2013年08月16日

2013年の対日戦勝記念日が終わり、映画『レイルウェイ・マン』が来る

イギリスでは深夜12時を回り、2013年のVJデイ(対日戦勝記念日)が終わった。日本で言えば敗戦記念日だ(「終戦記念日」というタームはものごとの本質を隠すと思う)。何周年とかいった節目の年でもないし、イギリスと日本のあいだにいま現在、不穏な懸案事項があるわけではないので特になにごとかあると思っていたわけではないが、なんとなしに一日家にいた。

泰緬鉄道で強制労働させられた旧英国軍人の生き残りもいまでは少数になり、日本の国民はもとよりイギリスの国民からも忘れられようとしている。どちらの政府からもなんの保障も得ていないこの人々も戦争の犠牲者だ。これらの旧軍人の一人であるスコットランド人のエリック・ローマックスの書いた『The Railway Man』というノンフィクションがある。読み応えのある良い本だが、角川書店から出ていた和訳はもう絶版になっている。残念だ。

鉄道マニア(train spotter)だった若いころの自分の話から始まり、兵士として東南アジアに赴き、日本軍の強制収容所での暮らしと辛い労働の日々が事細かに綴られている。なかでも(近年イラクやアフガニスタンでの敵対勢力の取り調べの際に米英連合軍が使用して有名になった)ウォーターボーディングによる拷問の場面は読んでいて息苦しくなるほどだ。この拷問の際に通訳として立ち会ったのが日本軍の通訳だった永瀬隆で、ローマックスは何十年もあとに永瀬と東京で再会を果たす。『The Railway Man』を貫くのは敵対した二人の何十年にもわたる「怨み」と「償い」と「赦し」の物語だ。

もうだいぶ以前になるが、ロンドンの英語学校で「尊敬する人」について作文を書く宿題が出され、わたしは永瀬隆について書いた。その少し前に英国人監督による『The Railway Man』の映画化の話が持ち上がり、当時やっていた小さい会社でキャスティングのリサーチをすることになったので、『The Railway Man』だけでなく永瀬の本を取り寄せて何冊か読んでいた。その永瀬氏も数年前に亡くなった。かれが死んだとき、日本の新聞には小さい記事が出ただけだったが、Independent紙には東京特派員デイヴィッド・マクニールによる永瀬の戦後を追う現地取材を含む長い記事が見開き2頁で掲載された。

今年のVJデイには実は何か起きるんじゃないかと思っていた。というのも『The Railway Man』がついに映画化されたと昨年末に知ったからだ。当時の発表だと公開は7月予定とのことだったので、公開後の8月15日(VJデイ)には旧日本軍捕虜の抗議行動があるかもと予想した。結局公開は2014年1月まで延期になった。年明けに公開するということは、つまり、BAFTAやアカデミー賞を狙える作品という意味でもある。なにしろオールスター・キャストだ。

ローマックス役はコリン・ファース、その妻となる女性をニコール・キッドマン、永瀬役は真田広之で、ここまででも十分にビッグネームだけど、兵士時代の若いローマックスを『ウォーホース』で主役を演じたジェレミー・アーヴィンが演じる。日本軍付き通訳時代の永瀬役は石田淡朗というロンドン在住の若い役者だそうだ。知らない名前だがギルドホールで演技の勉強をしたとのことで本格派の舞台役者だろう。楽しみだ。前の映画化企画のころに名前のあがっていた監督ではないので映画化権が移動したのだろう。

そんなわけで、日本ではお正月公開になることが予想される(勝手に予想してますが)オールスター映画『The Railway Man』は歴史修正主義者には許し難い作品になるだろう。楽しみだ。80歳をとうに越したローマックス氏には、レスタースクエア(ワールドプレミアの際によく使われる劇場街)の赤絨毯をコリン・ファースやニコール・キッドマンとともに歩いていただきたい希望です。どうかお元気で。
タグ:映画
posted by nfsw19 at 01:41| ロンドン | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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