていて、そういう人たちもみな寄付金集めをしている。ホームレス、HIVポジティブ、ゲイライツ、アニマルライツ、DV被害者、難民その他チャリティの対象は実にさまざま。

イギリスにいるとチャリティがほんとうに身近で、ごくあたりまえのこととして誰もが実行している。この国の何もかもが素晴らしいわけではないし不便も多いけれど、このチャリティの身近さ、困っている人のことを考えて、考えるだけでなく行動することがあたりまえに行われている日常が、日本よりイギリスが住みたいと積極的にわたしが思う理由の一つだ。
posted by nfsw19 at 00:00| ロンドン ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 知恵袋回答 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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