男子シングルス1回戦のジョン・イズナー(John Isner, USA)対ニコラス・マフー(Nicolas Mahut, France)の試合が二度の日没延期をはさんで足掛け3日間5セット合計11時間5分の最長記録を作った(実況アナウンサーとニュースのアナウンサーで名前の発音に違いがあり、それぞれ、ジョン・イスナー、ニコラス・マウーとも。フランス語読みならマウーか? 表記はBBCの実況に従いました)。
ウィンブルドン大会の男子の5セットマッチでは4セット目まではタイブレークが採用されるため、もし両者互角でゲームを取り合って6ゲームずつに達した場合は7ゲームめを先取した者がそのセットの勝者になります。しかし、最終セット(第5セット)はタイブレーク方式をとらないので2ゲーム差で勝負がつくまでセットが終わらず、ときどきゲーム数が2桁になるまで長引くことがあります。
また、ウィンブルドンは屋外の芝のコートのため、雨天の場合には試合が翌日以降に持ち越しになり、センターコート以外は照明設備がないので日没になるとやはり翌日延期です。とは言え、選手権があるのは夏至を挟んだ4週間(前半2週間はノーシード選手の勝ち抜き戦なので正確には選手権ではありません)なので普通の生活をする分には屋外なら夜10時近くまで明かりは不要で、テニスの試合も9時過ぎまで可能です。
そうは言っても、雨の多い年など延期を繰り返していると男女シングルスの決勝戦が週末に収まらず、翌週のウィークデイになってしまうことがしばしばあり、盛り上がりに欠ける。これを解消するため、去年からセンターコートに開閉式の屋根と照明設備が付き、去年のマリーの試合(準々決勝だったか)で初めて使ってました(この日は夜半から一時的に大雨が降ったと記憶しています)。ちなみにウィンブルドンは昔ながらの習慣で中日(なかび)の日曜は休みですから、お出かけの際は気をつけてください。
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で、話は最初に戻って問題のマッチですけど、もともとは22日火曜日の夕刻6時13分に開始したそうです。もちろんそのときはわたしは全然知らない。わたしだけじゃなくて、両者の母国であるフランスとアメリカ(の一部の人)とファン以外は知らなかったろうと推測されます。なにしろまだ1回戦だし、戦場は18番コートというオールイングランド・ローンテニスクラブの敷地の中でもさいはてのコートです。
敷地内には全部で19のコートがあり、各コートで日に3〜5試合が行われます(屋根付けのためため3番が改装中)。有力選手の試合はセンターコートと1番、2番にセットされることが多く、テレビの中継で映るのもほとんどがこのコートです。
そんなわけで、この3つのコートだけチケットは別売りでけっこう高い。残りは一律の入場券で、いったん入場すれば主要コート以外のどのコートでも観戦できるそうです。つまり、18番コートはその他のコートの中でも端っこ中の端っこにあり、敷地の端っこゆえに周囲の建物の影響を受けやすく、西側にタワーブロックがあるので中央部のコートより早く影になるみたいです。
で、その晩の試合は双方が2セットずつ取ったところで日没による延期となりました。延期決定は9時7分でそこまでの試合時間は4セット合計174分。うちわけは1セット32分4-6でイズナー、2セット29分6-3でマフー、3セット49分7-6でマフー、4セット64分6-7でイズナー。4セットめだけで1時間超えているんでこの段階でもすでに長い試合です。
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明けて23日水曜日、マッチ再開は昼過ぎ2時5分なんですけど前日以上に注目されてません。なにしろこの日はクイーン・エリザベスが33年ぶりにテニス観戦することになっていまして、同じ時間帯にセンターコートでアンディ・マリーの女王観戦2回戦マッチがセットされていました。そのうえ、フットボール・ワールドカップ16強進出を賭けたイングランド対スロベニアのマッチの日で、イングランド戦開始前の午後2時ごろに近所に買物に出たら帰宅を急ぐ車で時ならぬ渋滞になってました。
わたしの場合、テレビのチャンネルを最初はマリーの試合、3時過ぎはワールドカップに合わせてましたが、そんなに熱心に見てませんでした。と言うのも、実は朝からDIYに励んでいたのです。
去年、IKEAのバーゲンコーナーで買った2台のベンチを雨ざらしにしていたら、カビなど出て来て惨めな状態になってきた。元々アウトドア用ではないのでカビるのは当然で、これにアウトドア用ペンキを塗って庭に置こうという計画だったのをさぼっていたのでした。このベンチは元展示品がお役御免になったバーゲン品ではなくてIKEAの店内の元備品です。なので、けっこう傷んでました。でも組み立てなくてもいいのでらくちんだと思って買ったら、トラックの荷台で場所をとるので輸送費が通常より高めでした。
黒カビの点々付きベンチ、ペイント前。
朝9時過ぎ、ウッドデッキにダンボールを広げてベンチを置き、ひっくり返して裏から塗り始め、乾くのを待って表を塗り、そのあと近所に新聞を買いに行き、3時になってイングランド戦が始まりました。まもなく息子が帰宅し(学年末試験以降ほとんど授業はなく、今週は課外活動。この日のアクティビティは芝居のクラス)、校内のホールのスクリーンでイングランド戦を見られるように学校がアレンジしたそうですが「興味ないし帰って来た」そうです。おそらくイングランド中の学校で似たような措置がとられたことと思います。
息子に手伝わせてもう1台のベンチをウッドデッキまで運び、イングランド戦を横目で見ながらペンキ塗り。で、ハーフタイムのときに初めてテニスマッチ最長記録の話題が出てきました(まだ記録には達していなかったんですが、そうなるかもということで)。その後、後半を見つつペンキを塗りつつ午後は過ぎ、2台塗り終わってもまだペンキがだいぶ余っていたのでビルダーベンチのペイントに着手しました。
ペイント後のベンチと塗り始めのビルダーベンチ。
カラーはforget-me-not わすれな草色
ビルダーベンチというのは、一昨年の春から冬にかけての増築改築工事のときにビルダーが廃材などを利用して作った簡易ベンチで、かれらがランチや休憩に使っていたものです。工事が終わったときに捨てようとしていたのを引き取ってウッドデッキに置き、リスの餌付けに使ってました。
ビルダーベンチの上で乾燥バナナを食べるりっちゃん。
で、ビルダーベンチを塗りつつ、チャンネルをテニスマッチに切り替えると放送していたのは「ありえない試合」。18番コートからの実況中継もまれな事件ですが、画面左下には第5セット40数ゲームずつの数字があり、客席は満杯でコートを見下ろす周囲の通路まで鈴なりです。それがジョン・イズナーとニコラス・マフーのロンゲストマッチの中継でした。
で、その後、息子も呼んで(マフーという名前が息子の名前と似てるので他人のような気がしない‥‥笑)、適当な夕ご飯を食べつつずっと二人で中継を見てました(今学期の体育がテニスだったのでスポーツ嫌いの息子もフットボールよりは興味が持てたようです)。
あとで記録を読むと5時45分に過去の最長記録を破り、その後も試合は続行、双方59ゲームずつ取った夜9時10分、太陽がタワーブロックの影になってボールが見えにくくなり、日没延長となりました。
実況のアナウンサーは、
「59対59で第5ゲームは明日3日目に突入です。
これはクリケットの試合ではありません」
と興奮しつつも冗談を飛ばしてました。
両方とも大柄な選手で(イズナーは2メートルを越えるテニス選手にあるまじき大男で、二人並ぶと190センチのマフーが小柄に見える)サーブが強く、サービスエースが多くてラリーが少ないというわたしの嫌いなタイプの試合なんですけど、なにしろここまで来ても全然球速が落ちず、時速100マイル以上(イズナーは時々120マイル以上)のサーブを続けていてたまげました。
そのうえ、こんなに長い試合でへろへろだろうにマフーはまだ時々ダイビングレシーブなどします。応援せずにいられましょうか。会場でも双方の選手が良いプレーをするたびに何度も何度もスタンディングオベーションがおきてました。
ある人は18番コートで二人の試合を観戦していたが、途中でフットボールのイングランド戦が見たくなり、会場をあとにして10分ほど離れたウィンブルドンヴィレッジに行き、パブで試合を観戦。イングランドの勝利に気を良くしてテニスコートに戻ったら同じゲームが続いていたそうです。
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明けて6月24日木曜日、第5セット3日目にはもはや国中の話題の的に。朝のニュースショーでも繰り返し放送してました。ゲーム再開は午後3時43分、そのちょっと前にその日の課外活動のコミュニティサービスで、学校の近所のスペシャルスクールのフェンスのペンキ塗りに行っていた息子がペンキだらけのつなぎで帰宅し、前日同様にテレビ観戦。またまた快調に双方ともサービスエースを連発してましたが約1時間後、ついにイズナーがマフーのゲームをブレークし、70対68で第5セットを征しました。
セット終了は4時48分、第5セットだけで足掛け2日491分。結果、この一戦はセットカウント3対2でイズナーが勝利して2回戦に駒を進めました。マフーは椅子に腰を下ろし、タオルに顔を埋めたまま、しばらく立ち上がれませんでした。
この後すぐ18番コートでは控え室に立ち去ろうとするマフーを呼び止め、オールイングランド・ローンテニスクラブから特別賞が両選手と審判に贈られました。賞品はクリスタルボールとシャンパンフルートだそうです。
審判のモハメッドさん(スウェーデン人)もすごかったんですよ〜、特に2日目が。両選手は途中にバスルーム休憩があったんですけど、審判は7時間審判席に座りっぱなしで何も食べず、どこにもいきませんでしたから。
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この日、南アフリカではイタリアチームにありえない悲劇が起こり、フランスに続いてワールドカップ敗退が決定。前回覇者とランナーアップが勝ち抜き戦に残れないと言う前代未聞の事態が発生する一方で、日本はデンマーク戦を3対1で勝利しました。日本の2本のフリーキックゴールにはテレビ解説の元選手たちも大興奮し、3得点めのホンダのアシストにもunselfishだと絶賛の声が上がりました。
解説者のひとりからは「ホンダとベントレーを取っ替えろ!」の名ゼリフも。
24日と25日のガーディアン紙のスポーツ面1面、イングランドとイタリア。
25日のイタリアの写真が秀逸。
この写真のすぐ上、タイトル横の切り抜きが死闘を終えたイズナーとマフー。
そのさらに左にW杯南ア大会のガーディアンのマーク、ブブゼラを吹く少年。
写真をクリックすると大きな画面でご覧いただけます。
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ジョン・イズナー対ニコラス・マフーの一戦が書き換えた記録
マッチ最長記録 ー 11時間5分
セット最長記録(第5セット) ー 8時間11分
ゲーム最多記録(第5セット) ー 138ゲーム
ゲーム最多記録(マッチ) ー 183ゲーム
1マッチのサービスエース最多記録(個人) ー イズナー113回
1マッチのサービスエース最多記録(合計) ー 216回(うちマフー103回で第2位の記録)など
かれらのマラソン・テニスマッチ中に世界で何が起きたか(ガーディアン紙)
ウィンブルドンでは85試合が終了。
ワールドカップではギリシャ、ナイジェリア、スロベニア、アルジェリア、オーストラリア、セルビアの敗退が決定。
オーストラリアではジュリア・ギラードが初の女性首相に。
アメリカではオバマ大統領がアフガニスタンにおけるアメリカ及びNATO総司令官のスタンリー・マクリスタル将軍を解雇。
イギリス政府が年金の支払い時期の延長を発表。
ゲームカウント68対70。
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翌日、イズナーは2回戦にのぞみましが74分3-0で敗れ、ダブルスは不調と靴ずれを理由に棄権。同じくマフーもダブルスの1回戦にのぞみ(マフーは元々ダブルスのスペシャリストでサーブ&ボレーが得意だそうです)、3時間30分戦ったところで日没延期となり、翌土曜日にセットカウント4対1で負けました。
試合開始前の世界ランクはイズナーが19位、マフーは148位でした。歴史に残る大試合であったのは間違いないですが、二人のランクに良い影響があるかどうかはわかりません。
しかし、おもしろかった。
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