もし、「イギリス農水省が「自給率政策を国策とすべきではない」というような主旨を公表」しているとしても、それをただちに日本の農業政策の参考にすることはできません。なぜなら単純に数字だけみても、今現在、日本の自給率は50%にも満たないのに比べ、イギリスでは70%を超えているからです(特に主穀物である小麦はほぼ100%を達成)。
イギリスも大戦前は自給率30%程度でした。ですから戦中は食糧不足に悩まされ、配給も限定的だったために国民はこぞって庭を畑に換えました。そのときの反省から戦後、自給率向上に励み、現在の数値にまで回復させました。そのうえでの、「もはや自給率政策を国策とすべきではない」であることを理解しておく必要があると思います。
また、イギリスはEUのメンバーであることも日本と大きく違う点です。EU内は原則的に「人、物、サービス」の行き来に壁がありません。どんな物でも国内と同様に移動するので、季節の野菜や果物などはEU内の最も適した気候で育てられたもの対し、国内生産品は値段の上でも味の上でも対抗できません。自給率向上を政策にして自国の農業を守っても現実的な効果がありません。
またさらにイギリスの農業が集約農業である点も日本とはまったく異なる要素です。イギリスは日本と違って土地の高低差が少なく、国土の4分の3が農地です。しかし、農業専従は国民の2%程度にすぎません。すべての農家が大規模農業を行っているわけではないですが、それでも日本に比べれば農家1軒あたりの作付け規模が大きく、EUへの輸出も大規模に行っています。国策として自給率向上を目指すより、国境を取っ払って農産物の行き来を自由にさせたほうがかえって国内の農家を守ることにもなるでしょう。
とは言え、最近はフードマイレッジ(その食品の輸送にどれだけの燃料が使われたか)を気にする人が増えてますから、自給率向上などとはまったく関係なく、国産品(地元品)の人気が高まる傾向にあるかもしれません。
ラベル:英国政治
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