2013年01月18日

イギリスはEUを脱退しますか。

[知恵袋]回答日時:2013/1/18 01:23:22

イギリスはEUを脱退しますか
 EU参加継続か脱退かでイギリス国内は2分しています。
 EU未参加で永世中立国のスイスですら加入している
 域内自由移動を可能とするシェンゲン協定にすら完全参加していません
 ユーロにも参加していないのに負担だけ押し付けられてもイヤだと
 英国民が考えるのは当然だと思います>


イギリス在住です。タカ派ワナビーのキャメロンは昨年来EUに対してかなり高圧的ですが、ほんとうに近々国民投票をしようと考えているかどうかはわかりません。保守党内にも反対意見がありますし(もちろん、キャメロンよりもっと強力なアンチEU議員もいますが)、第一にいま連立与党を組んでいる自民党が、イギリスのメジャーな政党のなかではもっとも強く親EUを打ち出している党なので、この線をあまり強く押すと連立解消になりかねません。年頭の記者会見ではあいかわらず仲良さそうにしてましたけど、自民党党首のニック・クレッグはEU議会で働いていたりEU議会議員だったりした経歴があり、いまやずたずたになった他の公約とは異なり、おそらくこの線は譲れないでしょう。

キャメロンがEUに対してホーキッシュに出ているのは、多分に国内向けのポーズのように見えます。と言うのも、キャメロン内閣のスタートと同時に始まった予算引き締めの(直接的間接的な)影響で大学進学をあきらめる子どもや若年失業者が増加し、年金支給年齢が上がるやら金額は減るやら公務員はばざばさ首を切られるやらで現政権に対する不満が渦巻いています。

その不満のはけ口の一つとして東ヨーロッパからの移民がやり玉にあがっており、安い給料で働く東ヨーロッパからの移民のせいで仕事がないとかNHS(国民健康保険制度)が圧迫されているとかいった右派のプロパガンダを信じている人は多いです。実際のところ、東ヨーロッパからの移民は概して教育が高く(教育のないような人は国を出られませんから)、比較的高給であったり自分で事業を興す人も多く、社会保障の世話になるような人はごくわずかのようですが、被害者意識に染まった一般大衆を説得するには至っていません。

そのため、EUからの離脱と移民制限を旗印とした右派(というより極右)政党が勢力を伸ばしており、昨年の補選や地方議会選の多くに労働党が勝利しているばかりでなく、次点を極右に取られて保守党が3位以下などというケースも少なくありません。キャメロンのEUに対するタカ派的言動は、こういった極右鞍替え組み向けのポーズではないかと思います。とは言え、わたしは親EUですから、希望的にそう見えるのかもしれませんが。

仮に国民投票が近々実施されれば、これまでに述べたような国内事情を背景に、EU脱退に向かうんじゃないでしょうか。

ところで、イギリスは(アイルランドとともに)シェンゲン協定に完全参加はしていませんが、実質的に国境はすべてのEU諸国に開放されており、人、モノ、金の行き来に制限はありません(相互に)。また、「ユーロにも参加していないのに負担だけ押し付けられてもイヤだと英国民が考えるのは当然だ」についても、そういうプロパガンダはありますが、実際にイギリスの全輸出高の半分は(モノの行き来の自由さに頼る)対EUですから、EUから脱退したら製造業を中心にたいへんな損失が発生するでしょう。いまのイギリスは(世界のほとんどの国と同様)、そのようなリスクを負えるような状態にないことは言うまでもありません。

* * *

...で、次の選挙で政権を取ったら国民投票を実施するとのことである。つまり、過半数取れればいいが、仮に勝っても過半数に届かなかった場合、リブデムとの連立はありえないので、もしかしてUKIPと連立するってことかい?(UKIPがそれなりの議席を取れた場合だけど)

ちなみに、UKIPは「紳士のBNP(極右政党)」とも言われるスーツの似合う極右政党で、コモンに議席はないものの欧州議会には10議席以上を持ち、地方議会にもけっこうな議席を持っている。去年の補選で保守党を抑えて次点にもなっており、これが今回の「次の選挙に勝ったら国民投票実施」のきっかけになっている。

つまり、この「騒動(としか言いようがない)は「政策」でもなんでもなく「政局」がイッシューという、どっかで聞いたような話である。(2013.1.22 追加)

タグ:英国政治 EU
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2013年01月17日

国旗掲揚をめぐってアイルランドで騒動があるようですが...

[知恵袋]回答日時:2013/1/17 23:18:42

<IRA(アイルランド共和国軍)のお膝元、
 アイルランド・ベルファーストでは
 ユニオンジャックを掲げる掲げないで
 暴動騒ぎが起きているということです。
 民主党のように、日本の政党のくせに国旗を切って(中略)が
 横行するような、こんな国では考えられないことだと思います。
 さて、このアイルランドのありかたどうなのでしょうか?
 ご意見を。>


ご意見を、とのことですが、事実に混乱があり、何に対して「ご意見」さしあげていいやらわかりかねるので、事実を組み立て直すことから始めたいと思います。

まず、「アイルランド・ベルファースト」について。ベルファストは、1921年にアイルランド共和国が英国からの独立を果たして以来、英国帰属になった北アイルランドの首府です。アイルランド島にあるのは事実ですが、「アイルランド・ベルファースト」と書かれると事実関係にねじれが生じますから、「北アイルランドのベルファスト」と書かれたほうがいいでしょう。

続いて、「イギリス国旗のユニオンジャックを掲げる、掲げないで暴動騒ぎが起きている」について。「掲げる、掲げない」で騒ぎが起きているのではなく、「ユニオンジャックを365日掲げるのをやめる」とベルファスト市議会が議決したので騒ぎになっている、が正しいです。そもそもこのユニオンジャックは、上記のアイルランドの独立以来ベルファスト市庁舎に年がら年中掲げられていたものですが、この年間を通じての掲揚を年に15日(クイーンの誕生日など)に縮小しようという決定です。なぜ掲げられていたかと言えば、北アイルランドはイギリスの傘下にあることの象徴的行為ではなかったかと思いますが(調べてませんので憶測です)、いまやその必要もなくなり、イギリスのどこの市議会とも変わらない普通の市議会として記念日のみの掲揚にすることにしたわけです。それも、だれかが強権発動で決定したのではなく、市議会での多数決による決定ですから、手続きにもなんらおかしなところはありません。

では、議会のこの決定に反対し、年間を通じての国旗掲揚を求めて「暴動騒ぎ」を起こしているのはだれでしょう。

そういう徴の旗ですから、もちろんナショナリスト、別の呼び方ではリパブリカン(ナショナリストの強硬派、過激派、IRAを含む)ではありません。国旗掲揚を続けよと主張しているのはユニオニスト(英国への帰属を求める人びと)、言い換えればロイヤリスト(王党派、ユニオニストの強硬派、武闘派)です。

にもかかわらず、わざわざ「IRA(アイルランド共和国軍)のお膝元」と書くと、これでは「暴動騒ぎ」を起こしているのがリパブリカンみたいです。北アイルランドで騒ぎがあるとすぐIRAと結びつけるかたがいまだあとを絶ちませんが、まず事実を知り、その事実に基づいてお考えになるようお勧めします。

ご存知だと思いますが、1998年にアイルランド共和国とイギリスとのあいだでベルファスト合意が成立し、それに引き続きアイルランド共和国と北アイルランドで実施された国民投票を経て、アイルランドはイギリスに対する北アイルランドの領有権主張をやめると決定しました。つまり、北アイルランド紛争は政治的に決着しています。以降、紆余曲折はあるものの北アイルランドには自治政府ができ、現在の自治政府はナショナリストとユニオニストが共同統治しています(北アイルランド自治政府の副首相職をIRAの司令官だったマクギネスが務めてさえいます)。昨年には、クイーンが在位60周年の地方訪問の一環として、初めて北アイルランドを訪問しました。

長い紛争でできた溝は一朝一夕には埋まりませんが、以上のように、今日の北アイルランドでは、かつて反目していたユニオニスト(ロイヤリスト)とナショナリスト(リパブリカン)が荒廃したコミュニティの立て直しのためにともに働く姿が日常化しつつあります。つまり、ベルファスト市庁舎での国旗掲揚を記念日のみにする決定は、そういう流れのなかでとらえる必要があります。

ネットニュースで見つけた「国旗掲揚」という熟語に刺激されての質問ではないかと想像しますが、ベルファストで起きているのは、言ってみれば、蝦夷征伐で手に入れた北海道の札幌市庁舎にその象徴として1年365日日の丸が掲揚されていたとして、それを国民の祝日だけにしようと市議会が決定したら、かつて本土から入植した人の子孫が「日の丸を年中掲揚せよ」と主張して火炎瓶投げたり警官を襲ったりしているようなものです(ちょっと違うか)。後ろ向きであり、すばらしいこととはとても思えません。

* * *

とは言え、市庁舎前でプロテストをする人々の大半はピースフルな群衆で、暴れているのはごく一部のようだ。ロイヤリストの仕込みもあるみたいだし、思想信条よりただ暴れたいだけの十代のギャングも相当数混じっている。
posted by nfsw19 at 23:30| ロンドン | Comment(0) | TrackBack(0) | 知恵袋回答 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月16日

イギリスの右翼や極右の支持政党はどこですか。

*明日はMEP(欧州議会議員)選(プラス地方議会選)で紳士の極右UKIPの大躍進が予想されている。そんなわけでタイムリーでもあるし、古いエントリ(2013.01.16)ですがしばらくこのあたりに置いておきます。下記記事以降の変化は、UKIPがさらにメジャーになったこととBNPが崩壊寸前なこと、EDLのファウンダーがEDLを見限ったこと。(2014.05.21 nfsw19)

*オリジナルの日付に戻しました。(2014.06.15 nfsw19)



[知恵袋]回答日時:2013/1/16 10:14:28
[情報追加]:2013.05.27

<イギリスで右翼的な考えを持っている人の支持政党はどこですか?
 たまにyoutubeで右翼的な発言をするイギリス人がいます。
 その方たちの支持政党ってどこでしょうか?
 やはり、保守党?
 日本のネトウヨと呼ばれる人は完全に自民党寄りですが、
 イギリスではどうなんでしょうか?>


イギリスの政党について、それぞれの政党が右翼であるか左翼であるかは何をイシューにするかで変わってくるので一概には言えませんが、とりあえずナショナリストかどうかで回答します。

イギリスの場合、ナショナリストか否かはEUおよび移民に対する姿勢で判断するとわかりやすいです。ものすご〜く大ざっぱに言えば「アンチEU」「アンチ移民」がナショナリストで「親EU」および「寛大な移民政策支持派」はそうではありません。これで分けると、保守党はおおむねアンチで、保守党と連立を組む自民党はたいへん熱心な親EU、労働党も親EUです。

タカ派ワナビーのキャメロンは昨年からさかんにEU攻撃をしてますが、保守党の中には親EUの政治家もいますから党として大きな声でEUからの離脱を提唱するわけにもいきませんでした。そのため、アンチEUの有権者にとっては保守党では役不足のようで、EU議会選では保守党は分が悪いです。ちなみに、EU議会への議員を選出するEU議会選は国会議員選とは異なり中選挙区制で争われるので、二大政党以外の小政党が議席を得やすく、シングルイッシューの政党がけっこうな議席を獲得しています。

EU議会選になるとがぜん注目を浴びるのは略称UKIP(ユーキップ)のUK独立党(UK Independent Party)です。UKIPはアンチEUが旗印のほとんどシングルイッシューの政党で、国会に議席はありませんがEU議会には10議席以上持っています。自称右派ですが、実態はアンチEU、アンチ移民の極右で、スーツの似合うなおじさんが揃っているので「紳士のBNP」と呼ばれたりしています。[*1]

BNP(英国国民党 British National Party)は、有色人種移民排斥の極右政治結社NF(国民戦線 National Front)から派生した政党で、その出自の通りやはり極右ですが、この政党もEU議会に議席をもっています(いまはたぶん2議席だと思います)。しかし、最近BNPは旗色が悪く(中央政界に切り込もうとして有色人種の候補を立てたりしているせいかもしれません)、もっとも先鋭的なナショナリストを集めて拡大中の新興極右政治結社の英国防衛同盟( English Defence League)に党員を持って行かれたりしています。[*2]

といったあたりが、イギリスのおもな右翼および極右の政治結社と政党で、これらの団体がいわゆる右翼や極右の受け皿です。

ただし、上記はイングランドにおけるナショナリストの定義で、スコットランドとウェールズにおけるナショナリストは「スコットランドが一番」「ウェールズが一番」の政党なので、党としての姿勢は比較的左寄り(労働党と近い)です。また、特にスコットランドのナショナリストの場合はイギリスからの分離独立を目指しているので親EUです。

* * *

回答には書き忘れたが、北アイルランドのナショナリストは「北アイルランドが一番」であるだけでなく、地続きの「アイルランド共和国」との結びつきを重視する。北アイルランドの極端な一派が「リパブリカン(IRAを含む)」。ただし、トラブルズ(北アイルランド紛争)は政治的に決着済み。

* * *

以下追記:2013.05.27(NFSW19)

[*1] UKIPは2013年5月の統一地方議会選でリブデムを抜いて第三の勢力に躍進(全議席が改選されたわけではないが)。統一下院選の谷間に実施される統一地方選では現政権に対する不満票/抗議票が野党第一党に投じられるのが常なので、今回も連立政権を組む保守党&リブデムの惨敗は開戦前から予測済みだったものの、野党第一党である労働党が思ったほど伸びず、下院選で保守党&リブデムに投じられていた抗議票はもっぱらUKIPにまわった模様。

[*2] EDLについてのわたしの知識は浅かったみたいだ。構成員はフットボール・フーリガンとほぼ変わらず程度の知識はあったが、ほとんど完全に「反イスラム」に的を絞った(ヘイト)集団のようである。そんなわけで構成員はムスリムでなければだれでも良く、人種的には比較的寛容とのこと。つまりBNPが黒人候補を立てたことを理由にFDLに鞍替えした人は、仮にいたとしてもごく少数と思われる。EDLについてはこちらに詳しい(エントリが複数にわたっているので読むなら冒頭から順を追って読むこと)。
http://nofrills.seesaa.net/article/363616621.html



タグ:英国政治
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2013年01月09日

似てる?似てない?英国労働党のミリバンド兄弟と日本の鳩山兄弟

知恵袋回答日時:2013/1/9 06:07:31

<イギリスのミリバンド兄弟って
 日本の鳩山兄弟のようなものですよね?
 上流家庭、超インテリ、ホープとして注目を受けている。
 次期英国首相に最も近いミリバンド兄弟って、
 まさに鳩山兄弟じゃない?>


鳩山兄弟とミリバンド兄弟はまったく違うと思いますよ。似ているのは兄弟で政治家という点だけではないでしょうか。

ミリバンド兄弟の両親はともにナチスの迫害を逃れてイギリスに渡ったユダヤ系ポーランド人です。ナチスの目を避けて親切にもかくまってくれる他人の家を転々をするなど、それぞれたいへんな苦労をしてイギリスに渡り、イギリスで出会って結婚しました。つまり、ミリバンド兄弟はユダヤ人移民二世です。

父親はもう亡くなりましたが高名なマルクス主義学者で、まだご顕在の母親も学者で、人権活動家(パレスチナ支援の活動家としても有名)、反核活動家でもあります。そんなカップルの家は左派インテリのサロンのようなものだったようで、若い労働党の政治家や活動家、作家、外国人などが集まり、毎夜、議論に花を咲かせていたとのことです。兄弟はその中で子どものころからいわば左派の英才教育を受けて育ったと言えます。

ふたりとも地元の公立小学校から公立中等学校に進学し(あいだにアメリカにも住んでました)、その後オックスフォードに進学しました。年が離れていますから同じ時期には在籍していませんが、ともに学生組合の議長をつとめました。兄のデイヴィッドはオックスフォードとMIT卒業、弟のエドはオックスフォードとLSEを卒業して一時はジャーナリストとして働いていました。

親が学者ですから中流家庭ではありますが(上流ではありません)、箱入りで育てられた坊ちゃん兄弟の鳩山兄弟とは異なり、ミリバンド兄弟はロンドン北部のカムデン(けっこうラフな地域です)の公立学校で、さまざまなバックグラウンドの人びとにもまれて育ちました。政治家として頭角を現したのは兄が先で、ブレアのニューレイバー内閣で環境大臣、ブラウン内閣で外務大臣を務めました。弟のエドはニューレイバーのホープだった兄に比べるとかなり左寄りで、ニックネームはレッド・エドです(エドの方がより強く両親、特に母親の感化を受けたと言えそうです)。

前回の議会選で労働党が負け、下野した後にあった党首選を兄弟で争い(他にも候補がいましたが)、もっとも前評判の高かった兄のデイヴィッドではなく、組合の支持を得た弟のエドが勝ちました。ちなみに、この党首選の際、労働党員である母親は二人の息子のどちらも支持せず、唯一の女性、唯一の黒人候補だったダイアン・アボットを支持しました(わたしはディヴィッドが嫌いなのでエドが勝ってたいへんうれしかったです)。エドが党首になったときは「赤過ぎる」のでこれでは選挙に勝てないと心配されましたが、昨年の党大会で原稿なしで1時間余の演説をする様などみるに(すばらしい演説でした)、2年後の選挙に希望が持てます。

エドは私生活も政治家としてはユニークで、党首になったときは環境弁護士の奥さんとは事実婚で子どもがいました(その後、もう一人子どもが生まれてから結婚しました)し、無宗教を公言しています。ちなみにデイヴィッドの奥さんは音楽家です。

鳩山兄弟とはだいぶ違うと思いませんか。

* * *

2012年労働党党大会でのエド・ミリバンドのスピーチ


posted by nfsw19 at 06:30| ロンドン ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 知恵袋回答 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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