イングランド(イギリス全体ではありません)について回答します。
まず、公立校と私立校で大きく異なります。また、私立校でも男子校と女子校(+元男子校の共学校)のあいだにも違いがあります。
最初に公立校について。義務教育期間は5歳〜16歳で、5歳〜11歳までの6年間が初等教育(2つのステージに分かれています)、11歳〜16歳までの5年間が中等教育です。初等学校(プライマリースクール)の前に4歳から入れるレセプションクラスというのがありますが、最近、これよりさらに早くにフォーマルな教育をスタートさせようとしています。
中等学校(セカンダリースクール)は大きく分けて2種類あります。11歳で試験選抜されるグラマースクール(昔、ラテン語の文法を教育していたのでグラマースクール=文法学校の名前が残っています)と無試験のコンプリヘンシブスクールです。コンプリヘンシブスクールは原則的に学校から家が近い順に入学を許可します。ほかに、カソリック等宗教活動に重きをおいて選抜する公立学校もあります。
ロンドンのセントラル地区にはグラマースクールはありませんが、ロンドン近郊の市やイングランドの地方都市にはたいがい男女各1校ずつ(か、それ以上)のグラマースクールがあります。グラマースクールが進学校なのはおわかりかと思いますが、コンプリヘンシブの中にもグラマー以上の成績をあげている学校があります。そういう学校の周囲には教育熱心な富裕層が移り住み、学校周辺の不動産価格を押し上げています。
中等学校の終了時に中等教育修了試験(GCSE)があります。8科目以上(上限はなし)を中等学校の後半の2年間(おもに最後の1年間)に受験します。「卒業」という考え方ではなく、この試験の成績が中等教育を終えたという証明になり、この後の進学、就職等に一生を通じて関係してきます(履歴書にはGCSEの何の科目でどんな成績を得たか書きます)。
この後、大学への進学を希望する場合は2年間の大学進学準備校(シックススフォーム、6th form)に進みます。6thフォームではGCSEの結果の良かった科目のうちの3科目(あるいはそれ以上)を選んで2年間、より深く勉強し、その後、試験を受けます。大学に進学しない場合は職業訓練校に進みます。この2年間は義務教育ではありませんが公立学校に学ぶ限り、学費は無料です。
大学進学の過程はかなり複雑なので省きます。
続いて私学の教育。伝統的な男子校(パブリックスクール)の入学は13歳です。ですが、選抜試験の過程は11歳から始まるので13歳から突然加わるのはかなりむずかしいです(11歳で選抜試験があり、これに合格した子どもだけが2年後に入試を受けられます)。パブリックスクールは13〜16歳の3年間で、その後の2年間は同じ学内の大学準備校に進みます。
多くのパブリックスクールはジュニア部門を持っていてプレップスクールといいます。プレップは8歳〜12歳です。プレップの前にプリプレップもあり、プレップとプリプレップだけの小規模な学校もかなりの数あります。
女子校あるいは共学の私学は11歳で選抜試験がある他は公立校と変わりません。
公立の小学校から私学に進む場合は11歳で試験を受けることになります。男子校のプレップスクールにも11歳入学枠が少し作ってあり、公立や他のプレップからの転入を受け入れています。しかし、パブリックスクールの13歳の試験には公立校の授業科目にない科目があるので、公立校に12歳まで通って13歳からパブリックスクールというコースは現実的には不可能です。
私学は有料です(かなり高額です)。
教育の義務は親に課せられた義務で、きちんとした教育を受けさせさえすれば方法は自由です。届け出て許可を得る必要がありますが、子どもが小さいうちはホームエデュケーションを選ぶ家庭もけっこうあります。以前、住んでいた家の隣人は4人の娘をすべてホームエデュケーションで教育していました。上の3人にはそれぞれ家庭教師がいて、まだ小さかった末っ子には専属のナニーがいて、ホリデイには全部引き連れて出かけてました。すごいお金持ちですよ〜。こんなのは珍しいです。
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