2014年05月21日

[TUP速報976号]シーモア・ハーシュ、インタビュー:シリア化学兵器事件の背後関係

速報976号 シーモア・ハーシュ、インタビュー:シリア化学兵器事件の背後関係
投稿日 2014年5月21日

◎ シリア情勢に大きな影を落とす米国の影響

国連難民高等弁務官事務所の発表(2013年現在)では、すでに100万人以上がシリアを離れ難民となったとされるように、混乱の続くシリアの情勢は昨年、化学兵器の使用で多数の一般市民の犠牲者が出るにいたり、米国をはじめ多くの国々を含めた国際関係を緊張させました。

ピュリッツアー賞を受賞した調査報道記者のシーモア・ハーシュは先月、新しい論説「レッドライン・アンド・ラットライン」を発表し、シリア情勢に大きな影響を与えている力を読み解きました。アメリカの独立系メディア「デモクラシー・ナウ!」のエイミー・グッドマンがシーモア・ハーシュを番組でインタビューし、化学兵器使用とトルコの関係、武器の調達ルートと米政府との関わりなど、シリア情勢に関する彼の新しい論説について尋ねています。

(前書き、翻訳 キム・クンミ/TUP)

エイミー・グッドマン:
シリアが国連の監視下で化学兵器武器庫の廃棄作業を続けているなか、ピューリッツァー賞受賞のジャーナリスト、シーモア・ハーシュは新しい論説で、昨年シリアのグータ市で化学兵器攻撃により何百人ものシリア人が亡くなった事件に疑問を投げかけています。米国をはじめ、国際社会の多くの国々はアサド政権に忠実な軍を非難し、米国はもう少しでシリアを攻撃するところでした。しかしハーシュによると、オバマ大統領とジョン・ケリー国務長官がアメリカによるシリア攻撃を言い張る一方で、米軍と諜報コミュニティ内部のアナリストは化学兵器攻撃の黒幕は誰だったかについて、内々に米国政府の主張の根幹に関わる疑問を呈していました。

ハーシュによると、米国国防情報局(DIA)は6月19日にシリアの反政府グループ、アル=ヌスラがサリン生産部隊を維持していると述べた5ページにわたる極秘の「論点」ブリーフィングを発行しました。DIAは事件を「同時多発テロ事件以前のアル=カーイダの活動以来、最も先進的なサリン計画」と述べています。DIA文書を引用すると「トルコとサウジに本拠を置く化学ファシリテーターが、シリアでの大規模生産活動を見越して数10キロのまとまった量のサリンの前駆物質を手に入れようとした可能性が高い」。DIAブリーフィングが書かれる一カ月前に10人以上のアル=ヌスラのメンバーがトルコ南部で逮捕され、地元の警察がプレスに話したところによると、彼らは2キロのサリンを所持していたとのことです。

調査報道記者シーモア・ハーシュは今日、ワシントンD.C.から番組に参加します。彼の最新の記事の見出しは『レッドライン・アンド・ラットライン』。ロンドン・レビュー・オブ・ブックスに発表されたばかりです。

セイ (シーモア)・ハーシュ、デモクラシーナウにようこそ、またお会いできましたね。あなたが発見したことを教えてください。

シーモア・ハーシュ:
いまあなたが一部を説明してくれました。DIAのブリーフィング文書で一番重要なのは……。この番組にも出演しましたが、「ロンドン・レビュー」に数カ月前に『サリンは誰のものか』※1――まさにこれが記事のタイトルですが――、を問う記事を書いたのですが、それは、はっきりとはわからない。東グータで何が起こったのかを正確に知っているということではありません。はっきりとわかっていること、軍やペンタゴンやアナリストがわかっていること、という意味ですが、回収されたサリンはシリア政府の兵器庫に存在する種類のものではなかったということです。そのことは、大統領が戦争を起こそうと主張した根本的な要因の1つに深刻な問題を提起します。シェッド文書※2の本当のポイントは、そして何故わたしがこれについてたくさん書いたかといえば、記事を書いた数カ月前の時点で、ホワイトハウスはこの文書について知らないと言っていたし、アル=ヌスラや他の過激派グループ、またはジハード主義グループがサリンを保有しているという情報を持っていなかったと言っていたからです。。

※1 岩波書店の雑誌『世界』2014年5月号で、TUPの宮前ゆかりと荒井雅子による全訳を読むことができます。

※2 シェッドはブリーフィング文書を受け取った国防情報局(DIA)副長官

何が恐ろしいかといえば、軍の内部でも、私が知っているだけでも米国南方軍(SOUTHCOM)などが、この可能 性を懸念していました。ジハード主義グループの一部にとって戦況は不利になりつつあります。明らかに、アル=ヌスラだけでなく他のグループも、トルコの助けを借りて、サリンを製造する技術を持っています。そして恐ろしいのは戦況が悪化すると、このサリン――しかるべく使うと恐ろしいほどのたくさんの人をあっというまに死に至らしめることができるので、「戦略的兵器」と呼べるかもしれない――このサリンが、シリア国外の様々な部隊に送られることになる。言い替えれば、彼らが持っている化学物質が、どこだかわかりませんが、北アフリカ、中東や他の場所に送り出され、我々が直面している対テロ戦争が違った状況になってくるということです。それが現実です。

一方で、ホワイトハウスの立場はまたもや、今回の記事について、彼らが存在しないと主張する文書について、――私がその文書のかなりの部分を記事中に引用しているにも関わらず――私はその文書を読んだのは明らかなのですが――、それでも彼らは依然として「そんな文書は存在しない」と主張しています。この現実から目をそらすやり方は私が記事で書いたことと関係しています。大統領がいったん決定を下したら、変更すること、変更させることはほとんど不可能だと人々が言っていたことを記事に引用しました。シリアがやったと大統領がいえば、皆そう考えること、考え続けることが正当化されてしまい、他に選択肢はなくなる。大統領は現実から目をそらした外交政策を主張してきましたが、一方で、特にシリア政府が(化学兵器を)廃棄している現状で、我々はその化学兵器で深刻な問題を抱えることになる。シリア内部でこれらの兵器を持っているのはいかれた奴だけになる。そういうことになっているわけです。

グッドマン:
「ラット・ライン」とはなんですか?

ハーシュ:
「ラット・ライン」は非公式の呼び名なんです。CIAは…CIAには非常に有能が人が沢山いますよ。私はずいぶん叩いていますけれど、でも、みなさん認めざるを得ないと思いますが、そこには非常に明晰は人々がまだ残っているし、自分の仕事を理解してやっている。イランでの戦闘中、ブッシュとチェイニーはイラン国内に秘密裏の地下核施設があるかどうかを調べることにやっきになっていました。彼らは絶対的に信じていました。パキスタンなどから合同特殊作戦コマンドのおとり捜査チームを、CIAが知っていた密輸と送金ルートを通じて送った。CIAの「ラット・ライン」を使って入り込もうとしていた。

この場合の「ラット・ライン」は2012年初期のことですが、なぜだかわからないけど、たぶん、リビアでカッザーフィ(カダフィ)を追いだせたこと――それはそれで混乱が起こったですが――、勝利したと思っていたことに傲慢になっていて、米国はトルコを通じてシリアの反対勢力に武器を注ぎ込むために極秘作戦を展開しました。送り込んだ相手は世俗主義グループにも、アサド政権に対して正当な不満を持っていた人々にも、そしてシリアに本気でワッハーブ派やサラフィー主義の政府をつくろうと、シリアを乗っ取ろうとしサウジとカタールの資金援助をうけたグループにも。これはまったくの極秘作戦でした。長い時間がかかりました。ベンガジ(リビア)の領事館が制圧されて初めて終了しました。私が書いたように、米国議会にも内緒で行われていた。我々でさえもそれを知ったのは、最近の上院情報委員会からの、数カ月前に安全保障などを問題にして発表されたベンガジについて報告があったからです。共和党が常に話題にしている問題ですが、そこにはこの武器を注ぎ込む課程について説明した秘密の付属書がありました。それは実際にトルコから、サウジやカタールの資金を使って実行された。我々は彼らのカネを使って武器を購入し送り込んだ。CIAはこれに深く関わっていた。

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ラベル:アメリカ
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2014年05月14日

[TUP速報975号]ウォルデン・ベロー:人道介入がはらむ危機

速報975号 ウォルデン・ベロー:人道介入がはらむ危機
投稿日 2014年5月14日

◎地獄への道には善意が敷き詰められている

今年4月に20年忌を迎えたルワンダ大虐殺が一つの契機となって、「保護する責任」という理念が打ち出されました。一国の政府に集団虐殺などの重大な人道危機を食い止める力や意思がないときは、国際社会が責任をもって(すなわち武力を行使して)阻止するという、「人道的武力介入」の理念です。しかしこの理念には、外国の介入に口実を与える危険性などが指摘されてきました。特に、前世紀に植民地支配のくびきから解放された南側諸国(先進国が多く集まる北半球に対して、グローバルサウスと呼ばれます)で深刻に懸念されています。以下は、「保護する責任」が初めて適用されたリビア爆撃に際して、グローバルサウスを代表する知識人の一人ウォルデン・ベローが、コソボ、アフガニスタン、イラクでの介入を振り返ってこの理念の問題を指摘し、人道介入がどのように行われるべきかを論じた記事です。3年近く前に発表された記事ですが、「人道的武力介入」を考えていく上で重要な点がまとめられています。(荒井雅子/TUP)

人道介入がはらむ危機

ウォルデン・ベロー
2011年8月9日

リビアとシリアでの出来事によって、武力による人道介入、すなわち「保護する責任」の問題が再び注目を集めている。

国民にとって疫病神である腐敗した独裁政権の打倒をめざす、武器を持たないデモ参加者に思いを馳せない者はないだろう。チュニジアとエジプトでは、市民が立ち上がって自分たちの手で独裁者を追放した。タハリール広場では、武装したムバラク政権支持者が人びとを攻撃し、銃撃さえしたが、軍が独裁者側につかないことを決め、大規模な弾圧は回避された。

その後は、それほど簡単にはいかなかった。リビアの暴君ムアンマル・アル=カッザーフィー(カダフィ)は、デモに参加した市民を厳しく弾圧し、その結果、米国と北大西洋条約機構(NATO)に、空爆と反政府勢力への武器提供による軍事介入の機会を提供することになった。また現在シリアで、反政府勢力が蜂起した諸都市に対してアサド独裁政権が大規模な弾圧を行っているため、介入を求める声が欧米諸国で高まっている。

市民を自国政府から守ることを目的とした軍事介入を国家主権という原則より優先することは、はたして正当なのだろうか。そして正当だとすれば、どのような状況ならそうした展開が正当化されるのか、介入はどのように実行されるべきなのか。

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posted by nfsw19 at 00:00| ロンドン ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | TUP速報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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