2010年04月15日

[知恵袋] イギリスは大英国時代を誇りに思っているって本当ですか?

大学で「イギリスは大英国時代を誇りに思っている」と教わったのですが本当ですか?
もし本当なら旧植民地や中国などは不快な気持になりませんか?


イギリスは大英帝国時代を誇りに思っているかどうかと言えば、ある意味では誇りに思っているとは思いますが(特に不況のときなど、これによってプライドを保てるので)、奢っているわけでも旧宗主国の立場にあぐらをかいているわけでもなく、旧植民地国との関係は常にメンテナンスして良好に保つ努力をしているのも事実です。

例えば、イギリスはつい最近まで白豪主義政策をとっていたオーストラリアと違い、第二次大戦後は一貫して多文化主義政策をとってきました。戦後復興のために植民地からの働き手を求めていたという実利的な面はもちろんありますが、文化的背景の異なる大量の移民を受け入れ、相互の文化の融合をむしろ積極的にすすめてきました。

その間、人種差別を背景にした暴動も何度もありましたし、いまでも摩擦は常にありますが、そういうことに蓋をせず、積極的に解決しようと努力して来たのがイギリスの政治です。

毎年100万を越える観光客を集めるヨーロッパ最大のストリートカーニバルであるノッティングヒルカーニバルは、もとはカリブ海からの移民のお祭りですし(トリニダードにルーツがあります)、昨年だったかの世論調査ではイギリス人の大半がイギリスの国民食にチキンマサラ(チキンのカレー)を選んでいます。

戦争難民を含めた移民の受け入れはいまも絶えることなく続いているので、一昨年だったか我が家の近所の中学校がイギリス1たくさんの言語が話されている学校に選ばれましたが、その数は70数言語というたいへんな数でした(その翌年には90数言語が話されているロンドンの別の中学校が全国1位になりました)。

第二次世界大戦後すぐに実際にイギリスの小学校で使われていた社会科の教科書を近所の図書館から借りて読んだことがありますが、そこにはイギリスが次々に海外領土を手放している事実が書かれていて、わたしたちもいつまでも海外の植民地から得られた恩恵のことを思い描いていないで、自分たちだけでやっていくように努力しなければなりませんといったことが書かれていました。

また、いまの現役の中学生は、奴隷貿易を含めた三角貿易による大航海時代の経済の仕組みの問題点について社会科で勉強します。

どのような根拠に基づき、イギリスが今も大英帝国時代を誇りに思うあまり、自国の歴史の過ちを顧みないという結論に至るのかわかりませんが、白人の子どもたちとインドやパキスタンや香港やアフリカ諸国やカリブ海諸島出身の親を持つ子どもたちが机を並べる学校で、旧植民地をないがしろにするような教育をすることがほんとうに可能だと思いますか? どちらの大学かわかりませんが、その先生は、イギリスの多文化主義の実情をご存じないのでは? もしそうならずいぶん無責任な発言ですね。

もちろん一部の人々、ナショナリストや教育程度の低い人々は白人第一の観念にすがりついていますが、国民の大半はそうでないか、あるいは、実際にどう思っているかとは別にそうでないようなふるまいをするぐらいの知性は持ち合わせていると思います。

***

知恵袋によくある「はじめに回答ありき」の質問のひとつ。この質問の目的は、かつての戦争を詫びてアジアの国々と仲良くしようとか従軍慰安婦に補償をするとかいった自国の過去とのかかわりかたを「自虐史観」として否定することにある。そのために、「戦勝国であるイギリスではいまだに帝国時代を誇りに思っているという事実」が必要なので、そういう答えを得るために提出され、実際、そのような答えがベストアンサーに選ばれている。

答えるだけ時間のむだではあるんですけど、この手の質問を見つけて、まだだれも否定的な回答(質問者が望んでいない回答)を書きこんでないときは、できるだけ何か書き残すことにしている。というのも、「知恵袋」の方針としてどんな質問もどんな答えも削除に値するほどひどいものでなければ本人が一定期間(2週間)以内に取り消さない限り、そのまま残ってしまい、将来にわたって何百人何千人もの人が読むことになるからだ。その将来の読者のため書いているつもり。

posted by nfsw19 at 00:00| ロンドン | Comment(0) | TrackBack(0) | 知恵袋回答 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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