2010年06月30日

[知恵袋] 「日本語初級の外国人が読める日本文学を推薦してください。

日本語初級の外国人でも読める、現代語で良質の日本文学作品を推薦してください!
条件は、正しい現代の日本語で書かれている。
外国の人でも解る感動が味わえる。
専門・歴史的用語が少ない。
文庫本がある。


語学の場合、初級と言っても人によって段階がまちまちなのでそれによってお勧めできる本が違ってきます。

ひらがなとカタカナは読み書きできて漢字の読みは500字程度でしょうか。この場合、書ける漢字はたぶんもっと少なくて200字程度だと思いますが、中学高校の第二外国語の授業で日本語を選択した場合は週2コマ2年間程度の学習でこのぐらいの能力を求められます。この段階ではまだ語彙が少ないので大人の本はお勧めできません(その人が大人でも)。

しかし、その人がいま日本語環境にいて四六時中日本語を聞いているなら、語彙は耳から入っていますからルビ付きの大人の本でもいいでしょう。

また、その人の母語が何かわかりませんが、その言葉と日本語の辞書(見出し語がひらがな、カタカナで、意味は母語のもの)を持っていて使いこなせてますか? ひらがなとカタカナが読めれば辞書はひけますから、辞書をひくのがめんどうでなければルビ付きの大人の本が読めます。

いずれにせよ、辞書がないと読書の際に言葉の理解が限定的になりますから、そのかたがまだ辞書を持っていない場合は母語と日本語の辞書を入手されるよう強くお勧めします。

あるいは、読み書きできる漢字は少ないが、聞くと話すは読み書きより上手で言葉はたくさん知っていますか? 日常会話から入った学習者に多いパターンですが、この場合は辞書がなくてもルビ付きの大人の本を充分読みこなせると思います。

***

とは言え、ルビ付きの大人向けの本というと『平家物語』など古典にほぼ限られ、日本人の大人にとっても歯ごたえがあります。

戦前の日本には総ルビの本が日常的にたくさん出回っていたので、漢字の読みが限定的な人でも(大人も子どもも)そうとう難しい本が読めたようです。この慣習、どうしてやめちゃったんでしょうねえ。ルビさえ付いていれば子どもでも初心者の外国人でも好きなものが読めるのに。(戦時下の子ども時代を描いた妹尾河童作『少年H』が総ルビで出版されたときは感動しました。これはいまでも総ルビで出ていると思います。いい本です)

総ルビの慣習がいまでも守られている書物が一つだけあります。マンガです。最初から大人向けに描かれたものでなければマンガは総ルビがスタンダード。条件のうちの「正しい現代の日本語で書かれている」の「正しい」をどのぐらい満たしているかは作品によりますが、まちがいなく「現代の日本語」ではあると思います。

それにマンガの場合、語彙が不足していても絵が助けになって意味を想像できます。わたしは海外居住者なんですけど、うちの息子(14歳ですが書ける日本語は小学校低学年並み)はマンガで漢字の読みを維持しているようです。

マンガといっても馬鹿にはできません。日本のマンガはかなり文学性が高いですからマンガを読んだ外国の人はたいがいとても驚きます。最近のものだと『鋼の錬金術師』がおすすめ。もうちょっと前のものだと山岸良子『日出処の天子』や萩尾望都『ポーの一族』など文学にひけをとらない名作がたくさんあります。

***

マンガに抵抗がある場合は小学生向けの書籍をおすすめします。岩波少年文庫か講談社青い鳥文庫がいいでしょう。

岩波少年文庫は小学校低学年向けとか中学生向けとかいった具合に推薦年齢が記されていて、年齢があがるほど漢字のルビが減少します。最初は低学年向けから始め、だんだん段階をあげていけばいいと思います。

日本語の正しさについては信用してよいと思いますが、選ぶ段階では漢字が読める必要がありますから書店でいっしょに選んでさしあげるといいでしょう。収録されているのは評価の確立した世界と日本の名作です。
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/jidou/

岩波少年文庫全作品読破に挑戦中のかたのホームページに大人に推薦する隠れた名作が紹介されています(『リビイが見た木の精』『父さんの犬サウンダー』『波紋』『ティーパーティーの謎』『月曜日に来たふしぎな子』)。それぞれの内容はこのページでお読みください。

講談社青い鳥文庫は小学生向けですが、名作文学だけじゃなく、宮部みゆきなど活躍中の作家の作品が多いのが特徴で、中には初版10万部なんているのもあるぐらい人気があります。

ホームページの試し読みのページをご覧下さい。原則的に総ルビですからひらがなが読めれば外国の方が自分で選ぶこともできます。宮沢賢治や『三国志』もあります。
http://shop.kodansha.jp/bc/aoitori/index_main.html

posted by nfsw19 at 00:00| ロンドン ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 知恵袋回答 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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