2012年11月25日

2012年『Xファクター』--ライラン・クラークさよなら記念9本立て+1

今年の『Xファクター』ファイナルでひいきにしていたライラン・クラーク(24歳)がとうとういなくなった。先週、唯一生き残っていた女子のエラがいなくなり、今週「オネエおにいさん」のライランがいなくなり、来週の準決勝は完全に男ばっかである。どうしたって華やかさに欠けるので、これをどう演出するかが見所かも(とでも考えないと見る気にならないかも。それほどまでにライランの抜けた穴は大きい、わたしにとっては)。

記念に(!)ライランの出し物を1週めから並べておく。歌はいまいち、いまに、いまさんだが、もつれそうに長い脚とエセックスなまり丸出しのベタなしゃべりのギャップが特徴、ショーマンシップは半端でない。

[ご注意1] 歌はだんだん上手になるので1週めの出し物で引かないでください。
[ご注意2] 全部見ると1時間以上かかります。歌の部分だけなら30分以下です。

<1週め>
Rylan Clark sings Spandau Ballet's Gold
- Live Week 1 - The X Factor



1週めで早くもボトム2[1]になり、オーバー25枠[2]のうたの上手なおねえさんと対決。デッドロック[3]で生き残ったものの番組プロデューサーの仕込みがあったのではないかと議論を呼ぶ[4]。もう一方のおねえさん(名前も覚えてない)のほうが確かに歌はうまかったがな〜んもおもしろくなかったので、ライランが残ったのは当然の結果だとわたしは思ったが同意しない人も多かったみたいだ[5]。しかし、週ごとに人気は上がる。

[1]一般投票で最下位になった2名による1対1の歌比べ。たいがいバラードが歌われるので上手下手が歴然。歌比べのあと4人のジャッジが投票してどちらを残すか決定するが、しばしば戦略的な結果になり(下手なほうが3票を得て残る)、議論を呼ぶ。

[2]コンテストのカテゴリーは4つ、16歳以上25歳未満の女子、16歳以上25歳未満の男子、グループ、25歳以上。4人のジャッジが一つずつのカテゴリーを担当し、出し物などを決める。

[3]ジャッジの票が割れた場合、判定は一般投票に戻り、その週の最下位が発表されて番組を去る。

[4]オーバー25枠のメンターであるギャリー・バーロウ(テイクザット)がこの結果に怒ってジャッジ席を立ち、帰ってしまった。

[5]判定の前に番組プロデューサー(?)がジャッジに耳打ちした場面が後にyoutubeに上がり、制作者側の意向が働いた、投票操作があると議論になった。しかし、その後の展開をみると投票操作はありそうにない。歌はそこそこうまいがまったく華のない25オーバー枠のおにいさんが、出身地(リバプール)の組織票を得て生き残り続け、優勝しそうな勢いである。

<2週め>
Rylan Clark sings
Groove Is In The Heart/Gangnam Style
medley - Live



モデル出身らしい華麗なウォーキングが見どころ。ただ歩くだけで、立ってるだけカッコいいので、これでショーモデルのすごさを見直したぐらいだ。カール・ラガーフェルド集団のダンスなど、振り付けも演出も力が入っており、これで一気に(セレブリティを含む)ファンを増やした。江南スタイルも出てくる。

<3週め>
Rylan Clark sings a Jennifer Lopez / Rihanna medley
- Live Week 3 - The X Factor UK 2012



ヒゲそって刈り上げたグレース・ジョーンズ風。中盤のリアナの歌のパートで「行儀が悪くてごめんなさい」と言いながらお尻を振るダンスがみどころかも。

<4週め>
Rylan Clark sings Toxic/Horny/Poison Medley
- Live Week 4 - The X Factor UK 2012



<5週め>
Rylan Clark sings Hung Up/Gimme Gimme Gimme Medley
- Live Week 5



再びボトム2になり、再びオーバー25枠のカイ・ソーンズと歌比べをし、再びデッドロックになり、再び一般投票で生き残る。

<6週め>
Rylan Clark sings a Spice Girls Medley
- Live Week 6 - The X Factor UK 2012



革靴にジャケット着用でスカイダイビングに挑戦。

<7週め>
Rylan Clark sings a Duran Duran/Bros Medley
- Live Week 7 - The X Factor UK 2012



ジャッジのコメントのコーナーにテイクザット・トリビュートバンドで歌うライランの映像が出てくる。「きみなんてテイクザットにいたっけ?」とのギャリーの感想に「テイクザットに入るにはわたしはヤセ過ぎ〜」と返し、大いに受ける。この週のボトム2は優勝候補と目されていた二人で、唯一の生き残り女子のエラが番組を去り、ライランは大泣きする。

<8週め-1>
Rylan Clark sings Abba's Mamma Mia
- Live Week 8 - The X Factor UK 2012



準々決勝。勝ち上がりの5組が2曲ずつ歌う(5組のうち3人がボーイズ・カテゴリー、つまり全員生き残っている)。さすがに2曲とも作り込むのは無理みたいで、1曲めはメドレーでなくダンスもなかった。

<8週め-2>
Rylan Clark sings a Supremes Medley
- Live Week 8 - The X Factor UK



こっちはメドレー、でもダンスは少ない。そんなわけでライランらしくない。

<おまけ>
Rylan Clark sings for survival
- Live Week 8 - The X Factor UK 2012



ボトム2での歌比べ、もう片方はボーイバンドのユニオンJ。リラックスしていて、すがすがしい顔をしている。

しっかり作り込んだド派手なプロダクションで、来年のユーロビジョン・ソングコンテストにイギリス代表で出てもらいたい。クリスマス・パントでクイーンやるのもいいと思う。



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2012年11月21日

ハマス-イスラエル休戦協定発効とバス爆弾の謎

夜7時のチャンネル4ニュース冒頭で、ガザで取材中の記者が「たったいま停戦に入りました」と第一報を伝えたように、英国時間の晩の7時をもって停戦協定が発効された。1日中アルジャジーラ・イングリッシュをつけっぱなしにして仕事していたんだけど、晩になっても全然進展がなさそうなので近所に新聞を買いに出かけたところ、留守にしていた15分ぐらいのあいだに「GMT19時に停戦協定発効」のアナウンスがあった、らしい。なんか決定的瞬間を逃した気がする。

今日は初めて「つぶやき」というものを使ってみた。ツィッターじゃない。mixiのアカウントにくっついてる「つぶやき」欄マキシマム150字。けっこう面白かった。いまは忙しくてメンテナンスができそうにないので手を出してないんだけど、一段落したらツィッター導入しようかしら。フェイスブックもまだやってない、というか、フェイスブックはたぶんやらない。個人情報の収集が半端でないようなので抵抗がある。

mixiのつぶやきは何日かたつと消えちゃうみたいなので、今日の(一連の)初つぶやきを貼付けておく。

* * *

2012年11月21日 11:08
ガザ攻撃8日目。テルアビブの町中で運行中のバスが爆発した。2人の人物が車中に置き去りにした包み[*]が爆発したと報じられている。爆発があったのはテルアビブの町中で、イスラエル国防省の近く。死者はいない。他に、南テルアビブでも爆発物が見つかった。この「攻撃」がだれによるものかまだ不明。

[*]置き去りじゃなくて投げ込みみたいだ。以下同。

2012年11月21日 15:38
テルアビブのバス爆破をハマスがコンファームした。爆発物の入った包みを置いていった[*]と見られる人物は捕まっていない。「過去10年テルアビブは静かだった。この爆破がイスラエル人に与える心理的影響は大きい」とイスラエル人ジャーナリストがテレビで言っていた。そりゃそうだ。本物の忘れ物でさえ恐怖の対象になる。

友人へのメール:今日、テルアビブの町中を運行中のバスの車内で爆発があり、さきほどハマスがリスポンシビリティをコンファームしました(日本語にしにくいです)。爆発したのは3キロぐらいの爆発物で、置いていった[*]人物をイスラエル警察が捜索中。けが人は出ましたが死者はいません。「過去10年テルアビブは静かだった。この爆発がイスラエル人に与える心理的影響は大きい」とイスラエルのジャーナリストがテレビで言ってました。

そりゃそうでしょう。これからはどんな包みを見ても、たとえ本物の忘れ物でも空っぽの箱でも爆発物に見えてしまうわけで、ガザへの攻撃を続ける限りその恐怖は消えませんから。北アイルランド紛争中のイギリスがそうでしたが、こういう心理的ダメージは経済的な損失も大きいです。

そのジャーナリストは、「4年前のガザ攻撃のときとは周囲はすっかり変わってしまった。これ以上の攻撃の激化はそうした国々の怒りを買い、地域一帯を巻き込むインティファーダに拡大する可能性がある」とも言っており、この爆発にはそれが現実化した場合を想像させる効果があったということだろうと思います。

この人は、ハマスのホームメードロケットに脅かされてシェルターに逃げ込むイスラエル市民の映像がテレビで流れるだけで、ハマスにとっては勝利も同然だとも語ってまして、レバノン在住のHさんが言われていたようなレバノンのハマス応援ムード、今回ハマスはよくやっているという応援ムードの背景にこういうものがあるのだろうと思いました。

バスに爆発物を仕掛けるなんて「鬼畜の仕業(2チャンネル風に)」と言っていいと思いますが、戦略的にはハマスの勝利と言えるかもしれません。これによって風向きが変わり、早期に停戦が実現することを望みます。悪い方に転がる可能性もあるので安易な判断はできませんが。<メールここまで>

2012年11月21日 18:21
新聞買いに行っているあいだに停戦成立のアナウンスがあったらしい。1日中アルジャジーラ聞きながら仕事してたのに、決定的瞬間を聞き逃しちゃったぜ。実際の発効にはまだ30分以上あるけど、ともかく地上戦は回避された。ハマスの作戦勝ち。仲介に入ったエジプトも男を立てた(笑)。ネタ二ヤフは選挙に勝てないだろう。

2012年11月21日 18:39
停戦の条件としてハマス側は、進行中の攻撃の停止だけでなくガザの封鎖を解けと要求していたので、そこまでハードルを上げると合意は遠いのではないかと思っていたんだけど、どうもそれも実現するみたいだ[*]。細かい条件はまだわからないものの、なんかすごい。アラブの春でほんとうに中東は変わったんだと、改めて感激。

[*]ガザの封鎖解除についてはこれからネゴシエーションだそうだ。まったく希望がないわけでもなさそう。

2012年11月21日 22:14
テルアビブのバス爆破をハマスがコンファームしたというのは間違いだったみたいだ。ハマスが賞賛したってことなので、つまりイスラエルにとってはもっと悪い国産の敵か、少なくともいままでは敵とは見なされていなかった種類の人間なのかも。ホームメードの敵が仕掛けたホームメードの爆弾だったってこと?

* * *

今回のガザ攻撃、ルーザーNO.1はファタハのアッバスだろう。

今回のガザ攻撃ではエジプト、チュニジア、トルコの首脳クラスや国連総長のバンキームンなどなど、政治界のセレブリティが続々空爆下のガザ入りして破壊現場を視察したり市民を激励したりとかしてたんだけど、結局アッバスは使者を送っただけで行かなかった(もしかすると今朝ヒラリーのお供で行ったかも)。仮にもパレスチナ自治区の代表なわけだし、敵陣に乗り込むのが怖かったとしても恥ずかし過ぎ〜。自分を唯一のパレスチナの窓口として扱ってくれるアメリカやイスラエルに「配慮」したか、停戦はまだ遠いと思っていたか。どっちにしろ、機を逃した。明日パレスチナ評議会選挙があれば、ファタハの支持者が雪崩を打ってハマスに投票するんじゃない?

ルーザーNO.2はネタニヤフ。

ハマスのカッサム・ロケット弾なんて最新鋭防衛設備アイアンドームで全部撃ち落としてやるわい、な予定だったんだろうけど、意外にもハマスのカッサムは飛距離を延ばしていた。イスラエルは「イラン製」だと主張しているが、テルアビブやジェルサレムまで飛んだロケットもカッサムだった可能性がある(今日のThe Independent紙によると)。ちなみに、カッサムの制作費は1発500ドル程度とも言われていて(ロングレンジはもっと高価かもしれないけど)、それを迎え撃つアイアンドームは1発6万ドル以上。ここにも非対称が。

<[後述]停戦成立直後のある世論調査によると、70%のイスラエル人が停戦に反対とのこと。

[さらに追加]テルアビブやジェルサレムに飛んだロケットはカッサムじゃなかったみたいだ。イランがハマスへの武器供与をコンファームしたとのこと。

ルーザーNO.3はオバマ。

過去8日間、イスラエルには防衛する権利があるってことしか言わなかった。ガザにも防衛する権利があると思うが、そこんとこは素通りだ。エジプトの1月25日革命のときにもやることなすこと後手後手だったけど、まだ「アラブの春」が消化できていないみたい。北アイルランドの例をみればわかるように、昨日のテロリストが明日もそうとは限らない。でも、かれは演説がうまいから機会を逃さずに中東に行き、(またカイロ大学とかで)いいスピーチすれば失点を取り戻せるかも。人びとは心から鼓舞される言葉を欲しており、オバマはそういう言葉を発することができる政治家の一人だ。残念ながら日本にはいない。



それにしても、今朝バスの中に爆発物を置き去りにした[*]のはだれだろう。自殺爆弾じゃないから英雄になりたかったわけではないし、勝利宣言がないところをみると組織でもない。どっかのだれかがガザに同情してネットで作り方みてホームメードしたのかなあ。ハマスのカッサムもそうだけど、たとえ破壊力は小さくてもどこで爆発するかわからない爆弾は高性能ミサイルより効果的なことがある。そういうものを「テラー(恐怖)」と言う。


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2012年11月19日

ガザ地区はなぜイスラエルに攻撃されているのですか

[知恵袋]回答 2012/11/19

<なぜパレスチナは攻撃されて
 がれきの山にされなければならないのでしょうか
 なぜ血まみれに>


イスラエルの言によれば「ガザを実効支配しているハマスがイスラエルの人びとに対してテロリズムを仕掛けるから」です。

これは、イスラエルがただ一人主張しているわけではなく、アメリカ(イスラエルの全人口に匹敵するユダヤ人が住んでいます)でもヨーロッパの国々(過去70年近くもホロコーストを座視した償いを求められています)でも、強弱の差こそあれ多くの「政府」に支持されています。それぞれの国の市民の考えは政府とは異なることも多いですけど。

では「テロリズム」とは何かを考えてみましょう。テロリズムとは、人びとにテラー(恐怖)を引き起こすことで政治的な目的を達しようとする行為(肉体的な暴力と精神的な暴力の両方)やそのイデオロギーのことです。ただ無目的な暴力の行使ではなく、その暴力によって自分の意に従わせようとすること。つまり、目に見える暴力行為はある目的を達するための手段ですから、その暴力によって何を達成しようとしているかに注意を払う必要があります。ハマスは何を目的にイスラエルにテロ行為をしかけているのでしょう。

では現在、ハマスが実効支配する(ゆえにイスラエルの攻撃下にある)ガザ地区(パレスチナ領土の一部)とはどんなところでしょうか。

ガザ地区は地中海沿いの細長い地域で、海に面した一番長い辺が差し渡し約40キロ、内陸に向けた短い辺は6キロから10キロです。面積は名古屋市よりちょっと大きいぐらい。エジプトと国境を接する南の一部を除き、北と東はイスラエルと接し、西は地中海です。この狭い地域に150万人が生活し、人口のほぼ半数が未成年を含む子どもです。

パレスチナは1967年の第三次中東戦争以来、イスラエルの占領下にあります。国際法に違反する占領ですから、国連はイスラエルに対して何度も占領を解くように要求していますが、イスラエルは聞き入れず現在に至っています。占領下にあるパレスチナの人はイスラエルの許可なく外国に行くことはできませんし(つまり、ほぼ不可能です)、何を輸入し、何を輸出するかも独自には決められません。

ガザ地区は1994年以来周囲を壁で囲まれており、特に2006年にハマスがパレスチナ評議会選挙で勝利して以降は完全封鎖されています(選挙は国際監視団もお墨付きを与える「民主的な」ものでしたが、ハマスが勝利したとたんに国際社会から「無効化」されました)。海からはイスラエルの軍艦が常に見張っています。つまり、どこにも逃げ場はありません。水も燃料も建築資材も食糧も医薬品も、ハマスのテロを助長するとイスラエル当局が指定するだけでもうガザには入ってきません。二つのパレスチナの領土(軍事占領されている西岸地区と封鎖されているガザ地区)の行き来も自由にはできませんから、家族を尋ねることも学校や仕事場に行くこともできなくなりました。

いま、イスラエルはこのガザ地区に対して約1000ヵ所のターゲットを決めて「外科手術のように精密な(とイスラエルは言っています)ピンポイント攻撃」を加えています。その「外科手術のように正確な攻撃」で昨日、ほとんどが子どもと女性ばかりの一家11人が殺されました。その家の稼ぎ手が「ハマスの幹部だから」とイスラエルは言っていますが、その人はハマスの警察で働いていたようです。ガザは完全封鎖されているので仕事がなく(材料が手に入らないので工場なども仕事ができません)、ちゃんと給料をくれる仕事のほとんどはハマスがらみです。

このような行為こそをテロリズムと呼ぶべきだとわたしは思います。いまのような攻撃がなくても、いつ終わるとも知れない、仕事も食糧も燃料もないような生活を強いられること自体が、イスラエルによるテロリズムではないかと思います。時々鬱憤ばらしのように打ち上げるハマスのホームメイド・ロケットなど、まあ、それもテロと言えばテロでしょうが、イスラエルの1トン爆弾に比べれば子どもだましのように見えます。

では最初の疑問に戻って、なぜハマスはイスラエルにロケットを打ち込むのでしょう。「ガザの封鎖を解け」というのが第一義の理由ではないかと思います。何十年もイスラエルの占領を許してきたイスラエル国民と国際社会に対して、これを訴えるための他にどのような方法があるか、わたしにはわかりません。


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2012年11月17日

[ナブルス通信] ガザで殺人を行っているのは誰かーーチョムスキーらによる呼びかけ

***拡散希望***【ナブルス通信】
http://0000000000.net/p-navi/info/column/201211170633.htm

***

「ガザで殺人を行っているのは誰か」
 ノーム・チョムスキーらによる報道への呼びかけ

2012年11月14日

欧米各国でこれまでの戦争でなくなった軍人の追悼が行われた(第一次大戦の終結した)11月11日、イスラエルは一般市民に銃口を向けました。翌11月12日の朝刊はこれまでの戦争や現在進行中の戦いで犠牲になった人に関する報道であふれ、読者はこうして新しい週を悲痛な思いで迎えました。

しかし、これらの報道には、今日の戦争の犠牲者の大半が一般市民であるという事実に言及するものはほとんどありませんでした。

11月12日の朝の報道には、週末中続いたガザへの軍事攻撃に言及するものも、ほとんどありませんでした。カナダのCBC、『グローブ・アンド・メール』紙、モントリオールの『ガゼット』紙と『トロント・スター』紙、『ニューヨークタイムズ』紙、英BBCをざっと眺めた限り、これが当てはまります。

11月11日(日曜)の「パレスチナ人権センター(PCHR)」からの報告によれば、それまでの72時間に、2人のパレスチナ治安要員*だけでなく、3人の子どもを含む5人の一般市民がガザ地区で殺されました。

そのうち4つの命が失われたのは、サッカーをする子どもたちに向けイスラエル軍が砲撃したからです。この砲撃で4人が死亡しただけでなく、6人の女性、12人の子どを含む52人の一般市民が負傷しました(この文を書き始めてからも、パレスチナ人犠牲者の数は増え続けています)。

ガザにおける殺害を報道する記事でさえも、論点はパレスチナ治安要員が殺されたことに集中する傾向があります。たとえば、11月13日にCBCの世界ニュースが報道したAP通信の記事のタイトルは『イスラエルはガザの武闘派に対する標的殺害の再開を検討中』であり、一般市民の死傷については何も言及がありませんでした。その報道ではイスラエルの殺害は『目標を狙った暗殺』のように描かれました。犠牲者の大半が一般民間人であるという事実は、イスラエルの攻撃が『目標』を狙ったものというよりは、『総体』を対象とした殺害であり、イスラエルがパレスチナ人という総体に罰を与える犯罪を犯していることをあらためて明らかにしました。

11月12日にCBCニュースで放送された別のAP電は『ガザからのロケット砲撃で、強まるイスラエル政府への圧力』と伝え、イスラエル人女性が自分の居間にできた天井の穴を見つめる写真が添えられていました。もちろん、ガザ地区の数えきれない犠牲者、死者への言及もなければ、それを伝える写真もありませんでした。

同じように、11月12日のBBCの報道は『ガザからの激しいロケット砲撃の再開にさらされるイスラエル』でした。同じ傾向は、ヨーロッパの主要メディアでも見られます。

ガザから発射されるロケット弾は一人の犠牲も出していないにも関わらず、報道は圧倒的に、これに集中しています。報道が目を向けないのは無数の重傷者、死傷者を出しているガザへの爆撃であり空爆です。メディア学の専門家でなくても、私たちが目にするのは、ひいき目に見ても粗悪なゆがめられた報道であり、最悪の場合、読者を故意に不正に操作しようとしているものであることがわかります。

さらにまた、ガザ地区のパレスチナ人犠牲者に言及する記事でさえ、イスラエルの攻撃はイスラエル兵を負傷させたガザからのロケット砲撃に対する報復であるという論調に終始しています。しかし、今回の事件を時系列で見ると、発端は11月5日、アフマド・アル=ナバヒーンという精神障害を持つ何の罪もない20才の青年が国境近くをぶらついていて撃たれたことでした。かけつけた医者たちは6時間も足止めをされ、その遅れが彼の命を奪ったに違いないと思っています。

そして、11月8日、家の前でサッカーボールを蹴っていた13才の男の子がガザ地区に戦車やヘリコプターを伴って侵攻したイスラエル軍の銃撃で殺されました。

したがって、11月10日に4人のイスラエル兵が国境付近で負傷したのは、ガザ地区で暮らす一般市民が殺された後のことであり、すでに進行中の事態の一環であり、それが(今回の攻撃の)きっかけとはなりえないのです。

私たち、下記に署名する者は、最近、ガザ訪問から戻りました。私たちの中にはソーシャルメディアなどを通じて、ガザに暮らすパレスチナ人と連絡をとるものもいます。ガザの住民は2晩続けて眠ることができませんでした。人口が密集するガザ地区内の様々な目標に向けた無人航空機、F16戦闘機の飛来、無差別爆撃が継続的に続いたからです。

これらの攻撃の意図は住民を威嚇することであり、それが効果を上げていることは、私たちの友人たちの話からわかります。フェイスブックへの投稿がなかったとしたら、ガザで暮らす普通のパレスチナの一般市民が、どれほどの恐怖にさらされているのか、知ることはできなかったでしょう。イスラエルの市民が置かれている恐怖やショックが世界の耳目を集めているのとは、際立った違いです。

偶然ガザにいて、シーファ病院の緊急病棟で治療を助けたカナダ人医師は次のように報告しています。「負傷者は全員一般市民であり、銃撃による複数の刺創があった。脳や首の損傷、血気胸、心膜タンポナーデ、脾臓断裂、腸管穿孔、切り裂かれた四肢、トラウマを引き起こす切断。これらの治療をするのに、モニターもなく、聴診器も足りず、超音波機械も1台だけ」

「犠牲者の数が多すぎて、重傷でも致命傷ではない怪我人のほとんどは、翌朝に再診断するということで、帰宅させられた。突き刺さった弾片の傷はおぞましかった。表面の傷は小さいのに体内の広い範囲が損傷していた。… 麻酔のためのモルヒネもほとんどない」

どうも、ニューヨークタイムズ紙、CBCやBBCにとっては、このような情景は報道に価しないようです。

西側メディアがパレスチナ人の弾圧に関して偏っており、不正を働いていることはこれが初めてのことではなく、これまでにも指摘されてきたことです。

にもかかわらず、イスラエル政府は米国、カナダ、EUなど私たちの政府からの暗黙の了解のもと、資金面でのサポート、軍事支援、道徳的な支援を受けながら、人道に反する罪を犯し続けています。

ネタニヤフは西側からの外交支援をえて、ガザへの新たな侵攻作戦を展開しています。これがあらたな『キャスト・レッド(いわゆるガザ紛争、2008~9)』につながるのではないかと心配しています。実際、最近の情勢、死傷者の数の増加を見るにつけ、段階的な拡大はすでに始まっていることがわかります。これらの犯罪に、広く一般社会が激怒を示さないのは、犯罪の事実が正確に報道されなかったり、ゆがめられて報道される計画的なやり方によるものです。

私たちは、これらの行為をしっかりと報道しない主要(商業)メディアに対して憤激を表明します。事実を覆い隠そうとする組織的な方針の道具になることを拒否せよと、報道機関で働いている世界中のジャーナリストに呼びかけます。

世界の市民には、独立系メディアなどから情報を収集し、どんな手段を使ってでも、できる方法で、自らの良心を声にするよう、呼びかけます。

Hagit Borer, linguist, Queen Mary University of London (UK)
Antoine Bustros, composer and writer, Montreal (Canada)
Noam Chomsky, linguist, Massachussetts Institute of Technology, US
David Heap, linguist, University of Western Ontario (Canada)
Stephanie Kelly, linguist, University of Western Ontario (Canada)
Máire Noonan, linguist, McGill University (Canada)
Philippe Prévost, linguist, University of Tours (France)
Verena Stresing, biochemist, University of Nantes (France)

***

翻訳:折口学

*「治安要員」と訳しているのは、原文でsecurity personnelとしているところで、通常よく使われるresistance member や militant という用語を故意に使用していないため、こう訳出した。

**日付に関しては、時差の関係か、1日ずれている箇所もある。

原文: Who is doing the killing in Gaza? Noam Chomsky and others challenge world's media
http://stopwar.org.uk/index.php/palestine-and-israel/2027-who-is-doing-the-killing-in-gaza-noam-chomsky-and-others-challenge-the-worlds-media

Linguists including Noam Chomsky condemn "reprehensible" Gaza coverage
http://electronicintifada.net/blogs/maureen-clare-murphy/linguists-including-noam-chomsky-condemn-reprehensible-gaza-coverage

(2つのリンク先の内容は同じもの)

参照:PCHRの記事 New Israeli Escalation against the Gaza Strip, 7 Palestinians, Including 3 Children, Killed and 52 Others, Including 6 Women and 12 Children, Wounded
http://www.pchrgaza.org/portal/en/index.php?option=com_content&view=article&id=8978:new-israeli-escalation-against-the-gaza-strip-7-palestinians-including-3-children-killed-and-52-others-including-6-women-and-12-children-wounded-&catid=145:in-focus

***

編集部による解説:この記事は14日(現地時間)に、ガザでハマスの軍事部門最高責任者が暗殺され、イスラエルが言う「雲の柱」作戦が開始される前に書かれたもので、すでに現在起っていることを予見している。

この14日には、暗殺の後、ガザ一帯にイスラエル軍による空爆が行われ、保健省の発表によると、11人が殺害されている。この日のことは「ガザへの攻撃激化 緊急」 でも書いている。そこにあるように、イスラエルの大臣は「ガザをreformする」と語り、大規模な虐殺がまた行われるような可能性を示唆した。

また、このチョムスキーらの文章とだぶるが、 「始まりはいつも同じ 「雲の柱」作戦」 でも、14日に先行するガザへの攻撃、一時的「停戦」などをまとめている。

16日の状況については、日本時間17日午前7時現在までずっと情報を追っているが、「かなりひどい」状態としか言いようがない。

ガザから数分ごとに発信されてくる情報は、「この10分間に5回の空爆」「建物全体が揺れている」「〜〜で大きな爆撃」「隣のビルが爆撃された」「〜〜で○人死亡、○人負傷」という感じで延々と続き、カオスと化している。

その中ではっきりしたことをまとめると、16日午後の保健省発表によると、14日からの死者は24人以上、うち8人が子どもで4人が女性、3人が高齢者。負傷者は280人以上。

この発表の後も死傷者の情報は入ってきているので、現在の数は増加していると思われる。

この発表より早い段階で、450箇所への空爆があったとされている。内務省のビルも爆撃されたとの報告が。

ガザからのロケット弾発射も14日以降、いちだんと激しくなり、16日には2012年で初めてイスラエル人3人を殺害した。また、飛距離が伸びていることも確認され、テルアビブまで10数キロの地点やエルサレム近郊に着弾(負傷者なし)したとイスラエル当局は発表している。これまでと同じように、大規模な攻撃を受けると、反撃もまた大きくなる。

ガザでロケット弾がイスラエルの戦闘機を墜落させたという情報もあり、少なくとも1人のイスラエル兵が捕虜になっているとイスラエル筋も認めている。

イスラエル軍は空爆のほかにも、海からガザの海岸部を攻撃し、またガザ周辺に大量の軍用車両が待機している。

ガザでは(いつも起こることによるのか、イスラエル軍によるインフラ破壊なのか)停電が起きていて、ネット接続ができなくなっている人からのツイート発信(携帯からか?)もある。

最も危惧するのは、医療関係での停電、医薬品の不足だ。ガザの基幹病院であるシーファ病院では、発電機のためのガソリンがもう底を尽きていて、あと1日か2日しかもたないという。医薬品も決定的に不足している。医師が停電のため、自分の携帯電話のライトを使い、負傷した子どものバイタルチェックをしている写真が上がってきている。(In photos: Israel attacks Gaza *負傷者の写真あり)

2008~9年の「キャスト・レッド作戦」(ガザ大侵攻)と同じように、イスラエルの総選挙前、米国の大統領選後に、このような虐殺が続いていることは注目に値する。

イスラエルの運輸大臣、リクード党のイスラエル・カッツは「すべての責任はハマスにある。ハマスを取り除く」と11日に発言した。その上、ガザから電気、水、食料、ガソリンを取り除くべきだとしている。これが脅しならいいのだが、本当に実行されると、今までにない悲劇が起こることも考えられる。(もう限界なので、ここは大雑把に書いてます)。

最後に、今、見てしまった嫌な情報。イスラエルの内閣はこの攻撃に関して、予備役兵を7万5000人まで召集できるよう決定したとのこと…。

***

西岸の各地、また世界中ですでに、このイスラエルの攻撃に対して、抗議行動がとられている。(西岸各地の抗議では逮捕者もかなり出ている。なぜ?)フランスでは23都市で、イギリスでも10都市くらい。エジプトやトルコでも何千人もが抗議をしている。こちらにわかっている抗議行動リスト:「【Emergency Global Actions for
Gaza】https://docs.google.com/document/d/1Iq4XZx9Vj0BDIiWzlHi2mUS0VUOn_t-
prgtGGCzatQw/mobilebasic?pli=1」

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2012年11月16日

「ただちに行動を」ガザ集団虐殺についてのプレスリリース

ガザからの呼びかけに答え、できることから。スターバックス、マクドナルド、ネスレなど、イスラエル支援企業のボイコットなら今日から始められます。
http://palestine-heiwa.org/choice/list.html

<京都の岡さんからのメールを貼付けます。>

みなさま、

京都の岡真理です。
すでに報道されているように、ガザに対しイスラエルによる新たな軍事作戦が進行中で
す。
以下、ガザのアブデルワーヘド教授がフェイスブックに投稿された、ガザの大学教員連
盟その他団体が14日に発表したプレスリリースをご紹介します。(日本語訳の次に英
語原文があります)。

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[拡散希望]

ただちに行動せよ!

プレスリリース:ガザ 新たな集団虐殺
2012/11/14

占領下パレスチナ、封鎖されたガザ発――イスラエルに対するアカデミック・ボイコッ
トのためのパレスチナ人学生キャンペーン、大学教員連盟、および民主的一国家グルー
プは、可能な限りもっとも激烈な言葉で、ガザ地区の無辜のパレスチナ人に対するイス
ラエルの犯罪的攻撃を弾劾する。

過去6時間のあいだに、7歳のラナ・アラファトを含む7名以上が殺された。ひどい火傷
をからだに負った子どもたちがシファー病院やガザ地区各地の設備も乏しい病院に続々
と担ぎ込まれている。この極悪非道の犯罪は、バラク・オバマが大統領二期目に当選し
たその翌週から始まった。ガザのパレスチナ人を可能な限り多数、死滅させることに対
してゴーサインが出たとテルアビブ[イスラエル政府]は主張する。

ガザは2006年以来、イスラエルによる絶滅政策と破壊行為を耐え忍んできた。われ
われはあらためて非難する、これら継続するイスラエルの犯罪を前に、国際社会が共謀
して沈黙を守っていること、そしてアラブ諸国の無能さを。われわれは指摘しておく、
いかなるアラブの国によっても、イスラエルに対して、何らの行動もこれまでとられた
ことはなかったことを。われわれが殺戮されているのを、アラブの春は傍観しているつ
もりなのか? 空疎な修辞はもう結構だ。非難の言葉はアクションへと翻訳されなけれ
ばならない!

われわれはまた、全市民社会の組織、政党に対し、イスラエル大使館をボイコットし、
自らの政府にアパルトヘイト国家イスラエルとの外交関係を断絶させるよう、繰り返し
要請する。今回、アパルトヘイト国家イスラエルが、ガザの無辜の市民に対するその犯
罪から逃げおおせるなどということがあってはならない。学生、学者はすべて、パレス
チナ人の学生や学生と連帯しなければならない。われわれは問う、国際社会が行動の必
要性を得心するには、ガザの子どもたちの何十という遺体を前にしてもなお十分でない
というのか?ガザで現在進行中の集団殺戮をやめさせることは、ひとえに市民社会と良
心ある者たちの手に委ねられている。

国際社会の無為無策がわれわれにこの事態を招いたのだ。
ただちに、行動せよ、手遅れになる前に。

民主的一国家グループ
スラエルに対するアカデミック・ボイコットのためのパレスチナ人学生キャンペーン
大学教員連盟
ーーーーーーーーーー
Press Release: A new Gaza Massacre!
14.November.2012

Besieged Gaza, Occupied Palestine--The Palestinian Students’ Campaign for the
Academic Boycott of Israel, University Teachers’ Association and The One Dem
ocratic State Group condemn in the strongest possible terms the criminal Israe
li attack against innocent Palestinians in the Gaza Strip.

More than 7 people have been killed within the last 6 h
ours, including 7-year-old child Ranan Arafat. Charred bodies of injured child
ren are pouring in to Al Shifa hospital and the other depleted hospitals aroun
d the Gaza Strip. This heinous crime also comes one week after the re-election
of Barak Obama for a second term. Tel Aviv claims to have been given the gree
n light to annihilate as many Palestinians in Gaza as possible.

Gaza has been enduring Israeli policies of extermination and vandalism since 2
006. We reiterate our condemnation of the international conspiracy of silence
and Arab impotence in the face of these continuous Israeli crimes. We note tha
t not a single action against Israel has been taken by any Arab country. Will
the Arab Spring stand aside and watch while we are being butchered? Empty rhet
oric will no longer be accepted. Words of condemnation have to be translated i
nto action!


We also reiterate our call on all civil society organizations and political pa
rties to boycott Israeli embassies and compel their governments to sever their
diplomatic ties with Apartheid Israel. This time, Apartheid Israel must not g
et away with its crimes against the innocent civilians of Gaza. All students a
nd academics should stand in solidarity with their Palestinian colleagues and
peers. We ask, what more does the international community need to see to be co
nvinced to act than the dozens of dead corpses of children in Gaza? It is left
to civil society and people of conscience to stop the ongoing massacre in Gaz
a.

Inaction has led us to this point.
ACT NOW BEFORE IT IS TOO LATE!

One Democratic State Group
Palestinian Students’ Campaign for the Academic Boycott of Israel
University Teachers’ Association
ーーーーーーーーーーー
以上
posted by nfsw19 at 09:00| ロンドン 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | メール引用 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月15日

エジプトはイスラエルとの和平条約を破棄するでしょうか

[知恵袋]回答 2012-11-15

<エジプトがイスラエルとの和平条約を
 破棄する可能性はありますか?
 破棄されたら中東戦争がまた勃発しそう... >


エジプトが和平条約を破棄する可能性は「ありうる」と思います。どういう方法でかはわかりませんが、なにしろ、それ(エジプトの和平条約破棄)が今回イスラエルがガザへの攻撃を始めた理由の一つでしょうから。エジプトがイスラエルの挑発に乗らないでくれるといいんですけど。

イスラエルは今回のガザへの攻撃を「雲の柱作戦」と名付けています(もう名前をつけてるんです)。作戦名まで付けたのは、これはガザへの一時的な攻撃ではなく(そんなものは日常的に行われてましたから)、4年前の「キャストレッド作戦」と同様に徹底的にやるぞ、という意味でしょう。もう3万人の予備役を招集し、地上戦も含めて「すべてのオプションがあり得る」と発表しています(核兵器まで含むかどうかはわかりません)。もう何ヵ月も準備してきたみたいに手際がいいです。

今回の作戦名の「雲の柱」は「出エジプト記」に出てくるそうです。モーゼに先導されたイスラエルの民のエクソダスの際に、荒野を追いかけてくるエジプト軍に対して、イスラエルの民を「昼は雲の柱が導き、夜は火の柱が導き」、エジプト軍が追いつくと「雲の柱がイスラエルの民とエジプト軍のあいだに入って」目くらましになり、かれらの脱出を助けたとあるそうです。ムバラクなきあと、いまや地理的にだけでなく精神的にもパレスチナと地続きになったエジプトに当てつけた作戦名でしょう。やれるもんならやってみな、とあおっていると思いませんか。

4年前のようにガザを痛めつけて、子どもを殺して、周囲の国々の市民の怒りが燃え上がるのを待つ作戦でしょう。そうなれば、市民はまだ新しくて脆弱な政府に対して「パレスチナを見殺しにするな」と迫るでしょうし、それに答えなければ政府が倒れかねません。

そうして中東におけるイスラエルの孤立が深まり(イスラエルが自らそういう状況を作ってるんですよ)、パレスチナ以外のどこかからイスラエルにロケットが飛ぶと、アメリカとヨーロッパも座視できなくなります。イスラエルはロムニーが米国大統領になるのを望んでましたが、それがかなわなかったので何か始めるかもと思ってましたけど、介入に消極的なオバマを行動させるためなら自国民だって見殺しにするんじゃないでしょうか。

そうなるということは、またガザで虐殺が起こるということなので、そういう展開にならないことを望んでいます。でも、どういう褒美を手に入れたら、イスラエルが抜いた刀を鞘に納める気になるかわかりません。

* * *

「雲の柱作戦」下のガザ
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<2012年11月16日付けメールの引用>

イギリスでは一昨日(14日)からイスラエルのガザ攻撃がトップニュースです。外務大臣は、ハマスが先に手を出した、イスラエルには国民を守る(ためにガザを攻撃する)権利がある、と会見で発表しましたが、先に手を出したのはイスラエルであることは他のニュースが報じています。

今回の「作戦行動」は、オバマが大統領に再選されると(イスラエルが強く望んでいたロムニーの落選が決まると)すぐに開始されました。イスラエル軍の地上作戦で13歳の少年が殺され、ハマスの報復ロケット攻撃はこのあと開始されたものです。続いてハマスはガザとの境界付近でイスラエル軍を攻撃してイスラエル兵が負傷、双方の攻撃が激化しそうになったためエジプトが介入し、イスラエルとパレスチナ(ハマス)のあいだで休戦が決められていました。これに対し、一昨日、イスラエルはハマスの軍事部門のトップをミサイルで暗殺し、休戦を破りました。昨夜のチャンネル4に出演したハマスの報道官の話によると、この間に市民(子どもを含む)など19名がイスラエル軍に殺されたとのことです。

ハマスは、「アラブの春」でイスラエル寄りのリーダーがいなくなったエジプトを初めとするアラブ諸国が(ハマスをトップとする)パレスチナ支持を鮮明にする行動を求め、一方、イスラエルは中東へのこれ以上の介入をしぶるオバマにプレッシャーをかけるために、双方が作戦を激化させようとしています。市民(特に子ども)が多数死ぬほどどちらにとってもプロパガンダの材料が増えるわけで、攻撃を弱める理由にはなりません。

現在、エジプトの首相がガザを訪問し、ハマスにロケット攻撃をやめるよう説得しているようです。ガザ側では引き続き犠牲者が増えていますし、イスラエル側にもハマスのロケットによる市民の死者が出ています。昨夜までは3万人だった予備役の招集が6万人まで引き上げられたようですし、本格的な地上作戦の準備が進んでいます。


posted by nfsw19 at 23:00| ロンドン 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 知恵袋回答 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月10日

今年もぐっと来るジョンルイス百貨店のクリスマスTVアド

夕べ、チャンネル4でお披露目された今年のジョン・ルイス百貨店(John Lewis)のクリスマスCM。

John Lewis Christmas Advert 2012 - The Journey


毎年毎年心温まるストーリーでミドルクラスのハートをわしづかみだ〜、と思わず照れ隠しにおちゃらけたくなるぐらいのハートウォーミング。コンセプトは、一番大事な人へのプレゼントはAmazonやebayでてきとーに選んだりせず、旅には出ないまでもせめてジョン・ルイス百貨店に足を運んで自分で選べってことかと思うが、そういう直球のメッセージをスノーマンにやらせてるところがあたまいい。フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの『パワー・オブ・ラブ』のカバーは新人シンガー・ソングライターのGabrielle Aplin。

FGTHのオリジナル版『パワー・オブ・ラブ』のPV。ジーザス誕生ストーリー(Nativity)の人物設定で、三賢者のうちふたりとジーザスのとうちゃんのヨゼフが明らかに白人でない点に好印象。
The Power Of Love - Frankie Goes To Hollywood
http://www.youtube.com/watch?v=ShN8UIk5-mw



ついでに、2011年のJohn LewisのクリスマスCM。店内のモニタで初めてこのCMを見たときに泣けて困った人もいたと言うが、あながち嘘でもないと思う。いま久しぶりに見たら展開知ってるのにまたぐっときちまったぜ。音楽はザ・スミスの『Please, Please, Please, Let Me Get What I Want』のカバーで歌は女優兼歌手のSlow Moving Millie。昔ながらのコアなスミス・ファンはモリッシーがミドルクラスに魂を売ったと怒っていた。

John Lewis Christmas Advert 2011




さらについでに2010年のクリスマスCMも。プレゼントをテーマにした説得力のあるストーリーで、新人シンガー、Ellie Gouldingがカバーしたエルトン・ジョンの『Your Song(僕の歌は君の歌)』が大ヒットした。

John Lewis Christmas Advert 2010


ついでについでにと言いつつ、わたしはこの先何度もこれらのCMを見るだろう。



John Lewisの今年の秋のCM、これもすごく頭よくてしかも美しかった。

John Lewis Never Knowingly Undersold TV Advert 2012

posted by nfsw19 at 00:00| ロンドン ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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